初めての二人暮らしin101号室   作:larme

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今回の前書きは本編の中で出てくるバスケ用語の説明を。
ポイントガード……いわゆる司令塔です。
スモールフォワード……点取り屋。

簡単に言いましたがまあ、こんな感じだと把握していただけるだけで今回は大丈夫だと思います。
それではお楽しみください


初めての日課

あの日から、特に変わったこともなく、一週間が経った。

いや、慣れないことは確かに多かった。そりゃ、初対面の人と初めて暮らすのだから、理菜にとっても、恭華にとっても多少は不自由なものだった。

しかし、恭華にとってはこの生活が楽しくて仕方がない。

この一週間、二人の一日の流れはほとんど決まっていた。

まず、朝は6時に起床。理菜の大暴れのせいでなかなか眠れない恭華にとってはかなり早い朝なのだが、理菜の起床がその時間な上、押入れの戸を挟んでいるとはいえ、隣でガサゴソされると目が覚めてしまう。

そして、恭華は押入れのなかで着替えを始める。これはまあ一度起きてしまったからだ。いわゆるラッキースケベとか言う奴が……。それとついでにその時に理菜が顔を真っ赤にしながら「きょ、恭くんならいいですよぉ〜」なんて言ったことが恭華の罪悪感をさらに増すことになり、その結果、押入れで着替えるのを日課にしている。

その後、しばらくケータイをいじっていると理菜の「よぉし」という声が聞こえてくる。それが合図。恭華は押入れから出て行き、理菜と一緒に101から外に出てランニングを始める。

理菜はこのボロアパートに住む前からこの辺に住んでいたらしい。親の転勤の都合で急遽このアパートに来たらしいので、このあたりのことはものすごく詳しい。だから、恭華は理菜にいろいろなところを教えてもらった。

その中にバスケのリングやコートがある公園や河川敷、体育館が含まれていたのは偶然だったのだろうか?

しかし、そんな疑問よりも驚いたことが理菜の体力だった。

恭華は確かに一年前にバスケは捨てた。でも、体力づくりは続けていた。平均的な同学年よりも体力はあると思う。

そんな恭華と理菜は肩を並べて、しかも、たまに喋りながら走っているのだ。

一度、恭華は気になって聞いたことがあった

「おま……、理菜ちゃんはどこのポジションやってたんだ」

 

自分からバスケの話をするのは初めてだった。この一年間、誰ともバスケの話をしようとしたことがなかった。話したくなかった。

そんな恭華の感情より、理菜への興味の方がわずかに強かった。

「えぇ〜。教えませんよぉ〜。恭くんだって教えてくれなかったじゃないですかぁ」

この時の恭華らあっさり答えることができた。今朝はそんな気分だったから。

「おぉ、また一緒ですねぇ」

この一緒ですねぇをきくと、初めて会った時を思い出す。ついこの間のことなのにいろいろと濃すぎてとっくの昔のことのようにも感じる。

まあ、それはそうと、理菜の答えに少なからず、驚いた。これだけ体力があるのだから、バリバリ速攻に走るポジションなのだと考えていたからだ。

自分だったら理菜をスモールフォワードにおいて、他の誰かにボールを運ばせて。第一、こんなのんびりしたやつがゲームメイクをすることができるのか……。

「何考えてるんですかぁ?」

気がつけば、バスケのことを真剣に考える自分がいた。恭華の中で絶対に許されないと思っていたそれが、理菜の隣だとなぜか自然に許された。

まあ、その日はそんな会話、別の日は別な会話をして20〜30分ほど、走る。

そのあと、二人は一旦別れてそれぞれ風呂に入る。恭華は202で、理菜は101で。

そこから、2人が101で再会するのが、だいたい7時半ごろ。ランニング中に買った朝ごはんを食べ、テレビを見たり、ラジオを聴いたり、パソコンをいじったりして時間を潰してからコインランドリーに向かう。

そして、洗濯中に昼食を食べに行く。二人で初めて食事をしたファミレスになんだかんだでほぼ毎日通ってる。

ファミレスからの帰りに洗濯物を取りにコインランドリーによる。101に帰ったら理菜がそれを干して、恭華は夕飯の買い出し。なぜ、理菜が洗濯物を干す係りになったのかというと、それは初めて洗濯物を干す時に「恭くんに、私の洗濯物を見せるのは恥ずかしいですぅ」と言って、恭華を追い出したからだ。

ちなみにこの日はラッキースケベが起こった日と同じ日で恭華は思わず、

「朝は別にいいなんて言ってたじゃないか」

と、聞いてしまった。

すると、理菜は朝以上に顔を真っ赤にして

「わ、私、たまにエロっエロな下着履いてるんですぅ」

なんて、爆弾発言をして、場を凍りつかせた。という余談もある。

まあ、洗濯物は理菜が管理すると決まったので、何もすることがない恭華はランニング中に理菜に教えてもらった近所のスーパーで買い物をするのだ。

そして、そこから101に帰ったらまた時間つぶし。その間に理菜が料理を作るのだが、これがまた美味しいのだ。

料理なんてまったくやったことない恭華が適当に買ってきた食材をまともなものに仕上げてきて、その上美味しいのだ。本当に意外なところで才能を発揮するやつなのである。

さてさて、夕食を食べた後は一旦押入れに収まる恭華。これは理菜が洗濯物を取り込むためだ。丁寧にたたむところまでやってくれるので、文句を言わずに狭い押入れに入る。

しばらくすると戸が開く。これがお風呂に入りなさいという意味の理菜の行動。

いつも、20〜21時ごろが入浴タイムとなっている。その時間帯は101に入れない恭華。といっても、もう、そうゆうものなのだと割り切ってしまった恭華は素直に202に行く。

21時を回って部屋でゲームをする二人。UNOやら、トランプやらだ。ちなみに今のところ恭華の全戦全勝。そんな感じなので、理菜が悔しくなってか大変な事を言い出したこともあった。

「多分、緊張感が足りないんですぅ。決めました!私、一度負けるたびに一枚脱ぎます」

「おい、なんてこと言い出すんだ!」

「でも、こうゆうプレッシャーの中で強くなるお友達いますよぉ」

やはり、こいつが変なのでこいつの友人も変わり者なのかと納得した恭華だった。

で、ゲームが終わると就寝だ。二人の朝は少し早いので布団に入る時間も早い。まあ、恭華は例のことのせいで、1時ごろまで眠りにつくことはできないのだが……。

と、おおよそこんな感じで一日がループする。

さて、今日は朝の日課だけ済まし、二人は制服を着ていた。

いよいよ、はじまるのだ。新しい高校生活が。恭華が自分の罪から逃げるためにわざわざ家から遠いところを選んだ高校。バスケ部のないこの高校。

しかし、理菜となら、理菜と一緒であるのなら、もう一度バスケをしてみてもいいかもしれないなんて考えている自分がいることに恭華はうすうす気づいていた。

「よし、行くか」

「はいですぅ」

二人は次のステージへの一歩を踏み出した。




次回から高校の部活が始まっちゃいます。
つまり、キャラが増えちゃいます。
ついでにバスケ要素が増えてきますのでわかりにくい部分も増えてくるかもしれませんがその辺はご了承ください。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
それでは次回もお楽しみください。

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