作戦領域:オービタルリング―太陽発電区域
作戦目標:ガンダム鹵獲作戦への参加
報酬:要交渉
一期なんてやれることねえよ、というのが個人的に考えた結果
いや、当たらないじゃなくて当ててもどうにもならないだからどうしようもないんですはい。
"武力による戦争根絶"それを掲げる私立武装組織<『ソレスタルビーング』。イオリア・シュヘンベルグが行った彼らの声明。
『領土・宗教・エネルギー。どのような理由があろうとも、私達は全ての戦争行為に対して、武力による介入を開始します』
この声明の最後の一文は、まさしく世界への宣戦布告。軍事力によって均衡が保たれる世界は、彼らを目の敵にするだろう。
声明の後、レイヴンたちに変化が現れた。まず、レイヴンのレイヴンである理由を分類すると、大きく三つに分けられる。
1.高額の報酬目当て
2.MSに次ぐと言われる
3.戦い目当て
そして、最初の交戦者である『首輪付き』が記録した、『青いガンダム』の姿,性能。それを目にした1と2のレイヴンたちが、ACを降りるという事態が多発したのだ。
命が惜しい。そういうことなのだろう。だが、1と2の種類のレイヴンにももちろん、レイヴン統括組織である『レイヴンズ・ネスト』、そのアリーナにおける上位ランカー――つまり腕利きは存在する。
結果として、10人の上位ランカーのうち二人が引退することとなったのだ。これは、映像が記録された後に出現した新たな『緑色のガンダム』が、レイヴンを進んで狩っているという実態が拍車をかけた結果だ。MSが四肢を撃たれて戦闘不能にされる中、ACだけが執拗なまでにコアを破壊されているのである。
他にも、上位ランカーの一人である『首輪付き』がガンダムによって重傷を負い、治療の済んだ今は対ガンダム戦に備えているともっぱらの噂。そして更には、他三人の行方が掴めなくなっている。
三人については引退ではなく暗殺されたという噂が流れており、恐らく『ソレスタルビーング』の手先によるものだと結論付けられている。
問題なのは、その中にアリーナの永遠のランク1と呼ばれたハスラー・ワンの名も含まれていたことだ。
生きる伝説であったレイヴンの失踪は、レイヴンだけでなくそのスポンサー,更には傭兵全体に大きな不安を与えることとなった。
そしてまた、レイヴンズネストより異例の通達がレイヴンへと送られた。
『市街地を襲撃するテロ的ミッション、この一切を禁ずる。違反者はネストより除名し、懸賞金をかけるものとする』
本社への襲撃を避けるためであろうが、『ガンダム』にレイヴンズネストが屈したという事実だ。
この通達を受けて自らネストを見切り、トラストなどに移籍してただの『傭兵』として戦う者が出始めたのだ。これはあくまでビジネスとしていたネストの経営陣と、人生や娯楽としていたレイヴンの違いが生んだ結果であった。
そして起こった、国際的なテロネットワークと思しき組織による、『ソレスタルビーング』の武装放棄を求める無差別爆破テロの勃発。世論においてのイメージアップを少しでもと焦るネストは、レイヴンを含む全"社員"へと鎮圧ミッションを要請。
全世界のレイヴンが同時時刻に、諜報を行った結果判明したテロ組織の拠点を片っ端から襲撃するという自体に陥った。その際、一部のレイヴンは『ガンダム』と共同戦線を張ったのだが、悪い意味で名の売れていたよくいる中堅ほどのレイヴンはその時を好機と、『緑のガンダム』や『デカブツのガンダム』によって撃破されてしまった。
これはネストの思惑通り運ばれた事だという見方が強い。
介入開始より四ヶ月。宇宙にて、大規模なガンダム鹵獲作戦が人革連によって行われていた。
無数の通信機を宙域にばら撒いての、GN粒子による電波妨害を逆手に取った位置の割り出し。それによって判明した敵艦『プトレマイオス』へと、セルゲイ・スミルノフ中佐率いる人革連頂武部隊は攻撃を開始した。
人革連側は輸送艦ラオホゥ四隻と、それに搭載されたティエレン四十数機。接近に気付いた敵艦から出撃した二機を陽動と見無し、それに更なる陽動として一隻ずつのラオホゥを指揮官のセルゲイは向かわせた。残りの二隻によって敵艦への攻撃を行うのである。
そして、その作戦にただ一人のレイヴンとして参戦していた『首輪付き』。彼も母艦への攻撃部隊へとその身を投じていた。
「中佐、よろしかったのですか? いくら味方といえどレイヴン、信用できません」
陽動に向かう途中、セルゲイにソーマ中尉は秘匿回線で通信を行った。
本来なら彼女を咎めるところであるが、何の意図があってかセルゲイは答える。
「彼はガンダムにかなり執着している。母艦の方は足止め程度でいいのは通達した通りだが、彼のように血気盛んなのがいてもいい
それに、不本意だが、彼が若いとはいえ腕が立つのは確かだ。戦闘映像の資料を見たが、パイロットとして天才と言っていい」
「もしかすれば、彼がガンダムを落とすかもしれないと?」
