次話で「一人の料理人は熱き思いを胸に秘め、呪われた地、ロードランを目指す! の巻」となるので、一応一話完結ですが次話のミルドレットさんの話でギャップを出すための少し真面目っぽい話になります。
瓦礫の山に一人立ち尽くす少女がいた。
その頬を伝うのは一筋の涙。
顔は覆面で隠れてはいるものの、顎を伝って落ちてくるその雫は地面を濡らしていく。
「誰も守れなかった……」
すでに物言わぬ少女の父、それに共に国を守ろうと戦った騎士団の仲間たちの骸(むくろ)で溢れかえった戦場に佇む。
「何も守れなかった……」
少女が最も敬愛する最愛の姉も消えていた。
「私は騎士なのに……」
涙とともに口からこぼれ出た小さな言葉。
だがその言葉を聞く者は誰もいない。
そう、もう誰も居ないのだ。
「……何が騎士だ。
何も守れなかったじゃないか!!」
少女、ミルドレットは涙した。
それでも、亡き父の言葉を受け継ぐために歩きだす。
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すでに滅びてしまった国、ウーラシール。
そこは平和を愛し、魔術を生活に取り込むことで平穏な日々を送っていた。
そんな国が滅びたのには勿論理由がある。
調理師学校『ミルド神殿』があるこの国は優秀な神殿騎士を輩出することでも有名であり、他国からもこの学院に入学するために留学してくる生徒も多数いた。
そんな名の知れた学院が滅びたのだ。
並々ならぬ相手だったのは想像に難くないだろう。
「許さないぞ!
北の巨人どもめ!」
そう、ウーラシールを襲ったのは、はるか北に位置する巨人の国より来た巨人たち侵略者である。
ウーラシール独自の魔術を狙っての行動だろう。
何人もの魔術師が連中に攫われていき、騎士たちは皆殺しにされた。
ミルドレットはその中で唯一生き残った、ウーラシールの最後の生き残りである。
それは自ら戦場に出て指揮をとっていた国王である父のおかげである。
娘を守るために散った父親の愛がミルドレットを生かしたのである。
姉である<宵闇>と別れたミルドレットは、火の手が上がっている戦場に直接向かった。
そしてこの国に襲ってきたのが 北に住まう巨人たちだと知ると、早々に戦いで勝つことを諦め、王族としての責務として、一人でも多くの民を逃がすために奔走した。
それは王族として勝つことよりも守ることを優先した結果であり、この時点では最良の選択だったのだろう。
相手の注意を惹きつけ、巨人の足の腱を自慢の大包丁『肉断ち包丁』で切断し、倒れた相手の喉を掻き切ることで殺してまわり、圧倒的数と戦力を誇る巨人軍を圧倒しながらも、民を逃がすことを第一に考えて行動していた。
だが、そんな彼女を脅威にを感じた巨人たちは、ミルドレットを取り囲み、集中攻撃を仕掛けた。
さすがに捌き切れなかったがミルドレットは耐え抜いた。
すべては民を守るために。
その一心で歯をくいしばって全身を絶え間なく襲う痛みにも耐えた。
痣だらけになりながらも、その体を血で赤く染めながらも、最後まで巨人の攻撃を一身に引き受けていたミルドレットの雄姿は騎士団の士気を高め、このままいけば民は逃げ切れる、こちら側の勝ちだとさえミルドレットは思った。
「負けるなミルド騎士団!
敵は巨人とは言え、あと少し持ちこたえればこの戦は我らの勝ちだ!
今こそウーラシールの騎士としての誇りを見せつける時ぞ!!!」
現場で指揮をとる父、ウーラシール国王の言葉の言葉が聞こえたミルドレットはより一層苛烈な戦いに臨んで行った。
それを合図に仲間の騎士たちも巨人に向かって行くが、それは間違いだった。
巨人たちはまだ奥の手を隠し持っていたのだ。
「……なんだあれは?」
急に空が翳ったことに疑問をもったミルドレットは空を見上げた。
次の瞬間、彼女が目にしたのは巨大な物体。
そして轟音とともに響き渡る激しい爆発音。
「ぐっ……飛び道具。
それも爆弾だと!?
巨人どもにそんな知恵があるというのか!?」
巨人に知恵があるとは思えなかった。
しかし事実として目の前で起こっているのは、敵軍が味方であるはずの前衛で戦っている巨人兵諸共ウーラシールの騎士たちを殲滅しようとしている光景だった。
ミルドレットもさすがに今度ばかりは自分の生を諦め、死を覚悟した。
だが、そんな彼女を庇った存在がいた。
「ぐぉぉぉ」
「父上!?」
彼女の父、ウーラシール国王が娘であるミルドレットに覆いかぶさる形で爆弾の被害を防いだのだ。
「どいてください父上!
父上は生き延びて一人でも多くの民を守るために指揮をしていただかなくては!」
普段は冷静なミルドレットは慌てた。
誰よりも優しく、それでいて王としての武力、頭脳、すべてを持った尊敬する父が自らの身体を盾に、ミルドレットに降り注ぐ爆弾による炎を防いでいることに。
「ミルドレット……この国はもう終わりじゃ。負け戦じゃ。
儂は王でありながら民を助けることなど出来ん駄目な王じゃった。
じゃがな、こんな儂でもこのウーラシール王国に住む一人の人間として、一人の父親として娘一人くらいは守って死にたいのじゃよ」
今もなお降り注ぐ爆炎と瓦礫を一身に受けながらも笑顔でミルドレットに微笑むウーラシール王。
「父上!
