つまり、散々伏線を張ってきたあれをとうとう登場させようかなっという感じです。
まあ、どうなるかは正直、作者にもわかりません!
では、楽しんでくれたら幸いです。
中間テストからさらに一ヶ月。初めての大会がすぐそこまで迫っていた。恭華の目から見たら正直このチームは相当なレベルまで上がることができる。それほどバランスの良いものだった。
理菜は普段のふわふわとしたイメージとは対照的な頭の回転と体力を武器に見事にコート内でチームをまとめ上げている。
瑞希はとにかく速い。ドライブにしろ、シュートにしろ素早く動き、うちのチームの選手は誰もそれに追いつくことができない。
まりかは正直、本人がそれをコンプレックスと思っているのだったら悪いが、身長が何よりの武器だ。さらにそれに加えてゴール下で競り負けないパワーを持っている。
伶は瞬時の判断力がある。持ち前の賢さとあれだけ間を空けなければ話せないのが嘘のような正確な判断が司令塔の理菜を支えている。
ののかはスリーの決定率が高い。恭華としても参考にしたいくらいのシュート率で、ここぞという時にはチームの最大の得点源になる。
もし、このチームが負けるようなことがあればそれは……。
次の日が大会と迫った直前の金曜。理菜と恭華は明日のことを話し合っていた。
「明日の私の活躍をしっかりみといてくださいねぇ」
「本当にこんな感じのやつがガードなのかと思うとなんかびっくりだよな」
「それは褒めてるんですかぁ?貶してるんですかぁ?」
「どっちもだな」
「そうですかぁ。みんな一生懸命やってくれてますし、負けることなんてないですよねぇ」
「僕も信じてるよ、君たちを」
「ありがとうございますぅ」
みんなでここまで一緒に頑張ってきたんだ。負けたくない! 負けるわけがない。僕らが負けるということ、それは……。恭華自身の監督としてのスキルが及ばなかった時だけだ。そんなことを勝手に考えていた。
日が変わって次の日。全員、第一試合の始まる2時間前に集まった。一人を除いてみんな緊張した雰囲気が出ていない。まあ、一人、ものすごく青ざめて俯いている人物がいる。
「おい、あいつ大丈夫なのか?」
「中学の時からああでしたからぁ。大丈夫ですよぉ。やってくれますよぉ」
心配そうに恭華がののかのことを見ているのは完全にみんなが気付いていた。気付いてはいたが、大丈夫だとみんながそう言うのだ。まあ、信じてみよう。今まで自分たちが積み上げてきたものを。そして、ののかのことを。
「私たちの試合は9時からですねぇ。ユニフォームはもう下に着てきてますし、私たちの前に試合はないのでコートに入ってアップしていいんですかぁ?」
「ああ、部長がそう言ってたし」
部長からの指示をみんなに伝える。というか、理菜がしっかりしていたおかげで伝え忘れてたことを思い出した。
「それにしてもうちの顧問って誰なんだ?」
すると、本を読んでいた伶がパタンとそれを閉じ。
「うちの顧問は私たちの担任だ。知らなかったのか?」
知らなかった。ここ2ヶ月全く顔を出してこなかったから。
「じゃあ、荷物を置いて軽くストレッチをしてからシューティングでいいかな?」
「はい、それでいいと思いますぅ」
青ざめているののかが心配だけど、ずっとそれを気にしてるわけにもいかないし、次の行動の指示を与えた。
試合までの2時間なんてあっという間に過ぎた。アップも基本から練習でやってきたことの復習までしっかりできた。理菜のおかげでしまった練習になる。理菜が真面目で力強くみんなを引っ張っていってくれるから、恭華が安心してその背中を押すことができる。
「じゃあ、スタメンは……って言う必要はないか。いつも通りのプレーが出来れば勝てるから、気合い入れていこう」
「はいですぅ」と理菜
「わかったよ」と瑞希
「おう」とまりか
「了解」と伶
「ひぃ」とののか
やっぱり不安は残る。ののかのことが。
しかし、そのまま試合が始まった。
