今日は祭りを題材に。でも、次回も祭りの話続くんだよなぁ。
では、どうぞ!
「夏祭りに行くですぅ」
唐突にそう言いだしたのは理菜だった。今日は部活がオフで暇をしていた恭華と理菜。
「ちょうど今日、祭りがあるみたいですぅ。でも、みんな家族で行くとか家がちょっと遠いからとか言ってきてくれないんですぅ」
理菜は寂しそうにそういう。
「せっかくの祭りを逃すのももったいないので私達だけでも行きたいですぅ」
ちなみに恭華は夏祭りがあるという情報がまず初耳だった。というのも、以前も言ったように恭華には男友達がいない。
そうゆう情報を仕入れる場所がほとんどないのだ。いや、あるにはあるけど、女バスのメンバーだから理菜と情報源がかぶる。まして、理菜の方がメンバーと近い距離にいるのだからイベントの情報が入る順番は理菜のあと、理菜からそうゆう情報が入ることさえある。というか、今がそうだ。
夏祭り。夏の風物詩であるし、最近行ってない恭華にとってこの上なく行きたいものだった。
「行きたいけど、俺たち二人だけか?」
「由架ちゃんも誘ってみますぅ」
由架が行くならなおさら行きたい。由架と理菜と恭華と、三人なら周りの目も気にならないだろう。
「うん、じゃあ、行こうか」
こうして、夏祭り計画が始まった。
「とりあえず、由架ちゃんにメール送っておきますねぇ」
時は夕刻。理菜は部活のTシャツとバスパンを履いていた。浴衣とか着ないのかって聞いたらこれのほうが楽ですし、まず、浴衣なんて持ってませんしぃだそうだ。
チャイムが鳴って玄関に向かうとそこには由架がいた。由架も理菜と同じような服装できた。
「あ、恭くん、理菜ちゃんごめんね。服を選んでる時間なくて。って、あ、やっぱみんなラフな感じだよね」
まあ、由架が言う通り、恭華も同じようにバスケの練習着だ。
「まあ、ここで立ち話もなんですしぃ、とっとと行きましょうですぅ」
三人は祭の会場に向けて歩き出した。会場は河川敷の公園に屋台が出ている感じだ。しかも、今日は花火が上がるらしい。
花火大会並みのスケールがあるらしく、それもこの町の祭の見どころの一つらしい。でも、そこらへんの花火大会よりも屋台が多い。
「花火楽しみですぅ。この間、線香花火できなかったリベンジですぅ」
そう言った瞬間、恭華は顔を赤らめた。
あの日は大変だった。由架は酒に酔っ払ったような状態になり恭華を押し倒したあと、きっしゅーきっしゅーとフランス料理の名前を口に出しながら眠りについた。
と、言っても恭華は由架にのしかかられている状態になっていて、無理やり起こしてもいいんだが、そうしたらこの続きを由架が始めそうな気がして、でも、逃げようもないし、どうにもならない状態に恭華はおちいっていた。
というか、好きな人が上にいる状態でまともな判断なんかできるわけがない恭華。幸せオーラで気が動転して気絶しないよう意識を保つことで精一杯だった。
そこへ、理菜が現れて
「大変ですぅ。理菜ちゃんがオレンジブロッサムという謎の飲み物を飲んでたみたいですぅ」
あ、なるほど本当に酒を飲んでたんだなと理解した恭華。で、この状況をどうやって説明しよう。
ちなみに理菜が納得するようにこの状況を説明するためにまずはオレンジブロッサムの説明から始まって30分くらいかかった。
このことは由架には話してないし、本人も覚えていないよう。今もそういえば、どうして線香花火できなかったんだっけと首を傾げている。
本当に由架がこのことを覚えていないのが不幸中の幸いだ。というか、軽々あの日の話を掘り返さないでほしい。
花火大会の会場にはすぐ着いた。そこには人混みができていた。屋台の前には少なくても2〜3人、多ければ数10人が並んでいる。一度屋台群の中に入れば前に進むのも、後ろに下がるのもとても難しいくらい人がひしめいていた。
「予想以上に規模が大きいですねぇ」
「そうだな。迷子になりそうだな」
「みんな携帯持ってるよね? はぐれても大丈夫だよね」
「ああ。というか、はぐれるわけないだろう。子供じゃあるまいし」
