ここからは夏休みの話。夏といえば?? そう!ポケモン!ってなんでやねん!
海、山、花火、祭り。いろいろ楽しい時期で皆さんもこれから迎える時期だと思います。
私としては受験勉強の合間に息抜きで書いてる小説でその夏を恭華くんや理菜ちゃんたちと楽しめたらいいなと思っています。
また、第1章では触れることのできなかったキャラクターを深掘りしてみたり、またまた新キャラを登場させたりして楽しい展開にできたらいいなと思います。
さて、第1章のような大きな筋もなく書いていくのでうまくいくのか……。
では、お楽しみください!
初めてのお隣さん
恭華と理菜は玄関の前でその時を今か今かと待っていた。
時は夏休み。そして、恭華のトラウマが消えてから一週間経った。
今日はこのボロアパートの一大イベントの日なのだ。2人にとっての初めてのお隣さんができる。しかも、JKでさらに同じ年齢だとか。通っている高校は違うけれどここから近いところにあるみたいだし、仲良くなれたらいいなぁっと二人とも思っていた。
そして、お隣さんが来ると聞かされた日、理菜が提案したのだった。
「せっかくの初めてのお隣さんですぅ。仲良くなりたいので、歓迎パーティーでもしちゃうですぅ」
「そうだな」
お隣さんと仲良くなりたいというのは2人の共通の意思。恭華も否定する理由が一つもなかったのですんなり頷いた。
「じゃあ、敷地の入り口のところを軽く飾り付けて『ボロアパートへようこそ』みたいな看板をたてるか?」
「チッチッチ。恭くんは甘いですねぇ」
かなり自信があった作戦だったのですぐさまバカにされてちょっと腹が立った恭華。しかし、理菜の頭の良さ、回転の速さを恭華はよく理解しているので、理菜の意見にはしっかり耳を傾ける。
「ここは落として上げる作戦ですぅ。初めての一人暮らしで怯えている中、自分が暮らすはずの家に行ってみれば、誰の雰囲気もしない廃れたアパートしかないですぅ。そして、自分が指定された部屋にあらかじめ渡されていた鍵を差し込むときぃぃと嫌な音を立てて開く玄関。今にも逃げ出したい気持ちをこらえ、一歩中に入ると……。みしぃぃと床が音を立てるのですぅ。それでも恐怖をぐっと噛み締め歩いて行くと足を踏み出すごとにミシリミシリ」
「おい、どこのホラーだよ」
そんな恭華のツッコミはことごとくスルーされ
「そして、人の気配などしていなかったはずなのにどこからかヒソヒソと喋っている声が……。怖くなって恐る恐る隣の101に挨拶用の品物を持って行くのですぅ。震える指で101のチャイムを鳴らすと……」
「おい、挨拶用の品物ってなんだよ」
恭華のツッコミはまたしてもスルー
「パァァァン。玄関が開いていきなり爆発音がするのですぅ。そして、中にいた知らない人物二人からボロアパートへようこそ!と歓迎されるのですぅ」
「いや、おかしいだろ」
「何がですかぁ? 怖さを増幅するためにこのアパートのことを酷く盛りすぎたことですかぁ?」
「それもそうだけど! てか、第一なんで怖さを増す必要があったの?」
「それは私の腕ですぅ」
「はぁ?」
わけわからないことをいう理菜。今はこいつが頭がいいことが信じられない。
「とにかくですねぇ。お隣さんには挨拶の品を持って挨拶に来るはずですぅ。言うならばその品物がパーティーの参加券ですぅ。それがないとこの部屋に入れないですぅ」
もう、理菜が自分の世界に入っちゃった。こうなったら、恭華は止めることができない。
「て、それは冗談ですよぉ。クラッカーでパァンと驚かせて中でパーティーって流れですぅ」
「うん、それだけならそれでいいと思う」
うん、それだけなら。それ以外のことで理菜が勝手に自分の世界に入り込んで実行しようとしたら全力で阻止するけど。
「わかったですぅ! じゃあ、料理は私に任せてくださいですぅ。あー、楽しみですねぇ」
ワクワクしたようにいう理菜。恭華も少しワクワクしていた。実は一人で理菜の相手をすることに少し疲れている自分もいたりした。
そして、冒頭に戻る。クラッカーを手に握りしめ、しゃがんで待機。来るのは昼間だという情報を信じて11:00頃からずっとこの体勢なのだが……。
「今何時ですかぁ?」
「4時だよ」
夕方の。つまり、5時間ここに居続けているのだ。
「帰りたいですぅ」
「安心しろ、ここは家だよ。もう帰ってるよ」
恭華の忍耐力は凄まじい。伊達に中学3年の一年間ぼっち生活を送ってたわけではない。そして、その忍耐力のおかげで冷静につっこめた。
「昼に来るって言ってたの誰ですかぁ?」
「鈴姉」
ここで出てくる叔母の名前。あの人は本当に信用しちゃダメだな。
「ねぇ、部屋の中に入って待ちませんかぁ?」
「お前が言い出したんだろ? 最後まで責任持てよ」
「えぇー」
泣きそうな声を上げる理菜。その気持ち、わからなくもない。待っても待っても全くこないのだ。
