東方文伝録【完結】   作:秋月月日

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 すいません。更新遅れました!

 新キャラのキャラ設定に手間取ってしまいまして……本当に申し訳ございません!

 
 注意! 1.どんな変態が出てきても苦笑しながら受け入れること!
     2.新キャラに萌えてしまった人は病院へ直行をお勧め!
     3.羨ましいと思ってしまった人は既にどうしようもなく末期です!


 それでは、スタート!



第十二話 沙羅良夜の現代入り

 

 

「そんなわけで外の世界までやって来たわけだけど、随分とご立腹のようですわね?」

 

 相変わらず日傘を差しながらとんでもないことをのたまいやがった紫に、良夜は青筋にビキリとドデカい青筋を浮かべながらこう答える。

 

「意味分かんねーし状況も掴めねーし何よりアンタの思惑が理解できねーんですけどー!? 俺の失った記憶についての話のはずなのにどーしてこーなった!?」

 

 そびえ立つ高層ビルによどんだ空気。自然と呼べるものは街路樹程度のもので、野生動物なんてカラスやスズメぐらいしかいない。

 言うならば、コンクリートジャングル。

 そんな名前で呼ばれている世界――現代にやって来……もとい連れてこられた良夜は紫を全力で睨みつけながら叫ぶように抗議を開始する。

 

「なんでまさかの現代入り!? こんなことで俺の記憶は本当に戻んのか!?」

 

「あら? もしかして私のことを信用していないのかしら?」

 

「信用もなにも第一段階で俺の期待を裏切られてんですけどーッ!? はぁぁぁ。幻想郷に帰りてーよ文に料理作りてーよ咲夜と一緒に掃除してーよ神子と一緒に将棋してーよ……」

 

「中年主婦もビックリの主夫っぷりですわね」

 

 毎日早起きして朝食を作って部屋掃除して……という主婦か家政婦のような生活を日常的に送ってきた良夜にとって、家事というものはもはや人生そのものと言っても過言ではないのだろうか。いきなり現代に連れてこられたというのに相変わらずの調子の良夜に、紫は苦笑を浮かべている。

 そんな感じで談話(良夜にとっては押し問答)すること五分後、「とりあえず移動しましょうか」紫は良夜の手を取ってスキマの中へと体を滑らせた。

 まだ夏の暑さが残る季節だというのに、スキマの中は心地いいぐらいの涼しさを保っていた。

 

「何度も何度も通ってるけど、全然慣れねーっすよ」

 

「私にとっての最高のくつろぎ空間なのだけど、お気に召さなかったかしら?」

 

「こんな空間を気に入っちまったら、人間として終わってる気がするって言ってんだよ!」

 

「いや流石にそこまで酷いこと言う!?」

 

 良夜の辛辣な言葉に紫は目尻に涙を浮かべ、露骨に落ち込んだふりをした。心の底から落ち込んでいるわけじゃないので良夜も慰める気はさらさらないようだ。

 紫のスキマの中を進むこと約一分後、良夜の周囲がだんだんと明るくなってきた。何度もこの隙間を通って来た良夜は分かる。これは出口が近づいている前兆だ。

 さらに奥へと進むと、良夜の視界にはっきりとした出口が見えてきた。大量の目が浮かぶスキマの中でもはっきりと存在を示す、明るい空間への入口とも言えるかもしれない。

 

「で、ここがアンタが俺を連れてきたかった場所ってことっすか?」

 

「正解ですわ」

 

 あからさまに無愛想な表情の良夜に紫は微笑を浮かべ、日傘をくるくると回す。その動作一つ一つが言葉では言い尽くせないほどに美しく、良夜は顔を赤くしてそっぽを向いてしまう。

 「可愛いは正義!」「うるせーよショタコン!」ニヤニヤしている紫に良夜は腹の底から咆哮するが、耳の先まで真っ赤になってしまっているせいで威厳もなにも感じられない状態だ。銀髪が赤色を目立たせているのも原因の一つか。

