天使はいつだって憧れの君を見てる   作:ぶーちゃん☆

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全国津々浦々のトツラーの皆様、お待たせ致しました!

恥ずかしながら帰ってまいりましたw




第二部【友達との夏休み編】
とつかわいい⑥


 

 

 

「せーんぱいっ!タオルどーぞぉ!あとこれ、家で作ってきたハチミツレモンですっ」

 

午前の練習を終え、休憩の為にコートから出ると、後輩の女子部員がタオルとわざわざ作ってきてくれたというハチミツレモンをタッパーごと差し出してきてくれた。

 

ありがとうと受け取ろうとすると、その女の子はレモンをフォークに刺して、口元まで運んでくれた。

 

「私特製なんで、疲れなんて一気に吹っ飛んじゃいますよぉ?はいアーン」

 

少し恥ずかしかったけど、いつも良くしてくれる女子部員がわざわざ作ってきてくれたというのに無下になんて出来ないよね。

 

「……あ、あーん」

 

そのままレモンを口にすると、口内いっぱいにハチミツの甘さとレモンの爽やかさが広がって、とっても美味しかった。

 

「ん〜……美味ひい……」

 

ちゃんと味わうように、目を瞑り両手で両頬を押さえて感想を言うと、その子がぽしょりと一言声を発した。

 

「……や〜んっ……可愛いっ……」

 

え?この子、また可愛いって言った!?

もうっ!いつもいつも、年下の女の子の癖に、年上の男の子のぼくを可愛いだなんてっ!ホント失礼しちゃうよっ……!

 

ぷくっと頬っぺたを膨らませたぼくをまた可愛いとからかってくる子に「めっ」と叱ってから、ぼくは午後の練習に向けて身体を休ませることにした。

ぼく、ちゃんと叱ったのに、なんだか叱ってる最中もずっと嬉しそうにしてたのが気になったけど……

 

 

 

ぼく戸塚彩加は、千葉県にある総武高校に通う高校二年生。

今は夏休み中で、所属しているテニス部の夏期練習に来ている所なんだっ。

 

ぼくの所属するこのテニス部は、正直言ってかなり弱い。

弱くたって、同じテニス好きな子たちと毎日楽しくテニスが出来れば満足なんだけど、1学期の前半はあんまりにも弱すぎて部員のモチベーションがなかなか上がらず、部として存続していけるのかどうかも疑問なほどだった。

 

でも、ある人たちの力を借りてぼく自身がちょっとずつ強くなって、徐々にではあるけどテニス部内の士気が上がってきて、今ではこうして毎日のように夏休みの部活動にもみんな参加してくれるようになっていた。

 

大好きなテニスを、テニスが大好きなみんなと楽しみながらも一生懸命に取り組めるこの夏休み。ぼくはとてもとても有意義に満喫している……………………つもりだった。

 

でも、ホントは……ちょっとだけ、ホントにちょっとだけだけど物足りなく感じていた。

心におっきな穴が開いてしまったんじゃないかというくらいの喪失感。

 

だって…………夏休みに入ってから……大好きな友達と、一度も会えていないから……

 

 

× × ×

 

 

家に帰ってくると、汗でベタベタになった身体を洗い流す為にお風呂に入った。

口元まで湯船に浸かりながらぶくぶくすると、ぽしょりと独り言を言ってみる。

 

「八幡……」

 

 

お風呂から上がって自室で髪を拭いていると、ふと勉強机の上に飾られた写真立てが目に入り、その写真立てを手に取ってベッドの上に仰向けで倒れこむ。

 

その写真立てに飾られた写真は酷く解像度が悪く、落書きもしてあるような酷い酷い写真だ。

だってそれは、写真として撮ったモノじゃなくて、大好きな友達と一緒に撮ったプリクラを携帯で撮影してから現像したものだから。

 

でも2人で写ってる写真てこれだけだから、どうしても部屋に飾っておきたくて無理矢理写真立てサイズに引き伸ばしたんだよね。

 

ごろんと横になりながら写真を眺める。

その写真の中の大切なお友達のちょっと恥ずかしそうな顔にクスリと笑いがこぼれた。

でも、笑いがこぼれた次の瞬間には大きなため息がこぼれ落ちた。

 

「八幡…………今ごろなにしてるのかな」

 

 

ぼくの大切で大好きなお友達、比企谷八幡くん。

一年生の頃からのクラスメイトなんだけど、なんと初めてお話したのは二年生になってから!

