僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた。 作:楠富 つかさ
「おぉ……」
銭湯に近い空間が広がっていた。洗い場がけっこうな数あって、浴槽も大きい。おおよそ30人が入るから当然と言われれば当然か。足触りは悪くないが、滑ることもない床を歩いて、開いている洗い場の椅子に腰掛ける。
「隣、いいかな?」
もなかちゃんに声をかけられて、ボクも隣に座るよう促す。
「ユウちゃん、やっぱり大きいね、胸」
「ちょ、もなかちゃん!」
ごめんごめんと平謝りするもなかちゃんに、ボクも言い返してみる。
「もなかちゃんだって、小さい方じゃないだろうし、バランスが整ってて綺麗だと思うんだけどなぁ」
膨らみはしっかりありつつ、ウエストはきゅっとくびれていて、魅力的だと思う。……感覚が完全に女の子になってる。目の前に裸の女の子がいるのに、動揺とか全くない。そもそも、お風呂で自分の裸を毎日みていたせいで耐性が出来たのかなぁ。
「ちょ、ユウちゃん! そんなに見られたら恥ずかしいって」
「あ、ごめん……意地悪が過ぎたね」
「まぁ、褒めてもらったわけだから、嬉しいんだけどね」
照れたように頬をかいて、一気に頭からシャワーを被るもなかちゃん。ボクもシャワーを浴びて、髪を洗い始める。毛先が肩より下まで伸びた髪を、丁寧に洗っていく。泡を全て流し終えた髪を、浴槽に浸らないようにタオルを使って上げる。
「ユウちゃん、手際いいね」
「いつもこうしてるからかな」
「そっかぁ。そういうとこで女子力の差がついちゃうんだね。私、家だったら妥協しちゃうもん」
「まぁ、手間だもんね」
髪を長い時間お湯に浸していると傷んでしまう。ただ、自宅でもタオル巻く人は意外と少ないって聞いたことがある。
「まぁ、こういうおおきいお風呂に入る時は上げるけどね」
二人して浴槽へ入ると、既に初美さんがいて、
「随分と打ち解けたみたいだな、アタシも混ぜてくれよ」
なんて声かけてきたり、保険係の集まりから戻ってきた千歳ちゃんも加わったりで、賑やかなお風呂タイムを満喫できたと思う。
「じゃあ、上がろうか」
麻琴や明音さんもいればもっと楽しかったんだろうけど、こればっかりは仕方ない。身体を拭いて、流石に家と同じようにはいかないので、袋から下着を取り出そうとしたら、
「ん? え!」
一着のワンピースが出てきた。一緒に入っていたメモに、せっかくだから着なさいという母からのメッセージが記されていた。しょうがないか。下着を身に着けてから、ワンピースを頭から被る。一応、半袖になっている。
「お姫さん、可愛いなぁ。ほんまにお姫様みたいや」
「千歳ちゃんは浴衣なんだぁ。真っ白な肌襦袢を想像していたよ」
「そんなん朝の禊やないんやから」
「巫女さんってそんなんするのか!?」
驚いたのはジャージ姿の初美さん。ジャージ、なんとなく想像していた。
「せぇへんよ」
「しないんかい!」
初美さんと千歳ちゃんは全然タイプが違うから、けっこう不安要素だったんだけど、案外大丈夫なものだね。
「さてさて、麻琴と明音さんが寂しがってるかもだから、いい加減戻ろうか」
「だな」
「せやな」
時刻は五時五十五分。新入生研修の一日目は、もう少し続く。