 良夜の怒号をのらりくらりと躱しつつ、紫は良夜の手を取ってスキマから身を乗り出す。心地よい柔らか味と温かさに右手を包まれた良夜は、再び顔を真っ赤に締めてしまった(赤面症の疑いあり)。

 スキマから出た直後、良夜はあまりの眩しさに「うっ……」と目を閉じてしまう。先ほどまで暗闇同然だったスキマにいたことが原因だ。

 しかしスキマの中にいた時間がそこまで長くなかったおかげか、良夜は数秒で元の視力を取り戻す。

 そして、何度も瞬きを繰り返した良夜の目に、紫に連れてこられた場所の全容が明らかになってきた。

 古びているのにどこか安心感を持てるような木製の柱。

 古くからの技術が形と現れている闇色の瓦屋根。

 周囲には豊かすぎるほどの自然が拡がっていて、空は雲一つない青空。

 そう、まさに、これは……――

 

「ド田舎に佇む、木造平屋……ッ!」

 

 なんともファミリー感漂う木造平屋との邂逅に、良夜はその場に凍りつく。幻想郷よりも科学が遥かに進歩しているハズの現代に来たはずが、向かった先には何故か古き良き文化の象徴――木造平屋。

 幻想郷でも見ねーよこんな家……、と良夜があからさまに落胆した――直後。

 

「今私の愛家に失礼な賛美を送ったのはどこの馬の骨じゃごるぁぁああああああああああああああーッ!」

 

 まさかの銀髪美女の登場だった。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

「と、いうわけで、この人が貴方のお母様ですわ♪」

 

「はいはい、久しぶりね良夜ぁー」

 

「誰か俺に新天地への適応力をください!」

 

 木造平屋から飛び出してきた銀髪美女にとりあえず一発ゲンコツをきめられた良夜は現在、例の木造平屋の居間で卓袱台を囲っていた。もちろん、良夜と銀髪美女と紫の三名で。

 明らかに自分だけ置いてけぼりな状況に頭を抱える良夜だったが、紫はそんなのお構いなしだと言わんばかりに話を進める。

 

「この人の名前は沙羅白夜(さらびゃくや)。貴方と血の繋がった、正式なお母様ですわ」

 

「もうっ、紫さまに『お母様』って呼ばれる日が来るなんてっ! 白夜感激っ!」

 

 まさかの若々しさを披露してくるキャピキャピ娘だった。

 腰のあたりまで伸びている銀髪、ぱっちりとした目の中で輝きを放つ翡翠色の瞳。ただその二つだけでも結構異様だというのに、それ以上に異様な存在感を放っている巨乳。良夜よりも身長が高くなかったらいわゆる『ロリ巨乳』と呼ばれる法律シカトな存在になっていたおそれがあるほどだ。

 そして更なる特徴を挙げるならば、お前その年で似合うってどうなんだよ級のゴスロリ。現代日本ではコスプレと呼ばれているハズなその装束を、白夜は普段着のように見事に着こなしてみせていた。……いや、実際に普段着なのだろう。

 未だ記憶が戻る気配はないが、この人が自分の母親だということは事実なのだろう。実際、今の壁に自分の幼少期と思われる写真が所狭しと貼られているし。飾るではなく、貼られている。画鋲で直接、壁に貼り付けられている。

 もはや壁紙=良夜の写真と化している居間に寒気を覚えていた良夜だったが、白夜のテンションが限りなくオーバードライブしていく様子に頭痛を覚えることとなる。

 

「一年ぶりかなぁっ、あんまし大きくなってないねっ。まぁっ、こんなに若い私が丹精込めて育てたわけだからっ、老化速度が速いわけないかぁっ!」

 

「あ、いえ、その」

 

「良夜の一年間は紫様に聞いてたよっ? まさかあの射命丸文に拾われるなんてねぇっ」

 

「え、なんで、文のことを知ってる風な」

 

