転生の龍が如く 〜女神の守護者~   作:kantarosu

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この話から、四章前半から続いて後半へ突入になります。ですが、タイトル通りの闘いになります…。

~前回のあらすじ~

人界切削拳法”闘粒拳”の威力は、”転生の龍”を海へ回避させて、周りの港を壊し尽くすには充分過ぎる程の威力であった。

しかし、敵が強い事が最初から分かっていた啓は海へ落として金剛山を”人質”と拘束する事…そして、対金剛山戦への”必殺技”を繰り出そうとした。

その名も…”悪魔”を超える炎の天体の名を冠した”太陽風脚”であった。余りにも過剰過ぎる熱量と激しい炎を宿した蹴り技は、それまでの無敵の硬度を持つ金剛山を苦しませる。

だが、その炎は啓を苦しませるものであった。余り、長く使えない…。

…ならば、早急に決着を付けるのみ!!

啓は最強の炎の蹴り技”屍肉・ストライク”で、金剛山の”烈弩羅射”へ立ち向かう…!!



…なのだが。


第4章後半 前世の家族”YKGP編”
第62話 ”赤落ちの連戦” VS蛇蝋総統”蝋 家龍”


 ”決闘””タイマン””一対一”…それは互いの個をぶつけ合う対峙する二者だけの”対決空間”。己を信じ鍛え上げた技をぶつけ合う”肉と肉とのぶつかり合い”

 

 互いの漢二匹が全身全霊を以って、挑む”ガチバトル”。そう、真剣にして本気で闘っている2人なのだ。啓はμ’sとその家族達を護る為に闘い、金剛山は自身が所属するチームと転龍会へ娘達を捧げる為に闘った。

 

 互いに譲れぬ”信念と目的”…それは正に”漢同士の正念場”となった。そこにあるのは只一つ‥‥両者が前に進む為の勝敗を決するのみであった。

 

 …だが、もしそんな”空間”に厚顔無恥で入れる男がいるとすれば、そいつは余程の利己主義者な男であるのは間違いないだろうッ…。

 

 

 ~東京港”太洋コンビナート”~

 

 「グオオオッ…!!」

 太洋コンビートに、ラージリッカーの断末魔が轟いた。視力が皆無の為に、目が存在しないのがリッカーの特徴であるが、もし目があれば悲痛な表情をしていたのは間違いないだろう。

 

 蒼羽「うるせェよい。」ドン!!

 ”グシャッ…!!”

 

 ラージリッカーを何食わぬ顔で、その顔を踏み潰す蒼羽。顔を潰された瞬間、化け物はその生命を終えた…。

 

「フィ~ハッ…これで16体目かよい。蛇蝋の奴等、痛い出費になったに違いねェなッ~。」

 それまで携えていた両腕の蒼い炎を消すと、ラージリッカーの死体に座り込む。

 

「え~と、火ッ…あったよい。」

 蒼羽はポケットから蒼い炎と煙を出す…自作の煙草”ブルーイグニッション”とカスタムライターを取り出すと、一服しだした。

 

「それで倒せないにしても、中々頑張るよい…御上のお前らも。」

 煙草で指し示しながら、それまで命懸けで戦っていた国防部隊の彼等に褒める。

 

 そこには息切れした隊員達と息切れしてないにしても疲れた顔を見せるhunter達の姿があった。何人かの隊員やhunterは倒れており、その激闘が如何様な物かを物語っていた。

 

 中澤(な、なんて奴だ…強い事はとっくに知ってたが、俺達があれだけ苦労したバケモノをあんな簡単に殺すとは…!!)

 国防部隊の1人、中澤は戦慄していた。そして改めて、転龍会とはまともに戦えば勝ち目が無いと悟った。

 

「さてと…行くかよい。」

 蒼羽は一気に煙草を吸い終えると、吸い殻を握り潰した。

 

 ”ジャキッ!!”

「!! どッ…どこへ行くつもりだッ!!」

 中澤は装備している銃を構えながら、銃口を蒼羽へ向けた。

 

「やめときな、お兄ちゃん。 俺の強さはもう分かってるだろうよいッ。」

 

「ッツ…!!」

 

「それに俺はお前らを助けた訳じゃねェよい…まぁそれを言ったら、”姐さん”に怒られるがな。」

 蒼羽がそう言った矢先…。

 

 ”bpbpbp” 

 蒼羽の体内に仕込まれたナノマシン通信が入った。

 

「…頼瀬、どうしたよい。」

 

 

 頼瀬「副総長ッ!! ”金獅子会のキーパー”が襲ってきましたッ!!」ドン!!

 

「‥やっぱり来やがったか。頼瀬、動ける奴を集めろッ…奴を始末する。」

 蒼羽は早急に対策を立てようとするが…。

 

 次の瞬間、蒼羽が持つ見聞色の覇気に不穏な気配が流れた。

 

 (んッ…この感じはッ!!)

 蒼羽は東京港第三倉庫の方角…啓と金剛山との決闘地の方へ鋭く見た。

 

(この気配は、まさか総長とつよさんがッ‥!!)

 

 只でさえ壊滅状態の東京港に…最後の波乱が迫っていた。 

 

 

 

 冊冊冊冊冊冊

 

 ~東京港”金剛山のシェルター内”~

 

 凛「そ、そんな…。」

 シェルター内の換気口から唯一外の状況を見張っていた凛は、余りに唐突な展開に言葉を失ってしまった。

 

 にこ「どうしたのよ、凛っ!? いきなり黙るなんてっ!!」

 凛の下から、にこが心配の余り声を掛ける。状況が状況だ、、、他人の一挙手一投足が気になり過ぎて仕方の無い事なのだ。

 

 にこの心配に答えるべく、凛は下に居るμ’sやその家族達へ伝えた。

 

 「…啓君が”白い蛇”にか、噛みつかれた…。」ドン!? 

 

 一同「!!!???」 

 

 ♪One Piece Treasure Cruise OST Ambush/Invasion Theme

 

 ~東京港旧第三倉庫”壊滅の決闘地”

 

 ”決闘地”…そこは紛れもなく二人の漢の決闘地であった。互いの最強の技をぶつけて、決着を迎えようとしていたのだ…。

 

 しかし、極度の決闘は狂った芸術家によって…崩された。

 

 ?「ドゥハハッ!!! 炎の糞餓鬼との闘いを制して…ついでに馬鹿二匹も始末出来て気分は”ソ~快”がねッ!!」

 そう言うと、能力で生み出した”双頭の白蛇”をしまい込み、得物を気分よく振り回した。

 

 長い長髪を束ねて、口元には長い髭を携えた3mクラスの長男…そうこの長男こそ”音乃木坂白いドーム事件”を起こした犯人の1人。

 

 ”蛇蝋総統”災厄の転生者”蝋害の蝋家龍”ドン!!

 

 金剛山「カハッ…!!」

 

 啓「グァッ…!!」

 互いに”双頭の白蛇”の噛みつきにより、”転生の龍”と”天山角”は吐血し、最強の必殺技の態勢から崩れ落ちた。

 

 蝋「全く、日本の転生者というのは本当に頭が悪い…。決闘などしてるからだがね。」

 そう言い、やれやれと言わんばかりに首を振った。

 

 「「ウオオオオオッッ…!!」」

 だが、態勢が崩れても二人の男は、決して倒れはしなかった。二人して現れた卑怯者の転生者…”蝋 家龍”を睨みつけた。

 

「チィ…まだくたばらないか、死にぞこない共。」

 

 「”蝋 家龍”ッ…!!!!」ドン!!!

