ヤマトin艦これ   作:まーりゃん000

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第5話途中から分岐。

>前置きはいいからさっさとヤマトのチートプレイみせろや!

だいたいこういうこと。


第5話(細けぇこたぁ良いんだよ!)

 なるほどつまり――地球を救えと。

 

 体が熱くなるのは酒のせいなのか、はたまた別の要因なのか。

 「地球を救う」

 それはヤマトに課せられた最大の使命――それを俺がやらないでどうするというのか。

 

「よっしゃ、分かった――任せとけ!」

 

 俺は勢いよく立ち上がった。

 

 思い立ったが吉日、という言葉がある。何かしようという気持ちになったら、すぐにやるのが良いという格言だ。

 ならば、救いに行こうではないか。

 地球を。

 

「乾杯だ! そうだな……俺たちに敵対する、不運なる深海棲艦の健闘を祈って!」

 

 一周何を言っているのか分からずあっけにとられたらしい妖精たちも、俺の発言を理解するにつれ皆一様に明るい表情になる。

 妖精たちも「ウッシャー!」「フウンナルシンカイセイカンニ!」「シンカイセイカンノ、ケントウヲイノッテ!」と立ち上がる。

 

「乾杯!」

 

 俺の音頭で妖精たちも「カンパーイ!」と叫び、酒を飲み干した。

 そして、俺は叫ぶ。

 

「総員、配置に付け! 出撃準備! もたもたするな!」

 

 その号令に、工廠の妖精たちはびっくりした様子。だが、頼もしいことにヤマトの妖精たちは面食らいながらも艤装へ向かってダッシュを始めた。流石だ。

 俺も艤装に近寄り、ジョイント部を近づけて腰を下ろす。

 がしゃん、と接続される音がして、俺に元々あった体が戻ってきたような感覚に陥る。

 

 妖精さんも「ハッシンジュンビ!」「ホジョエンジンシドー!」「ハドウエンジンナイニ、エネルギーチュウニュウ!」と、声を出しながら発進準備を進めていく。

 補助エンジンが始動すると、艤装が起きたのが分かった。火が入らなければ動かしようがない重たい艤装も、今は俺の思うがままに動く。

 俺は立ち上がり、ドックから海へと坂を下りる。コンクリートの硬い感触から、海の柔らかい感触へ。普段であれば踏み抜いてしまうはずのそれも、艤装を負った俺は踏みしめることが出来る。

 

「灯火管制を敷く。エンジン吹かすまで見られないようにな」

 

 「リョウカイ!」という妖精さんの声が聞こえ、艤装で輝いていた着陸灯が消えた。

 

 微速前進、0.5――俺は足を動かすことなく進み始める。

 「ガンバレヨー!」「イクナラ、ナンセイショトウガイイヨー!」「マカセタゾー!」と、工廠の妖精たちの声を受けて、俺たちは胸に手を当て、敬礼。

 

 ドックを抜けると、暗い海が広がっていた。昔は文明の光に照らされ明るかったであろう島々も、今では暗い影しか落とさない。

 星々は明るいが、月の姿は見えない。俺たちにとっては有難いことだ。

 

 

 進路を島と島の間に向ける。南の方角だ。そして、第一戦速へ増速。

 内海ということもあり穏やかな波を切って進む。

 聞こえるのは波の音だけの、静かな海――その中に響く、ヤマトのエンジン音。

 「ハドウエンジンナイ、アツリョクジョウショウ!」「エネルギージュウテン90パーセント!」と、妖精たちが報告をくれる。

 

 そして、補助エンジンの出力最大。速度もぐんぐんと上がり、最大戦速に達するが――それは洋上での話。

 

「エネルギージュウテン120パーセント!」

 

 そして、その時はやってくる。

 フライホイール始動。徐々に回転数が上がっていくのが分かった。

 「テンカ、10ビョウマエ!」と、妖精さんの声。カウントダウンが始まる。

 

 震えるほどの力が湧いてくるのが分かる。無性に飛び出したいような、そんな感覚。

 そう、俺は飛び出したいのだ。重力に縛られ、水に支えられているこんな状況から。

 

