僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた。 作:楠富 つかさ
「やっぱり、こうなるとは思っていたのよ」
姫宮家の8畳の和室に、ボクと麻琴は正座している。目の前には母と姉が正座している。夏希のことは心配だけど、ケータイは持っているから大丈夫だろうとは母の弁。
「麻琴さん、君は昔から悠希にべったりだったからねぇ。私としては、悠希は君を嫁に迎えるだろうと考えていました」
でも、と前置きをして母は話を続ける。
「何故かは分からないままだけど、悠希は女の子になってしまった。今の私は、以前程二人の関係を認められないのです」
ボクはひたすらに膝の上に置いた手を見ることしかできなかった。そんなボクの左手を取って、麻琴が口を開いた。
「あたしは……私は、悠希の性別に関係なく、悠希のことが好きなんです。だから! どんな苦難を乗り越えてでも悠希を幸せにします!」
「そういう問題じゃないのよ! 私だって、孫を抱きたいのよ!」
「母さん! それ、私と夏希に失礼!」
ずっと口を開かなかったお姉ちゃんが、溜息を吐いてから言葉を発す。
「確かに、私は見ての通りだし……夏希はまだ中学生。正直、私だって悠希と麻琴ちゃんがくっつくものだろうと思ってた。甥か姪を抱っこする機会もあるだろうってね」
「お姉ちゃん……」
「光希さん……」
麻琴の右手に、ボクのを重ね顔を上げる。
「それにね……」
さっきより重い口調で、お母さんは話し始めた。
「夏希のことも考えてほしいのよ。夏希だって年頃なのよ。突如現れたナイスバディの美少女が家にいる状況をどう捉えるかしら。しかも、悠希は夏希を弟としか考えてないから、露出の高い格好で平気で接するし、お風呂上りに洗面所でばったり会っても何も言わないでしょう?」
……確かに、全裸で夏希に遭遇したことが何度か会った。特に、春先はお互いに状況を飲み込みきれていなかったから。
「あの子には刺激が強すぎるのよ、悠希の存在は」
確かに……ボクはどんどん感覚が女の子になってしまったから、よく分からなかった面があるけれど、この身体の魅力は確かなものだ。人に見られることも多かった。
「もう一点、気がかりなことがあるの」
トーンを変えずに母は口を開く。今度はボクではなく、麻琴の方を向いて、だ。
「麻琴さんのご両親はうちと違って、悠希が最初から女の子だと記憶しているのでしょう?」
「そ、そうです……」
私の左手を握る力が一瞬だけ強くなった。これから話されることを察知したのだろうか。
「ご両親に、話しましたか? 自分は女の子を愛してしまった、と。うちと違って、あなたは一人娘。責任があると思いますが?」
「……夏ごろから一つ、考えがあったんです。10年後の計画。上京して、向こうで養子を貰って、男には逃げられたことにしようって。そんなことを、考えていました……。その子を悠希と一緒に育てられたら……幸せだろうなぁって」
「勝手なことを……。悠希も麻琴さんも、魅力的な女の子です。もっと、建設的な将来をですね……」
「お母さん!」
我慢できなかった。してはいけないと思った。だからこそ、自分の意志を示さないといけないんだ。
「ボクは! 麻琴以外の人を愛するつもりなんてない! それは! 昔から変わらない、姫川悠希という存在そのものだから! 性別なんて関係ない! 麻琴と一緒にいる自分が、姫川悠希という人間だから!」
俯いたままの麻琴を抱き寄せて、啖呵を切ってやった。思えば、お母さんに反抗するのは初めて、かな。
「母さん、私はこっちに味方するよ。今のは心打たれたね」
ボクと麻琴を抱きしめるように、お姉ちゃんの腕がまわされる。
「はぁ……仕方ないわね。じゃあ、光希に彼氏が出来たら二人の関係を認めましょう」
「え、えぇ!!!!」
かくして、女だけの家族会議はお姉ちゃんの悲鳴によって幕を閉じた。もちろんそれが母なりの冗談で、ボクに考える時間をくれたということなのは重々承知だ。けれど……考えても考えても自分がどうすればいかなんて分からなかった。