天使はいつだって憧れの君を見てる   作:ぶーちゃん☆

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とつかわいい④

 

 

 

「ふぅ〜……今日も疲れたなぁ〜っ」

 

 

そんな言葉とは裏腹に、ぼくは今日の部活動も気持ち良く終えた。

 

「せんぱーいっ!あの、これどうぞっ!」

 

今日も後輩の女の子が親切心でドリンクとタオルを持ってきてくれた。

この子はホントにいい子だなぁ。いつもぼくに親切にしてくれる!

あんまり他の先輩達にタオルとか持っていくところは見たことないけど気のせいかな?

 

「いつもありがとねっ!」

 

今日も心からの感謝の気持ちを伝えると、両手を頬にあてて目をキラキラさせる。

 

「いえっ!そんなっ!どういたしましてっ!………やーん……可愛いっ……」

 

…………?

 

この子はホントにいい子なんだけど、ぼくがお礼を言うといつも最後にボソボソと一言なにかを付け加えるんだよなぁ……

なんて言ってるんだろう?

 

 

今日はお昼にテニス対決があって、それが噂になってたからかみんなの空気がいつもと違っていた気がした。

一年生のみんなもいつもよりキビキビ動いてたし……

 

うんっ!なんかちょっといい感じだぞっ!

ぼくもっと頑張るから、この調子でみんなもやる気を出してくれるといいなっ♪

 

 

× × ×

 

 

部活を終えたぼくは部室に置いておいた荷物をまとめて帰りの支度を済ませた。

 

そしていざ帰ろうと部室を出ると、駐輪場の方へと向かうとても見慣れた人影がっ……

 

 

……………っ!比企谷くんだっ!

 

ど!どうしよう!声、掛けようかなっ……

もうぼく達って友達……なんだよね……?

友達……なの……かな……

 

なんか自信無くなってきちゃったよぉ!

 

でも、今のぼくならこんななんでもない瞬間にだって、普通に声を掛けられるハズだよね……っ!

 

ホント言うと、今までだってこういう事あったんだ。

ちょうど帰りが同じ時間になったコト。

でも今までのぼくには声を掛けるなんて出来なかった。

でも、でも今なら!

 

幸い会話の取っ掛かりとしては今日のテニス対決の話題だってあるもん!

 

 

ぼくは覚悟を決めて比企谷くんに近付いていく。

 

でもその途中でぼくは……重大なことに気が付いたんだ……!

 

 

× × ×

 

 

ぼくはもう少しで比企谷くんに追い付きそうというところで、くんくんと自分の匂いを嗅いだ。

 

 

………ぼく!臭くないかなっ!?

 

 

部活上がりのぼくは、ついさっきまで汗でビチョビチョだったことを思い出したんだ……!

 

うぅ〜……ど、どうしようっ!

大丈夫かなっ!?ぼく臭わないかなっ!?

 

ちゃんと部室で制汗スプレーかけてきたけどっ、それでももしも比企谷くんに、『うわっ……なんか戸塚臭せぇな……』なんて思われちゃったら、恥ずかしくってぼく死んじゃうよぉ……

 

くんくんっ!くんくんくんっ!

 

大……丈夫……だよね……?

あぁ……早く声かけないと、比企谷くん行っちゃうかも知れないっ!

 

 

ぼくは清水の舞台から飛び降りるくらいの覚悟を決めたっ……

大丈夫!ぼくは行ける!逃げちゃダメだ!

 

「ひ、比企谷くんっ!お疲れさま!……い、今からおうちに帰るの……かな?」

 

すると比企谷くんはちょっとびっくりした顔でぼくを見る。

心なしか顔がちょっと赤い……ぼくも、赤いのかな……?

 

 

× × ×

 

 

「お、おう戸塚か。おっす」

 

なんだかちょっぴり照れくさそうに挨拶を返してくれた……!

『おっす』か……なんだかすごく友達っぽいかもっ……

 

ぼくもそれ返しちゃおっかなっ……!

ちょっと恥ずかしかったけど、頑張って返してみた。

 

「うんっ!……おっす……!」

 

わぁぁぁぁっ!すっごい恥ずかしいよぉぉぉっ!

