転生の龍が如く 〜女神の守護者~   作:kantarosu

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~前回のあらすじ~

”人間誰しも死にたくて死んでる訳じゃない…。死は本来…不本意なものだ。”

東京港工業地帯、”太洋コンビナート”付近まで辿り着いた啓達は、そこで傷ついた隊員に遭遇する。その隊員こと、大久保は敵に待ち伏せされていたと告げる…。

そして、現れたのはリッカーであった。最初から、金獅子会のキメラ達は当て馬に過ぎなかったのだ。
5体のリッカーの急襲の前に、啓が取った行動とはなんと”銃撃”であった。

木ノ内隊長から、戦力強化を提案され…採用されたのがデザートイーグルによる遠距離攻撃にあった。
抜群の射撃センスと覇気弾…そして、叱咤激励の覇気によってリッカー達を数分も掛けず、倒す事に成功した。

だが、喜びも束の間…工業地帯は既に戦場と化しており、そこへ無線連絡が啓へ繋がる。
その主は、木ノ内隊長であり…傷ついた隊員はゾンビと化している事を伝える。

そう、大久保はリッカーによって、ゾンビになりかけであり…啓によって射殺されたものの、その事実はリッカーだけでなく…国防部隊の隊員も味方とは限らないという事になった。

時間の猶予はもう無い。まずは他の国防部隊の救出を仲間たちに任せ、啓は金剛山との決闘を急ぐ。


第58話 VS”リッカー軍団” ・・・そして、待ち受ける”天山角”後編

  同日某時刻、東京港工業地帯”太洋コンビナート第一工場”

 

 東京港工業地帯は工場設備の稼働音ではなく、地響きや射撃音に化け物達の咆哮が飛び掛かう未曽有のハザード地帯に変貌を遂げてしまっていた…。

 

 そんな中…桐生達は先程の戦いで、五体のリッカーを排除する事に成功した。しかし、国防部隊の隊員達がリッカーの攻撃によっては、ゾンビへ変貌する恐ろしい事実が発覚した。

 

 この恐ろしい事実から推測される事は、連絡のつかない他の国防部隊の隊員も同じ目にあい、《《ゾンビになっている可能性が高い》》。

 ‥‥このままでは、今日だけで国防部隊の隊員達だけで多くの犠牲者(ゾンビ)を生みかねない…。当然の事ながら、人間をゾンビに変えてしまうリッカー共を野放しには絶対に出来ない。

 

 だからこそ…中澤達国防部隊が急遽しなければいけない事は、まずは生き残っているだろう仲間達の救出。そして、動ける隊員やhunter達にはそのまま攻撃に参加し、リッカー達を排除していく。

 なにより、リッカーは啓の見聞色の覇気に引っかからず、どれ程の数が居るかも把握できていない上に‥‥人間をゾンビに変えてしまうのだ。このまま固まって迎撃するよりも…戦力を分散し、積極的に索敵しなければならない。

 かくして…桐生達は、隊を分散して各々の行動へ移る事になった。

 

 以上の旨を啓に伝える中澤隊員。

 

 中澤「…以上が追加連絡だ。 俺達は生き残ってる部隊を助けたら、動けるhunterや足の速い奴を君の援護へ向かわせる。」

 

「その間、《《少し一人にしてしまうが》》…君達へあの化け物を接近させない様に少しでも倒しておく。」

 

「‥だから、お互い五体無事で合流しよう。」

 

 啓「ああ…健闘を祈る。」

 

 

 ♪Yakuza Dead Souls OST ‐Long Battle

 

 ”旧第三倉庫へ急げッ!!”

 

 ”ブオオオンンッッ!!!”

 通信を終えた啓はアクセルを吹かし、龍像を一気に走らせる。

 そして、自身の後ろには紐付きの安全具とヘルメットを被ったにこが乗っており、固定されているとはいえ…振り落とされないようにしがみついていた。

 

 すると、啓達が走る先にある集団が見えてきた。

 

「あれは…!!」

 

「ア―――」

 

「—――ア――ア――」

 

「―ウ―――」  

 声帯が腐り、人間の声ではなく‥ケダモノの様な呻き声が発し、のそりのそりと歩くというよりも引き摺る様な歩き方をする集団がいた。

 

 身体は大きな鋭い牙跡や身体に穴があいている者や四肢が欠損しているものなど、明らかに生きた人間とは思えない連中が闊歩していた。

 

「ど、どうしたのよっ!? 前になにか居たのっ?」

 

ゾンビだ…なんて数だ。 クソッ…金獅子会の化け物共ッ!!」

 啓は化け物共へ心の底から怒り、そして…遂に死者が出てしまった事に不甲斐ない自分自身への怒りを感じた。

 