 蝋が言い終わらぬうちに、金剛山が凄まじい怒号と覇気を発揮させながら…周囲へ轟かせる。

 

 「貴様ッ!! ()()()()()()()()ッッッ?」

 金剛山の余りに激しい剣幕…しかし、最も睨みつけられているにも関わらず、蝋は全く気にしていない。

 

「フンッ、()()()()()()()()が…。この()()()()()()()で対等な口を聞けると思うがねか?」ドン!!

 

「!!」  

 

(金剛山が負けたッ…!? コイツにッ!?)

 啓は一瞬自分が起した火傷や白蛇に噛みつかれた痛みを忘れる程の衝撃を受けた…。

 

 文字通り、先程自身と熾烈な戦いを繰り広げた巨漢の男を…下したというのだこの眼の前に現れた長髭の男が。

 

「…ならば、問答は不要だッ!!」

 金剛山は右腕を拘束で回転させた。

 

 そう、闘粒拳の態勢に入り、その危険な照準を蝋へ向ける。

 

()()()()ッ? それはこっちのセリフだがねッ。」

 すると…蝋の手から白い電気が迸る。

 

「”軽光羅射”ッ!!」

 金剛山が凄まじい速度で撃ちだした闘粒拳ッ!! 

 

 だが、蝋はすぐさま左手で蝋壁を発生させたッ!!

 

 ”ガギュインッ!!”

 高速の回転は蝋の壁に当たる…回転の威力の方が、蝋壁の耐久力を勝り…削りだすが。

 

「やると解っている技程、避けやすいものは無いッ…!!」

 既に空中へ移動していた蝋は金剛山に向かって、白い雷を放ったッ!!

 

 「LAOVOLT”雷蝋(ライロウ)”ッ!!」

 

 ”ピシャアアアッ!!”

 瞬間、港に鋭い雷が金剛山へ落ちたッ…!! 

 

 「グアアアアッ!?」 

 

ッ!?…ありえねェッッ!?」

 啓は大変驚いたッ…蝋の能力はドルドルの実と知っていたが、よもや雷を落とすとは夢にも思わなかった。

 

 (いやッ…驚いてる暇はねェッ!!)

 

「グッ…ヌオオッ!!」

 雷が落ちた金剛山であったが、なんと気合で打ち消したッ‥!!

 

「ほう…本物の雷ではないとはいえ、打ち消すとは…ダイヤは電流を通さないのは本当の話だったがね。」

 雷を放った蝋が空中で関心している中…側方から炎の蹴りが迫っていた。

 

(捕らえたッ…!!)

 啓は態勢を空中で鋭く変えていた。蝋の頭を本気で仕留めるべく、身を焦がす覚悟で”太陽風脚”を纏ったッ!!

 

 ”ドゴォンッ!!”

 熱く燃え滾る鈍い音が響く。当たれば、只でさえ強力な炎の蹴りがより一層強化されているのだ。大火傷は必至の筈。

 

 しかし‥予想は蹴った当人を裏切る事になった。

 

「またッ…かッ、忌々しいわッ!!

 なんと、蝋は啓の渾身の太陽風脚を片手で受け止めていたッ!!

 

(効かねェだとッッ…!?)

 側方からの強襲…意識は金剛山へ向いていた筈。しかし、蝋は啓の攻撃を見事に防御しているではないかッ…。

 

転生の龍ッ!! 今は貴様の相手をしている暇はないがねッ!!」

 そう吐き捨てた蝋は燃え滾る片足を敢えて掴むと、勢い良く啓は港の地面へ叩き投げる。

 

「クソッ…!!」

 啓は地面に激突する前にすぐさま態勢を変え、地面への激突を避けた。

 

 ”ビキッ…!!”

 …突如、地面がひび割れる音が起こる。コンクリートで出来た港の地面がいとも簡単に割れていく。

 

 そして、地面の亀裂と同時に潜んでいた”奴等”が数多の鉤爪を転生の龍へ振るった。

 

「…畜生、なんだッ!?」

 武装色の覇気を発動させながら、敵の攻撃を躱し、いなし、逆に反撃していく。…反撃を受けた個体はそのまま地面に叩き落とされるも、またも立ち上がろうとした。

 

 攻撃を続けながら、啓は襲ってきた正体に気付いた。

 

 「…コイツら、リッカーかッ!?」ドン!!

 

「正解がねッ…ただし純粋なリッカーと違って俺の能力で動いている。」

 

 蝋がそう述べるリッカーの身体は純粋なリッカーの筋繊維剥き出しの色とは違い、所どころに白い付着物がついていた。

 

「そいつらは()()()()()で死んだリッカー…それも損傷が激しくない死体に”蝋子”を加える事で、動かしている只の死体に過ぎん。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そう、このリッカーCBはドルドルの実の能力で動かしている”没人形(マリオ)”に過ぎない。

 

(この髭野郎…そんな事まで出来んのかッ…!?)

 先程の白い蛇や白い雷…果ては死体を操る蝋の芸当に、啓は焦った。

 

「貴様の相手は、その”マリオ”だ…今は貴様なんかより、金剛山に用があるがね。」

 不敵に笑う蝋は、啓の相手をマリオに任せて、金剛山の前に移動し始める。 

 

 何ゆえ、啓より先に金剛山の方へ向かったのか…()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 (金剛山を倒して、μ’sの元へ向かう気だなッ…!!)ドン!!

 

 μ’sとその家族達が居る場所は金剛山がダイヤモンドのシェルタ―で覆っている。つまり、金剛山を此処で倒せば”能力の現状維持”は崩れ、にこ達の身柄は完全にフリーになってしまうのだ。

 

 皮肉な話だが、敵である金剛山の能力が…μ’sを護っている現況になってしまった。

 

「だが、その前に…この雑魚共を倒さねェとッ!!」

 啓は最早咆哮すら叫ばなくなった死体共を相手に、残った体力を再び稼働させた…。

 

 

 

 冊冊冊冊冊冊

 

 一方…~東京港”太洋コンビナート”~

 

 今日一日、たった一日の時間枠で東京港地帯は破壊と蹂躙の限りを尽くされていた。そんな見るも無残な港地帯に…一巨影が静かに港の地面を踏み抜いていく。

 

 ”ズムッ…ズムッ…”

 そいつは重厚な足音を鳴らしながら、悠々と戦場地帯に侵入していた。ガチガチの防具に身を固め、その身体には一片も傷も見当たらない。

 

 だが、最も特徴的なのは…頭部を黒光りの金庫箱で覆っているという事に限るという事だ。しかも、ところどころに有刺鉄線が巻き付かれており、余りにも異形な頭部を世に晒していた。

 

 team”iflit”団員「…今だッ!! ”トリモチ弾”を撃てッ!!」

 そんな中…必死の抵抗を続けていた団員達は、進行するキーパーに対して粘着性の妨害弾”トリモチ”を射出する。

 

 ”べトンッ!!”

 次々と、キーパーへ着弾するトリモチ。四方八方から撃ち、距離を開けた功が為した結果であった。

 

 「デカしたッ…テメェらどいてろッ!!」

 team”iflit”遊撃部隊隊長…”頼瀬 和人”は周囲の遊撃隊団員へ回避を命じた。

 

「くたばれッ…バケモノオッ!! ”ツイン=レールガンッ!!”

 瞬時に頼瀬の両腕が、灰光の双電磁銃へ変形…刹那、引き金を引いた。

 

 ”キュドンッ!!”