 

ぼくはいつも強くていつも格好良い八幡とずっと友達になりたかったんだけど、二年生の春、ようやくお友達になれたんだ!

 

1学期は、八幡とホントに色んなことがあったなぁ……

夢にまで見た初めての会話の後は、一緒にテニスしたり職場見学に行ったり、映画を観たりゲームセンターでプリクラ撮ったり♪

 

 

そういえば、始めはずっと比企谷くんって呼んでたっけな。

あれはそう。職場見学のお話をしてる時だった。

 

 

× × ×

 

 

職場見学かぁ〜。

今、ぼくのクラスでは、明後日のLHRで行われる職場見学のグループ分けの話題で持ちきりだ。

 

仲のいいお友達と好きな職場見学に行ってもいいというこのグループ分けは、ぼく達学生にとっては一大事だもんね。

 

ぼくは……うん。一緒に行きたいと思えるお友達は、彼しか居ないよね……?

でも、彼はぼくと一緒に行きたいって、果たして思ってくれているだろうか……?

 

んーん?そんなこと考えたってしょうがないよねっ!

ぼくはGWのあの日決めたんだ。ずっと隣に立っていようって。

だから……職場見学に一緒に行くお友達は、比企谷くんに決めた!

 

そしてぼくはうとうとしながらクラスメイトを眺めている比企谷くんに声をかけた。

 

「おはよ」

 

うとうとしかけていた比企谷くんの目が、ぼくの姿を確認するとパッチリ開いた。

 

「……毎朝、俺の味噌汁を作ってくれ」

 

「え……ええっ!?ど、どういう……」

 

「あ、いやなんでもない。寝ぼけてただけだ」

 

 

………………あぁぁぁっ!ビックリしたぁ……!寝ぼけてただけかぁ……

きゅ、急に毎朝味噌汁だなんて、プ、プロポーズされたのかと思っちゃったじゃないかぁぁ……!

もうっ!ぼ、ぼく男の子なんだからねっ!?嬉しいけど、比企谷くんのプロポーズを受けるわけにはいかないんだからっ!

 

はっ!う、嬉しくなんてあるわけないじゃないかぁ……ぼくのばかっ……

 

 

その後はちょっとした雑談を挟みつつ、比企谷くんの職場見学の予定なんかを聞いてみたんだけど、どうやら誰かと一緒に行く予定は無いみたい。

由比ヶ浜さんと一緒に行くのかも?とかってちょっと不安だったんだけど、違うみたいでちょっと安心しちゃった。

 

「お前は誰と行くか決めたの?」

 

比企谷くんが急にぼくの予定を聞いてきたから、ちょっとビックリしちゃった!

 

「ぼ、ぼく?……ぼくは、もう、決めてる、よ」

 

ぼくは顔がすっごく熱くなりながらも頑張って答えた。

ちょっと目を伏せちゃったけど、ちらっと窺ってみたら、なんだか残念そうな顔をしていた。

あ、あれ?ぼくの答え方がおかしかったのかな……?

 

「よく考えたら、というかよく考えなくても俺って男子の友達、いないんだな」

 

むー!比企谷くんたら!

 

「あ、あの……比企谷くん……。ぼく、男の子、だけど……」

 

むー!とは思ったけど、ぼくの口から出た言葉はとってもちっちゃかった。

ぼ、ぼくって……比企谷くんから男の子って見られて無いのかな……?

そ、それとも…………友達って、思われて、ない……のかな……

 

 

もし……友達と思われて無いのだとしたら……友達だと思ってるのがぼくだけなんだとしたら……っ。

そんなネガティブ思考で頭がぐるぐるしている時、その事件は起きたんだ。

 

「彩加」

 

……………………………………………へ?

