天使はいつだって憧れの君を見てる   作:ぶーちゃん☆

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すみません……(汗)


クリスマス記念モノを書き貯めてたら、こんなに放置しちゃいました><;






とつかわいい⑫

 

 

 

パチパチと音を立てて、キャンプファイヤーが空高く燃え上がっている。

肝試しを終えて着替え終わったぼくは、その燃え盛る炎の周りを囲うようにフォークダンスをしていた小学生達が、ダンスを終えて解散していく様子をチラリと見ながら、雪ノ下さんと二人でお話している八幡を見つめていた。

 

今日の作戦は上手くは行ったらしい。

八幡の計画通り、留美ちゃん達の関係性を完全に破壊するほどの成果をあげられたみたい。

 

でも、意外なことにピンチに陥ったグループを救ったのは、他でもない留美ちゃん自身なんだって。

八幡の言うところの“生け贄”に真っ先に選ばれたというのに、不良役の葉山君達にカメラのフラッシュを浴びせて、その隙をついて他の子たちを逃がしたんだそうだ。

 

関係性を完全に破壊出来た上に、さらには留美ちゃんが仲間を気遣う所さえもその子たちに見せられた訳だから、作戦は予想以上に成功したんだろう。

 

 

それなのに、なんだかぼくはその作戦が上手くいったんだっていう実感が一切持てないでいた。

あんなに平気そうな顔をしてても、どこか物悲しげな八幡の横顔を見たから。

そんな八幡の横を、八幡に一切顔を向けないで通り過ぎた留美ちゃんの姿を見ちゃったから。

 

 

 

ぼくには……ぼくにはなにも出来ないのかな……

ぼくは、自ら進んで苦しい思いをしてしまう八幡の心の重荷を、少しでも軽くしてあげられたら……って思ってた。八幡は、ぼくの一番大切で大好きな友達だから。

 

それなのに、ぼくは結局なんにも出来なかった。

計画に参加出来るわけでもなく、計画中の八幡に寄り添ってあげられるワケでもなく。

 

ただ計画が実行されるのを聞かされて、そしてあの子たちをそこに向かわせただけ。

結果だって、由比ヶ浜さんから聞いただけだ。

 

ぼくは、結局は何一つ出来ない無力な男の子のままなんだな。

いつか、胸を張って八幡の隣に立ちたいだなんて思ってたけど、ぼくにそんな資格はあるのかな……

 

 

 

ぼくはもう一度八幡に目を向ける。

 

八幡はぼくと違って強い。本当に強い男の子。

強くて、でも本当は誰よりも優しい人。

そんな八幡が、ただ小学生たちを仲違いさせて、結局留美ちゃんを一人ぼっちのままで居させるこの結果に、胸を傷めてないはずが無いんだよね。

 

 

 

───ぼくはなにを考えてるんだ……!

無力な男の子のまま?隣に立つ資格が無い?

本当にぼくはなんにも成長してない。八幡と過ごせるようになったこの三ヶ月で、少しは成長出来たのかと思ってたのに……

 

無力?資格?……そんなの…………もうどうだっていい……!

そんなのは、ただの独り善がりじゃないか……!

 

ぼくが今したい事。それは、独り善がりに無力な自分を卒業したいわけでも、独り善がりに資格を得たいわけでも無いはずじゃないの?

ぼくが今したい事、それは、八幡の荷物を少しでも軽くしてあげる事。

そこには、ぼくの独り善がりな気持ちが入り込む余地なんて無いし、そして必要もない。

 

「……よしっ」

 

ぼくは誰にも聞こえないくらい小さな声でそうぽしょりと呟くと、今まさにぼくの横を一人通り過ぎようとしている女の子に、こう声をかけるのだった。

 

 

「留美ちゃん、だよね。急にごめんね?……あとで、ちょっとだけ時間もらえないかな……?」

 

 

× × ×

 

 

留美ちゃんに声を掛けたあと、何事もなかったかのようにみんなと花火を楽しんだぼくは、バンガローに戻ったあとにこっそりと部屋を抜け出して、留美ちゃんとの待ち合わせ場所であるビジターハウスの裏へと向かった。

留美ちゃん、上手く部屋を抜け出せたのかな?

 

昼間であればなんてことない森の中の道も、夜になると途端に怖くなる。

まるでこのままこの闇の中に飲み込まれちゃいそうなくらいに。

こんな夜の闇の中、小学生の女の子を1人で呼び出しちゃったなんて、ちょっと申し訳ないな……

 

 

 

待ち合わせ場所に到着すると、すでに留美ちゃんはビジターハウスの壁に寄り掛かって俯いて立っていた。

 

「ごめんね、留美ちゃん。こんな時間に急に呼び出しちゃったのに、1人で待たせちゃって」

 

そう声を掛けると、留美ちゃんはチラリとぼくを一瞥してから、そのまままた俯いた。

 

「……別に。で、話ってなんですか」

 