 それまで、事件に死者が出る事は無かった。だが…遂にそのは超えられてしまった。

 

 今日を生きれる者と今日この世を去る者。生と死の境界線は現実で起こった事象として明らかになり、現在を生きる啓達への残酷な光景として世に映し出されていた…。

 

 最早、ゾンビとなってしまった以上…人間へ戻る事は不可能。ならば、この突如として起こった残酷な現実を前に…啓のすべき事は、《《たった一つしか無かった。》》

 

「にこ、今から絶対に目を開けるなよ。”耳栓”も忘れるな。 …俺の背中だけ見てろ。」

 

「まさか…このまま突っ切る気っ!? 無茶よっ!!」

 

「いやッ…一刻も早く終わらせる事が彼等への最期の礼儀だッ!!」

 

 啓は龍像のスピードを上げ、ウィーリーの態勢に入った。思わぬ態勢変化ににこは思わず悲鳴を上げる。

 充分な加速に入ったのを見越した啓は、自身の脚をバネバネの実のスプリングホッパーの様に力を入れた。

 

「セイッ!!」

 脚に力を込めた啓は、脚力で己とにこを乗せた龍像を宙に浮かせる。

 浮かせたと同時に啓は速攻で二丁のデザートイーグルを構えて、工場のある箇所に照準を合わせた。そして、啓は緑の武装色を弾に込めると一気に引き金を引いた。

 

「ここだッ!!」

 マズルフラッシュ…その淡い光から次々と緑の弾丸がドンドン放たれていった。

 

 啓の放った緑の弾丸は狙った箇所に当たると、その箇所を貫通する事無く…なんと跳ね返ったのだ。デザートイーグルの弾丸は自動拳銃の中でもトップクラスの貫通力を誇る。

 《《そんな強力な弾丸が障害物に当たると跳ね返る》》。すると、どうなるか…。

 

 ”ドシュッ‥!!”

 腐った肉体を貫く鈍い音が発せられた。それが1つ2つどころではない。跳ね返る弾丸の群れがまるでビリヤードのコンビネーションショットの如く…ゾンビ達の肉を一気に削ぎ落していく。

 瞬く間にゾンビの集団は弾丸の威力に負けて、地面に倒れていった…。

 

 啓はそのまま振り返る事なく、手早くデザートイーグルの弾丸を装填させるとそのまま龍像を走らせた。

 

「にこ、耳栓を外して良いぞ。 終わらした。」

 声が聞こえないにこの為に、啓は耳栓を外す様にジェスチャーをする。

 

「もう…? あっという間ね…。」

 

「ゾンビは基本的に鈍い。倒すのは簡単だ…。 だが、何体も戦ってる時間はねェ。」

 

「だから、このまま工場の屋根を移動しながら…第三倉庫まで向かうぞ。」

 

「どうして…?」

 

「ゾンビ達は人間の時よりも著しく身体能力が落ちてるんだ。《《屋根を軽く飛び越えるのは簡単に出来ねェ》》。」

 

「わざわざ、ゾンビとは戦わずに済む。だが…。」

 そう、啓が言い終えると…啓達の周りを取り囲む影が…。

 

「…こいつらは例外だがな。」

 

「ruoooooo!!!!」

  5匹のリッカーが…雄たけびを上げた。

 

「嫌あああっ!!?? け、啓っ!?」

 

「兎も角耳栓しろ、舌噛むなよッ!!!」

 啓はアクセルを吹かせると、龍像を一気に走らせた。

 

 走る方向にはリッカーが雄たけびを上げて、こちらも突進してくる。互いの激突は必至。しかし、啓は激突間近の所でウィリーの態勢に入った。そして、そのまま大声で発する。

 

”武装ッ!!”

 啓の大声と共に龍像のタイヤは黒くコーティングされていき、そのまま背中を反らすと先程と同じ様に両脚で龍像を浮かせた。

 

 するとどうなるだろう…。なんとバイクは空中を1回転したのである。バック宙、いや…バイク版”サマーソルトキック”と呼ぶべきか。丁度、激突したリッカーの頭部に”グシャリ”と鈍い音が響きわたり、そのままダメ押しにデザートイーグルの弾丸をお見舞いされ、敢え無く絶命した。

 

 更に啓はその態勢のまま、射撃に移った。空中で一回転し、そのまま後ろのリッカー二匹にデザートイーグルの覇気弾を数発撃ち込んだ。

 

「ruga!!」

 

「ruoo!?」

 二匹とも猛スピードでバイクを追っていた為に、武装色の覇気を纏う事まで意識が回らずに数発の弾丸が容赦なく二匹の身体を抉っていた…。かくして、凄まじい威力によって暴れることも出来ず…二匹も屋根に突っ伏した。

 

「ruooooo!!」

 眼の前で瞬く間に仲間三体がやられたリッカー二匹は、啓から横方向へ距離を取る。

 

 ”ビュンッ…!!”