バスケの試合はジャンプボールから始まる。案外あっさりマイボールから始まった。それだけまりかの身長が高い。こんな風に本人に言ったら怒られるだろう。
ののかはまだガクガクしている。生まれたての子鹿状態だ。しかし、そんなののかに理菜がボールを投げながら
「これを決めなかったら恭くんの前で全裸の刑ですぅ」
と言った。ものすごい怯えてるののか。しかし、その表情はしっかりとリングを見据えていた。涙まで浮かべているそんな力ない表情で。
そして、ののかは
「ひぃいいいいいい」
ものすごい悲鳴をあげながらシュートを放った。ガクガクしていたののかのことなんかほっとけばいいと敵のチームの人は思ったのだろう。それは恭華も含めて思ったこと。そして、それのせいで完全に裏を突かれて、いきなりの3点シュート。
そこからは完全にこっちの流れ。理菜のゲームメイクが絶妙すぎて自分の存在意義さえ疑ってしまう恭華。それでも安定しているこの試合を見ているのは楽しかった。自分が監督としてベンチに座れたことが光栄だ。
この後の試合も順調に勝つことができ、本日の試合は全勝で終わった。そして、自分たちの本日最後の試合を見終わった後、次の試合が明日の相手の試合だということでそれを見ようということになった。
恭華たちはベンチを片付け、とりとめのないような会話をしながら荷物の置いてある観客席の方へ向かっていった。
ベンチから下がっていっていると次の試合、つまり明日の相手となりうるチームとすれ違った。別に普通のことだし会話をやめることもなくその場を去ろうとしたのだが……。
「恭……くん?」
その刹那、恭華の背中は凍った。2ヶ月も忘れていてしまった恐怖に襲われた。自分のことを恭くんと呼ぶ人なんて理菜とあと一人しかいない。そして、そのあと一人が僕の名前を呼んだ……。
恐ろしくて体が動かなかった恭華はその声に背を向けたまま、聞き返した。
「由架……なのか?」
もちろん、確信はあった。しかし、それでもそれしか言葉が出てこなかった。
「そうだよ」
なんで、せめてこないんだ。悪いのは全部、僕なのに。恭華は自分を責め続けた。過去の自分の罪とあとはその罪を忘れていた今の自分を責めた。だから、だからこそ罵倒して欲しかった。貶して欲しかった。それで未練がなくなるから。それなのに……
「明日、絶対試合をしようね。私たち絶対勝つから」
全く責めようとしない。それが逆に恭華の首を絞めてるようで苦しかった。
恭華たちはその後、次の試合の相手が決まる試合を見ていたのだが、全くもって集中することができなかった。この時の理菜の恭華を心配する表情も瑞希の悔しそうな苦しそうな表情も恭華は気づくことができなかった。
結局、由架は勝ち残った。つまり、明日の試合の相手は由架たちのチーム。そのことが恭華はさらに苦しくて……。
家に帰ってからも何も喉を通らず、一睡もできなかった恭華。体はクタクタなのに、今日の出来事を考えるだけで寒気がして全く眠りにつけない。
そんな状態のまま、翌日の朝を、由架たちと戦う朝を迎えた。
「恭くん、朝ですよぉ」
理菜に恭くんと呼ばれることも昨日の出来事を思い出してしまって怖い。
「ちょっと寒気がする。熱があるみたいだ。気分が悪い。先に行っててくれ」
言い訳のような仮病を並べて現状から逃げた。頭の切れる理菜がなんて言ってくるか不安だったが。
「逃げるのは1回だけですからねぇ」
そうとだけ言って部屋を出て行った。
恭華は理菜の言葉で自分が逃げているのだと実感することができた。全部、過去のせいにして。
そして、今のこの押入れで一人怯えている状態を虚しく感じた。
由架ちゃん登場yeah!!
やっと出せました。まあ、ちょっとセリフがあっただけだけど……。
こうなってくると次回、もしくはその次くらいで第1章(仮)完結といけますでしょうか?
もうちょい加筆とか出来れば第1章までで文庫本くらいの文字数いけそうな気もするけど、まあ、それはそれで……。
このまま物語はクライマックスです!
是非次回も楽しんでください!