もっともっといろんな人に触れていただけるように頑張って書いていきます
入学して一ヶ月と半くらい。今はテスト期間中で部活は休み。恭華はテスト勉強に勤しもうとしていた。
恭華の成績は中1と中2の時は上の中、中3の時は下の下。恭華は賢い友達に勉強を教えてもらうことで成績を上げていた。そして、まわりに誰もいなくなった中3から必然的に成績が下がった。と、言ってもこんなに下がるなんて思っていなかったのだが……。
つまり、賢い誰かに教えてもらわない限り、成績が危うい。そこで探す。頼りになる友達を。
だが、色々と都合が悪いことがある。まず、恭華に男友達がほとんどいない。なぜなら、入学初日の放課後にいきなり、美少女(笑)に声をかけられ手を引っ張られで、まわりからしたらリア充死すべしみたいなオーラを出されていたみたいだ。しかも、女バスの監督に就任してしまったものだからさらに近寄りがたくなったらしい。
そして、賢いだろうと頼りにしていた伶が欠席なのだ。あの日から少しずつ普通にしゃべることがてきるようになってきたのだが、その伶が風邪で休み。
仕方ない、他のバスケ部のメンバーに頼るか……。
まず、同じクラスの瑞希だ。まあ、ほとんどあてにならないが……。
「なあ、瑞希。勉強って……できるか?」
「うーん。できるできないで言ったらできない方だよ。でも、いいじゃん、恭華くんの近くに賢い人がいるんだから」
「え?」
伶のことだろうか? 確かにこの間の席替えで伶と偶然隣同士になってそのために近くに賢い人がいるなんて言い出したのだろうか?
「ねぇ、そんなことより、今日、僕と河川敷行かない? 2週間もバスケができないと思うとウズウズしちゃうんだよ」
「しねぇよ。さすがにテスト前だし」
「えぇー、残念。じゃあ、一人で行ってくるね」
特に残念に思ってる様子も見せずにカバンを持って走り去る瑞希。まあ、予想通りっちゃあ予想通りだ。この日は誰も捕まえることができなかった。
家に帰ってみるとまだ19時だというのにもう理菜は寝ていた。恭華は作り置きしてあった料理を口にし押入れの中に入った。
翌日の放課後、頼りになるやつを探しに行く。まあ、特に目的もなくぶらぶらしていた感じなのだが、案外すんなり知っている人は見つかった。
「お、まりか」
「あれ?監督。こんなところで何してるんだ?」
「いや、ちょっと勉強を教えてくれる人を探してて……。まりかは勉強できるか?」
「うーん、まずまずだな。まあ、理系科目なら得意だぞ。ほら、今流行りのリケジョだ」
「まじか? じゃあ、教えてくれないか?」
「え? いや、私、あんまり教えるとか得意じゃないんだが」
「それでもいいんだ」
なぜかって教えるの上手い下手に関わらず、如何してか賢い人に教えてもらっただけで成績上がるのだ。
「まあ、監督にはいつもバスケのことで世話になってるし、ちょっとくらいなら教えてやるよ」
「ありがとう」
交渉成立。
恭華とまりかは図書室へ向かった。一年の教室から図書室まではあっという間。特にしゃべることもなく図書室に着いた。
なんと、その図書室に理菜がいた。
「ないですねぇ。ないですねぇ」
理菜は何かを探しているようだった。
「おい、何してるんだ?」
本を探してるんだなんて答えられたらそれまでだけど。
「昨日、恭くんを待ちきれずに寝てしまったんでぇ、起きてられるように本を読むことにしたんですぅ」
「テスト期間中だろ?今」
「あ、それは大丈夫ですぅ」
何が大丈夫なんだろう。そんなことを聞く前に違う声がした。
「理菜、恭華が帰ってくるのを待ちきれなかったってどうゆうことだ?」
「え?」
「あ!?」
しまった。迂闊すぎた。できるだけばれたくなかったこと。理菜と恭華が一緒に暮らしていること。
「いや、えーとだなー」
「あ、私たち一緒に暮らしてるんですぅ」
「おい」
「いいじゃないですかぁ。バスケ部の人なら信用できますよぉ」
そうゆうものか……。
「って、まりか、意外がってないな」
「そりゃ、知ってたからな」
「おい」
ぽかっと理菜の頭を小突いた恭華。
「痛いですぅ」
「すまない、条件反射だ」
もちろん、そんな条件反射は存在しない。
「むぅー。まあ、今日は寝ないように頑張りますねぇ」
と、言って本を一冊手にとって去っていく。
「なんなんだ、あいつは?」
「まあ、昔からあんなやつだ」
ちなみに恭華の中で今一番よくわからないのは今目の前にいるまりかだ。本当に背が高いくらいの情報しかない。一ヶ月も一緒にバスケをしてだ。
だが、今日、勉強を教えてもらってわかった。教科は限られてくるものの相当教えるのがうまい。得意じゃないって言っていたのは謙遜だろう。
