さて、戦うとは言ったものの、どう攻めようか。数瞬の思考の後、ある結論に辿り着く。
.........とりあえず殴ってみよう。
よーし、そうと決まれば実践有るのみ!
「うら!」
硬っ!
「...............。」
敢えなく玉砕。殴った手を抑え、うずくまって悶絶する。同時に、さっきまでの浅はかな自分の考えに深く後悔した。
つーか、痛っってぇぇぇ!?すぎだろ!?流石人外!体組織から予想を遥かに越えてましたぁぁぁ!
「っ!」
何か来る!
「くっ!?」
自分が居たところにクレーターが出来ている事から、避けられたと確信する。
「大丈夫ですか!?」
心配する声に大丈夫だと伝えると、どこか安心した様子だった。続けて、さっきのはどうやって避けたのかと聞かれた。と、言われても、俺には心当たりがない。あれを避けた事を言っているのだろうが、正直直感で避けたとしか言いようが無い。
「どうしかしたんですか?」
質問の答えが出てこずまごまごしていると、心配そうに訪ねてきた。というか、この人初対面なのに優しすぎじゃないか?いや、人なのかどうかは分からんのだが..........。
「って、んなこと話してる間にまた来たぞ!」
「え?あ、はい!」
ん?また同じ攻撃か。最初はやり辛かったけど、
「いい加減慣れたぞ!」
今まで三度も同じ事をされているので、あれを仕掛けてくるときの仕草は大体掴めた。不意打ちでもされない限り、もう喰らうことは無いだろう。
人じゃないらしいからあり得ない攻撃はしてくるものと予想は立てていたが、避けるのにも慣れたし、後はこっちの攻撃さえ通れば何とかやれそうだ。
「ハッ!」
そんな俺の考えを察したかの様なタイミングで、横から金の戦士(そう呼ぶことにした)が異形に拳を入れる。そこから一気に蹴り等を混ぜた連打に持ち込む。おっ、結構効いてるみたいだな。怯んだぞ。
しかし、声から判断して女の子の力と、元々ボロボロの状態だったこともあり、余り速さが無い。拳を止められたことでその連打も途切れる。
「フン...!」
「キャアア!!」
異形は、体に拳を二発入れるだけで容易く吹き飛ばしてしまう。
「大丈夫か!?」
「........くっ!へ、平気です....!」
どう考えても限界だろう。アイツとの距離は離れているが、いきなり後ろに現れた事を考えれば、どこかに連れていくことも出来ない。
強いな....硬いし。さて、どうすっかな........。
「........おい」
「ん?」
異形から呼ばれたことで、巡らせていた思考を切り、呼び掛けに応じる。
「貴様....何故あの時私のすることが分かった?普通ならば避けることは出来なかった筈だ。それも一度だけではなく、全て交わし切るとは........貴様、何者だ....?」
この世の者とは思えない様な、低くしゃがれた声。いや、怖ぇぇーよ!!何だよその声!イヤ!もう聞きたくない!?
「答えろ!」
マジごめんなさい。答えるんで勘弁してください。
「........別に大したことじゃない。ただ、他の人よりそういう感が良いだけだ...。」
簡単に答える。というか、それ以外に答えようが無いだけだけど。
「.......フン、そうか。やはりな....。」
やはりって、今の発言で何か分かることあったか?等と考えに枕したその時だった。
「ガッ!?」
首を掴まれ、地面から足が離れる。何だ!?いきなり攻撃的になった!?
「貴様が妙にこの小僧を庇おうとする動きが強かったのでな。もしやとは思ったが、やはり『アギトの可能性を持つ者』か。覚醒前とはいえ、何れ脅威となる存在だ。ここで殺しておかねばな....!!」
「ぐっ!がっ!!あ...........ぁ........!!」
「や、めて!その子から手を.......離しなさい!」
「戦えるのか?そんな立つことも儘ならない状態で。黙って見ていろ。直ぐに終わる。」
クソッ!さっきから好き放題言いやがって!『アギト』って何だよ!?覚醒前とか、全然話が掴めねぇぞ!?つか、ヤベ…力...入んね....死.......!!
首が絞まる度、少しずつ生への道が閉ざされて行く感覚になる。薄れ行く意識の中、『死』というフレーズが強く響く。今までこんなに死を感じたことは無かった。それだけに、それを迎える瞬間が近付いているというのが恐ろしい。
...あぁ、このまま...死ぬのかな?結局、何も助けになれなかった.......ごめんな。
家族の顔が頭に浮かぶ。これが走馬灯なのかと素直に理解出来た。そして、俺の意識は完全に途絶えた。
次に目を覚ましたのは、何も見えない暗闇の中だった。意識が途絶える前にいたあの公園の暗さなんか比じゃない。辺りを見回しても景色は同じ。そんな中、それ(・・)は突然現れた。
「.......光?」
その正体は、神々しいとさえ感じる程の輝きを放つ、赤・青・金の三つの光だった。何時の間にかそれらの光は、黒一色だった場所を白一色に染めていた。一度途切れた筈の意識も今はしっかりある。気付けば光は、手を伸ばせば届く程近くまで来ていた。
俺は、本能的にそれらを逃がしてはならないものだと感じた。---掴まないと---。そうしなければいけない気がして、手を伸ばした。
(........掴んだ!)
