プリシラの父親はシースに違いない!
だって白いんですもの(断言)!
母親は『半竜』ッて言うならば人間でしょうけど。
……プリシラを最初に見た時「……カビ?」と一瞬思ってしまった私ですが、プリシラは好きなのですよ。
あのふっくらとした頬の感じが地味ながら妙に可愛く思える!
古の竜との戦いを終えたあと、その戦で活躍をした一匹の竜は一人の人間を愛した。
それは種族を越えての愛であり、最も戦功を挙げた竜ですら決して認められるものではなかった。
そんな愛の物語であった……。
「さぁ、その子をこちらへ渡すのだ」
それは小さな村での出来事。
まだ生まれたばかりの赤子を抱え込む女性を村の皆で攻め立てる。
「その子は災いを呼ぶ。
異形の子など決して村に置いておくわけにはいかないのだ」
「……」
だが女性はその手に抱く赤子をさらに力強く抱きしめるだけ。
しかしそんな事を許すくらいなら村人たちもこのような一人の女性を集団で攻め立てるなど、卑劣な真似はしない。
そんなことをしてでも赤子を取り上げるという決意の元に団結しているのだ。
異形は排除するというねじ曲がった団結によって。
「オギャー! オギャー!」
「あぁ、返して! 私の赤ちゃん!!!」
ついには赤子は村人に奪われ、女性はその場で拘束される。
そして赤子はこのままでは殺される運命だろう。
排他的な村において、人以外を認めず、異形を排除するのが当たり前のこと。
しかし、その小さな村で行われる当たり前の出来事に物申すのは何もその赤子の母親だけではなかった。
「ちょいといいかい?」
一人の老人が村人たちに声を掛けた。
「その赤ん坊をどうするんだい?」
老人は黄色い服を身に纏い、頭には同色の黄色い布を何重にも巻きつけている。
明らかに普通ではない出で立ちにたじろぐ村人たちであったが、老人は構わず言葉を続ける。
「その子……竜の血を引いてるのかい?」
「……あぁ、そうだ」
赤子を取り上げた男が答える。
赤子の母は猿轡を噛まされているようで、黙って怒りの目を向けてくる。
「なぁに、儂はただの旅の呪術師じゃ。
良ければその赤ん坊、儂に育てさせちゃくれねぇかい?」
老人の言葉に村人たちは耳を疑う。
災いを招きかねない忌み子を引き取ろうという酔狂な考えについてもだが、老人が自ら「呪術師」と名乗ったことにもあった。
「ははは、呪術師と言っても儂は誰に恥じることもなく己の研究をしているだけじゃ。
呪術師みんなが人前に出ることや呪術師であることを名乗るのを控えておる訳じゃないわい。
それよりも……その赤ん坊、そのまま殺すくらいなら儂に預けてみんか?
お前さんらも直接手にかけるのは後味が悪かろう」
確かに老人の言葉は何一つとして問題はない。
外見こそ怪しいが態度は紳士的であり、半竜とは言え、子どもを殺すのはやはり気が咎める村人たちは結局渡すことにした。
「おぉおぉ、なかなかに可愛い赤子じゃないかい。
そっちのお母さんや、儂が大切に育てるから今は任せておけ」
そう言うと老人は村を去ろうとする。
誰も引き止めようとしないし、老人も止まるつもりはないだろう。
「おっと、そう言えばまだ名前を名乗っておらんかったのぅ。
儂の名は『黄の王』ジュレマイア。
この名を知る者は追ってこないでおくれ。
今の儂は何よりも平穏を望んでおるのじゃから」
村人たちはその名に驚く。
否、その名を知らぬ者がこの世界にいるのかすら疑わしい伝説の大罪人である。
かつてラトリアという象牙の塔のごとき美しき国を色恋沙汰に狂って滅ぼした王である。
大昔に世界を繋ぎ止めた勇者に殺されたと聞いていたが、どうやら生きていたのか。
しかし村人たちの驚きとは別に、ジュレマイアはそれだけ言うと満足したのか立ち去って行く。
赤子の母は子どもを取られたためか生きる気力を無くしていたが、後日ジュレマイアからおかしな人形と共に送られてきた手紙を読んで再び元気を取り戻したとそうだ。
ジュレマイアは赤子のために誰にも攻め込まれず、かつ誰もが優しげな閉ざされた世界に逃げ込み、母親が来るのを待っていると書かれていたのだ。
母親はその手紙と同封されていた、隔離された世界への鍵となる人形を手に『アノール・ロンド』の地を目指す。
だが、その途中で不死の呪いにかかってしまい、北の不死院に送り込まれてしまった。
大切な我が子との唯一の絆であるおかしな人形を持ったまま。
「ふむ、それにしてもこの子はまだ名前がないようじゃし儂がつけてやろうかのぅ。
……プリティーで知らぬ者無き無双の女の子に育つように、という意味を込めて『プリシラ』と言うのはどうじゃろうか?
