前回までのあらすじを踏まえた登場人物の紹介をこの前がきに書かせて頂きます。
池崎恭華……荒涼高校の一年生。男。おばが大家をやっているボロアパートの101号室の住人。作者としてはこの子が主人公のつもりで書いてます。
不和理菜……荒涼高校の一年生。女。ボロアパートの101号室のもう一人の住人。作者としてはこの子をメインヒロインとして書いてますが、実はもう一人、メインヒロインを出す予定です。
不和美鈴……ボロアパートの大家。恭華のおばで、理菜のおじの妻。作者としてはこの人は話にこそよく出てきますが、メインキャラクターのつもりでは書いてないです。
以上がキャラクター紹介
では、第2話、楽しんでくれたら嬉しいです。
ファミレスからの帰り、二人は改めてこれからのことを話し合った。
「とりあえずは、101で2人で暮らす感じでいいのか?」
恭華は聞く。もちろん、乗り気ではないのだが、発言どおり、とりあえずはこうするしかないだろう。
「そうですねぇ、私の荷物、明日届くんで、さすがにあの部屋以外にいるのはいけませんですねぇ」
「あ、僕もそうだ。明日は、とりあえずか」
恭華はとりあえずを強調した。
「それなら、一つお願いがあります」
「ん?」
「押し入れで寝てください!」
まさか、ドラ●もんネタを美鈴から引き継ぎ、さらに引きずるなんて。あのボロアパートにドラ●もんブーム到来か?
まあ、住人は3人しかいないが……。
「男と一緒に寝るのが不安なのはわか……」
「あ、勘違いさせちゃいましたねぇ。違うんです。もし、恭くんが押し入れで寝なかったら、恭くん、死んじゃいます」
急な死の宣告。
「ちょ、どうゆうことなんだ」
「一緒に寝てみればわかりますけど、どうですかぁ?」
「いや、遠慮しておく」
なんとなく、いや、なんとなくじゃなくても嫌な予感がした恭華。
壁のないワンルームで女の子と寝るのだから、押し入れという壁を隔てて眠ることが出来るのは常識的に恭華としても嬉しい。
「で、お風呂とおトイレはどうするんですかぁ?」
「あ〜、それはすず姉にお願いしてみるよ。202の問題は雨漏りと部屋が汚いことだけらしいし、風呂とトイレだけでも使わせてもらえないか、聞いてみるよ」
「それじゃ、思い立ったがなんたらですぅ」
そう言ってケータイを取り出す理菜。なんでこんなときだけ行動力があるのだろうか?
「あれぇ?画面が真っ暗ですぅ。つかないですぅ。」
そういいながらケータイをバシバシ叩いている。
「何してるんだ?」
その行動を疑問に思った恭華が問う。
「昔、母に教わったんですぅ。電化製品は叩くと直るって」
「いつの時代のテレビだよ!」
恭華は思ったままのことをそのまま言った。
「えぇー!?直らないんですかぁ?」
とても、びっくりしたような表情を浮かべる理菜。
「まず、それ充電が切れてるだけだろ? 僕が代わりにかけるよ」
理菜は驚いた表情を浮かべ続けたまま固まってしまった。
そんな理菜をむしして恭華は慣れた手つきで美鈴に電話をかけた。
恭華は美鈴に事情を説明した。まあ、説明するまでもなかったとは思うが……。すると、意外なことに美鈴は風呂とトイレの使用にOKを出してくれたのだ。
「これで問題はオールOKですねぇ」
いつの間にか硬直が解けていた理菜が電話を盗み聞いてたらしく、そう言った。
「オールって言っても、お前にとって問題って一つじゃねぇの?」
「お前じゃないですぅ!理菜ちゃんですぅ!やっぱりオールOKじゃないですぅ」
理菜がプンスカしながらそういった。
まだ、名前の呼ばれ方にこだわってるのかよ。
恭華は飽き飽きしながら思っていると、ボロアパートに着いた。
「ほら、着いたぞ、り〜なちゃん」
「うん!これでオールOKですぅ」
そう呼んであげなければ理菜はずっと機嫌が悪いような気がした。
理菜は満足した表情で101に向かった。
恭華はその背中に向かって
「僕はこのまま202で風呂に入ってくるよ」
と言った。
「うん、わかったよぉ。じゃあ、9時までこの部屋に戻って来ちゃダメだよぉ」
そう言って理菜は玄関を閉めた。ケータイの時計を見ると19:30と書いてある。つまり、あと一時間半も時間があるということだ。
……何をしよう。
恭華の頭によぎったその言葉は案外意味を持っていた。