私は父上に死んでほしくな「言うなミルドレット。これでいい、これでいいのじゃ……」父上……」
巨人たちは爆弾で国を一掃すると北へと帰って行く。
足音が段々と遠ざかる。
地響きのような足音が完全に消えたのを確認すると、ウーラシール王はミルドレットの上からどいた。
それは最期に振りしぼった力が抜けて、崩れ落ちたと言ったほうが正確なのだろう。
「……良かった。
何も守れんかった儂じゃが、愛する娘だけは守れた」
すでに死は目前と言えるだろう大怪我を負ったウーラシール王。
そんな重体ながら出てくる言葉は娘を心配する言葉のみ。
「うぅ……ち、父上……」
「泣くなミルドレット。
儂は助からんがお前は生きておる。
この悲劇を二度と繰り返さぬように生き延びてくれ……。
そして伝えるのじゃ……」
とめどなく流れ落ちる涙を拭うこともせずにミルドレットは父を抱きしめる。
「良いか、ミルドレット。
巨人たちはウーラシールから魔術を盗むことを目的に侵略したようじゃ。
とすると他の国も狙うかもしれん。
お前はこのことを西のヴィンランド家と東のシバ家に伝えよ。
このウーラシールが滅ぼされた以上、西と東が手を組まなければ北の巨人連中は倒せまい。
連中はさらなる欲望を我ら以外の国にも向けるやもしれぬ
それだけは何としても防ぐのじゃ!
このウーラシールの悲劇を繰り返してはならぬ!!」
「……分かりました父上。
必ずやこの国の悲劇を、これ以上繰り返さぬために! ……私は行きます」
「……あぁ、儂は自慢の娘をもったもんじゃ。
これで安心して逝ける。
なぁに、向こうで死んだ仲間たちが待っていると思えば死も悪くないもんじゃ」
自分の死を理解しながら尚、笑顔を見せるウーラシール王。
「お前の姉、<宵闇>ものんびりしておるが芯が強い娘じゃ。
あの子も儂の自慢の娘じゃから生きていればどこぞに逃げ伸びておるであろう。
ミルドレット、お前には苦しい役目お押し付ける形になるが、後のことを頼む。
愛しい娘ミルドレット、儂の自慢の娘……じゃ……よ……」
ウーラシール王は死んだ。
ミルドレットは父の遺体をその場に横たえると、自らの使命を果たすために歩きはじめた。
巨人たちへの復讐と、二度と連中による被害を出させないために。
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こうして西のヴィンランド家、東のシバ家という大陸を代表する騎士の名家にミルドレットは頼みこみ、歴史上はじめての東西合同による連合軍が作られ、北に住まう巨人の国へ一斉攻撃が仕掛けられた。
その中でも目覚ましい活躍をしたヴィンランド家は『ブラムド』と呼ばれる常人では持ち上げることすら不可能な巨大な鎚で幾人もの巨人を屠り去った。
その勇猛果敢な姿に感銘を受けた、当時はまだ見習い神殿騎士だったリロイ――後の『聖騎士』リロイもブラムドを模倣した武器を使い始めたことから神殿騎士の装備には大槌も多く使用されるようになった。
東のシバ家も活躍をしたものの、この戦によってシバ家当主は戦死し、保有する騎士団もほとんどが死亡。
事実上シバ家は壊滅したために、この戦で最も戦功を挙げたヴィンランド家ばかりが持て囃されるようになった。
そのためシバ家の僅かな生き残りからは恨みを買ったりもしたが、それは別の話となる。
だが、この戦での本当の功労者はウーラシール王国ただ一人の生き残りである姫騎士ミルドレットだろう。
彼女の迅速な行動により、東西は素早く連合を結成し、北の巨人たちは殲滅されたのだ。
この大陸に平和がもたらされたのは彼女がウーラシールの悲劇を伝えたからだ。
そしてミルドレットはウーラシール王国の崩壊の際に生き別れた姉を探すための旅に出ることとなった。
復讐を終えたミルドレットの旅はここからが始まりなのだった。
この話続きます。
次話でミルドレットがメインの話で『病み村』へ至るまでの話を書いていこうと思いますので。
それに混沌の姉弟たちもそろそろ出したいですしね。
思うにこれが理由で『デモンズソウル』では巨人の要石が使えなかったのではないかと思います。すでに崩壊していたからという理由で。
それに東のシバ。彼はきっと高貴な生まれながらも家が潰れたので戦の時の借金とかなんやかやで屋敷も爵位も売り払って没落して盗賊団に身を落としたのかもしれませんね。
自己紹介で「東の~~」と名乗った時点で一番最初にに考えたのがヴィンランド家との関係でしたもので♪
そういえば以前、『ブレイブルー』と『ダークソウル』と『デモンズソウル』を混ぜた二次創作を計画していたし、こっちで書いてみようかな……。
シバはハクメン役で、シバハクメン。妹姫様&エンジーがココノエ&テイガーとか。
詳しくは『なろう』の私の活動報告でもどぞ♪