うむ、良い名じゃ」
ちなみにプリシラの名前はこうして決まったそうな。
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閉ざされた世界。
完結してしまった永遠の場所。
雪が優しく降り積もり、常に変わることのない永遠の世界、それが『エレーミアスの絵画世界』だ。
そこは一人の老人が隠居の地とするために作りだし、そして一人の少女を匿うための場所であった。
「あはははは~♪」
「これこれプリシラ、あんまり遠くに行ってはいけないぞ~」
雪原を走りまわる白い少女。それに呆れたような表情を浮かべつつも、どこか嬉しそうにあとを追う黄色い服を纏う老人。
少女の名前は『半竜』プリシラ。
竜の血を引いてしまったがために忌み嫌われ、この世界に逃げ込んだ少女である。
黄色い老人の名は『黄の王』ジュレマイア。
少女プリシラを救うためにこの世界に連れてきた呪術師である。
「それにしてもお前さん、だいぶ大きくなったのにいつまでも子供っぽいままじゃのぅ」
「お爺ちゃんが甘えさせてくれるからだよー。
わたし、お爺ちゃんが側にいればそれだけで幸せなんだもん♪」
笑顔のジュレマイア以上に万面の笑みを浮かべてプリシラは言う。
「(あぁ、やはりこの世界への共としてこの子を選んで良かったわい)」
変わらぬ景色故、季節感も時間の流れも感じないが、少なくとも5年ほどは経っただろう。
最初は赤子だったプリシラも竜の血のおかげか、同年代の子よりも成長が早い。
いや、顔立ちは幼く、言動も子どもらしいものだ。
ただ身長の伸びがいいだけだろう。
「あと数年もすれば儂の背も超えるんじゃろうなぁ~。
そしていつの日か、この世界にやってきて彼女の存在を肯定してくれるような男と結ばれる日が来ればよいのじゃが……」
しかしジュレマイアとプリシラがいる『エレーミアスの絵画世界』に訪れる者は今のところ零。
一応やってくる手段はあるが、その手段を持ってここに来れる者なんてそうはいないだろう。
時間の経過によっては、世界がプリシラを受け入れてくれる日も来るかもしれない。
だが人間という生き物は排他的だ。少なくとも竜の存在を受け入れてくれる者が現れるまではこの世界に留まる必要はあるのだ。
たとえ何も変わらない世界だとしても。
それに、この子の笑顔が見れるこの世界は幸せなことなのだろう。
そうして長い年月が過ぎていき、永遠に変わることのない世界で数少ない変わる者、人間である『黄の王』ジュレマイアはこの世界で死んだ。
それでも孫のように可愛がっていた『半竜』プリシラを守るために闇霊となって尚、留まり続けたのだった。
私の中で「プリ」と名に付く者は「プリニー」や「プリエ」というイメージがありましたが、これからは「プリ」という言葉を見たらプリシラを真っ先に思い出すかもしれません。
他にこんな名前はないかもしれませんが。