 二対の電磁銃から放たれたレール弾は、空気を裂き切っていき、照準の最終着弾地点である”キーパーの両脚”を抉っていた。

 

 だが、これで間髪は入れない。

 

 「今ですッ…副総長ッ!!」

 頼瀬が空中へ飛び上った自身のボスへ攻撃を促した。

 

蒼天流…”蒼い彗星(ブルーコメット)”!!

 上空からの捨て身の特攻…凄まじい空速度を落下する蒼い不死鳥は、狙いの”ドたま”をかち割った。青い炎の衝撃波が辺りを揺らし、地面を引き裂く。

 

 

「フイー…どうだ、ちったあ喰らったかよい。」 

 彗星の落下地点から、蒼い炎を纏った金髪の男が身体を再生しながら現れた。

 

 team”iflit”副総長”蒼羽 浩二”…男の悪魔の実の能力は、トリトリの実モデル”不死鳥”。文字通り、蒼い炎から己を再生出来る稀有な能力でありながらも、飛行能力を有するかなり使い勝手が強い能力だ。

 

 そして、蒼羽の使う”蒼天流”は高い飛行能力と自己再生能力からの二大要素から出発した戦闘方法である。高高度から飛来し、繰り出される蹴りは凄まじい衝力と威力を兼ね備えていた。また、単に飛ぶだけ飛行能力だけでなく好きなタイミングで蒼い炎による”再生”が加わる事で、非常に高い生存能力を持てるのだ。

 

 結果、誰よりも生き残る事に長けてきた蒼羽は副総長としての任を任され、今日に至るまで前総長である金剛山と現総長である炎山を支え、また全次元に名だたる転生者の一人となった。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 「…まだ、息があるな。」ドン!!

 蒼羽は蒼い炎を纏うと、上へ飛び立った。

 

 瞬間…砕けられた地面から大きな金庫が噴出した。

 

 そして、打ち上げられた金庫から恐るべき事が起こる。金属特有の鈍い錆びた音を響かせ、中から大きな両脚が飛び出てきた。更に胴体と両腕が出て、上空の蒼羽を捕えた。

 

 「”ブラック・ラァストゥ!!”」ドン!! 

 キーパーの右振りの殴打が蒼羽の胴体へ当てられた。

 

「グッ!!」

 蒼羽の身体に激痛と衝撃が走った。そうして、今度は地面に叩きられた。

 

 ”ドゴォンッッ!!”

 

「総長ッ!?」

 頼瀬は吹き飛ばされた副総長の名前を呼ぶ。

 

「慌てんなッ!!‥無事だよい。」  

 既に再生を施していた蒼羽はやれやれと立ち上がる。

 …攻撃を受けた瞬間、身体の態勢を崩さない様に姿勢制御を保っていたからだ。普段の戦闘時に空という360度の範囲を飛び回る為に出来るのだ。

 

「参りましたな‥‥やはり、金獅子会のバケモノ()()()()()でも強い奴等ですぜ。」

 

「ああ…異常な怪力と疲れ痛み知らずの体力に剛体、金獅子会の”基本性能”みたいなもんだよい。」

 対峙する金獅子会の”バケモノ”に対して、油断せずそう評する蒼羽。

 

 手練れ達、2人に対して…”金庫の怪人”は、答えるまでもなく…地面に降り立ち、再び攻撃を加えてきたのであった。

 

 

 

 冊冊冊冊冊冊

 

 ~東京港”乱入地帯”~

 

 啓と金剛山の激闘を筆頭に、東京港で勃発した戦闘によって…東京港は灰と黒ずんだ戦闘地帯に陥っていた…。だが、途絶える事無く…またしても戦闘が勃発してしまった。だが、今日の一日の闘いはこれで終りだろう。

 

 何故なら、この事件の首謀者達が戦っているからに他ならない。

 

「闘粒拳”弐戦羅射(サイドライン)”ッ!!」

 金剛山の闘粒拳が、弐本の線として真っ直ぐに蝋へ突進していった。

 

 ”ニホンセン”は大きな切削音を弐つ響かせながら、港地帯を破壊していく。

 

「ほう…これは強烈な線がねな…。」

 対する蝋は、ニホンセンの脅威からボクトウ”蝋紫蛇”を抱え、空中へ逃げ込む。

 

 空中へ逃げ込んだ蝋を鋭い形相の眼で追い、攻撃のタイミングを掴んだ。

 

(今だッ…!!)

 金剛山は先程の啓戦で繰り出した”金剛石の弾丸”を急ぎ精製、照準を蝋へ向けた。

 

 

 「ダイヤブレット”アキシアル・ショット”ッ!!」ドン!!

 弾丸群を分散させた先程とは違い、射出を集中的にする事でターゲットにより強いダメージを与える事に徹した射撃であった。

 

 ”ドドドドドッッ!!”

 一瞬の不安定な姿勢を狙った射撃は、空中の蝋の五体へ見事に当たっていく。

 

(これで倒せないにしても、次の攻撃で蝋を仕留められるッ!!)

 金剛山がそう思った瞬間‥矢先。

 

 

 ”パキンッ…!!”

 金剛山の身体に異変が起こる。

 

「ヌグッ…これはッ!!」

 金剛山が自身の身体が突如白くなる現象を眼と頭と…心で理解したッ!!

 

 

 「やっと…綺麗に回ったがね。」ドン!!

 蝋は地上の金剛山の身体を確認し、邪悪な笑みを浮かべると、そのまま何事も無く降り立った。

 

「蝋…貴様ッッ!!」 

 睨みつける金剛山、近くに降り立った蝋を殴ろうにも…身体が動かせないでいた。

 

「ドゥハハハッ!! そんなに顔を凄んでも、動けんなら効果は無しだがねなッ!!」

 勝負の形勢は一気に蝋へと傾いていた。勝負の流れを理解した蝋は即席の蝋製の椅子に座ると、自分より長身の金剛山へ見下ろす。

 

「ヌゥ…!!」 

 

「…まるで”過去の再現”といったところがねな、この俺に負けたなァ!!」

 

「…!!」 

 そういうと、金剛山の脳裏には…あの光景が蘇った。それは今も忘れぬあの屈辱の敗北…。あれの敗北を以って、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「しかし、金剛山…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そのせいで()()()()()()()()()()()()がするがね。」

 

 そういうと、蝋は自身が防いだ金剛石の弾丸を持ちながら発言する。

「先程のダイヤの弾丸も、能力で作ったというよりは…これは天然のダイヤモンド、こいつを食って足りないエネルギーを補給していたという訳だ。」

 

 

「…ああ、貴様の所為でなッ!!」

  ”バキンッ!!” 

 

「なにィッ…!!」

 突如の事に、蝋はうろたえた。なんと、自身のドルドルの実の力で固めた巨漢が動き出したのだ。

 

「俺を以前の様に思うなッ、”蝋 家龍”!!」

 金剛山は普段身体の外に出している闘粒拳の元である、ダイヤモンドを身体の内部から切削し、蝋を削って超怪力で動かしたのだ。

 

「ま、マズイ…接近し過ぎたがねッ!!」

 

「あの時の借りは、今日此処で返して貰うぞッ!!」

 金剛山は右手から闘粒拳を直接撃ちだそうとした。

 

 「”因小失大”」ドン!!

