僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた。 作:楠富 つかさ
「いや〜悠希とお風呂なんて今まで考えたことなかったよ」
………いや、そりゃそうでしょうよ。
「にしても、やけにハイテンションね」
どれくらいハイテンションかって? そりゃ、調子っ外れな鼻歌を歌う程にはテンションが高い。
「だって〜悠希と湯船に二人っきりでしょ? なにこの肌色率ってなるし、あーでも手のやり場に困っちゃうな〜。ほら、上も下もや――痛い痛い痛い!! 首はヤバい!!」
いくらなんでもRが15で足りなくなりかねないので、ここらでストップ。そもそも、手のやり場に困るの時点で突っ込みたかった。目ですらないのか、と。
「あーでも揺れる"いいもの"見れたか――目潰しはアウトだっ……フェイントで本命はデコピンか……あふ……あは……」
こ、コイツ……真正の変態淑女か……。ダメだ……このままじゃ二人して新たな性癖が露見しかねない……。いや、麻琴は既に同性愛に目覚めて……いや、それはお互い様の可能性があるから言わないべきか……。
「ま、落ち着いて落ち着いて」
「いや、麻琴が落ち着いてよ!!」
「お姉ちゃーん!! お風呂上がったけど?」
「あー長かったわね。麻琴ちゃんは私のサイズで合うかしら。取り敢えず新品を出しておいたから一式プレゼントするわ。なーに気にしないで、悠希がお世話になってるお礼と思って受け取って」
ボクには昼間に乾かしていたであろう昨日着ていた服を渡された。パジャマでいいのに……。
ちなみに姉が麻琴に渡した服とは……、
「に、似合うかな? 私服のスカートなんて暫く穿いてなかったし……」
寒色系のドレスシャツにモノトーンカラーのタイ、それに黒いスカート。黒といっても真っ黒ではなく、フリルと銀の刺繍が施されている。さすが大学生のコーデ。いや、母のチョイスなんだろうけど。大人っぽくなりすぎない絶妙なコーデだ。
「素直に似合うと思うよ」
率直に誉めると麻琴は照れたように俯く。久々に見る表情かも。
「部屋でちょっと休もうか」
そう言って階段を昇り、麻琴を誘うのだが……、
「お、誘われてるねあたし♪」
ボクと麻琴の間で誘うの意味に差異が生じているっぽい。
「おーここが悠希の部屋か! 去年と全然違うね!!」
いや、そりゃそうだろうね。ん〜なんか今日のボクは"いや"と"そもそも"を乱用している気がしてならない……。気のせいにしておこう。
「まあね。ま、座って……て、もう座ってるし! いや、ベッドに座らないでよ!!」
しかも右手でマットレスをトントンしているということは、呼ばれてる?
(行ったら最後、麻琴の毒牙にかかってしまうわ)
(もう別によくね? 流されちゃえば?)
ボクの中で天使と悪魔が議論を始めた。いや、なんか前提がおかしいぞ。無意味な思考を放棄して窓の外を見る。
「ん? 晴れてきたね」
空はすっかり晴れ渡り、あの雨がウソのようだ。
「外いってみっか」
麻琴が立ち上がってボクの手をとる。ちょ、階段は危ない!!
二人とも登下校で履く革靴は濡れているので、麻琴は新聞回収に使われるサンダル。ボクはクロックスで外にでる。
まだ空気は湿っているが青空が清々しい。
「見てよあっち」
「わぁ〜!!」
太陽の光で輝く七色のアーチ、こんなに大きくてくっきり見えるのは初めてかも。
「こんな雨の一日も……」
「「いいよね♪」」