「さあ、どうだろうな。同志の犠牲が一人でも少なければそれでいいし、敵の被害が多ければそれでもいい
それに、悪戯にオービタルリングの発電施設に損害を与えるような阿呆ではなさそうだ」
レイヴンは鴉。血肉を欲し、死体をついばむ。味方ならば、戦力の補強としてはこれとない。セルゲイ自身はレイヴンを憎んでいると言っていいほど嫌いではあるが、あくまで軍人だ。戦力を使い捨てるような真似はしない。
もっとも、捨石にする可能性はあるのだが。
<<レイヴン、目標はガンダムの鹵獲が達成されるまでの時間稼ぎです。とはいっても、その間の行動は自由。味方に被害を出さないのが追加報酬となっていますが、好きに暴れて構いません>>
正面の宙域に閃光が走る。先行した輸送艦に搭載されていたコンテナによる特攻と、ミサイル群が迎撃されたようだ。
そして、後続の輸送艦ラオホゥからせり出すティエレンに混じり、一機のACがその姿を現した。
ティエレンが装甲が厚い大出力、大重量のMSである中、その黒いACは軽量二脚――ユニオンフラッグのような脚部をもった全体的に細身の機体であった。
ガンダムにかかれば、一撃をもってティエレンを行動不能、または撃破できる火力がある。ならば、装甲など捨てればいいというのが『首輪付き』の考えだ。つい最近ユニオンで開発された黒い対ビーム塗料を高額で仕入れて塗ってはいるが、余波は防げても直撃に対応できるものではないだろう。
ACの武装は左腕にパイルバンカー、右腕には高出力試験型レーザーブレード。そして、背には試験型で精度が安定しないが威力は馬鹿高いチャージ式の重レールガン。そして肩には追加ブースターを装備していた。
重量は相当なものとなったがブースターも出力が高い物にし、レールガンはあらかじめ一発分だけチャージ済みだ。撃ってすぐにパージすれば、積載重量の過多もなくなる。だが、問題なのは機動力を重点的にチューンした上に追加ブースターを付けた結果の、ソーマ・ピーリス中尉が登場する『ティエレンタオツー』の速度も超えるまでなった機動力だ。『首輪付き』はGに強い体をもって生まれたが、彼からしてもこの機体の最大速度には恐怖心がある。
ACの目の前で、次々とティエレンが上昇する。
<<攻撃開始の通達が来ました。ミッション開始、敵を殲滅してください>>
ペダルを踏み込み、ティエレンに続くように機体を舞い上がらせる。
正面ではすでに戦闘が始まっており、緑のバリアを表面に張った母艦を守るように立ち回るあの『青いガンダム』と、母艦のハッチの中から射撃を行う『緑のガンダム』が確認できた。
どうやら、バリアは中からの射撃は通すらしい。なんと理不尽なことか。オマケに巨大な皿を並べたようなオービタルリングの太陽発電施設を背にしてるため、攻撃には細心の注意が必要となる。
『緑のガンダム』の片足は関節のある脚でなく、固定するための支えのような金属棒となっている。
確認した瞬間、息をつく間もなくそのガンダムの単眼がACを捉えた。
来る。そう確信した『首輪付き』はすぐに追加ブースターに火を入れて真横に急加速、先行する数機のティエレンを盾にするような機動をとった。
その一瞬後に飛来したピンクの光線が、レイヴンの正面のティエレンを貫く。
正面装甲で受けたにも関わらず、それを狙撃は容易に溶かした。やはり、威力は既存の兵器で最強と言えるものらしい。
射角から外れるため散開するティエレンをこれまた盾にしながら、ACはそれよりもさらに高度を下げる。円筒の表面の回転するリングに四つのコンテナを付けた物、と言える敵艦の腹に取り付く腹積もりだ。
『緑のガンダム』はACを撃たんと身を乗り出そうとするが、正面にぐらついてすぐに姿勢を戻す。その位置は回転するコンテナの一つ。つまり、艦の船首の付け根あたりにあるそれより後ろに行けば、攻撃は来ない。
そして、姿勢を立て直したその動きを、『首輪付き』は機械による姿勢制御だと判断した。
あのガンダムのパイロットは個人的な恨みをレイヴンに抱いている、というのはよく知られたことだが、徹底的にレイヴンを殲滅しようとする戦い方の割には先ほどの動きが妙だったのだ。
つまり、相手は自分の足が動かせない事を忘れるほど頭に血が上っており、そこに漬け込む隙は作れるということである。もっとも、それを実現するには相応の実力が必要だが。
<<味方部隊、『青いガンダム』を抑えています。今のうちに攻撃を>>
すぐの妨害によって途絶えた無線に言われるまでもない、と『首輪付き』が答えると、ACはオーバードブーストを行う特殊ブースターに火を入れた。
同時に、敵艦のコンテナを支えるリングが回転する。ACを『緑のガンダム』の射角に入れる気だ。
爆発的な推進力をもっての、一瞬でのトップスピードへの到達。まさに殺人的な加速と言えるそれに嶺が押さえつけられて息が止まり、視界が赤くなる。そのままブラックアウトしかけた『首輪付き』だが、奥歯を噛み締めてなんとか持ちこたえた。
