僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた。   作:楠富 つかさ

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#9 部活日和です(前編)

 四月も二週間が過ぎ、丁度真ん中の15日を迎えました。桜は葉を青々と繁らせ、涼やかな日陰を作っています。10日から12日までの仮入部期間を経て、四人がそれぞれに部活を決めて本入部となり、ボクは設備に定評のある調理部に入部しました。他の一年生とも仲良くすることができてホッとしています。先輩たちも優しいですし。

 麻琴は中学の頃から続けている陸上部に入りました。やはり手足が長いと走りもキレイなんだなと実感させられます……。次世代のエースだと一年生ながら期待の声が高まっているそうです。

 新しい競技に挑戦したいと話していた初美さんはハンドボール部に入部したらしく、ルールを一から覚えるのは厳しいとボヤいていました。

 ユルさに定評がついてきた明音さんは意外とアクティブなようで、中学と違ってマーチングもやる吹奏楽部に入部しましたよ。みんな違ってみんないい。ボクたちの日々は、そんな感じです。

 

「お姫さんは調理部かぁ。エプロン姿が似合いそうだね」

 

 クラスでも皆、優しくて現実の女子高ってもっとギスギスしたものだと思ってたけど、そんなことなくて安心している。今、話し相手になってくれているのは後ろの席の本条千歳さん。近所の神社の娘さんで、日頃から巫女さんの仕事もしているらしい。

 

「千歳ちゃんは弓道部だっけ?」

「そうだよ。覚えてもらえて嬉しいね」

「やっぱり巫女さんだから?」

「そうでもないよ。袴に慣れてるからかな。剣道はほら、痛いし」

「そっか。あ、先生だ」

 

 朝のショートホームルームがもうそろそろ始まる。陸上部の朝練、終わるの遅いなぁ……。

 

 

 授業の方もかなり慣れてきました。ちなみに、今朝の麻琴はショートホームルームに遅刻した。少年時代より学力は向上気味で初テストでなかなかの成績を修めました。とはいえ、明音さんには敵いません……ダントツ一位でしたから。のんびりしているけど、凄く優秀なのです。ボクももっと頑張らなきゃ。

さて、月曜の午後。副担の藤島先生による現代文と担任の石川先生による数学の連打を耐えきると、ようやく訪れる部活タイム。

 教室のある西棟一階から家庭科室のある東棟三階へ歩く。人もまばらな廊下の奥にある調理室の扉を開ける。星鍵学園高等部には、調理室が二つと被服室が一つあって、調理部の活動は第二調理室で行われる。第二と言っても広さはなかなかで、十個の調理台があり、それぞれにシンクと三つ口コンロがある。壁の一面には調理器具の棚が据え付けられ、どれも清潔に保たれている。本当にいい設備です。流石はお嬢様学校。

 

 

 部長が来るまでは、活動を始めずのんびりしています。一年生は私を含めて四人いて、クラスも出身校もバラバラ。でも、やっぱり料理が大好きという共通点がある。ボクはそれさえあれば平気だと思うのだ。特に話が合うのは二組の双美希名子(ふたみきなこ)ちゃん。

 家が和菓子屋さんで、実際に手伝いもするそうです。朝も仕込みがあるから早起きで、片付けも手伝う看板娘の鑑ですね。希名子ちゃんは私に和菓子の色々なことを話してくれます。部活の時間に作ってみたこともありましたが、やっぱり希名子ちゃんが作った物だけ別格でしたよ。

 もう二人は、五組の西村千恵ちゃんと六組の片岡美夏ちゃん。千恵ちゃんのお家は精肉店で、コロッケが美味しいと評判だそうだ。美夏ちゃんは和食が得意らしく、他の料理も勉強したいということで入部したそうだ。二年生は二人で、副部長の芙蓉柑菜先輩と経理担当の九重流歌先輩だ。二人とも大人っぽくて美人さんだ。三年生は五人いて、皆さん優しいし料理も上手なんですよ。

 

 

 さて、部長の高須あまほ先輩が来ました。部長は素甘先輩と呼ばれています。苗字の“す”と名前の“あま”で、すあま。

 

「やー、姫宮さーん!!」

 

 部長には見学に来た時から気に入られたみたいです。どことなく麻琴に似た雰囲気を感じる人です……。見た目以外は。部長は小柄で背はボクより低い。髪は短く部活中は大きなコック帽を被っている。夢はパティシエールだそうです。似合うんだろうなぁ。あと、ほっぺのもちもち感が素甘っぽいかも。

 

「部長!? 急に抱き付かないでくださいってば!!」

 

 戸を開けてから一直線に私に向かってきた部長は私にギュッと抱き付いてきた。そして、

 

「フローラルな香りがする……」

 

 これだ。微妙な身長差のせいか、部長は胸に顔を埋めるように抱き付く……。こそばゆいし匂いを嗅がれるのは……いかんともしがたい……。取り敢えず頭をナデナデしてみると、

 

「もひゅー、気持ちいい〜」

 

 ……もひゅーって何!?

 満足する程に堪能したらしく部長の方から離れた。そして何事もなかったように教壇に立って、部活を始める挨拶をする。一週間でこの光景に慣れてしまう調理部員の皆さんには驚いてしまう。さて、家庭科部の活動は月曜の調理と水曜のメニュー製作以外は自由参加のティータイムになっている。今日は月曜なので、料理を作れる日なのです。

 

「今日は、春の行楽にぴったりなイチゴの蒸しケーキを作ります!」

おぉ、今日は洋菓子ですか。蒸しケーキ……作ったことないからちょっぴり不安だな……。

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