「もう、実は今日じゃなかったとかじゃないですかぁ?」
「そう……だな。そう信じてみようか」
恭華の忍耐でもここが限界。もう部屋に戻るのが一番だな。
スッと立ってみると足が痺れていた。はあ、それだけ長いことここに居たんだな。
さあと、部屋に向けて歩き出すと、ピンポーンとチャイムがなった。
「まさか、まさかのこのタイミングですかぁ!?!?」
理菜が驚きの声を響かせる。恭華も慌てて玄関を開ける。
「速いですぅ!!」
そう言いながら、急いでクラッカーに手をかける理菜。恭華も急いでクラッカーの紐を引いたのだが……。
……スカッ。
あの、大きな爆発音は響かなかった。変に紐だけがお隣さんの頭にかかって。
「なんで湿気ってるんですかぁ!!!」
さっきから理菜がおかしい。いつもは見せない怒涛のツッコミを見せている。
「そこじゃないだろ。まず、お隣さんに謝らないと……て、え!?」
「そうですね。すみませんでしたですぅ……て、わぉっですぅ」
クラッカーの紐が絡まったその人の姿を見て本当に驚いた恭華と理菜。
「理菜ちゃんと……恭……くん?」
そこに立っていた人物は……
「由架ちゃんですぅ」
由架と理菜と恭華はお互いに驚いた顔で見つめ合った。
テーブルの上に大量に並んだフライドチキン。これは理菜の提案でお祝い事と言ったらフライドチキンですぅと言っていたのだ。
「……というわけで、お母さんが知り合いの親戚がやってるアパートに住ませてくれるっていう話だったんだよ」
由架が恭華たちにここに引っ越してきた理由を話していた。
「その知り合いの親戚がまさか、美鈴さんだったなんて」
そう言いながらコップに注がれたオレンジジュースを飲む由架。
「まさか、お隣さんが由架ちゃんだったなんて驚きですぅ」
本当にその通りだ。
「それにしても、恭くんと理菜ちゃんって一緒に住んでるの?」
「鈴姉の手違いでな」
なかなか気まずくて話に入れなかった恭華がしれっと挟む。いや、気まずい理由なんてわかるでしょ? 由架と最後にあったのはあの日。うっかり告白した日だ。
「恭くん、サプライズ大作戦を考えた時はすごく乗り気だったのに、今全然ですねぇ」
「そりゃ……」
その瞬間、由架と目があって頬を赤くして目をそらしてしまう恭華。
「ははぁんですぅ」
理菜は何か悪い企みをしたかのような表情をした。いや、実際悪い企みをしたのだろう。
「そういえば、私、花火買ったんですぅ。一緒にどうですかぁ?」
皿の上のフライドチキンも軽く減ってきたので、腹ごなしにはちょうどいいタイミングだろう。
「うん、いいと思う」
「わかった」
そして、三人とも花火セットを持って外に出た。で、外に出ていざ花火って時に
「あ、線香花火部屋に忘れちゃったですぅ。あれ大好きだから忘れたのは痛いですぅ。取ってきますねぇ」
そう言って偶然? 由架と恭華の二人きりの状況を作り出した理菜。
少し、気まずい沈黙が流れる。その沈黙を破ったのは由架の方だった。
「ねぇ、恭くんは理菜ちゃんのことどう思ってるの?」
そりゃ、男と女が一緒に暮らしているのだ。そこを聞きたいんだろう。
「安心しろ。一線は越えてないし、そんな感情もない」
「ふーん、しょうか」
ん?しょうか!? そのタイミングで床の頭がふらっとした。
「おい、大丈夫か??」
「ひょうくん、ひょうくぅーん。きしゅー」
そう言いながら恭華を押し倒した。コンクリートで頭をぶつけて思いの外痛い。
そして、その上に覆いかぶさるように倒れこんできた由架。
「おい、どうしたんだよ!」
「きっしゅー、きっしゅー」
そのあと、恭華の身には、まあ、いろんなことがあった。
部屋に戻った理菜はさっとテーブルの掃除を始めた。二人きりの時間を少しでも長く作ってやろうとしてのことだった。そして、三人が飲んでいた缶ジュースに違和感を覚える。
確かに理菜と恭華が飲んでいたものには100%しぼりたてオレンジジュースと書かれていたのだが、由架が飲んでいたものにはオレンジブロッサムと書かれていた。
「ブロッサムってなんですかねぇ?」
そんな呑気なことを言いながら、それのせいで恭華たちが大変なことになっているのにも気付かずにテーブルを片す理菜であった。
ちなみに、このパーティーの飲み物を用意してくれたのは美鈴である。
さて、これは由架のキャラ作りをしていく中でお酒に弱いって可愛いよなって感じで思いました。というか、告白の返事をあまり早い段階ではしないほうがいいのではないかと思い、お酒に弱い設定をつけた感もあります。
で、初めてのお隣さん、まさかまさかの由架ちゃんです。
いや、これは本当に2〜3話書いてる時からもう出来上がってた設定なんですよ。
どうですかね? 個人的には面白い展開だと思うんですけど……。
まあ、由架の引越し祝い、僕個人の第2章突入祝いのこの回でした。
楽しんでいただけたでしょうか?
また、読んでいただけたら幸いです。