僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた。   作:楠富 つかさ

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#38 お泊まり会 そのいち

 それは、温泉旅行からそこそこの日数が経ち、暑さがほのかに和らいだように感じ……られなくもなくなってきた八月下旬のことだった。お風呂上がりにファッション誌を読んでいると、枕元から流れる威風堂々……麻琴からのメールか電話だ。

 

「今回は電話か……。はい、もしもし」

「あ、悠希ぃ。あのさ、明日そっち行ってもいいかな?」

 

え……どうしよう? 部屋は片付いているけど、急にどうしたんだろう。

 

「ほぉ、なんで?」

「お泊まり会、したくなっちゃった」

「一緒に温泉行ったじゃん。それじゃ足りなかったの?」

「あたしはいつだって悠希と一緒にいたいと思っているよ」

「……しょうがないなぁ」

「じゃ。また明日」

 

……え、明日!?

 

 

 翌朝、宣言通り麻琴がやってきた。

 

「おっはようございます!! お邪魔しますよー」

 

ハイテンションで現れた麻琴を玄関で迎え入れる。

 

「あ、麻琴さんだ。お久しぶりっすね」

 

麻琴が靴を脱いでると早朝バスケから夏希が戻ってきた。

 

「よっ、久々だな。いい汗かいてんなぁ少年!」

 

取り敢えず夏希には洗面所に行ってもらい、階段を昇る。

 

「ん? どうかした?」

 

麻琴が昇ってこない。何か気になるのだろうか?

 

「いや、パンツ見えないかなぁって」

「こら!!」

 

まったく……スカート短いのにしなきゃ良かった……。

 

「で、どうして急にお泊まり会なんて言い出したの?」

「んーまぁ、悠希に会いたかったっていうのもあるけど、悠希はずっと悠希なわけで、

 

昔からの、それこそ男の子っぽい遊びとか出来てるのかな? なんて思ってさ」

昔からの趣味とか遊びとかって言われても、ボクは結局のところ家で料理をしたり縫い物をしたりなんていう時間が好きで、アウトドアな趣味もないし特に女の子になってから困っているとか、我慢しているなんていうことはないんだけど。

 

「そもそも、そういうのがあっても麻琴がいるから出来るっていうのも、ないような気がしちゃうんだけど」

「ほら、キャッチボールとか、ボーリングとかさ、一人じゃ出来ないとか行きづらいような、そんな遊びはないの? 一応、男子の友達も昔はいたじゃん? 一緒に何かしなかったの?」

「一応、っていうのが少し引っかかるんだよねぇ」

 

見た目も名前も女子っぽかったせいで中学時代もわりと女の子と喋ることが多かったし、男子とも接してはいたけど、親友って呼べるような人もいない……さすがに寂しいな。

 

「そういえばアイツらはどういう認識でいるんだろうね。小中のアルバムとか確認してみる?」

「……前に確認したけど女の子として写っていたよ。小学校の頃の写真はあんまり変わってない気がするけど、中学の卒アルはばっちり女の子だった」

「え、見たい」

「見なくていいよ。ほとんどこの姿なんだから」

 

いったいなんでこんな姿になってしまったのか。まぁ、唐突に元の姿に戻ってもそれはそれで大変なのだけれど。学校とか交友関係とか。

 

「悠希ぃ! ご飯の準備手伝って!」

 

麻琴とそんな話をあぁでもないこうでもないとしていると、一階からお母さんの声が聞こえてきた。

 

「お、悠希のご飯だ。楽しみ」

 

しかたない、今日は頑張っちゃいますか。そう思って張り切ってキッチンへ向かうと、

 

「張り切るなら夕飯をお願い。母さん仕事で夜いないから」

 

釘をさされてしまった。ま、夕飯の方が買い出しもできて好都合だけど。

 

「分かったわよ。じゃあ、お昼は? ってパスタね」

「そう、持ってって」

 

まったく……持っていくだけなら夏希にやらせりゃいいのに……。

 

てなわけで、

 

「いただきます」

 

お父さんは仕事でいないため、女ばかりの食卓となった。ま、夏希がいるけど。ちなみに、パスタソースはボクと麻琴がボンゴレビアンコ、お母さんがボンゴレロッソ、夏希がカルボナーラでお姉ちゃんがボロネーゼだ。ボンゴレビアンコをご存じだろうか? アサリ入りのさらっとしていて食べやすいパスタなのだが、ビアンコがイタリア語で白という意味を持つのだ。逆に赤はロッソでお母さんが食べているパスタは赤い。ついでに、どちらのパスタにも鷹の爪が入っている。ボンゴレビアンコはまさに最近のお気に入りで、パスタとなると高確率で食べている。昔は夏希と同じでカルボナーラを食べていたのだが、いかんせんお腹に重たい……。ま、麻琴は単にボクと同じにしたかっただけなのだが。

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