なんか今回の話とこれからの話で段々とこれまでに書いた短編と繋がりが出てきてしまいましたが、一応他の話を読まなくとも分かる話にしていきたいと思います。
短編だからこそ、まだ原作で会っていないキャラの話を読まない主義の人もいるでしょうからね。
それと防具の『チェイン』シリーズは女性が着るとボディラインが強調され、光沢が妖しげな色気を醸し出して素晴らしいので私は愛用しています。
ヴィンハイムという魔術を教える名門校がある。
そこで修行を積んだ者は、それぞれに魔術師として活躍をしていき、裕福な生活を送ることが出来る。
それゆえに魔術師を名乗る者には、魔術学院であるヴィンハイムの卒業生が多い。
当然学院の卒業生には、魔術を武力として使うことで傭兵として稼ぐ者もいるし、学問として研究する学者になるものもいる。
これはその中でも変わり種、学院をトップの成績で卒業しながらも、魔術と鍛冶技術の融合を目指した一人の男の物語であった。
「さて、旅にでも出るか」
ある晴れた日。
別段理由があるわけではないが、男は突如そう言った。
「む? リッケルト。
貴公、旅に出るのか?」
男、リッケルトの側で本を読んでいた魔術師『ビッグハット』ローガンが尋ねる。
「あぁ、俺は魔術鍛冶屋だが、この国に居てもこれ以上の先はなさそうだからな。
新たな鍛冶の可能性を見いだせる種火を求めて旅に出ようと思う」
「……そうか、しかし貴公の魔術を使った鍛冶の腕は国でもトップクラス。
いきなり居なくなっては困る者が大勢いるだろう」
「あんたがそれを聞くのか? ローガン。
俺もあんたも自分勝手に生きているんだ。
自分の欲望に忠実になった俺を止められる奴がいないことくらい分かるだろう」
『魔術鍛冶屋』リッケルトと『ビッグハット』ローガン。
この二人はそれぞれの分野、すなわち、魔術を鍛冶に使うことと、開発することに長けたヴィンハイムを代表する二人である。
リッケルトは鍛冶以外はどうでもいいという考えから、まともな会話が出来る人間は少なく、人間嫌いなローガンにとって、心を許せる数少ない友人である。
初めはお互いに趣味への情熱だけだったのだが、魔術をそれぞれのやり方で発展させてしまったために、この魔術至上主義の国において二人は絶大な権力などというものを得てしまった。
だからこそ純粋な鍛冶屋と魔術師であり続けるために世間からは離れた生活を送っているわけだ。
そんな似た者同士の二人が親しくなるのも自然なながれだろう。
そして今はリッケルトの家にローガンが遊びに来たという状況である。
「ふっ、それもそうだな。
確かに私としたことが考え過ぎだった。
それならば私も旅に出るとしよう」
「俺とあんたは旅に出るにしても目的が違うだろうけど、行き先は同じロードランだろ?
まぁ、旅先であったら向こうでも仲良くしようぜ
それよりも……、あんた弟子をとったって聞いたが、その弟子はいいのか?」
「ビアトリスのことか?
いやな、彼女は弟子に取った当初こそ、私のことを『師匠』と呼んでくれていたのだが、年月が経つにつれて、呼称が『パパ』に代わり、『お兄ちゃん』に代わり、今では私のことを『あなた』と呼ぶようになってしまったのだよ。
少しくらい離れるのも悪くなかろう」
「お前……、それはずいぶんと可愛らしい弟子なんだな」
ローガンは弟子の変化の理由に気づいていないようだがリッケルトは目ざとく気付いて呆れてしまう。
これは気づけない方がおかしいだろう、みたいな。
そうして暫くの間、雑談を続けていたリッケルトとローガンだったが、ローガンが弟子にお土産として買う予定の最近オープンしたばかりの菓子屋の終業時間が間近だったのに気付いて慌てて帰ることになった。
「(こんな鈍感な奴だからこそ友人としては一緒に居ても楽しいのかもしれないな)」
鍛冶馬鹿のリッケルトにとってもローガンは数少ない友人である。
願わくばこの鈍い友人とその弟子の関係が進みますように、そんな願いを込めて友人を見送った。
「理屈をこねるのは学者であって、俺は職人だ。
とはいえ、その学者でもある友人は放っておくと理屈よりも先の展開に進みそうにないしな。
俺が手を貸してやるべきだろうか……」
ローガンが帰ったあと、ビアトリスにローガン名義で何か指輪的なものをプレゼントしようかとさえ考えるリッケルト。
だが、他人の恋路に第三者が手を出すのは善悪関係なしに面倒なことになるので止しておいた。
まぁ、ローガンに対するビアトリスの愛情は本物だろうから放っておいてもいつかは関係が進むであろう。
「それよりも、俺も旅仕度を整えておかないとな」
といっても別段荷物が多い訳ではない。
リッケルトが持っていくものは愛用の枕くらいだろう。
そもそも『魔術鍛冶』とは、術者の魔力を使ってすでに作成済みの武器に鉱石を融合させることであり、溶かした鉱石を鋳型に流したり、金槌で叩いたりといった作業を必要としない。
いわゆる永続的な付与魔術といったところだ。
そのためリッケルトが持っていく荷物が愛用の枕しかなかったことも当然のことと言えるだろう。
「一応書き置きも残しておこう。
依頼を受けた仕事は全て済ませてあるが、俺が何も言わずに国を飛び出したら他国に攫われたとか思われて戦争になってもいけないからな」
大袈裟に思われるかもしれないが、リッケルトの鍛冶技術によって作成された武器は、魔術師のように魔力の高い者が使えば一騎当千となり、魔力が低い脳筋戦士が使ってもそれなりの戦果が望めるのだ。
それは武器の性能だけで、雑兵を訓練された騎士団に匹敵する力を与えるに等しい。
それはともかく、こうしてリッケルトは旅に出た。
目指すは呪われた地『ロードラン』
……
…………
………………
「……ついたか。
ここがロードラン。思っていたよりも良いところだな」
巨大なカラスに運んでもらったために旅の途中は大した出来事もなく、あっという間に到着したわけだが、リッケルトが最初に訪れた『火接ぎの祭祀場』という場所は時間帯もあるのだろうが、日の光も差し込み、ところどころが壊れた建物が風情を感じさせてくれた。
と、何やらウキウキしてきたリッケルトに声を掛ける者がいた。
「へぇ、また一人この地に来たのか。
デーモンのソウルを求めたか?
