電撃!!ペルソナ8   作:三澤未命

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第2話『籠の中の鳥』

<Aパート>

 

○イメージ映像

 宇宙空間。

 そこに浮かび上がる、深い霧に包まれた地球の姿。

 そして、日本全国に広がる災害の状景。

N「20XX年、人類は絶望に支配されつつあった。度重なる自然災害、教訓虚しく再発する人為的災害、それらによって家族や大事な人を失った人間は、弥が上にも絶望の淵に立たされた。そして、絶望した人間を闇の世界へ引きずり込み、シャドウなる魔物に変化させてしまう恐るべき秘密組織・天之狭霧神団(アメノサギリ)が次々と絶望した人間をシャドウ化させていった。このままでは、人類は絶望から絶滅を生む道へと歩むことになる!」

 絶望した人々がシャドウになる、そしてアメノサギリが生み出した巨大なシャドウの邪悪な姿が映し出される。

N「その時! 絶望の淵に立たされた人類を救う戦士たちが現れた!!」

 順次現れるペルソナ戦士たち!

ペルソナ戦士たち「電撃!! ペルソナ8!!!!!!」

 

○オープニング曲

 

○サブタイトル

『第2話 籠の中の鳥』

 

○八十神高校・2年の教室

 千枝が教室に入ってくる。

千枝「おっはよー!」

 周囲のクラスメイトに挨拶しながら、自分の席へと歩いていく千枝。

 と、既に座っていた悠と目が合う。

千枝「……あ、え……っと……」

 悠から目そ逸らして自分の席に座る千枝。

 何故かムスッとした表情。

 悠は何事もなかったかのように正面に向き直る。

 そこへ陽介が登校してくる。

陽介「いやあ、参った参った!」

 陽介が頭を掻きながら千枝と悠の間へ割って入る。

陽介「よう鳴上! おはよ!」

 陽介の挨拶にも、悠は何も応えない。

 しかし、陽介は臆することなくそのまま千枝と話し続ける。

陽介「また転んじまったぜ。これで今月5度目! ヘヘッ……」

千枝「……花村!」

陽介「え?」

 千枝、陽介の身体を引き寄せて小声で話す。

千枝「アンタ、なんで平然とアイツに挨拶できんのよ!」

陽介「なんで? アイツは俺たちに必要な奴だぜ?」

 明るい表情の陽介。

 一方、訝しげな千枝。

千枝「だって……」

 陽介、そんな千枝に構わず再度悠に話しかける。

陽介「鳴上ィ~、古典の宿題やってきた? わりーけどさあ、ちょっと見せてくんない~?」

 黙って古典のノートを陽介に差し出す悠。

陽介「おお! サンキュー!!」

千枝「……はあ」

 溜め息をつきながら机にへたり込む千枝。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 放課後、チャイムとともに陽介が鞄を持って立ち上がる。

陽介「よっしゃ~! 今日は帰ってゲームすんぞ~」

 そこに近寄っていく千枝。

千枝「ねぇ花村ぁ、今日も来なかったね……、雪子」

陽介「え? あ、ああ……、そうだな。旅館、そんなに忙しいんかなあ」

 雪子というのは、千枝の幼馴染みで現在同級生の天城雪子のことである。

 天城屋という老舗旅館の一人娘で、家の手伝いで学校を休むこともしばしば。

千枝「今朝から何回かメールしてるんだけど、返事もないし……」

 と、千枝の手の中の携帯電話がブルッと震える。

千枝「えっ!? ……あ! 雪子! 雪子からだよ!?」

陽介「おお、良かったじゃん。なんて?」

千枝「……と、……ええっ!? は、花村ぁ~! コレちょっと!!」

陽介「何だあ!?」

 陽介が千枝の携帯電話を覗く。

 そこには、『さようなら』の一言が。

千枝「ちょ……、どういうことなの!?」

陽介「分かんねー。……とにかく行ってみよう!」

千枝「うん!」

 教室を飛び出していく陽介と千枝。

 そして、その二人を横目でジッと見ていた悠がゆっくりと立ち上がる。

 

○天城屋旅館・正面入口

 陽介と千枝が旅館の前まで辿り着く。

 と、入口で何やら仲居たちが騒いでいる。

千枝「あれ? ……何だろ。す、すみません!」

仲居の一人「……あ! 里中さん!! 雪ちゃん見なかった!? 学校には行ってない!?」

千枝「きょ……、今日は結局休んでました。……どうかしたんですか!?」

仲居の一人「今朝から雪ちゃんがいないのよ! 電話もつながらないし……」

千枝「ええっ!? ……花村ぁ」

 千枝が悲しげな目で陽介を見る。

陽介「ああ」

 真剣な表情の陽介。

 と、陽介の携帯電話が特殊な音を鳴らす。

陽介「……えっ!?」

 電話に出る陽介。

陽介「はいこちら花村! ……はい。……分かりました。直ちに向かいます!」

 電話を切る陽介が千枝に向き直る。

陽介「里中、シャドウが出た。……行くぞ」

千枝「ええっ!? こんな時に……」

陽介「俺たちは選ばれしペルソナ戦士だ。行かなければならない」

千枝「……うん」

 千枝、俯いていた顔を上げて、天城屋旅館の方を向く。

千枝「雪子、待ってて! すぐ戻ってくるからね!」

 陽介と千枝、目を合わせて頷き合い、その場を走り去る。

 

○裏通りの路地

 路地へと走り入る陽介と千枝。

 隅に止まっていた車の前で立ち止まり、変身アイテム・ペルソナアイを構える。

陽介・千枝「ペルソナ・チェンジ!」

 陽介と千枝がそれぞれのペルソナアイを着眼!

