問題児たちと時空間の支配者が異世界から来るそうですよ? 作:ふわにゃん二世
夜が明け、今日は“フォレス・ガロ”とのギフトゲームである。
「ふあ……」
朝一に起きた黒ウサギは屋敷内を歩いていた。昨日少し寝るのが遅かったのか表情が眠そうだ。
「今日は飛鳥さん達の始めてのギフトゲームです。黒ウサギが出来ることはなんでもやらせてもらわなければ」
眠い顔を無理やり引き締めて悠々と歩く黒ウサギ。そして屋敷から外へ出ると黒ウサギは驚いた。
そこには普段のスーツ&ワイシャツ姿では無くジャージ姿の蘭丸が座禅を組んでいたのだ。
「…蘭丸さん、こんな朝早くから座禅とは…」
黒ウサギは声をかけようかと思ったがそれは無粋だと思いひとまずそのまま近くの石に座っていた。
しかし彼はそのまま一時間動かなかった。
いくら朝とはいえやっと日が登り始めたばかりで肌寒くなってきた黒ウサギは戻ろうと腰を上げた時
「ふぅ…」
蘭丸が目を開けるとともに一つため息を吐いた。どうやら座禅は終了したようだ。蘭丸も戻ろうとしたのか屋敷の方へと身体を回転させた。そして黒ウサギは蘭丸と目線があったのであった。
「あ…」
「うひゃあ!」
思わず黒ウサギは蘭丸から視線を外す。いきなり視線が合えば誰でもそうなるだろう。
「おはよう黒ウサギ。黒ウサギはやっぱり朝早いな」
「お、おはようございます蘭丸さん。蘭丸さんこそまだ明け方ですよ?黒ウサギは一時間前からいましたがいったいどれだけ座禅を……あっ‼︎」
とここで黒ウサギはしまったと言うように手で口を塞ぎ顔を赤らめた。
「まあ、座禅の他にも武術の鍛錬やトレーニング入れても三時間くらいだぞ?」
「さんじっ……‼︎」
「それにしても…」
蘭丸は黒ウサギの額を指で突く。
黒ウサギは「あうっ!」と軽い呻き声を上げた。
「一時間も外にって、風邪引くぞ?俺は寒さには慣れているから平気だけど流石に寒いだろ」
確かに現在の黒ウサギはいつものミニスカにガーターソックスと言った扇情的な格好ではないものの薄い寝巻きであったため寒そうであった。
「ほら、これ着てろ少しはマシだ」
蘭丸はそう言うとジャージの上を黒ウサギにかける。
「あ、ありがとうございます。蘭丸さん///」
黒ウサギは赤くしながらジャージを羽織る。
そしてその後十六夜に見つかり飛鳥、耀に冷やかされ黒ウサギはあわあわなっていたが蘭丸は笑いながらそれを流していた。
それを見た黒ウサギは少し残念そうにしていた。
**
「……おい黒ウサギ。“フォレス・ガロ”は動物愛護団体でもあるのか?」
「い、いえそんなはずは……」
“フォレス・ガロ”の居住区画に到着した“ノーネーム”はその景色を不思議そうに見ていた。
それも無理もない。居住区画はまるでジャングルのように木が生い茂っていたのだ。黒ウサギとジン曰く“フォレス・ガロ”は普通のコミュニティらしい。
ジンは近くの木に触れて何かを確信したかのように手を離す。
「間違いない鬼化してる!」
「ジン君。ここに契約書類が貼ってあるわよ」
飛鳥が木に貼ってある契約書類を見つけ全員がそれに注目する。
【ギフトゲーム名 『ハンティング』
・プレイヤー
久遠 飛鳥
春日部 耀
ジン=ラッセル
・勝利条件
ホストの本拠地内に潜むガルド=ガスパーの討伐
・クリア方法
ホスト側の指定した武具でのみ討伐可能
指定武具以外は“契約”によりガルド=ガスパーを傷つけることは不可能
・敗北条件
降参かプレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合
