欠けたモノ   作:待兼山

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そこにある花、やジクソーを書かずに何してんだ。と自分で思います。
海外ミステリを読んでいる内に書いてました。



欠けたモノ

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合理的に設計された建物の無機質な廊下。

目鼻立ちが整い、肩辺りで綺麗に切り揃えられた黒髪。容姿端麗の言葉そのままのような女性が何処にでもあるかのような一室のドアノブに手をかける。

眉間は微かに寄り、堪えたため息は行き場を失くし、その全てを払うかのようにドアを開ける。

 

一つの事務机に二人分の事務椅子。

その他には何もない室内。

そこに一人きりの女性が居た。

「ごきげんよう、蓉子さま。ノックもなしに入室なさるなんて、珍しいですね」

あどけない笑顔で黒髪の女性に声を掛ける。蓉子と呼ばれた女性は反射的に笑顔を浮かべる。

「物思いの邪魔をしてはいけないと思ってね。調子はどう?」

向けられた挨拶を返さずに真向いの椅子に座る。

蓉子にとっての相対する際の手順。笑顔で、向けられた言葉とは違う事を返す。好意と悪意、その表と裏を同時に相手に向ける。結果、混乱から陥落する。

「かなり良いです。蓉子さまはお変わりありませんでしたか?」

 

ある時から関わり、そして気が付けば離れていた二人。交差した線は添う事が無く、ある線があったから介在していた。

その線を蓉子は思い浮かべた。それにより次々に顔を出す面々。懐かしさが痛く感じられた。

「ええ、変わりないわ。さて、瀬尾 祐巳さん。お話して頂けるかしら?」

もう変わってしまった事に過去の懐かしみを混ぜるつもりは無い。その気持ちを笑顔と共に目の前の女性に示す。フルネームで言われた女性は肩を竦め、苦笑いを浮かべる。おもむろに両腕を掲げて、装飾のように手首に填められてるモノを愛おしげに口づける。

「ねえ、蓉子さま?私は、これが本性だったんですよ。貴女から大切な人たちを奪い、それに罪悪も感じない。込み上げるものはもっともっとと欲し続けるこの心の渇き。」

言い終わると瞼を閉じ、机に伏せる。

「瀬尾さん、おふざけは止めなさい。何も話していないわ、全て今日こそ話しなさい。」

蓉子はそこで一旦、話を切りながら瀬尾の背後に回り込む。

「何故、瀬尾さんが話した供述とこちらが鑑定や予測した結果に齟齬が生じるのか。何を貴女は隠しているのか。再会から該当日までの全てを。」

瀬尾の肩に手を掛け、引き起こして背もたれに軽く当てる。それが合図になったのか、瀬尾は肩を震わせ出す。

「あはははっ...!蓉子さま、齟齬があろうがなかろうがいいじゃ、ありませんか。貴女の気は、それで晴れるんですか?晴れないでしょう?」

笑いからの肩の震わせを見せつけられ、蓉子はため息を出す。

「瀬尾さん、虚勢を張るのは止しなさい。隠しても貴女には得ではなく、傷だけが残るわ。魘される夜と苛む昼、隠れるように起きる朝には変わりはないでしょうけど、自責の思いを和らぎながら贖罪していける道を選択出来るのは今よ。」

安心させるように和らげた表情、それに添えるように椅子を真正面ではなく斜め前に座る。

瀬尾は顔に何も浮かべずに、宙を見つめ息を吐き出す。

「本当に、何も...お変わりありませんね...私は、こんなにも汚れたのに。」

蓉子は昔の後輩を見た錯覚をした。

短い期間だが、関わり蓉子が思い描くイメージを構築するには彼女が必須だと思わせる頃の。

本音はこの件に関わるのさえ躊躇い、この後輩への憤りと悲しみ、そして悔しさが綯い交ぜになり占める。それでも毅然と瀬尾と相対出来るのは、蓉子の大切な人たちへの想いからだった。そして、その想いを瀬尾に悠然と突きつける事で悔やむ気持ちを持って欲しかった。蓉子にしてみれば、瀬尾も大切な人である事に変わりはない。甘やかした後輩で、大切な人たちの心をいとも簡単に解した、ヤキモチを妬いた人物でもある。

ただ、錯覚なのだ。

ここに座る人物は時の流れからか、蓉子が会わなくなったどの時点からか、中身が誰かに入れ替わってしまった。

あどけなく笑う以外、そっくりそのまま誰かに。

 

 

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私は昔、優しい女神さまたちに囲まれていました。

学歴はあれど、そこまで突き詰める学をしていませんからわかりませんが。

面白好きな女神さま、悪戯好きな女神さまに優しくも厳しくもあったほとんどの人の憧れの女神さま。

男性的に整いながらも女性的でもあった女神さま、私の最愛の、忘れえぬ女神さま。

フランス人形のようにふんわりとそれでいて芯を持った女神さま、可愛らしいのに聞く耳持たぬを体現したかのような女神さま。

他にも私には、夢現と思わせるような女神さまに囲まれていました。

いつもお祈りでは醒めないで、そうお願いをしました。

女神さまが穢されるくらいなら、喜んでわが身を捧げようとも祈り願いました。

 

とにかく、その日々が私には一番の記憶に残る歳月で輝かしい時間でした。

結婚はその過ごした人たち誰よりも早かったんです。

名高いあの学園で活躍した人たちですから、時代と共に女性が活躍していく中で結婚はどうしてもお後お後になっていくような傾向がありました。

私は、父の事業が下がり気味になる、あの経済不況や建築ラッシュはあれど、疲れを誤魔化すような状況とで手足を伸ばして欲しくなって。

ええ、それでも好ましい方でした。気になる点を挙げだしたらキリがないじゃあないですか。

女神さまたちも欠点はありましたしね。

生きとし生けるものには必ずや、欠点がある。

そう憧れの女神さまにお教え頂きました。

 

どうしてそうせざる得なかったか。難しいですね、それについては。

ええ、担当の方にもお話はしていません。奪った側には言い訳は見苦しいだけです。そこに何があったかとか、気持ちとか何から何まで。

ただ、皆といつまでも一緒に並び、追いかけ歩きたかったんです。

その気持ちに嘘偽りもありません。

早まった結婚と生活は、私を歪ませたのかもしれません。

もう二度と帰らぬ日々、あの担当の方に私を押し付けて、それなのに私は何も見せなかったことが申し訳なく感じられます。

さあ、眠りましょうか。

帰らぬ時間だって、夢の中では続きがあるかもしれませんから。

 

 

 




今月中にはそこにある花、かジクソーの最新一話を投稿したいです。
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