 ピカッ!と二人の目元が光り、陽介がジライヤに、千枝がトモエに変身!

 目の前の車のバックミラーに飛び込んでいくジライヤとトモエ!

 

<Bパート>

 

○黄泉

 霧が立ち込める黄泉の世界に入り込んだジライヤとトモエ。

 何かに絶望し、黒い塊となった人間体シャドウたちが襲いかかってくる!

ジライヤ「おいでなすった!」

トモエ「早く……、早く親玉を探さなきゃ!」

 手刀や蹴りでシャドウたちを次々と気絶させていくジライヤとトモエ。

 と、前方に二つの気配が!

ジライヤ「……ムッ! あっちか!?」

 霧の中、前方で稲妻が走る!

 ジライヤとトモエがその稲妻の方へと駆けていく。

 と、そこには巨大な鳥型シャドウと戦うイザナギの姿があった!

ジライヤ「……鳴上!」

 戦いながら、チラリとジライヤとトモエを見遣るイザナギ。

イザナギ「お前らか……! こいつは俺が倒すから、引っ込んでろ!」

ジライヤ「ヘッ! そう言われて素直に引き下がる俺たちじゃねーっての」

トモエ「……え?」

 トモエが鳥型シャドウをジッと見据える。

 すると、その胸の辺りに薄っすらと浮かぶ雪子の顔!

トモエ「ゆ……雪子!!」

 そう叫ぶや、イザナギと鳥型シャドウの間に割って入るトモエ。

イザナギ「何をする!?」

トモエ「やめて! あれは雪子よ! 雪子なのよ!!」

ジライヤ「何だって~!?」

 トモエの言葉に、ジライヤも鳥型シャドウを凝視する。

イザナギ「何をバカなことを!」

 イザナギが鳥型シャドウに向かってフールスピアーを構える。

トモエ「ダメッ!!」

 トモエがイザナギの腕を掴んで攻撃を止める。

イザナギ「何をする!?」

トモエ「あれは私の友達の雪子よ!? 理由は分かんないけど、雪子がシャドウになっちゃってるんだわ!」

イザナギ「……フン。たとえそうだとしても、親玉を殺らねばシャドウが増え続けるぞ!?」

トモエ「できるわけないじゃん!! 雪子なんだよ!?」

 トモエ、そう言いながらイザナギを突き飛ばす。

 後方に転がるイザナギ。

イザナギ「……あいつ、正気か!?」

ジライヤ「里中……」

 

 トモエ、鳥型シャドウの正面に立ち、大きく両手を広げる。

トモエ「雪子! 雪子なんでしょ!? ……返事をして!!」

 鳥型シャドウが火炎弾を吐く!

 トモエの身体をかすめる火炎弾!

トモエ「……うっ!」

ジライヤ「里中!!」

トモエ「……だ、大丈夫。私が……、私が助けなきゃ。……雪子ーーーっ!!」

 トモエの叫びに、鳥型シャドウが一瞬動きを止める。

 そして、再びその胸元に雪子の顔が浮かび上がる。

鳥型シャドウの胸元に浮かんだ雪子「……ち……、千枝?」

トモエ「ゆ……、雪子!!」

ジライヤ「マジか!? あのシャドウ、マジで天城なのか……」

 たじろぐジライヤ。

 そして、イザナギは無言で立ち上がる。

トモエ「雪子! どうしたの!? 何があったの!?」

鳥型シャドウの胸元に浮かんだ雪子「……私は、私は籠の中の鳥。一生……、一生外へは出られないの。ろくに学校へも行けず、友達とも遊べず……、外の世界の事を知らないまま人生を終えていくんだわ」

