僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた。   作:楠富 つかさ

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新入生研修というか、林間学校だよね
#11 新入生研修 ~その前の話~


 調理部内で麻琴の存在が知れ渡った週の金曜日、四月十九日。高校生になってから初の大規模行事の説明会が開かれた。まぁ、いわゆる学年集会です。

 

「さて、来週の水曜日から金曜日にかけての新入生研修の話は前々からしていると思うが、今日はその概略を話すぞ」

 

学年主任の男性教諭――英語科の先生である黒瀬先生――から伝えられる内容は、新入生研修はボクたちが住む高葉市北部で隣接する温泉街花馬市のさらに北にある山中の研修センターで行われるということ。研修センターは星鍵学園の所有なので、小学校や中学校の林間学校で行った場所とは全然違う方向にある。

あと、研修の目的。大自然の中で、協力して生活することで協調性を養い、社会で生きていくという実感を持つこと。あと、ガスや電気をあまり使わないで生活することから、非常時の避難生活に近い日々を体感することなどが挙げられている。

ちなみに、班分けは各クラス座席順で縦一列の五~六人班。普段の掃除と同じ班分けだ。ボクらだと、明音さん、初美さん、麻琴、ボク、千歳ちゃんの五人だ。

あとは代休の話。四月の二十四から二十六までが研修で、代休は昭和の日の翌日から憲法記念日の前日。つまり、四月の三十日から五月の二日が充てられる。つまり、二十七日から十日間の休みがもらえるのだ。流石の私立高校。公立には出来ない芸当だ。これには一年生の多くがどよめく。

 

「それでは、あとは各クラスで役割分担等を決めること。解散。六組から速やかに教室へ戻りなさい」

 

 

「ということで、縦一列が班なのですが、班長と保健係だけ決めてください。あ、机を下げて各班集まって決めてくださいね」

 

教室に戻り、石川先生の指示に従って机を後ろへ下げ、麻琴たちと円になって座る。

 

「班長、どうしようか?」

 

取り敢えずボクが皆に聞いてみると、

 

「悠希がいいな」

「そうだね、少なくともアタシとヒナッチにはムリかなぁ」

「そうだねぇ~。わたしもちょっとぉ」

「ですってよ、お姫様」

 

あれ? なんか、ボク以外選択肢がない感じなのかな?

 

「じゃ、じゃあボクが班長ね。保健係は千歳ちゃん、お願いね」

「はいはーい。ウチにお任せなんよ」

 

たおやかな笑みで快諾してくれた千歳ちゃん。最近は一緒にお弁当を食べるメンバーにも入ってくれた。このメンバーなら皆仲良しだし楽しい研修になりそうな気がするなぁ。

 

「班長と保健係が決まった班は報告に来てください。研修のしおりを渡しますから」

 

班の番号は窓から何列目かの数字が振られているので、ボクらは五班だ。

 

「五班、班長はボクで保健係は千歳ちゃんに決まりました」

「分かりました。では、これがしおりでこっちが健康チェックカードね。しおりには持ち物分担表もあるから、誰が何を持つか決めてね。森末さんも聞えたかしら?」

「はい、大丈夫です」

 

後ろに並んでいたクラス委員長の森末さんと入れ替わるように、皆の方へ戻る。

 

「はいこれ、しおりね。これの……31ページを見て。ここに、各自の持ち物と班単位の持ち物があるから、分担を決めようか」

 

腕時計だとかペンライトだとか、一人持っていればいいものやレクリエーション関係の持ち物が記載されていた。

 

「じゃあ、ウチはこれを持ってこようかな」

「わたしは~、これなら大丈夫だよぉ」

「これって百均ので平気?」

 

皆が率先して決めてくれたおかげで、思っていたより早く決まった。

 

「持ち物担当が決まったら今日はチャイムが鳴るまでしおり読んでいてね」

そう言いながら先生が既にしおりを読んでいた。先生が研修に行ったのは七年前。ボクたちが行くセンターは五年前に建て替えられたそうなので、先生も初めての場所ということになる。温泉地花馬市に建てられているため、お風呂は温泉を引いているらしい。オリエンテーリングだとかナイトハイクだとか、よくあるイベントもあるらしい。あれこれとしおりを読んでいるとチャイムも鳴り、

 

「森末さん。号令お願いします」

「はい! 起立、礼!」

「「「ありがとうございました!」」」

「じゃあ、机を戻して、掃除がある班は終ったら帰っていいわよ」

 

机を戻しながら、今週は掃除がないことを喜ぶ。

 

「それじゃ、あたし部活だから気をつけて帰りなよ」

「分かってるよ。じゃあ、頑張ってね」

 

 

 新入生研修直前の火曜日は午前中で授業が終了し、各自帰宅し明日からの準備をするための時間となっている。初美さんや明音さんは自転車通学なので、明日は流石に家の人に送ってきてもらうらしい。二泊三日とはいえ、荷物は女の子にとっては重いものとなる。ボクや麻琴は徒歩通学だけれども、明日はお母さんに送ってきてもらう予定になっている。

 

「さて、確認だけしておこうかな」

 

ボクは一昨日の日曜日に準備万端の状態にしておいたため、今日は確認以外にすることはない。

 

「えっと、服の類がこの袋で、体操服二着とジャージ上下、こっちは入浴時に持っていく小袋で、それぞれ替えの下着が入っていて、寝るときのTシャツも入っていて……問題ないね。こっちの小さいリュックにはこのしおりと、明日の昼食と水筒が入る、と」

 

持ち物を完璧に揃え、大きい方のバッグを玄関に置いておく。丁度その時、

 

「ただいま~。あ、悠希。そっか、もう研修の仕度終ったんだ」

 

星鍵のOGでもあるお姉ちゃんが大学から帰ってきた。手を洗いに洗面所へ向かおうとしたお姉ちゃんが急に振り返って、

 

「そうそう、お父さんが日本に今日戻るって。悠希と入れ替わりになっちゃうかなぁ」

 

仕事の関係上、家を空けることの多い父は今、某アイドルグループのアジアツアーの最終日で台湾にいるのだろうか。どうも、ボクに会いたいがために急いで帰国するらしいのだが、ごめんよお父さん。ゴールデンウィークはいるから。

 

「お父さんのことだから、悠希をアイドルにしようなんて考えているんだろうね」

 

姫宮家の長女として生まれたお姉ちゃんは、昔はバレエだとか普通のダンス教室にも通ったし、ボイストレーニングまでしたことがあると聞いている。

 

「ど、どうだろうね。ボクは……やりたくないかなぁ。あんまり、目立つの苦手だし……」

「だよねぇ。悠希はおしとやか系だもの。あと、芸能界って危ない感じするし」

 

姉妹二人で頷いているところを、帰宅してきた夏希に見られ、どういう状況か聞かれたのはここだけの話。

 

「って、もうこんな時間なんだ。夕飯の仕度をしないと。って、明日からお姉ちゃんと夏希だけで大丈夫?」

 

朝ならお母さんもいるけれど、仕事で帰りが遅いから夕飯時は不安しかない。

 

「大丈夫だって。カレーくらいなら私でも作れるから」

「むぅ、そうは言うけど……」

「大丈夫だって」

 

不安が解消されたわけではないけれど、お姉ちゃんも十八歳だし少しは何か出来るだろうと思うことにしておく。

 

「じゃあ、夕飯の仕度も手伝ってくれるよね?」

 

新入生研修前夜、姫宮家の夜はゆっくりと過ぎていく。

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