僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた。   作:楠富 つかさ

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#12 新入生研修 ~その朝の話~

 そしてやってきた四月の二十四日。朝、大荷物を持って麻琴が我が家まで歩いてきて、二人分の荷物をリーフの後ろへ積み込む。

 

「二人とも、準備は平気?」

 

お母さんの確認にボクも麻琴も頷く。ちなみに、麻琴の分のお弁当もボクが用意した。

 

「それじゃ、行ってくるね」

 

お姉ちゃんに見送ってもらい、一先ず学校を目指す。ちなみに、お姉ちゃんにはあと数時間で帰ってくるお父さんへあれこれ説明するお仕事が残っている。徒歩だと二十分くらいの距離を、すーっと走りぬけ、星鍵女学園の高等部へ到着。敷地内の駐車場で荷物を降ろし、

 

「行ってきます」

「お母さん、悠希のことは任せてください!」

 

お母さんを見送ってから四組と書かれたプレートのあるバスへ向かう。バスへ乗り込むと、副担任の藤島先生から今朝の体温だとか体調についてを健康チェックカードに記載するよう言われた。点呼が済んだら回収するようだ。

 

「バスの席は自由なんだね。あれ? 悠希ってバス酔いするっけ?」

「ボクは大丈夫だよ。麻琴こそ大丈夫だっけ?」

 

最後に同じバスに乗ったのは中学三年の修学旅行なのだが、その時はまだ異性同士だったため、今日みたいに隣同士に座るということはなかった。

 

「じゃあ、あたしが通路側でいいよ。ほら、悠希」

 

麻琴に促され窓側の座席に腰を下ろす。窓の外を眺めると、バスへと向かうみんなの様子がよく見える。まだ出発していないけれど、普段より高い視点で景色を眺めるというのもバス移動の楽しみだと思う。そんなボクを見つめる麻琴の姿が窓ガラス越しに見える。

 

「麻琴? どうしたの?」

 

ボクが首を左へ動かすと、至近距離に麻琴の顔が。息がかかる距離だ……ちょっとだけ脈が上がる感じがする。そんなボクを見ながら、麻琴はにこにこしながら、

 

「こうしていれば、外の景色も悠希の横顔も見放題だね!」

 

なんて言うんだ。恥ずかしくなったボクはシートの上で膝を抱えて顔を隠すのだった。なお、研修に向かうボクらの格好は学校指定ジャージなのでスカートの内が見える心配は無用だ。

 

 

「着きましたよ!」

 

バスに全員が揃って点呼や健康チェックカード回収を含めた朝礼を行い、学校を出発して小一時間。ボクたちは既に星鍵学園が擁する研修センターに来ていた。ちなみにここ、新入生研修の他にも各部活動の合宿なんかにも使われている。まぁ、一年に数日しか使わないわけがないから当然か。

 

「あっという間だったね」

「近いもんねぇ……」

 

高葉市北部に住む初美さんや明音さんはちょっとだけがっかりした表情をしている。同じ高葉市でも西から来ている千歳ちゃんはいつも通りといった感じだ。

 

「各自、荷物を割り振られた部屋に置き次第、広場に集合すること。開始式を執り行いますからね!」

 

バス酔いから解放されて、ややテンションの高い石川先生の号令のもと、動き出す四組一同。部屋割りと班割りは同じなので、五、六人で過ごす部屋の広さは推して知るべしである。

 

「お姫さんの部屋もあんくらい広いん?」

 

広場に出席番号順一列で並んでいたら、後ろから千歳ちゃんに耳打ちされた。まず息がくすぐったかったし、内容がなんとも言えず反応に困った。

 

「冗談やって。流石にあんかい広いとは思っておらんよ」

「でもまぁ、あの半分よりは広いかなぁ。うろ覚えだけど、ボクの部屋は……八畳間だと思う」

「そうなんや、お姫さんもそんくらいか」

「ちーちゃん家って神社だっけ?」

 

会話に麻琴が加わってきた。ちなみに、初美さんは眠そうな明音さんの意識を繋ぎとめようと必死だ。

 

「そんなに格式の高い場所でもないんやけんね」

「じゃあ、その訛りは?」

 

それはボクもちょっと気になっていた。千歳ちゃん、たまに関西の人っぽい訛りが混ざるのだ。関西っぽくないのも混ざるけど。

 

「母が関西の人でね。しかも母方の祖父は四国だし、父はこっちの生まれだけど父の両親が東北の人だったから、ウチ、なんかあちこちの方言に囲まれて過ごしとったんやよ」

「す、凄い家系だ……」

「まぁ、神社の血筋って嫁いだり婿入りしたりで、あちこち行ってまうみたいだよ」

「なんか……そういうのイヤじゃない?」

 

少しトーンを落とした声で尋ねる麻琴。千歳ちゃんはいつもと同じさっぱりとした笑顔を浮かべながら、

 

「ウチはそれでええと思ってるんやよ。でもまぁ、高校三年間くらいは女子高で気ままさせてもらうけど」

 

そう答えた。自分の運命をきっちりと受け入れている千歳ちゃんを、ボクは純粋にカッコいいと感じた。自分がこうして、女の子になってしまったのも……受け入れるべき運命なのだろうか? 不意にそんな疑問が脳裏をよぎった。無論、答えなんか出ず、開始式の時間を費やすばかりだった。




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