そうして、みんなで軽く笑っていざ、人混みの中へ。
…………その数分後。恭華は二人とはぐれてしまった。はぐれてしまったが、断じて迷子ではない。とりあえず、携帯をと思い冷静にポケットから取り出したのだが、電源が付いてない。充電し忘れてたみたいだ。
仕方ないかとしばらく歩いていると、頭が一つ分くらいでてる女の子がいた。完全に見覚えがある顔。あらは間違いなくチームメイトの
「おい、まりか!」
「お、監督じゃないか!」
こうして、知り合いと巡り会うことができた恭華。
恭華はまりかに今に至った経緯を話した。するとまりかが急に笑い出して
「監督がみんなとはぐれるとはな」
そう言って笑うのをやめない。
「まあ、私も同じような状況だ。今日は両親ときていたのだが、はぐれてしまってな。どうだ? 一緒にそれぞれの目的の人を探さないか?」
「お、いいのか?ありがとう!」
恭華は素直に感謝を述べ、二人で歩き出した。
「それにしても、高校生にもなって両親ときてるのか?」
少しからかうように聞く恭華。
「まあ、うちの親が過保護なんだ。だから、いじめとかそうゆうのはまるで親に守られるような形でなかったんだ。でも、それのせいで深い友達が一人もできなかった。だから、バスケ部のみんなには感謝をしている。だが、それにも実は親は反対しているくらいだ。今日も本当は理菜たちと一緒に来たかったのだが……」
「そうだったのか。みんな色々あるんだな」
「すまないな、こんな話になってしまって。でも、私は監督にも感謝してるんだ。私はきっとあの親の元では普通に恋愛をできるとは思えない。だから、この時間は少し幸せだ。まるで、デートをしてるようで」
「そうか……」
少し、うつむいてしまう恭華。
「はは、気にしなくていいぞ。私は監督に恋をしたりはしない。私は親の決めた道を機械的に歩むだけだ。ただ、この道をそれてる時間の方が楽しいと感じる自分もいるのだ」
なるほど、まりかは自分の本心に正直になれないようだ。でも、まりかの本心と意思は違う。恭華はそのどちらも尊重したい。だから、考えた。
「そんなに真剣に私の話を聞いて考えてくれるんだな。理菜たちと一緒だ。だから、監督のことは信頼できる」
そのまりかの言葉に恭華は何も返すことができなかった。
少しの間無言の時間が流れる。
「あれぇ? まりかちゃんもいたんですかぁ?」
「おや、理菜じゃないか」
そうとだけ言って
「じゃあな、監督。少しの時間だったが楽しかった」
と耳打ちして去っていった。
「まりかちゃん、帰っちゃうんですかぁ?」
「ああ、すまないな。少しも遊べなくて」
まりかが去った後、理菜と恭華はベンチに座って少し喋った。
「恭くん、まりかちゃんと何を話してたの?」
「いや、まりかの両親のことを少し聞かせてもらった」
「お、聞いちゃったんですねぇ。どう思いましたかぁ?」
「まりかの親に従うという意思は固いと思った。でも、あいつの本心はそれじゃないってそうとも感じた。だから、どうにかしてあげたいけど、どうにもできないのも事実だ。伶とか、由架と違って家族の話だからなかなか踏み込めないし」
どうにもできないもどかしさで恭華はうつむいた。
「誰かのために必死に考えてあげられる恭くんはいい人だと思いますぅ。そして、恭くんが抱いてる気持ち、私たちも同じように抱いていますぅ。もしも、恭くんがまりかちゃんのために何かをしてあげたいと考えるなら私たちと一緒に考えてくださいですぅ」
「ありがとう」
「ふふ、そのタイミングで感謝を述べるところが恭くんらしいですぅ」
よくわからないけど、少しむずがゆくて頬をかいた。
「ところで、由架ちゃんがいないんですけど、どこですかねぇ?」
「それを先に言え!!」
一難去ってまた一難、もとい一難去る前にまた一難である。
でも、恭華の目的地は決まっていた。恭華はまっすぐ走る。由架のところへ。
まりかのこの事情が合宿への最大の支障に!?
的な展開にできるかなぁ(笑)
じゃあ、また次回まで!