だって、自分の部屋ら101号室であるわけだし、風呂なんて30分もかからない。
まあ、考えても仕方ないのだろう。幸いにも出かけるときに持っていったリュックの中にパジャマが入っていたのでそう思いつつ、201に向かった。
201のチャイムを鳴らすとすぐに美鈴が出てきて、恭華に
「あんまり、水使いすぎるなよ」
と、言いながら202の鍵と石鹸とついでにタオルまで渡してくれた。
恭華は礼だけ言うと201のすぐ隣にある202の鍵を開け、中に入った。
ジメッとした不気味な雰囲気が漂い、とても人の住めるようには思えやい部屋だった。
それでも、なぜか風呂とトイレだけは綺麗で、その用事だけならほとんど苦がなかった。
シャワーを浴びながら、彼は1人、考えていた。
去年の今頃から、つい数時間前までずっと一人だった。もちろん、親がいないとかそのようなものではないが、今まで誰とも接しようとはしなかった。
それは自分が犯した罪のため、誰かに裏切り者だと非難されるのを恐れたためだった。だから、周りとの関わりは極力断ち、一人でいた。
それなのに、急に誰かと一緒に暮らすことになって……。
でも、その時間が恭華にとって楽しいものだった。ただ、それが申し訳ないものかもしれないとも思った。裏切ってしまったあの子に対して……。
恭華は風呂から上がってもしばらく101号室の前でそんなことを考えていた。外はパジャマ姿の彼にとってとても寒いものであるはずなのに、そんなこと気にならないくらい集中して考えていた。
「そんなところにいたら風邪ひきますよ」
声をかけられ、ハッと我に帰る。声の主はもちろん理菜。
時計を確認すると21:10と表示されていた。理菜は9時になっても戻ってこない恭華を心配して呼びに来たのだった。
「ごめん、すぐ戻るよ」
そう言って理菜について101に入る恭華。
2人で入るワンルームは改めて狭いものだと感じた。
この狭い101号室という空間をもう、恭華はすっかり気に入ってしまっていた。
「何じろじろ見てるんですかぁ?恭くん」
いつの間にか考えるのをやめていた恭華は無意識に理菜に見入っていた。
性的な意識などは全くない。ただ、もこもこのパジャマに身を包んだ、理菜の姿は純粋に可愛らしいものだった。
「いや、なんか……、可愛いなって思って……」
素直な感想をぽろっと述べた恭華。すると
「何ですかぁ?ナンパですかぁ?警察に通報しますよぉ」
なんて、頬を赤らめながら、電源の入っていないケータイを必死にカタカタカタカタ操作しようとする理菜。
その姿を見て思わず吹き出してしまう恭華。
一緒に笑い出す理菜。
「今日はもう疲れましたし、寝ちゃいましょう。さぁさぁ、押し入れへ〜」
何かを誤魔化すように必死に恭華の背中を押す理菜。
恭華は一度だけ振り向き、理菜と目を合わせ、笑みを交わしてから
「おやすみ」
と、一言だけ言って、押し入れに収まった。
「おやすみなさいですぅ」
と、返す理菜。
ーー幸せだ。
恭華のこの感情は恋愛感情とかそんなものではなく、ただただ素直に抱いた彼の本心だった。
今日は敷布団がなく、毛布しかないので床の冷たさが直接伝わる状態なのに、とてもぬくぬくしていた。
こんなにあたたかい気持ちで寝るのはどれくらいぶりだろうか。
今日はぐっすり眠れそうだ。と、そう思った矢先。
……ドコドコドコ、ガタガタ、ドンドン!ガッシャーン!!バン!バン!
ものすごい騒音が聞こえてきた。
何の音だろうと思っていた恭華の頭にふと、理菜の言葉が浮かんだ。
「もし、恭くんが押し入れで寝なかったら恭くん、死んじゃいます』
この意味をようやく理解できた。
と、いうか理解せざるを得なかった。本当に押し入れで寝てよかった。
それにしても、どうして何もない部屋でこんなに多彩な音を出すことができるのだろうか。
そんな疑問が頭をぐるぐるして……いや、どう考えても騒音のせいで一睡もできなかった、初めて過ごした101号室での夜はそんな感じだった。
なんとなく急いで仕上げたので、出来が悪いかもしれなかったですが、最後まで読んでいただきありがとうございます。
次回から話の主軸になるあるスポーツを取り入れます。
これがあの伏線にも絡んできて……。
できるだけ早く書き上がるようにしますね。
それでは、また次回まで