 次の瞬間リッカーの口から長い舌が射出された。リッカーにとって最大限にして、最速の武器…この状況下で啓を拘束すべく動く。

 その功を為したのか、啓の両腕に二匹の長い舌が巻き付かれた。

 

「…。」

 啓の動きを封じたと考えたリッカーは啓にトドメを刺すべく、鋭い鉤爪に武装色の覇気を纏った急襲を仕掛けた。

 

 

「馬鹿が、焦り過ぎだッ‥!!」

 啓は即座にデザートイーグルをその場に捨てた。そうして、フリーの状態になった両方の五指に力を入れ、自らに絡まった舌を思いっ切り握り締めた。

 

「ruga!?」

 生物兵器…リッカーは思わず悲鳴を上げた。如何にBOWと言えど、自身の身体の一部を強引に握られたら悲鳴は出る。しかも、相手は怪力を誇る啓だ。早い話が《《万力男》》と言っても差支え使えない。

 

 そんな、万力男が舌を握ってたのだ。もう逃れる事は出来ない。

 

「ヌンッ!!!」

 ”ブチッ…!!”生々しい断裂音が、生じる。声にならない怪物達の悲痛過ぎる叫びが響き渡った。だが…リッカー達の叫びは直ぐに静まった。

 

 「うるせェよ…。」ドン!!

 

 静まった理由は、至極簡単な理由であった…。

 

 啓が瞬時に龍像から降りて、閻魔大王に舌を引っこ抜かれた罪深き罪人と同じ状態になったリッカー二匹の口を凄まじい握力で強引に塞いでいるからだ。

 自慢の長い舌を千切られ、自慢の口もこれ以上無いぐらいの野性的な力で塞がれ、現在進行形で苦しむリッカー二匹は…垣間見た。

 

 転生の龍の全身から漲る怒気の嵐を…。

 

 瞬間、生物兵器達は…悟った自分達の最期を。

 

 ”ベキッ!!‥‥‥”

 

 

 

 

 冊冊冊冊冊冊

 

(…。)

 にこは龍像から、啓の今しがたの戦闘を見ていた。

 当の啓本人は、既に絶命したリッカー達を纏めて同じところへ投げ下ろしているところである。

 

 矢澤にこは今此処に居ないμ’sメンバーの中で、誰よりも桐生啓の近くで漢の闘う姿を傍に居た。啓からは、自分の背中だけ見ていろと言われたが…先程のリッカー二匹に関して言えば、啓が安全具を外した事により、《《バッチリと見てしまっていた》》…。

 

 そして、にこが今の啓に対して感じている事は…超人と言うよりも凶暴な怪物のイメージであった。啓が転生者である事は早い段階で知っていたし、前世は総合格闘家である事を本人から告げられた。

 

 《《しかし、総合格闘家と言っても限度がある》》…人間よりも強力な怪物に対してまるで怯みもせず、倒しているという事実である。

 東京港付近で倒したキメラやhunterγは兎も角として、先程のリッカー二匹に対しては技と言うよりも…単純な握力で殺しているという事だ。それも何の躊躇も無く…。

 

 いくら、格闘家と言っても…殺し合いをする訳ではない。しかし、今の啓の闘いはまるで敵を殺す事に慣れている戦闘機械に見えたのだ…。

 

 

 

 

「見てたのか…?」

 処理を終えた啓が考え事しているにこへ話し掛けてきた。

 

「えっ!? …う、うん。」

 

「そうか…いや、チゲェな。 《《俺が見せちまったのか。》》」

 その様を見掛けていたにこは、恐る恐る口を開いた。

 

「啓…あのね?」

 

「なんだ? 言いたい事があるなら、今がチャンスだぜ。」

 

 

 

「‥…あんたは、《《どうしてそこまで追い詰めてるの》》?」

 

 

「…俺が?」

 啓はデザートイーグルの弾を装填する。

 

「そうよ、さっきの大久保さんの件だって…あんただけの責任じゃない、ましてや警察の人達の責任でもないっ。」

 

「一番悪いのは、こんな状況をつくったでしょっ…!!」ドン!!