・指定武具
ゲームテリトリーにて配置
・宣誓
上記を尊重し、誇りと旗の下“ノーネーム”はゲームに参加します
“フォレス・ガロ”印】
「これは…まずいです」
契約書類を読み終えるとジンは表情を曇らせた。
「このゲームはそんなに危険なの?」
「いや、ゲーム自体は単純だ。問題なのは指定武具以外では奴を傷つけることは“契約”により不可能ってことだろう?」
「はい、すいません僕の落ち度でした。あの場で契約書類を作っておけば…」
ジンは申し訳なさそうに頭を下げる。これは経験不足が生んだことだが仕方が無いことである。
「で、ですが何かしらヒントがあるはずです。もしそうでなければ“フォレス・ガロ”の反則負けとなります。黒ウサギが審判を勤めている間は反則は許しません」
「まあこっちとしては五分五分の勝負で面白そうだけどな」
十六夜は笑いながら面白そうだと言った。
「まあ、負けはないだろう。俺からのアドバイスは自分らのギフトを把握して使える場所を分かっておけ。お前らなら出来るはずさ」
「ええ、そのつもりだわ」
「わかってる」
「はい!」
蘭丸に激励され、意気込む三人。そして十六夜とジンは何かを耳打ちしていた。
そして三人は門をくぐりゲームスタートとなった。
**
「暇だ、黒ウサギ見に行ったらまずいのか?」
ゲーム開始からしばらく経って退屈になった十六夜は黒ウサギに尋ねる。
「お金を取って観客を招くこともありますけど今回は最初に取り決めてないので無理です」
「なんだよつまんねえな。ジャッジマスターとそのお付きってことでなんとかなんねえのか?」
「黒ウサギの素敵耳ならここからでも大まかの状況は分かります。状況確認できない隔離空間でもない限り侵入は禁止です」
「…貴種のウサギさんマジ使えねえ」
「せめて聞こえないように言ってください‼︎凹みますから」
黒ウサギは泣きながら十六夜に突っ込む。
「はあ…お前らならこれでも見るか?」
蘭丸は呆れながら自身の所持するギフトの一つ“予知の水晶”を二人の前に出す。
そこには森を歩く飛鳥、耀、ジンの三人が映し出されていた。
「これは⁈」
「“予知の水晶”はこんな使い方も出来るんだよ。まあリアルタイムでは見れないからなギリギリの十秒の映像だ」
「へえ、やっぱりお前のギフトって便利だな」
こうして残された三人は水晶に映し出されている映像を観戦していた。
**
しばらくしてゲームが終了したのを伝えるかのように木が一斉に霧散して行った。
それと同時に十六夜、黒ウサギの二人は走りだそうとしたが蘭丸に止められた。
黒ウサギが慌てる理由はゲーム中に耀が重傷を負ったのである。
「離してください蘭丸さん!このままでは耀さんが」
「落ち着け‼︎俺の方が早い」
蘭丸は黒ウサギと十六夜の手首を掴み“空間転移”を使用し耀の前に一瞬で移動した。
「耀‼︎」
蘭丸はすぐに耀へ駆け寄った。耀は右腕からおびただしい量の血を流していた。
そして蘭丸はその負傷箇所に右手で触れる。
「“修復”‼︎」
すると耀の血液はどんどん腕に戻って行き、そして傷は綺麗さっぱりとなくなった。
「凄い…傷が」
黒ウサギがそれを見て呆気に取られている。
「怪我をする前まで戻した。だが体力は戻ってないからな。少しは休ませた方がいい」
「そう。ありがとう蘭丸君」
耀は今蘭丸の腕の中で眠っている。
「さて、戻るとするか」
「だな」
そして六人は“ノーネーム”の本拠へと戻って行った。
「あれ?そう言えば蘭丸のギフトで本拠に戻らねえのか?」
「「「「あ………」」」」
その場にいる全員が動きを止めた。