そう感じた瞬間、今度は俺の視界までもが白に染まった。すると、三体の人陰が目の前に現れる。その内の一つは見覚えがある姿だった。向かって左側に、両刃の薙刀を持った青の戦士。右側に、燃えるような赤い剣を持った赤の戦士。そして中央には、意識が途絶える前に何度も見た金の戦士。どれも同じベルトをしている。それらはやがてそれぞれの色の光となり、俺の体に入ってきた。怖いという感情は無く、元から自分のものだったかのようにすんなりと受け入れる事が出来た。暖かく、心地の良い感じがして、そのまま目を閉じ、身を委ねた。
---目を開けると、そこはあの異形に恐らく一度殺されたのであろう公園だった。立ち上がれる事を確認し、体に力を入れる。
「嘘....そんな!?...」
「貴様!?」
そんな声が聞こえて前を見る。さほど距離も空いていない所に、あの異形が居た。目の前に居たってことは、そんなに時間は経っていなかったみたいだな。あの場所に居てからそれなりの時間が経過していたように思えたけど、気のせいか?
まぁ、いいか。今は、こいつをぶっ倒す事だけを考えよう。
すると、頭の中に突然、何かのポーズの様なイメージが沸き起こった。俺は無意識のうちに、そのイメージと同じ行動をとっていた。両手を左の腰でクロスさせ、右手を一度前に突きだし顔の右横の辺りに持ってくる。すると、腰に装着された状態のベルトが出現する。頭の中では驚いていたが、体はイメージに従い次の動きに入る。右手を再度前に出し、ベルトの両端のスイッチを押すと、体が一瞬光に包まれた。自分では見えないが、恐らく、というか確実に、俺の姿はあのイメージと同じ姿になっているのだろう。あの、『金の戦士』の姿に。
「.......ごめんなさい....」
「アギト.......!!」
倒れている少女からは謝罪の声、異形からは憎悪の声が発せられる。どうやら、これが『アギト』と呼ばれる姿らしい。それと、何故謝っているのかは知らないが、あの少女が今の俺の姿、異形が呼んでいる『アギト』だったのだろうと判断した。何故か今は人の姿になっている様だけど。あれが、本来の姿なのかな?
「....フン、小娘の力を貰って生き返った上、覚醒までするとはな........尤も、それは予想外だったようだがな。」
「貰った?」
どういう事だろうか?そう思って少女の方を見る。少女は悲しげな表情になり、再度謝る。ふむ、何か事情がありそうなので後で聞こう。少女に「後で聞くよ」と伝え、目の前の異形と向き合う。
「よく分かんないけど、これならお前をぶっ倒せる気がする!」
「貴様が私をか?笑わせてくれるな!小僧!!」
....怒らせてしまった様だ。でも、不思議と負ける気はしなかった。逆に、もしかしたら本当に勝てるかもしれないとさえ感じていた。
「ハァッ!」
異形が攻撃を仕掛ける。それを体を傾けるだけで避け、空いた脇腹に拳をねじ込む。本能的にこの状態での戦い方を理解しているのか?どう戦えば良いのか手に取る様に分かる。それからは殆ど一進一退の攻防だった。相手が繰り出す攻撃を避けて、隙を見つけては此方も反撃する。流石に人外なだけあって、一発喰らっただけでかなりのダメージだった。でも、やられてばかりではない。少しずつだが、確実に相手にもダメージは与えている。そして、その均衡は漸く崩れる。
「っ!」
距離が空いている事を幸いと思ったのか、異形が構えを取ったのだ。それも、今まで三度もやってきたものと同じ構えをだ。
(---今しかない!!)
技の発動には少しだがラグがある。その隙に俺は空いていた距離を一気に詰める。
「!?グハァッ!!」
低い体制でがら空きだった腹部に肘打ちを入れる。意表を突かれたことで異形が怯んだ。
「(ここだ!)フン!!ハァ!!」
俺はその隙を見逃さず、続けざまに攻撃を叩き込む。
「グゥ!?」
「フッ!ハッ!ハァ!!」
間髪を入れずに攻撃を続ける。立て直す暇は与えない。上半身、脇腹、顔。防御に入る暇も与えず、一気に攻め立てる。遂に耐えきれなくなり、思わず姿勢を崩す。
息つく暇もなく、前屈み気味の体に膝蹴りとアッパーを入れ、無理やり顔を上げさせる。今度は仰け反ったところで腹にパンチを入れ、足払いで浮き上がった体を思い切り蹴り飛ばす。
「グォォ!?」
もう少しで倒せそうだ。そう思った瞬間、また頭にイメージが浮かぶ。向かって来た異形の攻撃を受け止め、再び前方に投げ飛ばし、イメージに従って手を広げ足を肩幅に開く。
すると、角が開き、足元に紋章の様なものが浮かび上がる。肩幅ほどに開いていた足を右足が前、左足を斜め後ろに動かし、それと同時に左手は腰に添え、右手を体ごと左側に持っていく。
紋章のエネルギーが全て足に移り終えたところで飛び上がり、右足を前に突きだして蹴りを叩き込む。
「ハッ!」
「グッ!?グォォォ!!」
その後、体を後ろに向ける。
異形は大きく吹き飛ばされ、地面に倒れ込む。しばらくすると光の球体となり、夜の闇の中へと消えて行った。
「ハァ...ハァ.......逃げられた...?」
倒せたと思ったんだけどな.......。
でも、何とかなったし、あの女の子も助かったみたいだし、それで良いか。
「...ハァッ....あれ?」
体に力を入れる事が出来ない。
「?おか....しいな.......?」
無理やり入れようとするが、それも叶わず、遂に立つことも出来なくなり膝を付く。あ、やべ...目眩もしてきた....。
そのまま倒れ込む。俺は今日何度意識を失うのだろうか?
本日何度目かの意識を失う前に目に移ったのは、慌てて此方に駆け寄ってくる少女の姿だった。必死に呼び掛ける声を最後に、俺の視界は暗転した。
お疲れさまでした。ここから先は本当に不定期です。直ぐに投稿されるかもしれませんし、遅くなるかもしれません。ですが、頑張って書くことには変わり無いので応援よろしくお願いします!