 蝋はそう金剛山に告げると、なんとものの一瞬で金剛山を固めた。

 

「なッ…!!」

 余りの一瞬の事に、金剛山は眼を疑った。先程、破り終えた筈のドルドルの実の力がまたも身体に跳びついたのだ。

 

 ”ガタンッ!!”

 物音を立てて、崩れる金剛山の身体。

 

 そして、ゆっくりと近付く蝋。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」ドン!!!

 

「…!!」

 

「俺はな、より良い作品を作るためには…あらゆる手段や機会や世界を逃さんと決めたのがね…。」

 少し陰の掛かった顔で喋る蝋。

 

 「さて、…今度こそ貴様を”金剛力士像の阿型”として成形させて貰うがねッ!!」

 そういうと、蝋はボクトウを振り回し…動けない金剛山の身体に照準を合わせた。

 

 

 ”ベヂンッ!!”

 突然の事であった。蝋の身体に向かって、謎の投擲物が当たったッ!!

 

「ヌッ…これはッ!!」

 ボクトウで衝撃を防いだ蝋。だが、それよりも重大な事実に意識が向く。

 

 「リッカーCBッ!?…バカな、もうやられたのかッ!?」ドン!!

 

 ?「そうだッ!!」

 蝋の声に応じる漢が…空中から、丸めた肉塊が蹴りだした。

 

「貴様…!! ”転生の龍”ッ!!」ドドン!!

 

 「そいつはな…俺達の獲物なんだよッ!!」ドドン!!

 

 

 冊冊冊冊冊冊

 

 同日某時刻…東京港”乱入地帯”

 

(桐生…まさか、あの高温状態でBOWを倒したというのか。)

 金剛山は固まった身体で、乱入してきた啓へ驚きの感想を心へ漏らしていた。

 

 そして、話は…転生の龍こと”桐生 啓”と蝋害こと”蝋 家龍”へ移り変わる。少し、苛ついた顔を見せる蝋に対して、啓は視線を真っ直ぐに蝋を見据えていた。

 

「随分、遅くなったが‥テメェが本物の”蝋 家龍”の様だな。」

 啓は一昨日の音乃木坂で出会った”蝋 家龍”が偽物の贋作蝋人形だと、金剛山から話されていた。

 

 そんな、見つけたと言わんばかりの啓に対して…蝋はその応じに答えずに、ありのままの苛つきをぶつける。

 

「貴様…俺の邪魔をするというのがね?」 

 

「テメェがそれをいうのか…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、長髭ヤロウ。」

 

「決闘?…ドゥハハッ、μ’sを奪う戦争に決闘などしている暇はないだろうがね。」

 心底真剣な啓の発言に対して、嘲笑う蝋。

 

 

「その物言いの割には…何も得られてねェ。」ドン!!

 

「なにを…?」

 

「テメェの目的は蝋人形だったな…だが、今この時点で()()()()()()()()()()()()()()()()()()? 違うよなッ…!!

 

「作品を作るどころか、味方を失ったッ!! ‥現に金剛山を蝋人形にするのを邪魔されたのが良い例だ。」

 

 啓がそう言い終えた時、蝋は高笑いをした。

「ドゥハハッ…成程がねな、この俺に大口を叩くと言う事は…。」

 

 

 「今、此処で闘うというのがね…その消耗した残りカスの体力で。」ドン!!

 

 「そのつもりで来たんだよッ‥!!」ドン!!

 駆けだした啓は両手に赤い武装色の覇気と両脚の”太陽風脚”を一気に爆発させたッ…!!

 

「テメェをμ’sの元へいかせねェッ!!」

 高速回転した啓は、燃え滾る右脚を蝋の顔面へ蹴り込んだッ!!

 

「良いだろう、死にぞこない…いや、要死(死にたがり)がァッ!!」

 片手でボクトウを振るう蝋は、右手を蝋剣へと変え、啓を切り込もうとするッ…!!

 

 かくして、互いの攻撃が東京港に於ける最後の闘いへともつれ込んだッ!!

 

 ”ガキンッ…!!”

 

VS蛇蝋”総統” ”蝋 家龍”

♪-Ogre Has Returned

 

~蝋をμ’sの元へ近付かせるなッッ!!~

 

 両者激突…!!

 蝋剣の白刃が煌めき、啓の灼熱の蹴りが相殺し、赤と白の衝撃波が発生し…荒廃した港を揺るがす。

 

 啓も蝋も、互いの攻撃が同様に防がれた事により、両者は一度距離を置いた。特に今の啓は先程のツインデザートイーグルに覇気を詰め込むよりも、直接近接攻撃を叩き込む戦法に切り替えていた。それはいくら、離れて撃ってたとしても…銃弾で勝てる相手で無いと判断している他ならない。

 

 …しかし、啓と違って悪魔の実の能力者…しかも”ドルドルの実の転生者”である蝋には攻め手がある。

 

「攻め手を欠いたがねな…!! ラオアーツ”苦無”ッ!!」

 即席で、蝋性のクナイを能力で生み出していく蝋…ドルドルの実の能力の強みの一つは、即席で武器が造れるという事にあった…殺傷能力のある武器を収納せず、好きなタイミングで使えるというのはかなり便利である。

 

 しかも…手に取って投げずとも、撃ちだす事が出来た。

 

「串刺しになるがねッ…!!」

 多量に生み出したクナイを、移動する啓の進路咆哮に向かって撃ちだした。

 

「チッ、防ぐしかねェッ!!」

 蝋を攻撃する為に、眼で追っていた啓は、対応すべく両手の覇気を赤く光らせたッ!!

   

「”指斬”ッ!!」ドン!! 

 

 ”ザンッ…!!”

 赤く発光した啓の指先は瞬時に赤い剣先へと変化し、襲来するクナイ群を纏めて処理され、クナイはその切っ先から割れていった。

 

「おおゥ…俺の苦無を一瞬で割れるとは凄まじい膂力がねッ。」

 蝋は啓の”指斬”に対して、少し感嘆した声を述べた。

 

「俺はさっきの闘い(金剛山戦)で、硬い敵との闘いは少しは学んだッ!!」

 啓はそう叫ぶと、蝋へ飛び掛かったッ…!!

 

(時間はあまりねェッ…!!これで多少なりとも、奴を弱らせてやるッ!!)   

 

 ”太陽風脚”は現在の啓が扱うには、まだ十分なレベルに達していなかった。

 

 …啓はこの短い期間で難敵や数多くの敵と戦い、勝ち取り…転龍会会長の技に負けそうになった事もあった。…だが、自身の技を研鑽する時間が全くといっていい程無かった。戦い以外の時間は休息や作戦等のものであり、技の修行と言えば、神のおっさんと夢の中で修行をしたぐらいで‥肝である”六大武術”は転龍会会長に封印されて、修行以前の問題となった。

 

 つまり、今の”太陽風脚”は遥かに強力な技な分…今の啓が扱えるには早い技でしかない、太陽風脚が生み出す高温高熱の環境に啓は苦しんでいるからだ。それは技というよりもRPGでいう状態異常をセルフで起こしているに過ぎないのだ。

 

「…太陽風脚”レイン・ストーム”ウウウッ!!!」

 啓は自ら高速回転すると、金剛山を追い詰めた蹴り技を今度は蝋の懐へ繰り出した。

 

 人力で回る炎の嵐は、もうすぐで憎き蝋へ当たろうとしているッ…!!

 

 

 

「ハイローラー”riwax(リワックス)”ッ!!」ドンッ!!

 蝋は体内の蝋エネルギーをローラースケートの様に精製すると、ローラーの滑走力を駆使しながら啓の”炎の嵐”を避けきったではないかッ!?