 

「‥そうか。 にこからは俺が追い詰められてる様に見えたのか…俺の今の闘いが。」

 

「‥‥。」

 

「確かにそれも()()()()()かもな…。 俺は今、誰よりも責任を感じてる。」

 

今日、初めて人が死んだ…俺とそんなに年が離れてねェ人が一人二人じゃない。大勢だ。」

 

「それにこの戦いは最終決戦でもなんでもねェ。あくまで敵の幹部1人と闘うだけだ…。これで終わりじゃねェんだ。」

 

「だからこそ…まだこれから先も死人が出る‥‥それがつれェんだ。特に転生者である俺にとっちゃな。」

 

 

幾ら∞に転生出来たとしても、死んだらそいつの人生はそこで終わりなんだからな。」ドン!!

 

「け、啓…。」

 

「それによ…今の俺は追い詰められてるというよりも…。」

 

 

怒ってるんだよ…俺は。」ドン!!!

 

 

「!?」

 

「お前も見たろ? ”俺の殺し方”。」

 

「あれこそ‥俺の怒りそのものだ。お前も正直な話…引いてんじゃねェのか?」

 

「そ…それは。…えっと…。」

 啓の問いに対して、にこは答えに窮する。そう、にこが本当に質問した内容は啓の闘い方がまるで殺し慣れてるみたいだと質問しようとしていたからだ。

 

「なぁ、にこ。 俺達はまだ互いに相手の表面しか見えてないのかもな…。」

 

「…。」

 にこが啓の言葉に考え込んだ。

 

(ンッ…!?)

 

 

 

 

 

 その時であった。

 

 突如…啓は猛スピードでにこと龍像を抱えると、大ジャンプでその場から離れた。

 

「ちょっ…なにっ!?」 

 にこは突拍子も無く啓が自分を抱きかかえた為に驚きの声を上げる。

 

 すると、その瞬間…。

 

 ”ドウンッ!!”

 盛大に何かが屋根を突き破る音が響いた。啓とにこの2人が居た場所は大きな天井穴が出来てしまい、大きく目立った損壊になってしまった…。

 

「こ、今度はなんなのよっ!?」

 

からだッ…!! 見えたのは、白い砲弾みてェなモンだ。 また、来るぞッ!!」 

 啓はそう言うと、抱えたにこを龍像へ乗せると一目散に乗り出した。

 

 ”ブオオオンンッ!!”

 

「頼むぜ”相棒”!!掴まってろ、にこッ!!」

 

「言われなくても、そうするわよっ!!」

 にこが騒がしく答えたやいなや、啓はフルスロットルで龍像を発進させた。そうして加速した龍像は一気に屋根から下の工通路にまで、飛び降りた。

 …落下時の衝撃に、にこは顔を歪ませる。

 

「いたっ!?」

 

「クソッ!! 追って来てるなッ…!!

 啓は後ろの方を見た。すると、先ほど2人が居た地点に”例の白い砲弾”が着弾する。

 

 ”ズズウンッ!!”

 又しても、大きな轟音が鳴り響く。その威力は”戦車砲”そのものであった。

 

「どうしよう…このままじゃっ…!!」

 身の危険を感じて、慌てるにこに対して…龍像を操縦している啓は冷静に考えた。

 

(金獅子会の目的は…にこつまりμ()()s()()()()()だ。…だが今の砲撃は明らかに俺は兎も角、にこに当たれば即死。それじゃあ何をやってるか意味が分からねェ。)

 

(それにあの砲弾‥テンポが速すぎる。つまり、複数で攻撃してるって事かッ…!!)

 

(まさかッ…!!)

 啓が答えに辿り着いたその時ッ…!!

 

 

 

 ”ドドドドドドドドドッッ!!!!”

 突如、交通路を出て広い敷地内へ出た瞬間…龍像目がけて多くの銃弾が飛んできた。

 

「武装ッ!!」

 啓は答えに辿り着いた瞬間…ウィリーへ移行し、龍像に武装色の覇気を纏わせて、盾にすると前方の射撃を防いだ。

 

 「きゃあああっ!!??」

 にこは銃弾の嵐に酷く怯えて、啓の背中にしがみ付く。ガード出来る龍像や銃弾を掴める啓と違って、一般人であるにこが一発も当たれば即死だ。

 

 ”ブチッ…!!”

 にこを怯えさせた事により…”転生の龍”は轟いた。 

 

 「この糞共…にこに当てんじゃねぇよッ!!」ドン!!