ぼく、こんなの初めてだよぉっ。

ううっ……顔がっ……顔が熱いっ。部活上がりだから赤い顔を誤魔化せてるといいんだけどっ……

 

「ちょうど部活終わって今帰るとこだ。戸塚も部活終わったとこなのか?」

 

「うんっ。ぼくもちょうど終わって帰るとこなんだっ!えへへ、奇遇だねっ」

 

「お、おう……奇遇だな。……じ、じゃあせっかくだし、たまには一緒に帰りゅか……?」

 

あっ!比企谷くん噛んだぁっ!

えへっ!真っ赤になっちゃってる!いつもはクールで格好いいのに、なんか可愛いなっ!

 

 

 

…………………って!えぇぇぇっ!?ぼく、一緒に帰るか?って誘われちゃったっ……?

 

これは……比企谷くんともっと仲良くなれるチャンスかもっ!

ホントに出来ればなんだけど、ちょっとお願いしたいこともあるしっ……

 

 

「う、うんっ!……じゃあ、一緒に帰ろっ?」

 

そうしてぼく達は初めての放課後デ……下校をすることになったんだ。

 

大丈夫だよね……ぼく、臭くない……よね?

 

 

× × ×

 

 

比企谷くんは自転車を押しながら、ぼくはその比企谷くんのブレザーの袖をちょこんと摘みながら駅までの道のりを並んで歩く。

なんだか比企谷くんの袖を掴むのが癖になっちゃいそう。

 

それよりも早く聞かなきゃ!駅についちゃうっ!

でも、急にこんなお願いされたら引いちゃうかな……

 

でも……ちょっと聞くだけだもんね。

もし!もしもこのお願いを聞いてもらえたら、すっごくすっごく嬉しいし!

だから恥ずかしいけど頑張ろうっ。

 

 

「あの、比企谷くんって」

そこまで言ってふと思ったコトがある。

そういえば由比ヶ浜さんて比企谷くんをあだ名で呼んでるよね。……ヒッキー……かぁ……

ぼくも、呼んで……みたいな……

 

「ん?」

 

あ……余計な思考に支配されてたら、ヒッキ……比企谷くんを待たせちゃったみたいだ!

 

「あ……ヒッキー……は……」

 

「え?どうした戸塚。全然聞こえねぇんだけど」

 

「わーっ!ごめん!……そ、その……ひ、ヒッキーがやくんはっ!」

 

 

…………………………ぼくなに言ってんのぉぉぉ!?

ヒッキーがやくんてなんなのぉっ!?

 

「なんだよヒッキーがやくんて……ま、まぁ噛んだだけだよな」

 

「うん!ご、ごめんねっ!……その……比企谷……くんは、ゴールデンウィークって、なんか予定入ってたり……するの……かな……?」

 

 

ぼくはヒッキーって呼ぶのはひとまず保留にして、どうしても聞きたかった事を勇気を振り絞って聞いてみた。

 

「へ?ゴ、ゴールデンウィーク?……い、いや、別に予定は入ってねぇけど……」

 

「ほんとっ!?良かったぁ……あ!よ、良かったって言っても、まだぼくのお願いを聞いてもらえるってワケでもなんでもないのにっ!……えへへ……ごめんね。ぼく、舞い上がりすぎちゃった……」

 

うう……またやっちゃった……

なんだか比企谷くんと一緒にいると、ぼくおかしくなっちゃうなぁ……

 

「……いや、別に気にしてねぇから大丈夫だ。……それで、お願いって?」

 

比企谷くんはそんなぼくの暴走を気にしないでくれたから、ぼくは思い切ってお願いしてみたんだ……!

 

 

「比企谷くんさえ良かったらなんだけど……ぼくと……ぼくと一緒にテニスしてくれないかなっ……」

 

 

× × ×

 

 

とっても弱い我がテニス部は、ゴールデンウィーク中にも関わらず、ほんの数日しか練習がない。

ほかの運動部は一日も休まないところだってあるって聞いたのにっ!

 

そんな事を思い出してたら、ぼくは思わず頬っぺたを膨らませていた。

 

「戸塚……?」

 

急にテニスを一緒にして欲しいなんて言っといて、それなのに黙り込んでむーっとしていたぼくが心配になっちゃったみたいだっ!

ごめんね!比企谷くんっ!