 

「なにッ!?」

 啓は蝋が自身の蹴り技を避けたのを理解すると、すぐさま太陽の脚を解除する。

 

(馬鹿なッ…太陽風脚は俺の速度を上げる”青の覇気”も使ってんのに…避けれるのかッ、あの長髭野郎は!?)

 そう…太陽風脚には青い覇気の発動が必須であり、太陽風脚発動後も技が敵に当たる様に…以後も継続して使っているのだ。それにより、啓の移動速度も上昇する分…動く敵にも命中率が上がる筈だが…。

 

「ドルハハッ!! 蝋は…()()()()()()()なんだがねッ!!」

  

「つまり‥よおく、滑るんだがねッ!!」

 精錬されたローラーによって、荒れ果てた港地帯を滑走する。それも本来なら、滑れない筈の凸凹とした地面に蝋を振りまく事で可能としていた。

 

「チッ…!!」 

 啓は辺り一面が白くなった事に気づきながら、素早く姿勢を正すと…蝋へ向き直ったッ!!

 

 

「遅いッ‥”ラオ・センフー”!!」

 

 ”ドヌッ!!” 

 啓の五体に刻まれる”蝋蹴り”…蝋は啓の蒼い覇気とは別に、…ソールへ”ワックス”を発動させることで潤滑性を手に入れた。それにより、啓と同様に速度を増した体技を得たのだ。

 

「ガホッ…!!」

 啓は蝋が攻撃する前に武装色の覇気を纏ったが、当たり所は人体に肺を収めた胸郭部分へ深い蹴りが入った。しかも、金剛山よりは硬度が低いにしても…鉄製を超える”蝋蹴り”…結構強力である。

 

「駄目押しの”聯合踢(れんげり)”ッ!!」 

 更に蝋は、啓へ最初の蹴りを与えたと同時に‥両脚を高速で動かしながら蹴りを入れた。しかも、今度は足裏に”蝋製スパイク”を付けた凶器攻撃であった。

 

「…!!」

 啓の身体に棘をかたどった蹴りが叩き込まれた事により、啓は激痛を受けたッ…!!

 

「…グウッ!!」

 蝋の蹴りを敢えて利用して、なんとか逃れて反対へ移動する。

 

 しかし、蝋は攻撃を止める筈が無く、差し迫っていく。

 

「そっちの方向へ逃げる事は…覇気で読んでいるがね。」

 ”パチンッ…!!”

 そうして素早い指パッチンと同時に、蝋は蝋片を周囲にバラまくと…蝋は小さな刃片へと変貌。

 

蝋葉斬舞(ローハザンマイ)ッ!!」ドン!!

 発動した蝋の号令と共に、啓の身体に微小な刃片が貫いていったッ!!

 

「チィッ…!!」

 鋭い破片が刺さっていくと同時に、啓は緑の覇気を発動させ、攻撃を跳ね返した。そうすることで破片の被弾率を多少下げる事に成功するが…更に体力と覇気を削られてしまう。

 

(クソッ…こいつの攻撃、展開と変則が厄介だッ…!!)

 対峙する蝋の闘い方に”龍”は少し舌を巻いた。

 

 次々と蝋製の武器を創るだけでなく、蝋の特性を利用したワックスなども使い分けるなど多岐に渡る蝋の戦法は…かなり厄介だ。

 

 ”蝋は災厄の転生者と呼ばれた転生者です…。”

 昨日の黒の化身との戦いの後、隆から告げられた蝋という男が”災厄”と冠した転生者と聞かされ、これまで闘って来た転生者とは一線違うような印象を啓は受けた。何せ、わざわざ”災厄”と恐ろしい言葉がついているのである…警戒しない方が可笑しい。現ににこ以外を除いたμ’sを出来るだけ、現場に来させなかった。

 

 だが…まさか金剛山との闘いに割り込むとは…。そんな…鬼気迫る蝋の攻撃の前に…啓は戦いながらある疑問が頭に思い浮かんだ。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ()()()()()()()()()()()()だからこそ…啓は冷静に冷静を重ねてせめて、頭の考えだけでも冷やした。苦しい時だからこそ、冷静に対処にしなければならないからだ。

 

 その甲斐あって…啓は蝋のこれまでの所在が気になり始めた、戦闘中に最早考える事では無い筈なのだが…蝋相手にむやみやたらに技を繰り返しても、意味が無いと判断したからだ。だが、ここで焦って攻撃をするよりも、先ずは敵の事をよく知らなければならない…技だけでない。その日行動した敵の動きを知る事も重要なのだ。

 

(そうだ…先ず落ち着け、”桐生 啓”。焦って攻撃するよりも回避して少しでも生き延びる。技は…避けりゃいい。)

 啓はそう考えるやいなや…なんと”太陽風脚”を解除した。

 

 燃え盛った炎は瞬く間に鎮火し、啓は()()()()()()になったのだ。それを見ていた蝋は怪訝な顔になった…。

 

(この餓鬼…あの炎の足を止めただと。)

 それまで、自分以上に燃え滾っていた龍が鎮火したどころか…全くの棒立ちに驚いたと同時に苛立ちが生まれた。

 

「貴様…散々痛がったのにいよいよ棒立ちがねかッ? 最近の転生者は諦めが早いがねなッ!!」

 蝋は最近の若い奴はと…年寄り目線の批判を浴びせると、棒立ちの啓に向かって高らかに笑った。

 

 

「黙れ‥いいから、好きなだけ打ってきやがれェ。」ドン!!

 

「!!」

 啓の突然の挑発に、それまで高らかに笑っていた蝋はボクトウを構え直した。

 

「その物言い…余裕が感じ取れるッ…全く気に入らんツ!!

 吐き捨てた蝋は両手を翳すと大気に蝋を精製すると、啓へ向かって投げつけた。

 

「ラオアーツ”痛身球ッ!!”」ドン!!

 全方位からの蝋製の針を球状に啓へオミマイする。当たれば即死…人体に余りにも過剰過ぎる穴が出来てしまう。

 

  

 …だが、当たればの話…。

 

「そこだッ…!!」

 啓は狙いを定め、自分に対して目掛けてきた針を逆に破壊し、針の抜け道を通った。啓の攻撃によって、破壊された針は即座に地面へ落ちていく。

 

「あれ程喰らったのに、まだ動けるがねかッ…!! しつこい餓鬼めがッ…。」

 驚きもあるが…啓に対してしつこいという感情が出始めた蝋を尻目に啓は戦闘中に閃きを得ていた。

 

(やはりそうだッ…”太陽風脚”を使うよりも、動きが良くなった。そうだッ、いくら強力な技を繰り出すだけじゃ勝てねェんだッ”闘い”はッ…!!)

 

 転龍会会長に”五大武術”を奪われた啓は、黒の化身”悪魔風脚”を倒し、奪われた足技を取り戻した。

  

 その発展系として得たのが”太陽風脚”…だがそれでも金剛山や蝋を倒すのに至ってない。蝋や金剛山も目的を達していないが…啓もまた目的を達しているわけではない。強力な技を以ってしても、どうにもならない事がある。

 

 その…”どうにもならない時”に頼りになるのは何か…それは貴方も持っている”考える力”、これこそが最も大切なのだ。人間は考える事で問題を解決してきた。勿論、啓もその一人だ。

 

 啓は”太陽風脚”を解除したことにより、それまで熱かった熱源が消失し…少しの時間でも”熱が冷えた”事で考えが纏めれる様になり、蝋の攻撃や考察に意識が回る様になったのだ。その結果…回避の力”見聞色の覇気”が適切に発揮され、攻撃の抜け道を探ったのだ。

 

 

「どうした、”蝋 家龍”? もう、終いかよッ?」ドン!!