 

 刹那…啓は左手でにこを抱えると、もう片方の右手で龍像を持った。

 そして、瞬時に武装色の覇気を纏わせて…青い覇気を脚に纏わせる。

 

 「ゼあッッ!!!」

 啓が腹から声を出した次の瞬間…()()()()()()()()()()()が敵共を襲った。それこそ、啓が渾身の力で龍像を振るった大突風とも言うべき威力であった。

 

 敵も超然とした集団だが…啓もまた人智を超えた転生者。このラブライブの世界に転生してきた短期間で、激しい闘いをこなしてきた”転生の龍”は日が経つ毎に、その強さに磨きが掛かっていた。

 その強さを証明する一つが、人間でありながら…”自然現象”に匹敵するパワーを有する事だろう…。

 

 そんな中…”覇気の嵐”が発生した事に気付く”男”が一人。

 

 ?「あれは‥いよいよ近づいて来るか、桐生。」

 

 

 冊冊冊冊冊冊

 

 東京港工業地帯”太洋コンビナート搬出エリア”

 

 啓達が辿り着いたのは、太洋コンビナートの搬出エリアであった。此処では、大型の製品や貨物。それらを運搬、牽引する大型車両が置かれる流通地点だ。

 簡単に言えば、コンビナートでも屈指の広いペースを有するエリアなのだが…、

 

 そこへ辿り着いた啓を銃撃で待ち構えていたのは、全身が黒でコーディネートされた集団であった。しかし、人間にしては異様に静かで不気味な印象を与えていた。

 

 龍像を地面に置いた啓は眼前の集団に対して、睨みを利かせていた。

「成程な…さっきの”砲撃”は俺達を追い詰める為の誘導だった訳かッ…。」

 啓達が居た場所は、例の砲撃で通路が崩れてしまい、まるで此処から逃がさんと言わんばかりだ。

 

「この場所を今日の決戦の舞台にする為にッ…!!」

 

「そうだろッ!! ”金獅子、転龍会共ッ”!!」ドン!!

 ”転生の龍”は二大勢力の呼び名を大きく叫んだッ…!!

 

 啓が先ほど起こした”覇気の嵐”が止み、眼の前に現れたのは…。

 

「ア――――」

 

「オオォォ‥‥。」

 先程の国防部隊が辿ってしまったゾンビ同様の呻き声を上げるのは、なんと転龍会直系team”iflit”のメンバー達の姿であった。

 

 だが、啓が以前見た風貌では無い。その風貌は、明らかに人間の色…生者と云うよりも土気色の死者同然であった。そう…奴等は死してゾンビになったという事になる。

 しかも、ゾンビ達の周りには…啓自身少し見慣れたリッカー共の姿がそこにあった。

 

 そう…待ち構えていたのは、この事件の犯人達であり…互いが敵同士であるゾンビとB・O・Wの混合勢力だったのだ。

 

 啓の背中から、眼の前の様子を伺っていたにこが思わず言葉を上げた。

「啓っ!! あいつらって、まさか…。」

 

「ああ…間違いねェ、一昨日見た炎山の部下共だ…ゾンビになってやがる。」

 

「そんな…ど、どういう事よっ!? あいつらがやられたって事は、ママ達は…!?」

 

 にこは気が気で無かった…そもそも彼女にとって、こんな危険過ぎる場所に来たのは…全ては自分の家族を助ける為に他ならないのだ。

 そしてその家族は転龍会直系team”iflit”が握っている。

 

 だが…その転龍会の構成員である奴等が、ゾンビとなっているのでは…今日の決闘はいや、矢澤一家は一体どうなるというのか…?

 

 

 「こんなの…う、嘘よ。こんな…こんなとこまで来たのに。」

 

 

 にこはもう…涙が出た。”涙腺崩落”…これまで堪えていた恐怖と焦燥が遂にせき止められなくなり、落涙と化して…地面に落ち始める。

 今の彼女が心の底から、安堵出来るのは…”家族が無事である”という事だけなのだ。だからそれを叶える為に危険な場所に赴いた…。

 

 しかし、”現実”がそんな焦る彼女に見せたのは…家族が無事とは済まないのかもしれない、危機感を募らせる光景に過ぎない。

 

 だからこそ、涙が出るのだ‥。

 

 

 「ruoooooooooooooooooo!!!!!!!!!!!!!!!」 

 悲しむにこに対して、周りを取り囲むリッカー共は歓喜の咆哮を上げた。その中の…一匹のリッカーが遂に飛び出す。それが引き金となり、残りの群れも2人目掛けて一気に襲い掛かった。

 

 

 

 

 「悪魔風脚…”スプレッド・ショット”ッ!!!」

 

 刹那…悲鳴を上げたのは、啓でもにこでも無い。…上げたのは、()()()()()()()()()()9()()()()()()()()()()()()()であった。

 

 蹴られた9体の化け物共は、悲鳴を上げるモノ、激しく燃え上がるモノ、吹っ飛ばされるモノ…共通点は誰一人も啓を倒すどころか…逆に倒される始末であった。

 

 「脚を温存するのは…もう終いだ。」ドン!!

