かなり私の想像によるものですが元々セリフのないキャラですしいいでしょう。
ギャグ成分は皆無ですので。
あるところに一人ぼっちの少女がいた。
親も兄弟もおらず、喰いぶちはゴミをあさることで何とか食いつないでいた。
そんな少女はある日、自分に魔術の才があることに気づいた。
だがそれは、さらなる苦悩の日々しかもたらさないのだった……。
「消えろ悪魔!」
「異端者は死ね!」
「ゴミはゴミらしくしてろ!」
この言葉は全て大勢の大人がよってたかって一人の少女に向けていった言葉だ。
「ぐっ……」
少女は涙を堪えながら必死で逃げる。
大人たちはそれでも罵り、石を投げつけ続ける。
「見ろ、悪魔が逃げていくぞ」
「悪魔のくせに我々の魔術を学ぼうなどと生意気だ」
そう、少女は魔術さえ使えるようになれば自分もまともな人生を送ることが出来るのでは、と考えてしまったのだ。
だがそれは間違いだった。
ビアトリスは魔術学院を訪ねて魔術を披露したら入れてもらえると、安易に考えていたのだが、披露した途端に罵詈雑言が飛び交った。
結果、こうして追い立てられるようにして逃げている。
学院の人間は金もなく、ゴミの中から拾ったボロボロの布キレしか身につけていない少女を追い出したのだ。
『竜の学院』ヴィンハイム。
魔術の名門として知られるその学院は確かに入学しさえすれば誰もが一流の魔術師になれるだろうし、生活するのに困らない程度の金くらい、あっさりと稼げる。
だからこそ、自分たちと異なる者を拒絶する。
教えを乞う者ですら撥ねのける。
それはある意味、少女の才能を妬んでのことなのかもしれない。
ゴミの中で生活しているゴミのような少女が、幼い頃から裕福な生活と修行を積んできた学院の魔術師たちを越える魔術の才能を持っているなどと認めたくなかったのだろう。
ヴィンハイムに入学する生徒の大半は貴族などの金持ちだ。
魔術を趣味で研究するような裕福な存在だ。
そんな中に身寄りのない少女が一人で行ったことろで、こうなってしまうのは仕方がないだろう。
そう、仕方がないことなのだ。
「うっ……ぐす……」
少女が住処としているのは路地裏の一角にゴザを敷いただけの場所。そこが彼女の家だ。
少女、ビアトリスのたった一人の家なのだ。
「……もし」
場所が場所だけに、寄りつく者などほとんどいないこの場所にビアトリス以外の人物がいた。
誰もいないのを確認して逃げ帰って来たはずのビアトリスは、そのことに驚いた。
その男は目の前に突然現れ、自分に声をかけてきたのだから。
「君がさっきヴィンハイムに入学届を出してきたビアトリスちゃんかい?」
男は目深に被った帽子のために表情こそ見えないが、その口調からはビアトリスに対する慈しみを感じ、どこか暖かかった。
「私は『ビッグハット』ローガン。
君に興味があって来た者だ」
その名前にはビアトリスも聞き覚えがある。
『ビッグハット』ローガンと言えば、魔術を極めた過去最高の魔術師である。
人嫌いで有名なために、あまり人前に姿を現すことはないと聞くが、こうしてビアトリスの前に姿を現したのには何か理由があるのだろう。
「正直君の魔術の才能を見た時は驚いたよ。
服装などから、私も最初は、孤児が立身出世を目論んで才能は学院で開花させればいい、と考えるような魔術を金のためだけに学ぼうと考える馬鹿だと思っていたのだがね。
……まぁ、君は孤児のようだし、金のために自分の才能を利用しようと考えたこと自体は悪いことではないのだがな」
思っていた以上に饒舌なローガンに驚きを隠せないのはビアトリスの方だった。
「単刀直入に言うと、私の弟子にならないか、ということだ」
なぜ自分が? と言う思いを捨てきれないビアトリス。
先ほどの学院の魔術師から罵倒され、石を投げつけられる自分を見ていたのだろうに、そんな自分を偉大な魔術師ローガンが弟子に取るなどと信じられないのだ。