 

「ぬッ…しつこい死にたがりがァッ‥!!」

 蝋は歯をカチカチッと苛立った音を鳴らした。啓も万全とは言えないが…蝋もまた万全とはいえなかった。

 

 そんな中、啓は蝋に対して指を指した。 

「蝋ッ…!! テメェには吐かせてェことがある…今まで居た場所や他の仲間がいるかも気になるが、敢えて2つだけ言うぜ。」

 

「テメェの能力…()()()()()。」

 

「…!!」

 

「それに加えて…もう一つ、()()()()()()()()()()()()()()()。」ドン!!

 

「テメェと俺はまだ遭ったばかりだ…だが俺の持つ”見聞色の覇気”からテメェからは常に苛立ちと焦りを感じる。高笑いしている割に…何故だッ?」

 

「‥‥ドゥフフフ‥‥ドゥハハッ!!!!

 啓の二つの言葉…自身の能力が弱っている事と啓自身を誰かと見立てているということ、そんな二つの言葉に対して只高らかに笑う蝋。その胸中は今だ明らかにならないが…表情は露わにした。

 

 

「やはり、()()()()()()()()()()、貴様は”生气勃勃”だがね…”桐生 啓”。」

 

「なにッ・・。」

 蝋の怪しげな態度に、眉間に皺を寄せながら…啓は次の動きの為にしばし小休止しながら、蝋の出方を警戒する。

 

 蝋はボクトウを啓へ向けると、こう言い放った。

「桐生よ…俺を最も苛立たせた存在は何か…()()()()()()()()()()ッ?」

 

 蝋の問いに対して、、、答えを出さなかった蝋と違って啓は即座に答える。

「俺とテメェと同じ…”転生者”か?」ドン!!

 

「即答だが…正解、敵は俺と同じ”転生者”だったがね。」

 

 

転生者というのは…どいつもこいつも浮かれていた。なにせ人智を超える力が特典として手に入るからだ…先ほど死んだ癖に、妙に生き生きとしている存在…それが転生者だ。」

 

「かく言うこの俺もそうだったがね。」

 

「…。」

 蝋の言葉を前に、啓自身も神のおっさんから授けられた”六代武術”や”覇気”や”白ひげの薙刀”を手に入れた時の気持ちを思い出していた。あの心と拳と足への高まりは何にも代えがたいものであった事を…。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

「そう…この俺の芸術を邪魔をしたのは、同族の転生者だった…。」

 蝋は手から蝋細工のリアルな蛇の像を生み出した。

 

「俺の芸術を理解するどころか…無視を決め込め、俺を殺そうとする連中ばかりだったがね。」

 そういい終えると…

 

「笯咆咆咆咆咆咆!!!」 

”ボトッ…ポトポトッ…”

 突如…蝋は突如大粒の涙を流し始め、鼻から蝋混じりの鼻水を出した。それはまるで普段からせき止めている感情を自ら決壊させて、流しているようであった。

 

(こいつ…突然泣きやがった。)

 啓は冷や汗を垂らした…たった先程自分を殺すべく、凶器を投擲し、腹に思いっ切り蹴り入れ込んだ大男がまるで子供のように泣き喚くのに、変わりように驚いていた。

 

「俺は俺自身の芸術の為に、一切の出し惜しみもしなかった…だがなッ!! あろうことか、周囲に呼ばれたのは”災厄の転生者”ッ!!」

 

「なにがッ災厄かッ…!! 俺の芸術は永遠の美ッ、これ以上ないほどの幸福なのだがねよッ!!」ドン!!

 蝋はそう言い切った…自分の行いは、他者を幸せに出来ると本気で信じておりそこに議論の余地は蝋自身へ届かず…まるで蝋のごとく不変の価値観となっていた。まさに常人の入り込めない狂人とはこのことだ。

 

 涙を流し、感情をヒートアップさせる蝋…そんな蝋と比較して啓は冷静に蝋を睨みつけていた。

 

「物は言いようだな…俺から言わせれば、”快楽殺人”だな。」

 

「そうッ!! 俺はな、桐生…お前の様な正義感を振り回す連中を返り討ちにして、蠟人形となって貰ったのだッ!!」

 

「俺の価値を認めぬなら…()()()()()()()()()()()()()()()()()()() ドゥハハハハハハッ!!」

 

「只、うんこして食うだけの怠惰な日々ではなく…意識を毎日毎時毎秒、全ての意識が美へと集中できるッ!! こんな素晴らしい日々はないぞよッ!!」

 蝋は自身の美意識を啓が聞く耳を持たないにも関わず、気持ちよく述べて、またも気持ちが高まって笑っていた。…狂人は毎日毎夜狂人なのだ。

 

「そうやって…自分より弱い人間を蠟人形にしてきたのか、いつまでも気が狂えそうだなテメェはッ…!!」

 啓は覇気のビートを上げていく…思いのほか、小休止を得たことで啓は蝋を攻撃しようと行動に移す。 

 

 

 

 

 

「ひとつ…良いことを教えてやるがねッ。」ドン!!

 蝋は先ほどの泣いているのが、昔のことの様に…瞬時に感情を切り替えた。その笑みはしてやったりという顔だ…。

 

「俺の能力…ドルドルの実は”戦闘”よりも”芸術”に重きを置くものだ。…そのうえで、俺がどれだけ万全であってもッ!!」

 

 

 

「俺に勝てそうな奴とは…初めから真剣に戦わないッ!!」ドン!?

 

「なんだとッ…!! テメェまさかッ!!」

 

「そうッ…俺は偽物だッ!!」

 偽物はある方向を指さしたッ…!!

 

 そう、その方向こそ…にこ達がいる金剛山のシェルターであった…。

 

「ドゥハハハッ…俺は物質型超人系の中でも、”別離行動”を得意とする転生者なのだッ!!」

 蝋は最初から啓と金剛山と戦う気ははなっから無かったのだ。

 

 いや、厳密に言えば…蝋が繰り出した”白い雷”から入れ替わったのだ。

 

 旧第3倉庫で互いの目的を遂げる為に、本気の決闘を繰り広げた”二匹の漢”…。

 

 そんな決闘である、…他者に入り込む余地がある筈がない。

 

 …ところが、蝋はそんな事をお構いなしに入り込んできた…。もし、啓対金剛山の戦いに割り込むような敵であれば、即ちそれは文字通り”本気の転生者二人”を相手にするという事である。

 

 しかし、前途の通り…蝋には関係が無かった。何故なら、介入するのは…蝋本人ではなく、自身が作り出した精巧な偽物だからだ…しかも、自分の命令通り素直に従う偽物。これ程のうってつけの人材はそうはいない。

 

 更に極み付けが、乱入した蝋に対する()()()()()()()()だ。どちらもそれぞれの組織に属し、尚且つ今日の戦いの中で最も大事な局面を任された身。それでいて、啓と金剛山は敵同士でありながら…二人の男の中には、敵に対する敬意も生まれようとしていた。

 

 それは、闘う男達にとって…これ以上ない喜びに違いない。それを乱入者に邪魔されるという事は…怒りは当然沸き起こり、更にそいつがこの戦いに於ける”黒幕”であるなら、猶更だ。

 