この日も家に帰ったら理菜は寝ていた。全くテスト期間中なのに余裕なやつだ。
その次の日、今度はののかを捕まえた。伶の風邪が長引いてるみたいでそれも心配だが、自分の心配もしなければいけない。
「……ひぃ……か……監督な……なんかようで……すか?」
息が絶え絶えですごく苦しそうにしゃべるののか。さすがに申し訳なくなったので軽く用件を伝え、やっぱ無理だよなと断ってその場を去ろうとした。
すると服の腰の部分を軽くつまんで引っ張られた。
「……ちょ……ちょっと……だけなら……いいよ」
なんか、ものすごく苦しそうだし、顔も赤くなってるしでなんか、申し訳ない気持ちが膨らんできた。でも、好意に甘えないのもそれはそれで申し訳ない。ののかなりに勇気を振り絞ってくれたのならそれに答えなければ。
「じゃあ、ちょっとだけ、お願いできるか?」
「……う……ん」
恭華とののかは図書室にむかう。で、図書室で勉強を教えてもらったのだが……。今回の教科も理系科目。昨日と重複だったが復習になってよかった気がする。それにあの恥ずかしがり屋のののかが自分のために勇気を出して教えてくれたのが何より嬉しかった。
言うまでもないがこの日も理菜は寝ていた。
さて、次の日。テスト前の最後の金曜日。この日に望みの綱の伶がきた。なんという天使が降り立ったような気分だった。
「伶! 勉強を教えてくれ!」
速攻で隣の席の伶に駆け寄った放課後。
「……え?」
急すぎたのか顔が赤くして戸惑っている。
「あのー、私、テスト勉強を教えてと言われても教科書を全部覚えるだけなんだけど……」
こうして、最後の望みの綱は案外すんなりと断たれてしまった。
仕方なく一人で図書室で勉強してから帰ると理菜はゲームをしていた。
「今日は寝なかったんですよぉ。偉いでしょ?」
「はいはい、偉い偉い」
なんか、余裕があるよなこいつ。テストは本当に大丈夫なんだろうか。とりあえず、二人で夕食を済ませ押入れに入って少し復習をした。
次の日もその次の日もののかとまりかに教えてもらったことの復習ばかりを繰り返した。
さて、テストが終了して最初の月曜日。いきなり順位が発表された。荒涼高校では貼り出しなどはされず、一人一人に個票が渡されそこで順位を確認する。
恭華の順位は280人中150位と微妙な感じ。さて、部活にきたやつから順に聴いていこう。
最初に来たのは瑞希。こいつは僕より絶対にしただろうと恭華は完全に見下していた。なのに結果は146位。微妙に負けた。あの時の瑞希のドヤ顔がものすごく恭華をイライラさせた。
次に来たのはののか。いきなり恭華に話しかけられたののかは怯えながらも個票を手渡してきた。そこに書かれていた数字は42位。まあ、そのくらいの点数を取りそうな雰囲気はあったし、そんなものだろう。
その次はまりか。どんなもんだと自慢するように見せてきた順位は76位で、確かに恭華からすれば素晴らしい成績なのだが、42位を見せられた後だとな。という、微妙な表情を見せるとまりかはプイっとそっぽを向いてしまった。
そんでその後に現れたのは伶だった。伶は何も言わず個票を見せてくれた。そこには5位という堂々たる成績が刻まれていた。さすがだなと思うと同時にこの伶よりも上がいるのかと思うと恐ろしかった。
そして、最後は理菜。理菜はテスト期間中、ずっと寝ていたのでそこまで成績は高くないだろう。唯一恭華が勝てる相手かもしれない。バスケ部最下位はどうしても避けたかった。そんな思いから理菜の姿が現れた瞬間に恭華は聞いた。
「お前、何位だったんだ?」
「もう、その呼び方はやめてくださいですぅ。一位でしたぁ。今度からは理菜ちゃんでお願いしますぅ」
「は? 今なんて?」
「だからぁ、理菜ちゃんと呼んでくださいですぅって」
「そこじゃねぇよ!」
恭華は自分の耳を疑った。その意を察したのか、理菜はカバンの中から個票を引っ張り出してきた。そこに書かれている文字は間違いなく1。今度は目を疑った。だが、その目をこすっても細めてみても変わることはなく1。
戸惑ってる恭華に瑞希が近づいてきて
「だから、言ったじゃん。近くに賢い人がいるって」
なるほど、それは伶のことではなかったのか。恭華は自分がバスケ部最下位だった悔しさと目の前に学年一位がいる恐ろしさに震えていた。
そこに部長がやってきて
「聞いてくれ。私、過去最高の254位を取ったんだ」
こうして、恭華はバスケ部最下位という汚名をかぶせられずに済んだのだった。
理菜は実は頭がいい。
そして、部長はバカ。そんな感じの話でした。