それともこの地を救おうとでも?
ハハハハハ……」
「あんたは?」
篝り火の側で佇む一人の戦士。
身に纏う鎧は高貴な生まれの騎士などが嫌う性能重視の『チェイン』シリーズ。
そして直剣と盾を使うオーソドックスな装備だった。
「俺は『青ニート二世』。
まぁ、この地でのあんたの先輩さ。
そんなことよりも、さぁ、行けよ。
どうせあんたもデーモンのソウルのためにこの呪われた地に来たのだろう」
「いや、俺は鍛冶屋として新しい種火を求めてやってきた。
この地を拠点に新しく活動予定だからあんたも良ければ利用してくれ」
リッケルトはデーモンのソウルなどに興味はない。
求めるのはただ一つ。
鍛冶屋としての新しい可能性だ!
「そうか、だが俺はいいよ。
この世界に怖気づいた俺はここにずっと座っているだけだから。
何もないが少なくとも安全だからな」
思うにこの『青ニート二世』と名乗る戦士も過去に何かしらあって絶望してしまったのだろう。
リッケルトとしては鍛冶仕事を依頼してこない奴ならば用はない。
「ならば気が変わったら俺に会いに来てくれ。
とりあえずこの辺で鍛冶屋が出来そうな場所を探してみるからさ」
そうして『青ニート二世』と別れたリッケルトは篝り火の近くから、下へ降りる道を見つけ、そこからエレベーターでさらに降りてゆく。
「このロードランという地は、エレベーターがこんな辺鄙な場所にまで用意されているだなんて公共事業が上手く機能しているのか。
ヴィンハイムでは考えられないな」
こういう些細なところに祖国との違いを見つけ、見る物全てを面白がっているリッケルト。
そして雪着いた先、『小ロンド遺跡』にて自身の拠点となる店を構えようと考える。
そして考えた結果、周りの建物の石材を勝手に拝借して、自身の魔力を接着に使って組み立てたのはまだいい……が、内側から組み立ててしまったために建物の中に閉じ込められてしまったのだ!
「……ふむ、これは失敗したな。
出入り口を作るのもうっかり忘れていたから出ることは不可能だ。
だが、鍛冶仕事をするのにはここから出る必要はないわけだし、これはこれで構わないだろう」
そうして閉じ込められてしまったことをポジティブに考えたリッケルトは『小ロンド遺跡』にて鍛冶屋を始めることとなったのだった……。
今日も彼の元に訪れる客はいない。
逆に考えるんだ。「オチ無くてもいいさ」と考えるんだ。
……まぁ、今回の話は『青ニート二世』さんがリッケルトの店の近くで亡者化していた理由に関してのお話でもあるわけですね。
思うに『青ニート二世』さんは二つの鐘を鳴らしたあとに「俺も本気を出すか……」みたいなセリフを言っていたので、本気を出すために武器の強化にリッケルトを訪ねたのだと思います。
そして武器強化の依頼料金としてソウルが足りなかったので『小ロンド遺跡』のボケーっとしている亡者たちを狩っていたら逆にやられてしまったと。
なんだかローガンの人間嫌いな雰囲気が薄れてきていますが、それは数少ない親しい人間は例外としているから、という設定で。
リッケルトは、原作ではローガンに会ったこともないような口調でしたがそれは嘘。
実はリッケルトとローガンは友人で、仲がいいのを知られると人間嫌いで通しているローガンのイメージを壊してしまうかも、と配慮した結果、プレイヤーに嘘をついたのだ!
伏線ってわけじゃなかったですけど、今回の話でも伏線っぽくなっているものはこれから先回収予定がありますので~。