そして、即座にオーバードブーストを停止。続けて頭を敵艦に向け、その真下に来たときに機体から見上げられるように肩のブースターを使って急速に姿勢を変える。
その全力疾走しながら準備運動をするかのような動きに、機体の各部が悲鳴を上げた。
宇宙では減速がないため、一度トップスピードになったのなら十分であるからだ。コンデンサ内のエネルギーの消費を抑えるためにも、オーバードブースターの使用時間は短い方が良い。
また、機体も中破以上を覚悟して来ているため、潰れたところで問題はないのである。
強烈なGの元に置かれていつの間にか息を止めたまま、『首輪付き』はいくらか出力を加減した二度目のオーバードブーストを行うタイミングを待った。
左腕の武器の威力を最大限に発揮するやり方だが、一歩間違えば敵艦もろとも――もしかすればACはトラックに潰される空き缶のように潰れるだろう。
宙を滑る機体が宙で炸裂する打ち上げ花火の下を通り、大きな雲の下へ入らんとする。
だが、コンテナの回転が速い。それを察した『首輪付き』は、「ならお前でいいか」と目標を敵艦から『緑のガンダム』へと切り替えた。
今だ。背中に推力を産むペダルを踏み、破壊力を先に持つ腕を動かすレバーを引き、狙うは敵の腹一点。『青いガンダム』がこちらの狙いに気づいたという通信が入るが、もう遅い。全開となったブースターを用いてACは艦の表面を滑るように、『緑のガンダム』が入ったコンテナの入口に向かって突撃する。
そして、その影から飛び出した瞬間、『緑のガンダム』が腰だめに構えるライフルがACを捉え、その額のガンカメラがその顔を一つ目の鬼のように見せた。緑の膜が艦を覆ていることでそれごしとなっているのが、さながら森の中の鬼のように思わせた。
ガンダムの指先が動く。
銃口から伸びた光線が、ACを他のレイヴンと同じように鉄屑にその身を変えんと発射される。
『首輪付き』はガンダムが指を動かした、銃口が光る直前。前もってエネルギーを回しておいた背のブースターを開放。瞬時に左側へと動かした。そしてほぼ同時に開放したように見える肩部ブースターの左側からの逆噴射により、その移動をほんの機体一機分に収める。
胃の中のものがせり上がり、視界が一瞬完全に真っ暗になった。意識を失った事に気が付けば、ヘルメットのバイザーの中を赤い泡が浮いている事に気が付いた。
ACが移動したのは銃のある左側だが、『緑のガンダム』は左側――つまりACが右に移動した場合の攻撃位置に大きな金属板を付けている。未知のそれを、突破できる保証はなく避ける他はない。そして事前情報で堅固なバリアと分かっていても貫けるかどうか分からないのが、どちらに動こうがある二機の間にある緑の膜である。
二枚の盾を相手にするよりは、一枚の方がマシだろう。
目標を見失った桃色の光線が宙を射抜き、虚空へと消える。
構えられた左腕のパイルバンカーの杭は炸薬によって押し出され、まず正面のバリアへと突き刺さる。
『首輪付き』は出力を最大にまで上げ、それを力任せに食い込ませた。それはガンダムのライフルの銃身へと突き刺さり、爆発まではいかないが銃身を歪ませた。
だが、それを見ているだけの敵ではない。
『緑のガンダム』が、腰からピストルのような火器を抜く。緑の膜は、内側からの攻撃は通す。
思わず『首輪付き』は舌打ちをすると、パイルバンカーをパージして、そこに展開した背のレールガンを打ち込んだ。
パイルバンカーのマガジンに残っていた大量の炸薬が爆発し、狭いコンテナ内をその衝撃が反響する。コンテナが軋み、『緑のガンダム』が圧に押されてその後ろへと転がった。
これは待ちに待った、ガンダムを破壊できる好機である。が、コンデンサのエネルギーの加減で最大出力のブレードを出すことはできず、レールガンのチャージは遅すぎる。
『首輪付き』は仕方なくACを反転させ、武器へのエネルギー供給の一切を断つ巡航モードに切り替えてオーバードブースターを起動させた。『青いガンダム』が彼に向かおうとしたが、艦から離れられないらしく当たりもしない数発の光線を撃っただけに留まった。
<<レイヴン、お久しぶりです。後方の艦が、先ほど鹵獲した『羽根つき』の反撃で撃墜されました。『大きいの』のにも思わぬ反撃を受け、部隊は壊滅状態。私たちのミッションは終了です、帰還してください>>
回復した無線の音が、『首輪付き』の鼓膜を叩く。
だがそれよりも、彼の脳内を占めるのは、圧倒的な機体性能の差が生む理不尽な現実への不満である。
依頼主:人類革新連盟
作戦領域:オービタルリング―太陽発電区域
作戦目標:ガンダム鹵獲作戦への参加
報酬:要交渉
ミッション結果
成功:人革連が行った作戦自体は失敗に終わったが、報酬はオペレーターの交渉によってきちんと払われた。