「3、2、1――」

 

 ――そして妖精さんのカウントダウンが終わる。

 

「フライホイールセツゾク! テンカ!」

「ヤマト、発進!」

 

 俺が叫ぶと同時――艤装の後ろから轟音。

 波動エンジンの音が轟き、海水を吹き飛ばしながら俺の身体を押し上げる。

 凄まじいパワー。重たい艤装であるとか、飛ぶのに向かない形状であるとか。

 そういったものを問答無用で押し上げる、果てしない無限の力。

 

 微かに体が右に傾くのを堪え、波動エンジンの出力を上げて右足で水面を蹴る。

 そして俺の足は水面を離れた。

 俺は――ヤマトは本当の意味で、発進したのだ。

 

 

 

 

 

 安定翼を展開し、高度を取る。

 上昇角40度。俺はぐんぐんと高度を上げていく。下を見れば、既に鎮守府はだいぶ小さく、遠い。

 

「これがヤマト、か……」

 

 空を舞いながら、そう呟く。全く、規格外にもほどがある。たぶん、このまま宇宙にも問題なく行けるのだろう。

 そこまで行くつもりはないが、一度衛星軌道から地球を確認してみるのも良いかもしれない。深海棲艦の拠点が分かるかもしれないし。

 

 そう考えていると、「レーダーニ、カンアリ!」と久しぶりにコスモレーダーの妖精さんの声。

 どこか、と尋ねると「カンエイ2! 4ジノホウコウ、キョリ200000!」と帰ってくる。

 距離20万メートル――200キロ?

 

「えらく遠いな」

 

 そう言うと妖精さんは「タカサガアルカラ、トオクマデミレル」と答えてくれた。そういえば、高さが足りないとは言っていた気がする。

 そしてさらに報告が入る。5時の方向、艦影3、距離280km。11時の方向、艦影5、距離350km。

 十分な高さがあるお蔭で、敵味方の区別もつくらしい。全て敵だ。

 

「――やれるか?」

 

 ショックカノンの装備妖精に語りかける。「アタボウヨ!」との力強いお言葉。

 なら――やるか。

 

「主砲発射準備! ショックカノンを選択!」

 

 「ウォッシャー!」「ヤルゾー!」と妖精たち。まずは、北西の敵から片付ける。

 艤装を水平方向に。面舵を取って、艦首を敵に対してやや斜めに向ける。これで、後ろの第3主砲も含めて最大火力を撃ち込める。

 

「第1主砲と第1副砲は1時方向の敵艦! 第2第3主砲と第2副砲は2時方向の敵艦を狙う!」

 

 砲塔が、重たい音を立てながらも、思っていたより素早く動く。

 仰角の調整を加え、「ハッシャジュンビ、ヨシ!」と妖精さんの声。

 そして俺は叫ぶ。

 

「撃ちぃ方ぁ始めっ!」

 

 閃光。三式を発射した時よりもやや軽い音と、それを引きずるような音が響き渡る。

 夜空を照らしだしたその閃光は、5本の矢となって遥か彼方へと吸い込まれていき――無慈悲に敵艦を貫く。

 「カンエイゼンショウシツ! ゴウチンデス!」という声に、俺たちは湧き上がる。きっと奴らは、自分の死も知ることができなかったに違いない。

 

 だが、まだ敵はいる。

 南南東方面の敵に照準を合わせようとして、その報告が入った。

 

「レーダーニ、カン! テキカン5! ミカタ5! 11ジホウコウ、キョリ400キロ!」

 

 艦娘に損害あり。逃走中と思われる――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 きっと今日はついてなかったのだ。

 まず目覚める間際に見た夢が、戦闘で中破して青葉に笑われる夢。

 寝ぼけ頭で顔を洗いに行けば扉の枠に小指をぶつけ、出撃前には解けた靴の紐を踏んでこけた。

 そして資源輸送任務の復路につけば、戦艦ル級と出くわす。

 全く、今日はついてない――。

 

『衣笠ぁっ! 何ボサっとしてんだ! 砲撃来るぞ!』

「分かってるわよ!」

 

