天使はいつだって憧れの君を見てる   作:ぶーちゃん☆

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とつかわいい③

 

 

 

部活の悩みを少しでも好転できるようにと由比ヶ浜さんにとある部室へと連れられてきたぼくは、そこで比企谷くんと再び遭遇した。

 

ついさっきまで不安でいっぱいだったぼくだけど、比企谷くんを認識した途端にとててっと駆け寄って、思わず比企谷くんの制服の袖口をきゅっと握っちゃった。

ああ……すっごく安心する……!

やっぱり君はぼくの憧れのヒーローだね……

 

「比企谷くん、ここで何してるの?」

 

「いや、俺は部活だけど……」

 

……そっか……比企谷くんは、この奉仕部っていう部活に所属してるんだ……

比企谷くんが部活に入ってるなんて知らなかった。

ちょっと意外……!比企谷くんて、そういうの興味の無い人かと思ってたから。

じゃあテニス部に誘ったって、断られちゃうにきまってるよね。

 

 

「違うんだっ!?」

 

ぼくが比企谷くんに対する思考に陥っていると、なんだか衝撃的なやりとりが。

どうやら由比ヶ浜さんは、奉仕部の部員じゃなかったみたいだね。

ふふっ!由比ヶ浜さんて、ホントにおっちょこちょいだなぁっ。さっきはあたしの部活にようこそっ!みたいに言ってたのにっ。

でも今まさに部員として承認されたみたいだね!

 

でも、これでようやく比企谷くんと由比ヶ浜さんがなんで仲良しなのかが理解出来たよ。

えへへ……ちょっと安心っ……

 

 

って!そういうんじゃないからねっ!?

あわわわわ……ぼ、ぼくはただ、関係性が解明されたからスッキリした〜……っていう意味で言っただけだからねっ!?

 

 

× × ×

 

 

奉仕部への相談に対しての答えは、由比ヶ浜さんやぼくが思ってたのとはちょっと違うみたい。

強くしてくれるんじゃなくって、『自分で強くなりなさい、その為に協力してあげる』っていうスタンスみたいなんだ。

 

……そりゃそうだよねっ……ぼくは甘かった……

他人《ひと》に頼って強くしてもらおうだなんて、そんなのは本物の強さなんかじゃないもんねっ!

でもぼくが少しでもうまくなれるように一緒に協力してくれるってだけでも、とっても嬉しいし有り難いことだよねっ……!

 

 

で……でもね……?雪ノ下さんが……その……とっても恐いんだ……

なんていうかにっこり微笑んだ、そのとっても綺麗な笑顔が……うん。もうなんていうか恐いっ!

 

血の気が引いて小刻みに震えるぼくは、思わず心の声を呟いてしまう。

 

「ぼく、死んじゃうのかな……」

 

すると比企谷が……!比企谷くんがぁ……っ!

 

「大丈夫だ。お前は俺が守るから」

 

 

 

……………………………

 

 

 

もぉぉぉぉぉぉぉぉっ!

 

 

またなの!?またぼくをそうやってからかうのぉっ!?

 

どうしよどうしよっ!顔がっ!顔が熱いよっ!

落ち着け!落ち着けぼくっ!

 

 

「比企谷くん……。本気で言ってくれてるの、かな?」

 

「や、ごめん、ちょっと言ってみたかっただけ」

 

 

…………ふぇぇぇぇんっ!比企谷くんの………ばかぁぁぁっ!

 

 

もーーーぉぉぉっ!比企谷くんにとっては軽い冗談でも、ぼくにとってはとっても大事なことなんだからねっ!比企谷くんのばかっ!もう比企谷くんなんてキライなんだからっ!

 

ぼくはため息をついて唇を尖らせる。……でも……

 

「比企谷くんはときどきわからないよね……。でも……」

 

 

……でも、不安で震えているぼくをリラックスさせてくれるためにあんなこと言ってくれたんだよね……!

やっぱり比企谷くんはとっても優しくてとっても格好いいっ……

 

 

クスッ……ちょっぴりイジワルだけどねっ……☆

 

 

× × ×

 

 

その翌日のお昼休みから、雪ノ下さんによるぼくのテニス特訓がはじまった!

 

ぼくはテニスコートに向かう途中で比企谷くんを見つけて、嬉しくて腕に飛び付いたり可愛いって言われて照れちゃったりともう大忙し!

 

ってアレ?……あはっ!テニス関係ないねっ!

 

そしてその際に比企谷くんのお友達とも出会う事になったんだけど、材木座くん……だっけ?

比企谷くんがお友達付き合いしてるくらいだから絶対にいい人だとは思うんだけど……

 

ごめんねっ!正直言ってる意味が良く分からなかったんだ……!

一応ぼくもお友達にはなったんだけど、本当に言ってる事が良く分からなかったから、ここでは材木座くんの事は割愛させて頂きますっ!ホントにごめんね!

