限りなくISに近いヒト   作:伯方の胡椒

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第二話

ㅤ少年は、目の前の光景を見る。瓦礫の山となった研究所、グチャグチャになった研究者の亡骸、おびただしい量の血。

ㅤ少年は、自らの力について学習をした。自分がどの程度の力を持っているのか。どの程度の力を振るえば人間は活動を停止するのか。

ㅤそれから少年は、おもむろに研究者の亡骸に手を取り、食べた。少年の体は、どんなものでも栄養として取り込めるようになっていた。ISに近いと言えど、ヒトはヒト。食欲も睡眠欲も無いわけでは無い。

ㅤ少年は食欲を満たすまで研究者の亡骸を食べた後、静かに眠った。

 

 

ㅤ少年を作った研究所は、亡国機業という組織の管轄下だった。研究所は人里離れた場所にあったため、誰よりも先に亡国機業がその消失を知った。

ㅤそして、少年の元に亡国機業の一人の女性が向かった。

ㅤ少年を亡国機業に迎えるために・・・

 

 

ㅤ少年が、研究者の亡骸を食べていた時だった。

 

「ねぇ。ちょっといいかしら?」

 

ㅤ少年は声を聞き、人間の女性だと認識する。そして声のした方を向いた。

 

「私は亡国機業という組織の幹部、スコールよ。初めまして」

 

ㅤ言語が分からない少年は、ただ女性を見つめる。学習能力が高いと言えど、言語という人の作った概念を理解する事は出来なかったのだ。

 

「突然なんだけど、貴方、亡国機業に入ってくれないかしら?」

 

ㅤ言語を話せない少年は、返事が出来ない。聞いて理解することも出来ないので、頷く事も出来ない。

 

「言葉は分からない、か・・・ 取り敢えず来てもらわないといけないわね・・・」

 

ㅤスコールと名乗った女性は、少年に手を差し伸べた。少年は、その動作の意味を当然ながら理解することは出来ない。

ㅤしかし、少年の感情すらない意思は、それを「救いの手」だと認識した。

ㅤこのまま研究所にいても何も起こらない。変わらない。それぐらいのことは少年にも理解が出来た。

ㅤ少年は、スコールの差し出した手を握り返した。

 

「!? 分かったのかしら? ・・・そんな筈は無いわね。なら本能かしら?」

 

スコールは、少年の手を強く握り、アジトへ向かった。

 

 

 

 

 

 

ㅤ亡国機業のアジト。そこに、少年とスコールがいた。少年は研究所にいた時よりも背が伸びていた。

 

「ねぇ、 自然( ネイチャー) 。今日で私と貴方が出会ってから丁度一年ね」

「ああ、そうだな。スコール」

 

ㅤ少年は、一年で感情と言語を手に入れた。そればかりか、一般的な教養や自らの立場など、様々な事を知ったのだ。

ㅤそして今はコードネームである「ネイチャー」という名も持っている。

 

「あの時は貴方が言葉も感情も持っていなかったから返事をもらえなかったけど・・・ 一年経って貴方は私達人間と同じように話し、考えられるようになったわ」

「そうだな」

「もう一度言わせてもらうわね。貴方、亡国機業に入ってくれないかしら?」

 

ㅤネイチャーはじっとスコールを見つめる。スコールもネイチャーをじっと見つめる。そして、ネイチャーが口を開く。

 

「今更だな」

 

ㅤそれもそうだ。ネイチャーは全てを知った後、亡国機業のメンバーと何ら変わりない活動をしていたのだ。

 

「今更だけど、これはきちんとしておかなければならないの。組織としても、人間としても」

「俺は厳密には人間では無いぞ」

「うるさいわね。 で?答えは?」

 

「勿論 はい ・・・と言いたいところだが」

「だが?」

「2つ聞きたい事がある」

「何かしら?」

「1つ目だが・・・何故俺を組織に入れた?管轄下の研究所が作ったとは言え、その研究所を、研究者を消したのは俺だ。普通は恨んで殺す、ぐらいすると思うが」

 

ㅤスコールは、苦い表情をする。聞かれてしまったか、というような顔だ。

ㅤネイチャーは、この質問をスコールに何回もしたことがあった。しかしその度、スコールは語ることはしなかったのだ。

 

「それは言えないわ」

「何故?」

「貴方が今知るべきことでは無いからよ。これだけは譲って欲しい。何度も聞かれているけど・・・ごめんなさい」

「やはりか。散々聞いて断られてきたからな。分かった、聞かないでおこう」

「ありがとう。 それで?もう一つの聞きたいことは?」

「1つ、見返りが欲しい」

「見返り?何かしら?金?地位?」

「いや、俺が欲しいのは、名前だ。コードネームではない、きちんとした日本名が欲しい」

 

ㅤそういえばきちんとした名前を与えていなかった、とスコールは思った。普段から亡国機業ではコードネーム呼びなので、本名をほとんど使わないというのも要因の1つだろう。

 

「名前・・・ね。分かったわ。名前は、貴方を作った人たちが付けていたようだけど、それでいいかしら?」

「それでいい。どんなやつだろうと、俺を作ったやつだからな」

「分かったわ。研究データがあったと思うから、名前を調べておくわね」

「ありがとう」

 

ㅤ心からネイチャーは感謝する。

 

「で?亡国機業に入ってくれるのかしら?」

 

「勿論だ。もう入っているようなものだしな」

「ありがとう。貴方がいれば百人力よ」

「勿論だ」

 

ㅤ2人は笑いあった。ネイチャーの幸せそうな顔を見て、スコールは安堵するのであった。

 

 

 

 

 

 

ㅤネイチャーが正式に亡国機業のメンバーになってから数時間後、ネイチャーはスコールに呼ばれていた。ネイチャーは一応スコールの直接の部下になるので、任務の指令などは全てスコールから受けていたのだ。

 

「正式に亡国機業のメンバーになってから初の仕事よ。ネイチャー」

「ああ。任務は久々だから腕が鳴る」

 

ㅤこのところ、ネイチャーには任務をあまりさせていなかった。なぜなら、これからネイチャーにやってもらう任務がとても大変なものだったからだ。

 

「それで?どんな任務なんだ?」

「正式に亡国機業のメンバーになってすぐで申し訳ないのだけど・・・ 貴方には長期にアジトを離れて仕事をしてもらうわ」

「長期滞在の任務か?益々腕が鳴るな。で?どこへ行くんだ?」

「IS学園よ」

 

 

「・・・・・・は?」

 

「唯一の男性IS適性者、織斑一夏は知っているわよね?それの監視のために2人目の男性IS適性者として、IS学園に入学してほしいのよ」

 

ㅤネイチャーは亡国機業正式メンバーになってから初の仕事を、上手くこなせるか心底不安になったのであった。




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