い、今、比企谷くん、ぼくのこと名前で呼んでくれた、の……?

 

ぼくは思わず固まってしまった。

だ、だって……ついさっきまで、もしかしたらぼくは友達って思われて無いのかも……なんて落ち込んでたのに、まさかいきなり名前呼びしてくれるだなんてっ……!

 

「ああ、悪い、今のは……」

 

「……嬉しい、な。初めて名前で呼んでくれたね」

 

「なん……だと……」

 

うぅ……どうしよう……嬉しすぎて涙が滲んじゃうよぉ……!

てもぼくは涙が零れるのを我慢して、にっこりと微笑んだんだっ……

 

「そ、それじゃあ……ぼ、ぼくも……、ヒッキーって呼んでいい?」

 

「それはやだ」

 

 

……ガ、ガーンっ!

即答で断られちゃったよ……

うぅっ……由比ヶ浜さんには呼ばせてるくせに〜……

じ、じゃあ……

 

ぼくはちょっと残念そうにしながらも再チャレンジした。

正直、ヒッキーって呼ぶよりちょっと恥ずかしいけど、んんっと咳払いしてから思い切って言ってみた。

 

「じゃあ……、八幡?」

 

「も、もう三回呼んで!」

 

えっと……すっごい即答でOKが出ちゃった。

で、でも三回ってどういうことだろ?

ぼくはちょっとだけ困ったけど、えへへ……比企谷くんが八幡て呼んでいいって言うのなら、ちょっと恥ずかしいけど頑張ってみようかなっ。

 

「……八幡」

 

とりあえず良く分からないから、反応を窺うように。

うー!すっごく恥ずかしいよぉ!

 

「八幡?」

 

反応が無かったから、首を傾げてきょとんと言ってみた。

 

「八幡!聞いてるの!?」

 

八幡が呼べって言うから呼んでるのに、なんで無視するの!?

ぼくは頬っぺたを膨らませてちょっとだけ拗ねてみた。

 

でも、そんなぼくを見て八幡はとっても幸せそうな表情を浮かべていた。

 

 

「………………?」

 

 

× × ×

 

 

そう。ぼくはあの時から八幡を八幡って呼ぶようになったんだっ。

もう!八幡てばすぐにああやってぼくをからかうんだからっ!

 

 

 

 

………………はぁ……………

 

そんな楽しい思い出ばかりを心の引き出しから取り出していると、なんだか無性に八幡に会いたくなってきちゃった……

 

うぅぅぅ……ぼく、なんで八幡の携帯番号聞いとかなかったんだろ……

せっかくお友達になれたんだから、普通は聞いておくもんだよね?

ちゃんと聞いとけば、この夏休み、もしかしたら八幡と二人でどこかお出掛け出来たかも知れないのにっ……ぶぅ〜……

 

 

八幡には……夏休みが終わるまでは会えないのかぁ……

ぼくはベッドでふて寝しながら、片手に写真立てを抱いて、もう片方には携帯を持って、恨めしげにその携帯を見つめていた。

 

 

その時、急に携帯が鳴った。

急に鳴ったものだから、ぼくはビックリして携帯を落としそうになっちゃったんだけど、なんとか落とさずにしっかりと押さえ、覗きこんだディスプレイに表示された発信者の名前を見て驚いた。

なんで夏休みに電話なんてかけてきたんだろう……?

 

ぼくはもう一度その名前をしっかりと確認してから携帯の着信ボタンを押すのだった。

 

 

 

[発信 平塚静]

 

 

 

 

続く、のかな……?

 






トツラーの皆様お久しぶりでございます!
まさかの復活ですw



とはいえ再三申し上げたように、正直この戸塚SSは精神的に書くのが一番大変な作品なので、次回以降の更新はマジで気が向いたら、気が乗ったらになってしまうと思います><

でもちゃんとこの夏休み編は終わらせますのでご安心くださいませっ☆


それではまた次回お会いしましょう!


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