 …かくして、乱入した蝋に対して、啓と金剛山は不逞な輩を仕留めるべく…蝋を攻撃した。

 

 それこそが…()()()()()であった。攻撃されても、痛くもない蠟人形を生み出し戦わせ…自分は気づかれることなく、シェルターへ接近する。それが蝋の狙いであった…。

 

 

「チィッ…近づかせるかッ!!」

 啓は青い覇気を発動させるが…。

 

「無駄がねッ…ラオ・アーミズ”ヘーバ・蝋”ッ!!」

 蝋の号令と共に、地中から…古代中国の兵士が白い装備を身に着けて、這い出てくる。

 

「まだッ、敵を出せるのかッ!?」

 構える啓…自身の周りを、白い兵隊を取り囲んでいく。

 

「ドゥハハッ…!! どうせ、そいつは殺せんッ!! 時間稼ぎをしろッ!!」  

 蝋の合図と同時に、白い古代中国の兵士が啓へ武器を向け、襲い掛かってきた。

 

「邪魔すんじゃねェッ!!」 

 大勢の敵の襲来に心底腹を立てた啓は、地面を踏み鳴らすと…一昨日の澤井組と蛇蝋の同盟軍の意識と武器を破壊した赤い覇王色の覇気を照らし出したッ…!! 

 

”ズオオオッ…!!!”

 啓の身体から赤き覇気の嵐が周囲を勢い良く噴き出された。それによって、覇気に当てられた蝋兵達は瞬時に砕けていった。

 

「ドゥハッハッハ…いくら活き込んでも、壊す相手を間違っているがねッ!!」

 

「それによォ?…偽物とはいえ、()()()()()()()()()()()!!」

 偽物の蝋は、手を緩めなかった…いくら敵が一人だとは言え、啓は大勢の敵を立ち回って戦い抜いた漢だ。

 

「ラオアーツ”スベル・ドラゴン”ッ!!」 

 蝋は瞬時に、白い獰猛な龍を精製すると…勢い良く啓へ向けて射出した。

 

 

”ザグンッ…!!”

 

 

 ~金剛山のシェルター近辺~

 

「フゥ…回り道した甲斐があったというものがね。」

 一方…啓が本当に倒さなければならない…本物の”蝋 家龍”は白い雷を仕掛けた後…穴に入り込んでいた。そう、あの雷は金剛山を攻撃するだけでなく、シェルターへ近づく為の穴を作ることこそが本当の狙いだったのだ…。

 

「まったく、血の気を多くする馬鹿は御しやすい。クックック…。」

 白い雷で周囲を眩くした後、瞬時に自身そっくりの偽物を精製させて、その偽物に戦闘を任せたのだ。

 

 その間、気付かれないように穴を掘り続け、ついにシェルターまで近づいていた。その穴を掘る行動にしても、重機械を使用したとしても長時間の作業になることは間違いないだろう。そんな重労働を一人で進めれるというのは、流石は”災厄の転生者”といったところか…。

 

(それにしても、たまらんがね…この先に()()()()()()()が集まっているッ!!)

 蝋はそれはもう、周囲の人間が引くほどの舌なめずりしながら、醜悪な笑みを零した。

 

 敵対組織との同盟関係、五桁を誇る構成員と大量の武器、金獅子会のB.O.W…そして、当然自身の”ドルドルの実の能力”の力。それらを搔き集めて、ようやく手に入れるところまできた。

 

 それ程の手間を掛けても…この世界に於けるμ’sの価値は蝋にとって最上級の素材だった。

 

 μ’sをあくまで、芸術品として第一に考えている”災厄の転生者”…”蝋 家龍”。今、その凶悪な両腕を持ってして、シェルターを壊そうとした。

 

「さぁ…この世界の国宝を俺の手にッ!!」

 蝋は武装色の覇気を発揮し、拳でシェルターを壊した。

 

”ズンッ…!!”

 今ここにシェルターが壊れた。

 

 

 

 

「・・・手応えがない。」

 野望に燃える芸術家は…独りポツリと呟いた。

 

 馬鹿な…可笑しい、いくら武装色の覇気を纏ったとはいえ、、、己が知る限り物質型超人系”キラキラの実”の硬度に関して言えば、最高クラスのもの、それが単なる武装拳で壊れるのは些か可笑しい。

 

「それに全く…物音がないがね。…まさかッッ!!!

 蝋は素早く動作に移った。無論、完全に自分が通れるスペースの穴を掘る為だ。

 

 そうして、物の数秒で通路を貫通させた蝋であったが…振り絞った声は喜びの声ではなかった。

 

 

「…なぜμ’sがいないがねッ!!」ドン!?

 振り絞った声は怒声であった。居るはずの女神、手に入れる筈の女神…その女神が突然に姿を無くしていた。

 

「この短時間でここから逃げ出したのかッ…どうやったというがねッ…!!」

 蝋は地団駄を踏みながら、周囲を見渡す。イライラする蝋であったが、苛立ったところで自身の目的は達成できやしない。

 

「隙ありだッ…蝋ッ!!」ドン!!

  

「…!?」

 即座に振り向いた蝋の頬へ強力な一撃が抉られたッ…!!

 

「闘粒拳”直接羅射(ダイレクトライン)”ッ!!」

 

”ゾリュウ…!!”

 飛ばさない闘粒拳…高速で回転する金剛の粒子は仇敵の顔面を削り取っていく。

 

「娜迦啊!!…堂宇宇ッ!」

 蝋は自身の頬が完全に削らされる前に、まだ十分に身体が動かせたので、そのまま上部に向かって即興で精製した蝋性の槍で穴を開けると…即座に逃げ出した。

 

 

 

 

 冊冊冊冊冊冊 

 

 ~東京港”旧第三倉庫跡地”~

 

 地下のシェルター跡から、飛んで逃げ出した蝋はそのまま膝を付けると、削れた頬を抑えながら歯ぎしりした。

 

「あの死にぞこないのド三流がァッ…!! この俺の頬に傷をつけやがるとは…!!」

 

「その…()()に傷を付けられたのは貴様はどうなんだッ…?」

 すでに後ろには、金剛山が蝋の元へ追いついていた…。 

 

 

「ドウゥ…その落ち着き様、、、μ’sを移動させたなッ…!!」ドン!! 

 

「その通りだ。」ドドン!!

 鋭く気付いた蝋の問いに対して、金剛山はさも当然の様に言ってのけた。

 

「俺も貴様が()や得意とする”分離”が使えてな…。」

 そう、先程の啓との決闘の前半戦で使っていた”ハーフ・カット”という分身技の事だ。

 

「俺はそこから応用して、”人型の分身”だけでなく…”遠隔操作可能の球体”を生み出し、操作出来る。()()()()()()()()()()()

 

「ギイィ…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 …金剛山は啓と本格的に闘う前にシェルターでμ’sを覆った。それは啓と自身との決闘に巻き込むだけでなく、万が一他の敵に狙われた場合、攻撃を防ぐだけでなく、逃げれるように考えられていた。現に今回の戦いは啓達と転龍会だけでなく、蛇蝋や金獅子会も参戦しており、μ’sが襲われる可能性は充分にあった。だからこそ、ダイヤモンドごとき硬いシェルターへ、さらに移動できるように能力を加えていたのだ。

 

「今回の戦いは金獅子会や蛇蝋(お前ら)がいたからな…μ’sは転龍会にとって、この世界で最も価値のある女達…死んで困るのは、()()()()()()()()()()()()()だからな。」