──そういえば、留美ちゃんとこうしてお話するのって初めてなんだ。

留美ちゃんはよく八幡とお話してたから、ぼくもすっかりお話した気になってたけど、この子からしたらぼくはちょっと見掛けたことがある程度の、高校生グループの中の1人って程度なんだよね。

 

今さらだけど、今日怖い目に合わされたばかりの高校生グループの中の1人でしかないぼくの呼び掛けに、どうしてこの子は1人で来てくれたんだろう……

 

「……あ、ごめんね。お話の前にまずは自己紹介。ぼくは戸塚彩加」

 

「……鶴見、留美」

 

「うん!ありがとう」

 

ふふっ、留美ちゃんはぶっきらぼうではあるけど、ちゃんといい子なんだよね。

こういうトコ、ちょっと八幡に似てるのかも。

 

「で、話ってなに」

 

「え、あ、うん。八ま……比企谷くんの事で……ちょっと留美ちゃんとお話したくって」

 

「八幡の?」

 

今までは俯いたままで、ほとんどぼくに視線を向ける事のなかった留美ちゃんが、八幡の名前を出した途端にぼくをしっかりと見てくれた。

ていうか、留美ちゃんて八幡のこと名前で呼び捨てなんだっ?

 

「うん、比企……八幡のこと。…………今日の肝試しの事で、留美ちゃんが八幡のことを誤解してるようなら、ちゃんと誤解を解いておきたいなって思ったんだ」

 

 

──悔しいけど、ぼくに出来ることなんてこんなことくらい……

でも、八幡が嫌な思いまでしてあんなことをしたのは、留美ちゃんの為なんだよ?ってちゃんと伝えておきたい。

 

留美ちゃんに誤解されたままでいるのは、八幡が可哀想過ぎるから……

 

「誤解……?」

 

「……うん……えと、ね?……そもそもさっき肝試しであった出来事は、八幡の考えでぼく達が実行したんだって事は……分かってるの、かな……?」

 

「……うん」

 

八幡のやり方、八幡の考え方を尊重するのなら、本当はぼくのしてる事は間違ってるって分かってる。

八幡からしたら単なる余計なお世話でしかないってことも分かってる。

 

でもやっぱり……このままじゃ嫌だ……

こんな風に留美ちゃんとお話したことが八幡にバレて嫌われたのだとしても、それでもやっぱりぼくは……八幡が悪く思われたままでいるのは耐えられないっ……

 

「確かに今日のやり方は最悪だったかも知れないよね……小学生を恐がらせて仲を悪くさせるだなんて、留美ちゃんにとっては許せないことかも知れない…………でもね?それは八幡だけが悪いんじゃないんだ。ぼく達みんなで考えて、でも他になんにも考えが浮かばなくて…………結局、ぼく達はその考えに賛成しちゃった。……留美ちゃんが許せないっていうのなら、それはぼく達全員がいけないんだ」

 

「……」

 

「でもね?八幡は本当に真剣に留美ちゃんの事を考えてた。確かにいいやり方なんて言えないけど、でも八幡は……八幡は本当に真剣に考えて、自分だけが嫌な思いをするのも覚悟の上で、留美ちゃんの問題をなんとかしようって頑張ってた…………それに比べたら、そんな計画を立てざるを得なかった八幡だけに精神的な重荷を背負わせて、ただその計画に乗っかっただけのぼく達の方が、よっぽど無責任で……よっぽど悪いと思う……」

 

……確かにあの作戦を実行したのは葉山くん達だけど、でも……最終的に一番気持ちに負担が掛かるのは、やっぱり発案者である八幡なんだよね……

実行者は、言われたからやっただけ……って、心に逃げ場があるから。

でも発案者である八幡には、どこにも逃げ場が無い……

それこそが、八幡が1人で背負わなきゃいけない重荷。

 

ならせめて、留美ちゃんだけでもいいから本当の八幡の気持ちを知っていてもらいたい。

 

「だから留美ちゃんお願いっ……八幡のこと……悪く、思わないで……?」

 

そしてぼくは留美ちゃんに頭を下げた。

ぼくの心からのお願い、留美ちゃんに届くかな……

 

「……ねぇ」

 

「うん」

 

「戸塚……さんてさ、八幡のなんなの」

 

「……へ?な、なんなのって……?」

 

「だって、八幡の為にわざわざこんなトコに来てさ、いい大人のあんたが、小学生の私に頭まで下げて、なんで八幡の為にこんなことまですんの……?もしかして…」

 

すると留美ちゃんは…………なんていうか少し不満気な感じと言うかつまらなそうな感じというか、なんだかジトッとした目を向けて、ぼくにとんでもない言葉を放った……!

 

 

 

「もしかして戸塚さんて……八幡の……彼女かなんかなの……?」

 

 

 

 

続く

 








お久し振りでしたがありがとうございました!



次回、まさかの禁断の恋同士のバトル勃発か!?

というのは嘘ですけど、戸塚が八幡への想いを小学生の女の子に熱く語ります!
まぁ普通に真面目な感じで終われるはずですよ☆


そしてたぶん次回で終われると思います!



ではまた次回(^^)


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