 

たぶん今ぼくは目がバッテンになっちゃってるっ……

 

 

× × ×

 

 

その日からは毎日のように基礎のトレーニングを続けたんだけど、すっごくキツかった……

なんでぼくってこんなに筋肉が付きにくい身体なんだろ……

 

こんなんじゃホントに比企谷くんに守って貰わないと生きていけないよ……えへっ!なーんてねっ。

 

 

そして数日が経ち、ついにラケットとボールを使った本格的な練習に入った頃……事件は起きたんだ!

 

ぼくがいつまでもうまくならない上に怪我までしちゃったから、雪ノ下さんが呆れてコートから去ってしまって、それでもへこたれずに練習していた時……

 

「あ、テニスしてんじゃ、テニス!」

 

うちのクラスの三浦さんだった。

三浦さんはクラスの中心的な女子でとっても恐い……

雪ノ下さんとはまた違った恐さなのかな。

 

そういえばちょっと前に、教室で雪ノ下さんと三浦さんがちょっとやり合ってたって田中くんが震えながら言ってたっけ……

雨が降ってたけど体育館で素振り練習が出来るからぼくは居なかったけど。

 

「ね、戸塚ー。あーしらもここで遊んでていい?」

 

「三浦さん、ぼくは別に、遊んでるわけじゃ、なくて…練習を…」

 

「え?何?聞こえないんだけど」

 

 

………やっぱり恐いっ!

 

でもぼくは一生懸命練習してるんだもん!

ぼくは目をバッテンにして涙目になりながらも、なんとか練習だからと伝えた。

でも比企谷くんや由比ヶ浜さんも居るんだからと、自分たちも使っていいでしょ!?って……すっごい迫ってきた……

 

助けてっ!比企谷くんっ!

 

「あー、悪いんだけど、このコートは戸塚がお願いして使わしてもらってるもんだから、他の人は無理なんだ」

 

………ひ、比企谷くん……!

なんかぼくは素敵な王子様に助けられるお姫さ…………ってぼくのばかっ!

ぼくは男の子だってばぁっ!

 

 

結局比企谷くんの説明もあまり受け入れてもらえず、クラスのリーダー葉山くんまで参入して、なぜか部外者同士のテニス対決になってしまった。

練習するなら強いやつが教えた方がいいだろ?っていう葉山くんの申し出なんだけど……………正直面白くない……っ!

ぼくはお願いして比企谷くん達に助けてもらってるのに、なんでそういう事になっちゃうのかな……!

 

そんな理由でぼくの為に勝負になっちゃうなんて、ここのところずっと練習に付き合ってくれていた比企谷くん達に失礼だよ……

 

 

ぼくは葉山くんの場を収める能力はすごいなって感心しつつも、それでもそれは強者の理論だよね……って、納得いかなかった。

 

でも一番納得いかないのは、そう思っているのに恐くてそれを葉山くんや三浦さんに伝えられないぼく自身……

 

 

こんなんじゃ……比企谷くんのお友達なんかになれないよ……

 

 

テニス対決は男女混合ダブルスでやる事になったみたい。

ただ葉山くんと三浦さんが組みたいってだけで、比企谷くん側の意見とかは一切関係なく……ね。

 

どうせぼくはテニス部員だから、どっちにしても試合には出られないんだけど、あまりにも申し訳なくて比企谷くんに謝った。

 

「比企谷くん。ごめんね。ぼく、女の子だったらよかったんだけど……」

 

ホントは謝らなきゃいけないのはそれだけじゃないんだ……

ぼくがはっきりと三浦さん達に強く断る事が出来れば、こんな事には……!

 

悔しくて泣きそうに俯いているぼくを、比企谷くんはポンポンって優しく撫でてくれた。

 

「……気にすんな」

 

じわりと涙が滲む。

ごめんね、こんな弱いぼくの為に……

いつか絶対、キミの隣に並べるくらいに強くなってみせるからっ……!

 

× × ×

 

 

………すごいっ!

これはもううちのテニス部の誰よりも凄い試合だよ……!

 

三浦さんは中学の時に県選抜に選ばれた程のプレーヤーらしいんだ!

サーブ、リターン、ボレー。その全てが高レベルプレーヤーのそれだった……。

そして葉山くん。

確かにテニス自体は初心者との事だったけど、それを補って余りある運動神経……!

サッカー部次期主将と目されるその類い稀なセンスは、初心者なんていう枠から一歩も二歩もはみ出している。

 

 

……でも……なにより驚かされたのが、そんな二人を相手に善戦出来ている比企谷くん!

 

キミは本当に初心者なの?

 

無理を推して出てくれた由比ヶ浜さんは、それこそ初心者らしい動きでほとんどプレーに絡めていないのに、比企谷くんはほとんど一人でダブルス相手に戦っている!

 

ついにはほぼ一人で戦っている比企谷くんに勝てないと思ったのか、葉山・三浦ペアは由比ヶ浜さんを狙いはじめた。

勝負事だから仕方ないけど、ちょっと大人げ無い気がする……

 

 

悔しいっ!