 

「ご!ごめんっ!あの……あのねっ!?…………」

 

 

ぼくは事の成り行きを比企谷くんに説明した。

 

まずうちのテニス部は顧問からしてあんまりやる気がないこと。家族サービスがしたいから部活は休みにしたいんだって……

 

そして三年の先輩達はわざわざ休みを返上して練習しても、どうせ夏の大会は一回戦で負けて引退することになっちゃうんだし、だったら受験勉強がしたいとのこと……

 

顧問と三年生がそんなだから、残された一年生も二年生も遊びたい!って空気になっちゃって、自然の流れで長期休暇中の部活動が最低限の日数で抑えられてしまったことなどを説明した。

 

「ごめんね、比企谷くん……比企谷くんには全然関係のないことなのに、こんな風に部活の恥みたいなことを愚痴っちゃって……」

 

「いや、気にすんな。……そうか。なんつうか、その、大変そうだな……」

 

ちょっと落ち込み気味に俯くぼくの頭を、比企谷くんはポンポンって、優しく撫でてくれた。

うぅ……なんだかとっても安心するんだけど、なんだかとってもドキドキするよぉっ!

 

真っ赤になっているであろう顔をあげられずにいると、比企谷くんはぼくを心配してフォローしてくれる……

 

「ま、まぁアレだ。俺からすりゃ、わざわざ休みの日に部活の為に一日でも学校に行く連中の方が逆にすごいまである。……だからまぁ、別にそんなのは……部活の恥とかじゃねぇよ。気にすんな」

 

「えへっ……比企谷くんは……やっぱり優しいねっ」

 

「ば、バッカ!そんなんじゃねぇよ……」

 

見上げた比企谷くんの顔は、とっても照れくさそうに真っ赤に染まってた。

 

 

「そ、それでねっ?やっぱりぼくはちょっとでも練習したいから、顧問の先生に個人でコートを使わせてもらえないかってお願いしたら、一日だけならいいぞって言ってくれたんだっ!……だ、だからぼくはその日は一人で練習するつもりだったんだけど……」

 

そこまで言うと、ぼくは比企谷くんの目をまっすぐに見つめる……!

大丈夫かな……ウルウルしてるの気付かれちゃってないかな……?

 

「だから、もし比企谷くんさえ良かったら、その日二人っきりで練習に付き合って貰えない……かな……?…………今日のテニス対決見てたら比企谷くんやっぱりすごく上手いし、ぼくも比企谷くんと一緒に居られるなら、すっごく頑張れると思うんだっ…………」

 

 

あれ?ぼくなにか変なこと言っちゃってない……?

き、気のせいだよね!

 

「………ダ…メ……かな……?」

 

 

ぼく男の子なのにっ……頬を真っ赤にさせてウルウルと上目遣いで比企谷くんにお願いしちゃうなんてっ……!

うぅ……カッコ悪いな……

 

「お、おう。ま、別に暇だしな……俺なんかで良ければ全然大丈びゅっ……だ、大丈夫……だぞ」

 

「ホントにっ!?ありがとう比企谷くんっ!大すっ…………!!!」

 

 

あ……あぶなかったぁ……思わず嬉しすぎて抱きつきそうになっちゃった……!

ていうかその前にぼく凄いこと口走りそうにならなかった………!?

 

 

 

 

こうしてぼくは一日だけだけど、比企谷くんと二人でテニスの練習をする約束を取り付けられたっ!

 

ぼくと比企谷くんの友情物語は、ここからさらなる一歩を踏み出せる……のかもっ☆

 

 

 

 

続く

 






ありがとうございました!とつかわいい④でした!

とつかわいい④を全部ひらがなにした時の可愛さは異常。

とつかわいいよん♪

音符付けちゃってるし。



やばいです。戸塚が暴走気味です。
ただの友情物語のはずなのに、なんなの?この間違ったラブコメ臭は……!
こんなんで続けていけるのかしらん?


それではとつかわいいGO!でお会いしましょう。


………しかし非道いな……今回の後書き……


ところでアニメの出来がちょっと酷くないですかね……
なんか総集編見てる気分!

せっかく夢にまで見たいろはすとの運命の帰り道がっ!
せっかく楽しみすぎて座して待ったルミルミの賢者の贈り物がっ!
せっかく待ちに待ったデレのんの大活躍がっ!

ふぇぇ……みんなあんなに可愛いのに勿体なさすぎるよぉ……


スタッフさん……もっと大事に大切に作ってくださいよ……

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