 啓は燃え盛る己の脚を一度消すと、にこを背負った。

 

「にこ、あそこまで飛ぶぞッ…。」

 

「…えっ。」

 その言葉を言い終えると同時に、啓はにこを背負ったまま大ジャンプした。

 そして、目的の高所ににこを下ろした。

 

 

 

 冊冊冊冊冊冊

 

 高所へ飛び移った啓は涙目のにこの肩をしっかり掴むとこう言った。

 

「にこ…矢澤家は”無事”だ。」ドン!!

 

「‥‥どうして?」

 

 にこは啓へ掴みよると、涙声で叫んだ。

「どうして、そう言い切れるのよっ…!!」

 

 

 

見てないからだ。

 

 

 

「…!!」

 

「本当に死んだのか、それが分からない以上…自分の頭で解決しようとするな。」

 

「それが…()()()()()()()じゃないのか?」

 啓の発言ににこは、何も言えない気持ちになった。

 

「それに下の化け物共は焦ってる…。」

 啓は下を指差す。

 

「あ、焦ってる‥‥?」

 

「あいつらの目的は、μ’sを奪う事…そして、俺を殺す事だろう。」

 

「けど、俺は生きてるし…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()になってる。奴等はまだ何も目的を果たしていねェ。」

 

「…それに付け加えて、もう一つ。」

 

「…?」

 

 

…国防部隊の死体が積み上がって無いからだ。」ドン!!

 

 

「それこそが…国防部隊の生き残りが命を懸けて頑張ってる証なんだ。」ドン!!

 

「頑張ってる…あの人達が…?」

 

「‥そうだ。確かに死んだ人間もいる。ゾンビになった隊員も俺が殺した。…だがそれでも、その人の死を乗り越え…命を懸けて自分の任務をやり遂げようとしている。μ’sとこの国を護る為に。」

 

「その証拠に、全員が死体になってる訳じゃねェ…それが無い以上、俺は生き残った人達の無事に懸ける。」

 啓の脳裏には、中澤隊員の言葉が思い浮かぶ。

 

 ”お互い五体無事で合流しよう‥。”

 

「だから、もう一度色んな人に再会する為にも…俺はもう出し惜しみはしねェ。」

 啓は左上腕に巻いた赤いバンダナを巻くと、頭部に巻いた。

 

 ”赤きバンダナを巻く”…それは彼なりの覚悟の形であった。

 

「け、啓…。」

 

「にこ、泣く事は良い。時には必要だ。…だが。」

 啓は眼下の化け物を見下ろす。今までの攻撃で生き残った化け物がおり、啓達に迫ろうとしていた。

 

 

 「泣き続けるなよ。」

 

 

 ”ダンッ…!!”

 漢は勢い良く空へ飛びあがった。

 

武装色青弾ッ!!

 

 弾丸に青い覇気が纏われていき、銃口はにこを狙うリッカー達へ放たれた。

 弾速は凄まじい程早く、登るリッカー達の身体を貫通していき、地上へ叩き落とされていった。

 

「次だ、武装色赤弾ッ!!

 今度は赤い覇気を込めて、地上のゾンビ達へ撃つ。先程と同じ銃撃音であるが…弾丸の性質は全く異なる。

 

 その違いは威力によるものだ。赤い覇気弾は、ゾンビの身体を貫通するどころか身体ごと木っ端微塵に粉砕していき、地面に着弾と同時に赤い衝撃波が他のゾンビ共を巻き込んでいった。

 最早、拳銃と云うよりも重火器以上の威力を誇ってもいい。

 

 しかし、これで終わりではない…既に啓は止めの一撃を決める為に、脚を燃やしていた。 

 

 「悪魔風脚…”メテオ・ストライクウゥゥ”ッッ!!」

 

 瞬間…炎と衝撃波が地上を一掃した。桐生を倒すどころか…終始圧倒されぱなっしで、致命傷を受けていくB・O・W…。

 以前の転生してきたばかりの啓とは明らかに威力が上がっていた。

 

 かくして…地面に着地した啓の周りには焼死体と飛散した無残な骸が横たわる場所に変貌していた。

 リッカーは生き残っているが…先程と比べると数はたったの4体だけとなっていた。ゾンビに関しては、全滅。元々リッカーと比べると戦闘力が大幅に劣る為に、転生の龍の攻撃に耐えられる筈が無いのだ。

 

「…残り四体かッ。」

 数を確認した啓は、残ったリッカーへ止めを刺すべく動き出そうとした。それに対して、リッカー達は本能的に恐怖を抱く。‥あの人間は時間が経つ毎に徐々に強くなっている。そう感じるしかなかった。

 

 桐生という男が強い転生者である事は事前に知っていたが…キズ1つ付けられないとは思いもよらなかった。

 どちらにせよ…今のリッカー達では強さも心の安定も桐生に敵う筈が無かった。

 

 ”ビュンッ…!!”