「あ、あの……なん、で……私なんかを……」
恥ずかしさから消えてしまいそうな小さな声しか出せないことをも恥ずかしく感じて頬を赤らめるビアトリスを、ローガンはその両手で抱きしめ、こう言った。
「私の弟子に才能以外は必要ない。
魔術を極めることに生涯を費やすことが出来る人間を私は求めているのだからな」
そう言ったローガンも頬が赤くなっていた。
抱きしめられて下から見上げる形となって、初めて見ることが出来たローガンの優しげな笑顔にビアトリスはこう思った。
(あぁ、この人も私と同じで寂しかったのかもしれない)
ローガンは魔術の大成のためにその生涯を費やしてきた。
実際、魔術で彼に比肩する者などおらず、学院だけでなく、あらゆる方面に対しての権力までも持っていた。
だが、その権力こそが彼を人嫌いにさせてしまったのだ。
自分に近づいてくるのは金のために自分を利用とする者。
魔術を極めたいと言いつつもローガンを越えようとすら考えられない弱き魔術師。
そんな連中にほとほと愛想が尽きていたローガンは一人で魔術の研究をすることのみを生きがいとしていた。
ローガンは最初の内こそ声を大にして主張した。
自分はただの魔術師だ! 魔術を極めること以外に何も考えていない、と。
それでも周りの反応は変わらなかった。
だからこそ彼はその特徴でもある大きな帽子で顔を隠した。
人前に出ることを極力減らした。
だけど……寂しかったのだ。
一人でいるのは寂しい。そう思うことが大魔術師であるローガンには口に出すことすら出来なかったのだろう。
それ故に、自分と同じか、またはそれ以上の才能を感じたビアトリスに興味を持ったのだ。
「私の教えられる魔術を授けよう。
だがそれは表での権力や金とは縁遠いものになるはずだ。
君は異端者になる。
それで良ければ私の弟子にならないか?」
ローガンの再びの問いかけに対するビアトリスの答えは決まっていた。
「はい!」
ビアトリスが欲しかったのはお金じゃない。
勿論、毎日の食事、安心して過ごせる住処、そういうものが欲しくないわけじゃない。
しかしビアトリスが本当に欲していたのは『温もり』なのだ。
『家族』が欲しかったのだ。
それは血のつながりではなく、金でもない。
自分と似た存在であるローガンが家族に思えたからなのだ。
こうして、大魔術師ローガンの弟子となったビアトリスは魔術師としては異端者として扱われるようになった。
だがそれでも彼女は後悔などしていない。
彼女は一人ぼっちではないのだから。
あんな分かりにくい場所に召喚サインを出す恥ずかしがり屋なビアトリスが可愛くないはずがない!
思うにビアトリスがローガンの開発した魔術を使えるのには、彼の弟子だったという理由があるに違いないのですよ。
とりあえず、このあとの話を描くとしたらギャグになりそうなのでいい感じのラストとして、この話はここで終わりですね。
書くとしたら、
ローガンに『旅の靴』を勧められてドン引きのビアトリス。
ローガンのパンツを自分の下着と一緒にを洗うなと怒るビアトリス。
風呂上がりにパンツ一丁で歩く、ずぼらなローガンを叱るビアトリス。
そしてビアトリスが最終的に『四人の公王』に挑んで闇にのまれた哀しみに打ちひしがれるローガン。
そんな話も書こうかな~。書いちゃおうかな~。もうビアトリスとローガンで1作品まるまる書いてみようかな~。
……それはともかく、たぶんビアトリスの死がきっかけで、ローガンは新しい弟子を取ることになったと思うのですよ。
グリッグズさんはビアトリスを失った悲しみを癒すためだけの存在で、本当の意味では弟子としては認められていなかったのかもしれません。
結局はローガンさんも『公爵の書庫』で狂っちゃいましたし。
もしもビアトリスが生きていたならば魔術研究のためにシースと同じ道を歩むはずがないのです!
このゲームの登場人物は大抵最後は狂って敵として出てきちゃいますからねぇ~w