僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた。 作:楠富 つかさ
「はぁ……はぁ……はぁ」
案の定とでも言うべきか走り出して五分もしないうちに息切れを起こしてしまった。違うんだ、準備体操とかしてなかったし……。
「しっかりしてよ……ほら、危ない!!」
よろめく私を麻琴が抱くように支えてくれた。が、
「ん、今日はピンk――いで!! 痛い痛い!! ちょっ、待って……」
雨に濡れたボクのブラウスはすっかり透けてしまい……ブラが……ぐすん、お嫁に行けない……いや、行く気なんてサラサラ無いけど……むしろ何処へ? そんなことを思いつつも、私はバシバシと麻琴の背中を叩いていた。
そもそも、
「ま〜こ〜と〜!!」
麻琴が傘を要らないっていうから!! やっぱり降ったじゃん!
「ちょ、待って! ほら、取り敢えず私のブレザー着て!! で、折りたたみ傘があるから使おう!」
そう言ってボクにブレザーを押し付ける……。ボクが着ると……ブカブカでみっともない。
「そもそも、なんで傘を持っているのよ!?」
麻琴はボクから顔を背けるような姿勢で、
「ただ純粋に相合い傘がしたいだなんて言えるわけないじゃんよ……」
そう呟いたのだった。いや、言っちゃってるし……。
「仕方無いわね……。ほら、相合い傘……しないの?」
間髪入れずに「する!!」と返事した麻琴に思わず相好を崩すのだった。にしても、今日の麻琴はやっぱり犬っぽい。
相合い傘しながらちょっと見上げた位置に見える麻琴の横顔がどこか凜々しく見えて……。なんか恥ずかしさを感じながらも家へと着いた。まぁ、十分少々といったところか。
「た、ただいま……」
着いた……なんか普段より疲れたかも……。だって麻琴がボクの腰に手をあててくるんだもの……。スカートの中にも手を入れてしてくるし……ふぅ……。
「おかえり悠希――ってびしょ濡れじゃん! あ、麻琴ちゃんも。ほらほら二人でシャワー浴びてきな。制服はなんとかするから」
出迎えてくれたのは姉だった。講義はどうした……。おかしいな、姉の通う大学は国立の筈だけど……。
わりとどうでもいいことを考えながら浴室に向かう。姉は除湿機のコンセントをさしている。
「ブラウスは洗濯機に放って平気よね。下着もネットに入れて放り込んで。とにかく、温まってらっしゃい。あ! ちょっと待ってて、お風呂おいだきしちゃうから」
お風呂の操作をしつつ洗濯を始めつつある姉、姉は文系ながら家電全般に強い。DVDの配線も自力でできてしまう。やはり器用だ。ボクも調理系の家電の使い方を何度も教えてもらったものだ。
「万事解決! あとはごゆっくり〜」
あと、変な気を回すことに定評がある。別に、あんまりゆっくりするつもりもないのだが。