 その時であった…!! 

 突如、桐生の元へ例の”白い砲弾”が飛来した。

 

「‥!!」

 だが、咄嗟に気づいた啓は…力を入れると、その砲弾を…。

 

「セイッッ…!!」

 なんと、ボレーシュートの要領で砲弾を蹴り返した。砲弾は蹴りの速度も相まって、生き残っていたリッカー4体を貫通していった…。

 

「そこかッ…!!」

 蹴り返した啓は今度こそ、砲弾を飛ばした相手へ銃撃を行う。繰り出された銃弾は遂に砲手へ当たる。

 

 「RUOOOOO!!!!」

 その砲手の正体とは…リッカーとは比べにもならない程の大型のリッカーであった。そのサイズはアフリカゾウを超える大きさだ。

 

「こいつは…俺が知ってるリッカーとはデカさが違う…”金獅子会”の手が加えてんのかッ…!!」

 

「RUOO!!」

 大型リッカーこと…ラージリッカーは自身の鉤爪を啓の方へ向けると、なんとその鉤爪を連続で射出してきた。鉤爪はまるで砲弾の如く、推進する。

 

 その砲撃を咄嗟に避ける為に大ジャンプする啓。白い砲弾は逸れ、衝突を免れた。

 

(そうか…あの白い砲弾。撃ってたのは奴の”鉤爪”かッ…!!)

 啓とにこの2人を襲った白い砲弾…その犯人はあのラージリッカーであった。自身の鉤爪を射出して、砲弾の様に飛ばしていたのだ…。

 

 ともすれば…今しがたの砲撃を撃て、気配が読めず、普通のリッカーよりも明らかに戦闘力が上であるラージリッカーを野放しには出来ない。

 

 …ならば、啓がする事は一刻も早くラージリッカーを倒さなければならない。

 

 ”ドウンッッ…!!”

 啓は二丁のデザートイーグルの弾丸に赤い覇気を込めると、ラージリッカーへ撃った。

 

 放たれた赤い弾丸に対して、ラージリッカーは咆哮を上げると、鉤爪を射出する。

 しかし、先ほどの白い砲弾と違い、今度は”黒い砲弾”となっていた。そして、今度は衝突した互いの”弾丸”は”覇気の衝撃波”を生じさせた。

 

 ”ズドオオンンッ‥!!”

 搬出エリアに衝撃波が発生し、隠れているにこも必死に身を屈める。そんな一歩も動けないにこと違って啓は、瞬時にラージリッカー止めを刺すために…片手でデザートイーグルを撃った。

 しかし、放たれた弾丸を俊敏な身体で避け、ラージリッカーもまた啓へ攻撃を仕掛けていく。

 

 リッカーの名の体現とも云える特徴的な変則的な長い大舌をまるで大鞭の様に啓目掛けて振るった。その速度に、啓はなんとか緑の覇気を纏ったが…叩き付けられた。 

 

「チッ…!!」 

 威力はなんとか軽減出来たので、そのまま…後ろに下がった啓。少し、呼吸を荒げていた…。

 

(クソッ…倒せるかもしれねェが、中々簡単にいかねェぞあのバケモンはッ…!! 今まで闘ったB.O.Wの中で一番強い…。)

 この勝負を制するのは、そこまで簡単という訳にはいかない。

 

 しかし、この後…金剛山との闘いを前に残された体力では勝つのは厳しくなる。

 

「だが、それでもやるしかねェッ…!!」

 啓は気合を入れると、覇気を込めた。

 

 だが…此処に来てラージリッカーはそんな啓に見向きもせず、ある人物へ注目していた。

 

 

「‥‥うぅ。」

 そう、見据えていた人物とはにこであった。

 

 敵の目論見に気づいた啓。

 

「…まさかッ!? テメェ、にこをッ…!!」

 リッカーは突如、方向を変えると…にこの方へ舌を射出したッ!!

 

「チッ…させるかよッ!!」

 にこを護ろうと、啓がデザートイーグルの弾丸を撃ったその時であった。啓の攻撃のタイミングに合わせるように…。

 

 

 「カバーしろッ‥‥!!!!!」ドン!!