「――あの鴉天狗、私の可愛い息子に色目使いやがってぇっ……ッ!」

 

 ピシッ、と空気が凍りついた。

 「え? え?」と大量の疑問符を頭上に浮かべる良夜に構うことなく、白夜のロケットブースターは加速を続ける。

 

「私より年上の癖に、あろうことか私の可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い――可愛すぎて食べちゃいたい良夜に、色目使うなんてねぇっ!」

 

「(怖ぇーぇえええええええええええええええええええええええええええええーッ!)」

 

 ドン引き以外の行動ができないほどのレイプ目で念仏のような長さの言葉を息継ぎも無しに言い放つ白夜。

 どうしようもない恐怖に襲われた良夜は隣の紫に助けを乞うべく視線を向けるが、

 

「……………ぐすっ」

 

「紫さん涙目ぇーぇえええええええええええええええええええええええーッ!」

 

 最強の妖怪が少女のように泣いていました。

 真の親バカがブチ切れると最強の妖怪すら超越するのか! というか、こんな母親に毎日のように俺の情報を運んで来ていた紫さんマジパネェ! 脅されたのかもしれないが、よく続けてこれたな! まさかのタイミングでの下剋上に良夜は驚きを超越して感嘆の声を心の中で上げていた。……いや、開き直ったというべきか?

 そして数秒後、もはや人間とか妖怪とかいう境界を超越していらっしゃる白夜さんにガッシィ! と両肩を掴まれてしまう良夜。涙目を通り越して全力号泣中な良夜に白夜は怖ろしいほど色っぽい笑みを向けながら――腰を奇妙にくねくねさせながら言う。

 

「良夜と会えない一年間は寂しかったなぁっ。毎日毎日毎日良夜のことを思い出しては自分を慰めてたしぃっ。あはっ、私っ、母親なのにっ、おかしいよねぇっ?」

 

「何を慰めていたのかについてとか今さら母親の在り方について意見する気はないですとかいろいろ言いたいことはあるけどとりあえず俺を解放してください!」

 

「あはっ、いやでぇっす」

 

「紫さぁ――――――――――ん!」

 

「ごめんなさい、沙羅くん。白夜は――私にも止められないの」

 

「紫さぁん!?」

 

 最強の妖怪によるまさかの降伏宣言だった。

 現在どころか未来まで絶望一色に染められてしまったことで反抗する気を失くしてしまった良夜は体から力が抜けてしまっていて、それを自分の良い方向へと盛大に勘違いしてしまうのが沙羅白夜というヤンデレ若乙女母なのだ。

 白夜はぐだーっと人形のようになってしまっている良夜を抱え上げ、今を勢いよく飛び出した。

 そして『あまりの色っぽさに世の男が全て忠誠を誓うんじゃね』級の笑みを浮かべつつ、良夜の顔を胸で圧迫しながら駆けていく。

 

「今日は久しぶりに一緒にお風呂に入ろうねっ! 大丈夫、私は別に恥ずかしくないものっ! だって母息子(おやこ)だしねっ!」

 

「ちょっと待って!? 俺、本当にアンタと一緒に風呂に入ってたの!? 記憶は微塵も残っちゃいねーけど、流石にそんな自殺行為はしてなかったと思うんだけど!?」

 

「あははっ、良夜を胸で洗ってあげるの久しぶりだなぁっ! えへへっ、嬉しすぎていろんな意味でスパークリンッ!」

 

「いやぁあああああああああああああああああああああああーッ! 助けて紫さぁ―――――――――――ん!」

 

 木造平屋全体に良夜の悲鳴と白夜の奇声(嬉声とも言う)が響き渡る中、紫は勝手に準備したお茶を優雅に飲み、

 

「平和ですわ…………私だけ」

 

 貞操だけは守ってほしいものですわ、と心の中で静かに合掌していた。

 





 変態ヤンデレ若乙女母に連れ去られた良夜の運命や如何にっ!?

 次回は文視点です。

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