トモエ「雪子……」

鳥型シャドウの胸元に浮かんだ雪子「そんな人生……、絶望以外の何だって言うの!?」

 涙ながらに叫ぶ雪子。

ジライヤ「そうか……、それで天城はここに引きずり込まれて……。しかし、親玉シャドウになっちまうなんて……」

イザナギ「それは、その女自身に強いペルソナ能力があった証しだ」

ジライヤ「何だって!?」

 イザナギ、再びフールスピアーを構える。

イザナギ「おい! 事情はどうあれもうそいつは親玉シャドウだ! そうなってしまったからには、もはや倒すしかない!!」

トモエ「そ……、そんなことない! 雪子がシャドウになんて……、そんな……、そんな!!」

鳥型シャドウの胸元に浮かんだ雪子「絶望……、絶望なのよ……」

 雪子の顔が消えかける。

トモエ「ダメ!! 雪子! 雪子はあたしの憧れなんだよ!? 家を継ぐことだって、簡単なことじゃない! 立派だよ!? 雪子は!!」

 トモエの声に、再び色濃くなる雪子の顔。

鳥型シャドウの胸元に浮かんだ雪子「千枝は籠の外にいるからそんなことが言えるのよ! ……そうよ。あなたは自由なのよ! 自由に空を飛べるのよ!!」

イザナギ「無駄だ! やれ!!」

トモエ「アンタは黙ってて!!」

 イザナギに言い返したトモエは、鳥型シャドウにググッと近付く。

トモエ「確かにあたしは雪子より自由かもしれない。……でもね、誰だって悩みはあるんだよ? 私にもある。……あのいけすかない転校生にだって、ほんのちょっとくらい悩みはあるかもしれない」

イザナギ「……大きなお世話だ」

トモエ「自分一人だけが苦しいなんて、そんなの独りよがりよ、雪子! あなたは甘えてるだけ! 甘いのよ!!」

鳥型シャドウの胸元に浮かんだ雪子「なんですって~!?」

 苛立つ雪子、その顔はさらに存在感を増し、首から胸の辺りもその色彩が浮かび上がってきた。

鳥型シャドウの胸元に浮かんだ雪子「千枝なんかに……、千枝なんかに私の気持ちは分からないわよ!!」

トモエ「そーね、分からないわ! そんな甘ちゃんの言うことなんて、分からないって言ってんのよ!!」

 痴話喧嘩のように言い合うトモエと雪子。

イザナギ「……アイツは助けたいのかそうでないのか、どっちなんだ?」

ジライヤ「助けようとしてるさ。里中と天城は小さい頃からの友達だからな。……友達だからこそ、思いっきり言い合えるってこともあるんだ」

 ジライヤが仮面越しに微笑む。

 

トモエ「……でもね、雪子。そのために友達がいるんだよ。……あたしは雪子のためなら、いつだってどこへだって飛んでいく。……あたしの翼は、そのためにあるんだから!!」

 トモエの言葉にズキンと衝撃を受ける雪子。

 そして、トモエが鳥型シャドウの胸元に飛び込み、両手を左右いっぱいに広げて抱き締める。

鳥型シャドウの胸元に浮かんだ雪子「うっ……!!」

 ブルブルと震え出す鳥型シャドウ。

 そして一つ大きな呻き声を上げたかと思うと、その全身が眩い光に包まれた!

ジライヤ「うわっ!」

 思わず目を覆うジライヤ、そしてイザナギ。 

 

 徐々に光が止んでいく。

 そして、トモエが抱き締めた鳥型シャドウは、桜を随所に散りばめた赤く気高い戦士に姿を変えた!

ジライヤ「あ……、あれは!!」

 トモエが抱き締め続けるその赤き戦士の頭上に、一枚のカードが舞い降りてくる。

 それは『女教皇』のアルカナ。

 そのカードが、赤き戦士の頭部に落ちるや、キラキラとした粒子となってその身体に溶け込んだ。

 

○ベルベットルーム

 水晶玉を眺めるマーガレット。

マーガレット「……ベルソナレッド・コノハナサクヤの誕生よ」

 

○黄泉

 ジライヤ、トモエ、そしてイザナギにも聞こえるマーガレットの声。

ジライヤ「ペ……、ペルソナ戦士……」

 と、気絶して倒れていたシャドウたちが次々と人間の姿へと戻り、スーッと消えていった。

 そして、トモエとコノハナサクヤがゆっくりと互いの身体を離して見つめ合う。

トモエ「雪子……」

コノハナサクヤ「千枝……」

 それを見て、満足そうに腕組みするジライヤ。

イザナギ「……フン」

 踵を返し、歩き出すイザナギ。

 

○高台

 黄泉の世界から戻った四人。

 それぞれ、元の人間体に戻っている。

 千枝と雪子が改めて抱き合い、友情を確認する。

千枝「雪子……! 一緒に頑張っていこうね!」

雪子「ありがとう千枝。ありがとう……」

 先程と同じように腕組みしながらそれを見ている陽介、その場から去ろうとしている悠に、振り向かずに話しかける。

陽介「いいもんだろ、友達ってのも」

悠「……俺には、縁のないものだ」

 悠、そう言って去っていく。

 陽介、悠の後ろ姿を笑顔で見つめる。

陽介「鳴上……、俺はぜってーお前を友達にしてみせるかんな!」

 

○エンディング曲

 

○ベルベットルーム

 マーガレットが、タロットカードを4枚、机上に並べる。

 魔術師と戦車のカードの横に、女教皇を位置させる。

 そして、少し離れたところに愚者が。

 と、水晶玉が怪しく光る。

マーガレット「……ん?」

 水晶玉の中に、ぼんやりと1枚のカードが浮かび上がる。

マーガレット「皇帝の……アルカナ……」

 

○第2話・完


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