 突如、様々な方向から銃弾の群れがラージリッカーを向けられる。

 

「guoooo!!!」 

 そして、少し遅れて刻まれ含む11匹のhunter達がリッカーへ斬撃をかました。二重の攻撃に痛がったリッカーは周りのhunterへ攻撃をやり返した。

 

 

「桐生君…中澤だッ!! これから援護するッ‥!!」

 啓の元に中澤隊員が啓へ通信を呼び掛けた。

 

「無事だったのかッ!?」

 

「ああッ、それよりだッ!! ”デカい”のは、俺達とhunter達に任せて君は金剛山との”ケリ”をつけて来るんだッ!!ドン!!

 

「なんだとッ!? アンタ達だけであのバケモンを倒せるのかッ!?」

 

「大丈夫だッ、デカい分だけ攻撃は当てやすい。俺達でも倒してみせるッ…!!」

 中澤は啓の忠告を聞かず、自分達に任せてくれと豪語した。

 

「‥それを信じろッて事か?」

 

「そうだ、俺達が君の勝利を信じてくれた様に…君も信じてくれッ…!!」

 

 

互いに闘う者同士…頼むッ!!

 中澤の言葉に啓は…何も答えなかった。

 

 答えなかった啓は素早くデザートイーグルの赤い弾丸を既に10匹のhunterたち戦ってるラージリッカーへ放った。その弾丸は身体に刺さり、奴は痛みに叫ぶ。

 

 

「…少し、奴を痛めた。 だから、後は頼む。」ドン!! 

 

「!!…助かる。」

 互いに通信を切った2人は、それぞれの仕事を取り掛かる。

 

 激しく抵抗するリッカーを尻目に啓は素早くにこを回収すると、龍像を発進させた。

 

「RUOOOOOOOOOO!!!!!!」

”行かせてたまるかッ!!人間共ッッ!!”そう吠えるラージリッカーの前に、立ち塞がるのは…11匹のhunter達と国防部隊…。

「これから始まる”決闘”の為にも、絶対に通さんッ…!!」

 

「GUOOOOOOOO!!!!」

 一匹の怪物を通さぬため、本来なら敵同士であった者達は…力を合わせて倒す事に努めようとしていた。

 

 2()()()()()()()を邪魔させぬ為に…!!

 

 

 

 

 

 

 

 冊冊冊冊冊冊

 同日某時刻、東京港”旧第三倉庫”(決闘の地)

 

 此処は旧第三倉庫…今日一日の桐生達の”最終到達地点”でもあり、これから先の戦いを歩むための”始めの一歩”でもある。

 

 そこには、B.O.Wの死体が積み上げられており…時刻も夕刻を迎える。

 

 そんな港から紅い夕陽を見ジッと見据えながら、葉巻を吸う巨漢が”山”のテッペンで座っていた。

 

蒼羽「…よう、つよさん。今なにしてんだよい? 俺は()()()()()4()()()倒したとこだぜ。」

 

金剛山「そうですか…俺ァは今、()()()()で煙を吹かしてるところですね。」

 

「はぁ~気楽でいいねェ。 おっと…ちまいのは、4()0()()()か?」

 

「ところで、どう思いますか? 桐生の”覇王色の覇気”について…。」

 

「えッ…それ今の俺に聞く事かよいッ?」

 

「そうです。」

 

 

「そうだな‥ありゃあ”バフ”だよい。」ドン!!

 

 

「やはり、副総長もそうお考えでッ…。」

 

「なんだ、つよさんもそう考えてたのかよい。」

 

「そりゃ、そうでしょう…。明らかに桐生の”覇王色の覇気”は正にそれだ。」

 

「やはり、”桐生 啓”という男…。 会長が”最強の敵”と宣言するだけあって、人の上に立ち…そして誰よりも強くなろうとする漢。この世界に来た甲斐があるものだ。」

 そう言い、金剛山は”夕焼けの下”を眺めていた。

 

 

若き総長も…喜んでいる事でしょう。」ドン!!

 

 金剛山は、葉巻を握り潰すと…後ろを振り返った。

 

 

 

 

 

「そうだろ…若き転生者よッ。」ドン!!

 

「ああ‥俺も喜んでるぜ、テメェの前に立てたんだからな。」ドン!!

 

 夕焼けをバックに向かい合う”龍と天山角”…穏やかな波が少しずつ荒れようとしていた。

 

 続く…。

 




次回、第四章第59話 夕陽の決闘 VS”転龍会直系team”iflit”特攻隊長 ”金剛山 強” 次回も乞うご期待b
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