 そう、言ってのける金剛山…対して、蝋は念願のμ’s奪取にことごとく邪魔をされ、苛立ちが解消されていない。

 

 しかし、蝋は金剛山の身体を見て口を開く。

「ドウゥ・・・・だが、金剛山よ、大分無理しているがねな。」

 

 蝋は金剛山の今の身体を指示した…。

 

 ”パキッ…パキッ…”

 巨漢の金剛山の身体は、蝋のドルドルの実の攻撃から次第に蝋片が侵食されていった。普段の屈強な体は時間が経つごとに自由な動作が奪われているのだ。…先程の闘粒拳”直接羅射”も身体の組織が蝋へと移り変わっている為に、粒子を上手く出せなくなっている。

 

「…貴様は紛れもない”災厄の転生者”、無傷で済むと思ってはおらん。」

 

「ドゥハハッ!!…なんなら、今戦えばどうなるかッ、結果は見えているがねなッ!?」

 対して、蝋は拳の頬を削られたとはいえ、金剛山と比べるとまだ戦える。それは先程の炎山との戦いの疲れを差し引いてもだ。

 

「フンッ…無傷で済まなかったが。」

 金剛山は拳を握り締める。

 

「敗北で済むつむりは毛頭あリャせんッ!!」ドン!!

 

 

 

「待ちやがれッッッッ…!!」ドドンッ!!!

 突如、対峙する”蝋対金剛石”の前に、際立った漢の声が静止の叫びを響き渡らすッ…!!

 

 声が響き渡る内に、両者の前に二つの物が転がり割り込んだ。

 

 ”ゴロンッ…!!”

 

「…こいつはッ!!」

 両者の内の一人である蝋が声を真っ先に挙げた。

 

 それは転がったものの正体は、二つの首だった。

 先ほど、啓に襲い掛かった白い竜の首と…偽物の蝋の首だった。どちらも、敗北の表情を晒していた。

 

「…また、()()()()()()()()()()。」

 一昨日の音ノ木坂白いドーム事件で、金剛山に首を捩じ切られたことを踏まえての発言だ。

 

(馬鹿な…まだ闘えるというのかッ)

 蝋は一人内心呟いた…。

 

 自身が作り出した贋作蝋人形が攻め込んだ”音ノ木坂白いドーム事件”から今のこの瞬間に至るまで、”桐生 啓”は決して簡単に倒せない敵と戦った。疲れが溜まり、傷ついている…。

 なのに、この気迫はなんだというのだ。

 

 啓の身体は、覇気と熱気が合わさったのか…ドス赤いオーラが可視化される程であった。人体に疲労が備わってしまっている以上…すぐにでも休憩しなければいけない。

 

 …だというのに、そんな弱りを感じさせないほど…自身へ牙を向いていた。まるで気迫は落ちておらず、まだまだ健在なのだ。

 

(今の今まで、大勢の転生者は俺の作品となった。…だというのに、こいつは俺に怯みすらしないがね…。)

 

 そんな中…啓はぶっきらぼうに言った。

「ッたく…テメェらは俺を怒らせるッ。」

 

テメェの都合しか考えねェ誘拐野郎共と会話にならねェ阿保芸術家…テメェの要求を通してねェならッ!!

 破けた服をかなぐり捨てた…啓はこういった。

 

「纏めて…掛かって来やがれッ!!」ドン!!!  

 そう言いのけた。

 

 啓の口から出されたのは”混戦”であった。決闘を邪魔してまで、μ’sを奪おうとした蝋を含めた物言いだ。

 

「確かにな…こうなった以上、どの勢力が己の要求を通せるか…明暗をハッキリさせる必要があるなッ!!」

 啓の”混戦要求”に応じた金剛山は啓の言った意味を理解した。

 

 結局のところ、啓にしても、金剛山にしても、蝋に至っても、まだ完全な”戦闘不能”となっていない。なれば、敵をぶっ倒さなければ終わりは見えやしないのだ。

 

「ヌ”ン”ン”ッ!!!」

 最後の最後まで戦う意思を固めた金剛山は…文字通り能力で身体を硬化し始めた。”全身硬化”…キラキラの実の能力の最大の強みである硬さを惜しげもなく披露した。

 

(なんだ…()()()()()()()()()()()()()()

 …先程の戦闘でキラキラの実の弱点に、身体を硬化すれば身体の筋組織もダイヤモンドに入れ替わる為に、人体の滑らかな動きは出来なくなる。啓が面と向かって、指摘した訳なのだが…。

 

 

素粒拳(そりゅうけん)がねか…この俺と戦った時にも使った拳法か。」

 蝋は金剛山の固まっていく身体を見て、言い放つ。

 

(素粒拳…!!)

 

「そうだ…闘粒拳の原型となった拳法だ、闘粒拳は対人よりもむしろ敵地制圧や大乱戦向けの制圧の拳。なれば、素粒拳は対人戦闘向けの拳法。爆発的な威力は闘粒拳より劣る。」

 

「だが、キラキラの実の真髄は…身体を固めることにある。攻撃に能力を省く闘粒拳と違って、必要な部分にだけ能力で効果出来る。その意味が分かるな、桐生よ?」

 

 金剛山の問いに対して、啓は応じた。

 

「成程な…動作に関わらない皮膚だけに能力を使えば、全身に能力を掛けたまま動けるって訳か。」

 そう、素粒拳の強みは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのだ。常に硬いまま動ける元来の金剛山の戦法であり、それを応用し、より必殺の一撃と昇華させたのが、”闘粒拳”になる。

 

「おもしれェッ…そんな奥の手があるとはなッ!!」

 啓はニヤリと笑う。自身を苦しめた相手に対して、まだまだ好戦的な表情を魅せる。

 

 そんな中…蝋だけは違った。

 

(馬鹿か、こいつらは…全く引くがね。)

 二人の男達に対して、心底見下していた。

 

 現在の蝋にとっては、戦闘は二の次であり、第一の目的は芸術ともう一つの目的にある。だからこそ、戦闘を心から楽しむ二匹のオスの考えに共感するどころか、否定的な姿勢だった。

 

(…だが、この状況はチャンスがね。俺一人で金剛山や桐生を倒すより、混戦なら労力を半分に減らせる。)

 

「まあいい、なら決着を付けようがねか…。」

 蝋はボクトウを構えて、臨戦態勢に入った。

 

 蝋の構えをみた金剛山は内心呟いた。

(やはり、喰いついたか…蝋にとってもこの状況は美味しいらしいな…。)

 

「じゃあ…おっぱじめようぜェ、この戦いの幕引きを…!!」

 啓は一気に覇気と熱気を噴き出した。

 

 それと同時に、金剛山と蝋も覇気を噴き出す。

 

 ”転生の龍”か”天山角”か”災厄の蝋害”か…様々な混戦を交えて、”三勢力の代表”が今激突すッ!!

 

 

 

 

 

 …しかし、それはある人物の予想外の事態であった。

 

 ~東京港近海”蝋獄島”~

 

?「…やべェ、寝ちまったか。」ドン!!

 

 続く。

 




今回の話は、特に蝋というキャラを詳しく書きたくて長く書きました。災厄の転生者という異様な実力を持ちながら、モットーとしてはモリアの”他力本願”。平たく言えば、自分の実力を信じていないという事です。それに対して、啓は会長に武術を封印されても、立ち上がって戦っていますし、ある種正反対な二人でしょうか。

では、次回第63話”御預け”

次回も乞うご期待b
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