僚機二機を引き連れリュウの示した先を見ると崖下にザク三機が偵察を兼ねてだろう、列を組んで歩いていた。
位置的には申し分ない。奇襲にはもってこいである。
「オデッサ3、そこの岩場で待機。ザク三体言えども確実に潰す。」
オデッサ3、4が従来の量産型ガンキャノンと違う点は試作型とは言えビームライフルを装備、さらにビームサーベルも背中のランドセルに装備されている点である。
その為片方のキャノンはサーベルを引き抜くため短めの砲身となっている。
「4は俺と陽動だ。まずは一機、行くぞ!」
ザク三機の隊列の一機にマシンガンの集中砲火を食らわせ更に隣の一機にはガンキャノンのビームライフルがコックピットを貫く。
マシンガンを食らったザクは反応し体を傾けようとするがコックピットに被弾。そのまま地に崩れた。
無論、ビームライフルが直撃した機体は派手に吹き飛んだ。
『敵、増援を確認。いいんですか、ここまで暴れて?』
高台からスコープでリュウは的確に敵の場所をマーク、他の隊員に告げる。
「どうせ強行偵察だ。後、ホワイト・ディンゴ隊とは正反対の位置だ、問題ないさ。」
ぶっきらぼうに答えるヒリュウ。
『増援も同じくザクで構成された部隊。計六機です。』
「了解、オデッサ2。3、迫撃砲の準備。生き残ったザクも吹き飛ばせ。」
『オデッサ3、了解。』
「オデッサ4、後退。3のいる地点までだ。」
隊長という者は常に仲間や敵そして自分を意識して戦わなければならない。
そしてその内どれか一つ見落とす点で大きな損害を払う必要がある。
特にここは戦場、その損害がいかに大きい物か、ヒリュウは身をもって体験している。
『―――砲撃開始します!』
仲間の通信と共に後ろから爆音と赤い灼熱の炎が背中を焦がす感傷を味わう。
振り返れば自分達を追いかけようとしていた機体はバラバラに砕け赤い炎と共に溶けていった。
『こちらオデッサ2、こちらも確認した敵機は撃破しました。』
よく見ると所々から煙があがっていた。狙撃により撃墜されたジオンの機体であろう。
「全目標の撃破を確認...さて進むぞ、日の出までにはホワイト・ディンゴ隊と合流しなければならないからな。」
気がつくと薄暗い夜空が大地を染めていた、日の出は近い―――
アリス・スプリングスより3kmの地点
『―――隊長、味方機からの通信です。繋ぎます。』
コランから味方機の通信が入ったらしい。
『こちらホワイト・ディンゴ隊隊長のマスター・ピース・レイヤーだ。今回の作戦の同行、感謝する』
通信に現れた男性、見た目からも声色も戦場になれたベテランと言った所だ。
実際ホワイト・ディンゴ隊の話はここに来る前からも話題になることがあった、つまり腕も確かという訳だ。
「こちらロスト・オデッセイ隊隊長ヒリュウ・マックスウェル大尉だ。あなた達と同行出来て光栄に思う。」
『さっそくだが大尉、アリス・スプリングスの事についでだが...街の中での戦闘は出来る限り控えて欲しい。民間人がいるらしく巻き込むわけにはいかない。』
「ほう、ここではジオンの連中も話しの分かる奴が多いと聞いていたが本当だったとはな。」
『だからまず我々は基地周辺の砲台に攻撃をしかける。君達は反対のルートからMSを....』
『―――!?敵機です!なんなの、この速さは!?』
レイヤーの無線を断ち切る形でエリザベスの悲鳴に近い無線が入る。
「すまない、レイヤー、新手だ。こいつらを片付けしだい合流する。」
『了解だ、死ぬなよ。』
レーダーを見るとアリス・スプリングスとは逆の位置から敵の反応がある。
昨日の偵察部隊の生き残りか?いや、ここまで慣れた動きをするパイロットはいなかった。いたらあんな簡単なおびき出しに引っかかるわけがない。
「全員、攻撃態勢を取れ!」
ヒリュウの機体は両腕のマシンガン、リュウはスナイパーライフル。コランとエリザベスはキャノンとビームライフルを敵機の位置へと向ける。
次の瞬間。大地の砂埃に隠れ日の出を浴びながら現れたのは三機のMS。
真ん中に立つのは真っ白なグフ。
一見色以外変わりがないように見えるが手には並のモビルスーツよりも巨大なヒートサーベルを肩に担いでいるのが特徴か。
後ろの二機の内右にはオレンジに塗装されたヅダ。確かジオンが初期に作ったモビルスーツである。使用者は余程の物好きと言えよう。
左には紫色のザクⅠ。腰にはヒートサーベルを構えている。恐ろしくシンプルな機体だがこの部隊の人間だ、腕利きに違いない。
ヒリュウ達と同じく統一性のない機体、その三機に共通するのは肩のエンヴレム。
デフォルメされた幽霊の絵に同じくデフォルメされた雲。霧を示している物だ。
