僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた。   作:楠富 つかさ

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#35 露天風呂

 大浴場には熱さの違う二種類のお風呂とサウナへの扉、そして露天風呂への扉があった。ボクらはせっかくなので、ということで軽く身体を洗ってから大浴場への扉を開けた。

 

「露天風呂って、こんなにいいものだったのね……」

 

自然の趣が溢れる石造りの湯船からは、盆地を囲む山々へ沈む夕日が見える。きれいな茜色と、その上に広がる薄紫色が鮮やかで大満足の景色だ。

 

「新入生研修でも一緒にお風呂入ってるけど、やっぱり皆でお風呂っていいよねぇ」

 

明音さんののほほんとした声を聴きながら、ゆっくりと沈んでいく夕日を眺める。お湯は透明でかるくとろみがある。いわゆる美人の湯と呼ばれるような泉質だ。なんだかんだ女の子になって一ヶ月ちょっと。自分の裸には慣れてはきたが、正直に言って他の女の子の裸はドキドキする。姉はともかく。明音さんは見た目以上に胸が豊かで温泉の湯にふわふわと浮かんでいるし、女の子の部分を守る茂みはやっぱり人それぞれで。なんだか女の子の神秘みたいなものを感じる。

 

「そういえば明音、生理は大丈夫なのか?」

「ちょ、綾ちゃん! そういうこと軽々しく言わないの。女の子しかいなくても」

 

……生理、おおむね月に一回やってくるそれは、子供を出産するために子宮内の膜を血と共に身体の外に出すこと。始まる年齢や、やってくる痛みは人それぞれ。ボクも既に何度かの生理を体感した。痛みはそれほどではなかったけど、胸がつっぱったり、便秘になったりと、少しだけ体調を崩した。

 

「本条さんは神社の娘さんなんですね」

「ええ。巫女としてのおつとめもしているわ。双美さんは和菓子屋なんやろ? お手伝いとかは……」

「朝早いのは大変だけど、放課後や、それこそ夏休みなんかは手伝ってるの」

 

明音さんと初美さんががやがやしているのを横目に、千歳ちゃんと希名子ちゃんが打ち解け始めていた。和の雰囲気漂う二人が話しているとなんだか大人っぽくて素敵だ。家の仕事を手伝うのはやっぱり、自分の生活の一部になるものなんだなぁとしみじみ思った。

 

「暑い時期に熱い温泉入るってけっこういいよな」

 

岩にもたれ掛かってぼんやりと空を仰ぐ麻琴の隣に移動する。

 

「でしょ。ボクもこの前の春休みは旅行に行けなかったから、今日は楽しいよ」

「まあ、あんなことがあれば旅行なんて行けないわな」

 

わりと日頃から挙動が女の子っぽいなんて言われてはいたけれど、実際になってみると思ってもみないことがあった。それこそトイレなんてまさしくそうだし。お風呂だってけっこう大変だ。

 

「麻琴の家はあんまり旅行とか行かないよね」

「そりゃ、うちは一般的な家庭だからね。悠希の家みたいに年がら年中行ける程金ないって。いつもお土産ありがとな」

「別にうちだってそう何度も行ってはいないけどさ」

 

長い休みがあっても両親が忙しい以上、旅行なんて何度も行けないよ。お土産だってお父さんが行った先の物が多いし。まあ、わざわざ言ってもしょうがないか。とろみのあるお湯に身を委ねながら大きく息を吐き出す。夏の抜けるような青い空に、大きな白い雲がふわふわと浮かんで風にゆっくりと運ばれている。竹でできた壁の向こう側にある木々の葉も少しだけ音を立てて揺れる。

 

「……今度は二人きりで来よう」

 

ぼそっと呟いた麻琴に、ボクはそっと頷いた。

 

「ちょっと、ユウちゃんと麻琴ちゃんもこっち来てよ」

「いや明音、それはちょっと待て」

 

なんだかずっと恥ずかし話をしていたらしい明音さんと初美さん。ボクと麻琴は明音さんに呼ばれてお湯の中をずいずいと移動して、二人のところへ向かう。

 

「二人もいいけど、皆でっていうのも楽しいじゃんね」

「ま、悠希ならそう言うと思ったよ」

 

時間はまだまだゆっくりと進む。




お風呂回ですね。大幅改稿しました。
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