 摩耶の声に現実に引き戻された私は、ともかく敵の方へと砲撃を続けながら回避行動を取る。

 敵は戦艦ル級が2隻に、重巡リ級が2隻、そして軽巡へ級が1隻。対してこちらは摩耶、私、足柄、長良、そして五十鈴。

 ――厳しい状況だった

 

 ル級が1隻なら、勝てる自信はあった。けれども2隻――その上、先手を取られて足柄がほぼ大破。

 「まだやれるわ!」と砲撃には参加しているが、五十鈴がサポートしなければ航行すら危うい状況だ。

 斯くいう私も数発掠めている。というか、皆至近弾を何度となく貰っている。直撃を食らってないのは、最早ただ運が良かっただけとしか言いようがない。

 提督との通信では、既に救援は出したとのことだが――さて、何時間かかることやら。

 絶望的なこの状況。私たちにできることは、ひたすら逃走を続けることだけだった。

 

『……く、ふふふ……』

 

 砲撃音と着弾音に、全力で回る機関の音に水しぶきの音。爆音響き渡るこの戦場でも、マイク越しのその笑い声は聞こえてきた。

 それは足柄の声だった。

 

『何笑ってるのよ!? 大丈夫!?』

 

 足柄を支える五十鈴の声。それに対し、足柄は『嫌よね……』と答える。

 何のことだ、と思って足柄たちの方を見ると、足柄が五十鈴を振りほどき、こちらに向かってくるところだった。

 

「足手まといになるって! 嫌よね!」

 

 全力で機関を回して逃げている私と、敵へ向かって突っ込む足柄。あっという間に距離は縮まり、吠える声が直接耳に入ってきた。

 

『こんのっ! 馬鹿がっ!』

 

 本当に、馬鹿な行動だ。摩耶の言葉に同意しながら、すれ違う足柄を抱きすくめるように捕まえた。

 

「離して! 私がいたら、貴方たち逃げられないでしょ!」

「何言ってるのよ! あなた一人残ったところで、大して変わりなんかないわよ!」

 

 ぎゃあぎゃあと騒ぐ足柄に、そう言い聞かせる。

 そう、1人残ったところで大差はない。既にかなり距離を詰められている以上、足柄を置いて速度を上げて逃げたとしても、逃げ切るまでに全滅する可能性の方が高い。

 だから――

 

「――私も残るわ」

「え!? だ、ダメよ! 貴女まで死にに行く必要なんか――!」

 

 有無を言わさず、私も反転。足柄とともに敵の方へと向かう。

 それに気付いた摩耶が無線越しに吠える。

 

『おい衣笠! お前まで何してんだ! 戻れ!』

「衣笠さんにおまかせ、ってね」

 

 そう答えて、無線を切る。

 隣にいる足柄は、諦めた様子でこちらを見ていた。

 

「本当に良いの? お姉さんだっているんでしょ」

「それを貴女が言っちゃうの?」

 

 4人姉妹の三女が言うセリフではないだろう。こんな状況だというのに、思わず笑ってしまう。

 そんな私をて、足柄も「それもそうね」と笑う。

 

 死ににいくというのに、不思議と心は晴れやかだ。

 それで助かる命があるのならば、それも悪くないと思える――

 

 ――そう思っていた。

 

「摩耶!?」

 

 唐突に足柄が振り返る。その顔には絶望すら混じった焦りが浮かんでいる。

 無線で何か聞こえたのか。そう思って同じく振り返ると――遠くに見える摩耶の、その艤装が吹き飛んでいた。

 煙どころか炎を上げる艤装は、どう見ても大破。摩耶もふらふらと揺れており、もはや立っていることすら怪しい状況だ。

 

「そんな……」

 

 誰かが命を投げ出せば、他の皆は助かる――なんて、そんなに現実は甘くない。

 死ぬときは誰しも死ぬのだ。

 そして多分、私たちにとってそれは今日だったのだろう。

 