つまり表れたのだ、『最も会いたかった奴らに』
「...フォグシャドウだ。」
『こいつらが!?』
残りの三機が驚きの声を上げる。その同時に―――
グフが真っ直ぐこちらに飛び残りの二機が左右に別れる。
「全機、回避行動!オデッサ2の援護を4頼む!」
狙撃型が近接を狙われるのは不味い。特に相手はグフである。
仲間を同じく左右に逃がした後、ヒリュウは機体を真っ直ぐ敵に向かわせる。
「うぉぉぉぉぉぉッ!」
素早く盾を構え相手のヒートサーベルを防ぐ。
金属の重たい音と溶ける音。同時に機体が地面に埋まるような重さをコックピットから味わう。
「クソッタレェ!」
おもいっきり押し上げグフを宙に浮かす。
しかしグフはブースターを上手く使いそのまま地面に着地した。
『―――敵機二機、我々の方に!』
「とにかく広がれ!機体の数ではお前たちの方が上だ。集中砲火を浴びせてやれ!」
通信を直ぐに切ると前方の白いザクめがけて100mmマシンガンとブルパップ・マシンガンを放つ。
しかし弾丸は巨大なヒートサーベルの壁によって溶けて霧となる。
巨大な武器を持つからといってまったく機体にはブレがない。まるで操縦桿を手足の如く扱い細やかな体重移動を行っているのだろう。
再度サーベルの攻撃範囲に入られてしまいとっさにシールドを構える。
だがそれを見切ったかの如く地面とこすり合わせ火花を散らせながら予想外の所から攻撃を仕掛けてくる。
上からくるものだと思い上に構えていたシールドを引き剥がす形で下から切り上げられる。
幸い片腕を吹き飛ばされる所まではいかなかったがもう身を守るものはない。
「ならば、俺も―――!」
マシンガン二丁を捨て
脚部に内蔵されているビームサーベルを両腕に構え再度白いザクを迎え撃つ。
機体を抉るような動きでサーベルを切りつけるもまるで相手は自分の行動を読んでいたかの如くすべて弾かれる。
「クソ!クソ!クソォォォォォォッ!」
相手に遊ばれている。その考えが焦りと隙を作ってしまった。
勿論、エースパイロットがその瞬間を見逃す事はなく、ブチンと響く鈍い音は自分の機体の両腕から響き、そしてグフは切り上げた勢いからジム・グリードの胴体目掛け蹴りを入れた。
嫌な浮遊感と衝撃から目の前がだんだんと黒に染まる。
死の絶望がヒリュウを包み、そこで意識は途絶えた。
「―――大尉!大尉!」
遠くから聞こえる女性の声。その声がだんだん近づいていくと共に意識がハッキリしていく。
気がつくとヒリュウは救護キャンプのベッドの上だった。
「良かった...他の三人も無事ですよ。」
「...敵機は?」
「すみません、我々がついた頃には...」
「そうか...。」
そう一言告げ、目を閉じる。
自分が運ばれた場所、仲間の安否。その全てが今のヒリュウにとってはどうでも良かった。
とにかく、今は誰でも話したくない。
衛生兵も状況を察してくれたらしくこれ以上声を掛ける事なく、テントから出ていった。
衛生兵がテントを出ると同時に、助かったという安心感が沸いてくる。そして、憎きジオンのパイロットに全く手が出せなかった事に対し悔しさがふつふつと沸いてくるのであった。
参考書類「ロスト・オデッセイ隊の機体について。」
この本を書くに当たって多くの人にも分かりやすくを目的に書き上げてきたが、直接見た我々(私は元ジオンのパイロットのため実際に彼らのMSは何回も見てきた。)と違って読者の皆様は文面だけでは伝えにくいだろう。そのため捕捉を入れた内容を書き足したいと思う。
ジム・グリード(???)
ヒリュウ大尉のMSであるが一年戦争後、彼と同じくま全くデータが残っていない変わったモビルスーツである。
現役の頃噂に聞いた程度だが「蒼い稲妻」と呼ばれた連邦パイロットの機体に酷似しており一時期騒がれていた。
性能の並み大抵のジムより少々性能が上な程度だが時折まるでMSとは思えない動きする事もあった。この機体について調べたのは先のページに纏めてあるため、そちらを当たってほしい。
イーグルアイ(高機動狙撃支援型ジム)
後のジムスナイパーカスタムと呼ばれたMS。
作戦現時点では塗装はされていなかったらしい。
ジムスナイパーカスタムと違う点は装甲の厚さだろうか。高機動と合わせ防御力も上げるといった実験だったようだ。
量産型ガンキャノン(ロスト・オデッセイ仕様)
一見、普通のガンキャノンと変わりはないが片方の砲身を短くしビームサーベルを所持した所、試作型の大型ビームライフルを装備している所といった違いがある。(我々はこの機体の武装が一番恐ろしかった。)