ぼくがあそこに立てたなら!比企谷くんの隣に立てたなら!……絶対に負けないのにっ!

 

 

「由比ヶ浜さんっ……」

 

ついに由比ヶ浜さんは激しい集中攻撃に怪我をしてしまった……

本当にごめんなさい……

こんな事になってしまって……

比企谷くんにも由比ヶ浜さんにもここまで迷惑かけちゃって……

 

ぼくが二人にもう大丈夫だから…と声を掛けに行こうとしたら、由比ヶ浜さんがギャラリーを掻き分けてコートから出ていってしまった。

 

保健室に向かったんだろうか?

だったらぼくが付き添わなきゃっ!

でも!この場をそのままにしてぼくが行っちゃう訳にもいかない……

 

そうして戸惑っていたら、急にギャラリーがざわついた。

 

「この馬鹿騒ぎは何?」

 

モーゼの十戒の如く割れたギャラリーの間から現われたのは、スコート姿に身を固めた凍える程に冷たくも美しい、奉仕部部長雪ノ下さんだった……

 

 

 

× × ×

 

 

雪ノ下さんはぼくに呆れてコートを去った訳じゃ無かったんだ。

怪我をしたぼくの為に、保健室に行っていてくれたみたいなんだ!

この人は、恐いだけじゃない。不器用だけどとっても優しい人なんだなぁ……

ぼくの治療を由比ヶ浜さんに任せると、比企谷くんと共にコートへと向かった。

 

そしてその雪ノ下雪乃さん。

もう凄いという他なかった。

 

県選抜に選ばれた程の実力者だという三浦さんの一枚も二枚も上を行く超実力者……

葉山・三浦ペアがまったく歯が立たない。

 

 

あまりの実力差に、勝負はこのまま決するかと思われた。

でも……どうやら雪ノ下さんは……体力が無かったみたい……

 

今度は完全に足が止まってしまった雪ノ下を集中攻撃する三浦さんたち。

 

勝利を確信して騒ぎだした三浦さん達の様子に今度こそもうダメか……そう諦めかけたその刹那、雪ノ下さんが舌打ちをし、とっても不機嫌そうに口を開く。

 

「少し、黙ってもらえるかしら……この男が試合を決めるから、おとなしく敗北なさい」

 

この場の誰もが戸惑う。

比企谷くん本人でさえも。

 

でもそんな空気を嘲笑うかのような雪ノ下さんの一言で、みんなが静まり返った。

 

「知ってる?私、暴言も失言も吐くけれど、虚言だけは吐いたことがないの」

 

すごい!こんなに凄い雪ノ下さんは、こんなにも比企谷くんを信頼してるんだ……

 

確信ともいえる自信たっぷりのその表情にぼくも確信する。

比企谷くんは絶対にこの勝負を決めるって……

 

 

× × ×

 

 

「比企谷くん。……あの、ありがと」

 

 

比企谷くんは試合を決めた。あまりにも当たり前のように……

勝利者であるはずの比企谷くん達には、なんの歓声も賞賛も無かったけど……

 

でも……それでもぼくは、心の底から格好いいと思った!

やっぱりキミはぼくの憧れの人だねっ……!

 

「俺は別になんもしてないよ。礼ならあいつらに……」

 

 

 

比企谷くんはそう言いながら雪ノ下さん達を捜しに行ってしまった。

 

 

ううん!違うよ!

確かに由比ヶ浜さんが怪我をしてまで頑張ってくれなかったら負けてたかもしれない。

確かに雪ノ下さんの鬼神の如き活躍が無かったら勝てなかったかもしれない。

 

でも比企谷くん!キミが居なければ、キミがぼくを守ってくれなければ、そもそもスタート地点にさえ立ててはいなかったんだよっ!

 

 

やっぱりぼくは比企谷くんの隣に立ちたい!

キミに認めてもらえるくらい強くなりたい!

 

 

だから……もう少し待っててね。

絶対に、今度はキミに頼って貰えるくらいに強くなってみせるからっ!

 

 

 

ぼくと比企谷くんの友情物語は、ようやくスタートラインに辿り着いた……のかも……っ!

 

 

 

続く………かな?

 




くぅっ……こ、これは難しいです><

まさか戸塚SS(というかこの方向性)がこんなに難しいとはっ!
原作沿いって……難しいんですね……


このままではいつも同じ流れになってマンネリ化しちゃいますね〜><



という訳で………スミマセン!わたくし逃げ出しますっ!




そんなわけで、次回は原作沿いから一旦逃げ出して、原作で語られなかった期間の妄想劇でお茶を濁したいと思いますっ!

もしかしたら八幡と戸塚のデート……ゲフンゲフン
男友達同士、二人で遊んだりとかしちゃうかも!


あ……材木座は嫌いじゃないんですけど、いざ文章におこそうとするとウザイうえにウザくて、さらにウザイ事この上ないので、今後もカットの方向で(笑)
ただでさえ文字数増えてく一方なのに、材木座までまかないきれないですwww

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