 長良と五十鈴が、必死に摩耶を引っ張ろうとしている。けれども、摩耶はそれを振り払って何かを叫んでいる。

 きっと、私たちと同じことを言っているのだろう。

 彼女たちはまだ、十分走れる。経験不足気味ではあるが、私たちが抑えれば逃げ切れるかもしれない。

 

「足柄さん」

「ええ、やるわよ!」

 

 そして、私たちは覚悟を決めた――。

 

 

 

 ――けれども、本当に現実は甘くない。

 誰かが命を差し出したところで、誰かが助かるとは限らないし――誰も命を差し出さなくても、誰かが助かることもあるのだ。

 

 振り向いて敵へと相対した私たち。

 その私たちが見たのは、振り向いた瞬間、形容しがたい音とともに私たちの間を駆け抜けた青い閃光が戦艦ル級を撃ち抜くところだった。

 

 撃ち抜いた閃光が消えた後には、何も残らない。ごっそりとその体を削り取られたル級は、次の瞬間弾薬に引火したらしく爆散した。

 その輝きが、夜空と海を赤く染める。

 

「――うそ」

 

 思わず口からこぼれた言葉。

 だって、戦艦ル級を一撃で沈めるなんて、伊勢や日向だって出来やしない。

 信じられない思いとともに振り返るが、それを成した者の姿は見えなかった。

 

 一体どこから――と思った瞬間、水平線上の星が青く瞬き――再び私の横を駆け抜けた。

 それを追った先には、撃ち抜かれた2隻目のル級。これも僅かな反撃すら許されず、その身を海に帰した。

 

「どういうことなの……?」

 

 今目の前で起こっていることが信じられない、といった様子の足柄の声。

 私もきっと、そんな感じの表情をしていることだろう。

 

「援軍、なわけ……ないわよね……」

 

 いつの間にか、足は止まっていた。本来なら自殺行為に等しいことだが、今に限ってはそれが許された。

 目の前では、深海棲艦が回頭している。恐らく、反転して逃げるつもりなのだろう。

 けれども――それは叶わない。

 

 ――次の瞬間、螺旋状に回転する3本の光が、全ての深海棲艦を撃ち抜いた。

 

 重巡リ級は爆発。もう一体の方も海の藻屑と消えた。

 へ級に至っては、閃光に包まれてすべて消え去ってしまったように見える。

 

 そして、海には静寂が訪れた。

 砲撃音も、着弾音も。何も聞こえなくなった海には、ただ静かな波の音だけが響く。

 

「終わった、のかしら……」

 

 そう呟く足柄の声で――ようやく私たちは助かったのだと気付いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「撃ち方止めっ!」

 

 コスモレーダーの装備妖精さんから、敵艦轟沈の報を受けて、俺はそう叫ぶ。まあ、基本俺が撃っているので、言うのは気分なのだけれども。

 

「艦娘たちはどう?」

 

 そう尋ねると、「ケガハシテルケド、ダイジョウブ」との報告。なら良かった。

 ショックカノンの妖精やら、艤装のクルーの妖精やらが艤装の上に現れて、やんややんやと騒ぐ。

 艦娘を助けられたのがよっぽど嬉しかったのだろう。

 

 しかし、艦娘が邪魔で射線が取れなかったときは焦った。

 そうこうしているうちに摩耶も被弾するし……結構危なかったかもしれない。

 だが、助けられた。

 その確かな事実を胸に、俺は言う。

 

「おら! お前ら本番はここからだぞ! 持ち場に戻れ!」

 

 「オットコリャイカン」「ヤッタルデー!」と妖精さんたち。調子に乗りすぎな気もするが、士気は極めて高い。

 この調子なら、俺たちはやれるだろう。

 「ヤマトサン! キョウハドコマデ、イキマスカー!?」と、妖精さんの声。

 

「そうだな……とりあえず深海棲艦さんちに、ちょっと沖縄返してもらいに行こうか!」

 

 「ウォッシャイクゼー!」と妖精さん。波動エンジンを再び航行出力へ入れ、発進する。

 

 

 

 

 

 ――そして、その日。

 沖縄の地の深海棲艦は鉄の雨に見舞われ、全滅したのだった。

 

 

 

 


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