問題児たちと時空間の支配者が異世界から来るそうですよ?   作:ふわにゃん二世

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ささやかな夕食

 

 

 

“ノーネーム”が“地域支配者”に就任し、豪華な夕食となっていた。普段ではこんな高い料理は食べれないであろう料理の数々であった。今回は黒ウサギが珍しく腕をふるい、彼女が調理した川魚は表面を軽く焼いてから油で揚げたものに、とろみのある餡あんをかけた品としてテーブルに並んだ。

その料理は主力陣や子供達に好評だったが、

 

「黒ウサギ、これ多分、餡掛けないで、酢漬けにした方が美味い」

 

と十六夜の一言で空気がぶち壊しになった。

 

「まあ、好みはその人それぞれだしな。俺は好きだぞ?黒ウサギ」

 

「あ、はい///って蘭丸さんやっぱりお酒ですか⁉︎」

 

と黒ウサギは蘭丸に褒められて照れるが彼が魚をつまみながらワインを飲んでいたことをツッコミを入れる。

 

「大丈夫だ。ちゃんと節制してるし、飲むのは俺とレティシアくらいだろうしな」

 

「うむ、久しく飲んだが……やはり酒は良い物だな」

 

気が付けばレティシアもグラスを片手に持っていた。

 

「ハハッ!だそうだ!もう一杯どうだ?」

 

「ああ、……ふふ///」

 

レティシアはワインを一口飲み、微笑んだ。ワインで頬もほんのり紅くなり、もともとの美しさに拍車がかかりますます妖艶に見えた。

 

(どうしましょう……黒ウサギも蘭丸さんと飲みたいですが、先程言った手前言いずらいのです)

 

どうやらレティシアを見て、羨ましく思ったのか先程の自分の発言に後悔している様だった。

黒ウサギがもじもじとしてるのを見て蘭丸は空のグラスをグラスに渡す。

 

「黒ウサギもどうぞ。さっき言った手前良いずらかったんだろ?それは俺にも非があるしな」

 

蘭丸は申し訳なさそうに苦笑した。それを見て黒ウサギも笑う。

 

「ありがとうございます蘭丸さん!黒ウサギもいただきます」

 

黒ウサギは嬉し涙を出し、ワインを一気に飲み干した。

 

 

 

 

**蘭丸said

 

二時間後殆どの子供達は戻り、俺達主力陣は食堂で残っていた。

 

「あははは♪このもんだいじさまがたあ〜♪」

 

調子に乗って飲みまくった黒ウサギは出来上がっていた。全く、久しぶりだからって飲み過ぎだろう。いつもの貞潔(?)を自負する“箱庭の貴族”が肩なしだろ。全く……俺は取り敢えず、黒ウサギを背中に背負った。

 

「ったく飲みすぎたな。ちょっと黒ウサギ寝かして来る」

 

「おう、頑張れよ」

 

「?おう?」

 

十六夜は何故かニヤニヤしながら言いやがる。全くなに考えてやがるんだか。

 

**saidout

 

「ねえ、十六夜君。彼はわざとやっているのかしら」

 

「いや、あの鈍チートの事だ。真面目にやってるんだろうな。もし黒ウサギが色仕掛けしても『風邪引くぞ?』とか言いそうだしな」

 

「うん、ふぉうふぁふへぇ」

 

十六夜と飛鳥はニヤニヤとして彼を見ていた。耀は黒ウサギ作った川魚やら、パンとかを詰めまくっていた。

 

それを見て十六夜と飛鳥も笑った。

 

**

 

 

そんな賑やかな宴の席が終わった後。耀は三毛猫と共に自室に戻っていた。次第に夜も更け込む中、やや肌寒い風が吹き込む窓際に腰掛ける。ヒュウ、と風が彼女の頬を撫でると同時に、耀は小さくため息を吐いた。

 

「三毛猫。私は収穫祭が始まってからの参加になったよ。残念だけど、前夜祭はお預けだね」

 

『……そうか。残念やったなお嬢』

 

「うん。でも仕方ない。蘭丸と十六夜は本当に凄いもの。水不足を解決したり、レティシアを助け出したり。魔王の謎を解いた時も、蘭丸は自分のお店もだして、本当にとんでもない男の子達だなあって、思わず感心しちゃったよ」

 

だから仕方ないと肩を落とす。

 

「……それに、凄いのは二人だけじゃない。飛鳥だって凄い。あんなに酷かった土地を、たった一ヶ月で土壌に整えたんだ。本当に凄い」

 

『そんなもん、ワシらが居おったところじゃ全然凄くも無かったやないか』

 

「それは技術があったからだよ。それを人の手だけでやってのけたんだよ」

 

それこそまさに恩恵であろう。耀は三毛猫の喉をゴロゴロと撫でる。

 

「あのね三毛猫。あの農園は十六夜が水を用意して、飛鳥が育んで、蘭丸が肥料や道具とかも買ってくれて。だから私が苗を植えてこの農園は四人で作ったって胸を張って言いたくて」

 

でも実際駄目だった。せっかく上げた戦果は一蹴された。

ここまで耀は大事なところで戦果が乏しかった。先日の魔王戦では、戦わずして脱落と醜態を晒してしまった。その為に南側で沢山の幻獣との出会いがほしかった。

 並のゲームではいざ知らず、今の耀が魔王のゲームに挑むのは、余りに力量不足だと彼女自身が誰よりも痛感していた。“ノーネーム”の主力である以上に魔王と一人で戦える力が欲しかった。

 

「三毛猫…」

 

『なんや』

 

「みんな凄いね」

 

『せやな』

 

三毛猫は短く相槌を打つ。耀は慰めに夜空を眺める。皮肉にも今日は十六夜月であった。

 

「でも私はあんまり凄くないね」

 

『…………』

 

「やっぱり、投げやりな気持ちでコミュニティに所属したのが駄目だったんだ。偶然素敵な友達が出来ただけで……私には、その関係を維持する力がない」

 

『お嬢……』

 

三毛猫は何も言えなかった。

 

**

 

その後 三毛猫はひっそりと寝室を抜け出した。

ランプの光は既に消され、窓から差し込む星の光を頼りに階段を下る。耀に初めて友達が出来て、彼は誰よりも安堵していた。耀と同じ日に生まれ、共に十四年の月日を過ごしてきた三毛猫だが……もう、自分の寿命が長くないだろうと思っていた。病にかかっている訳ではなく、生物としての寿命が尽きるという意味である。後は箱庭でゆっくりと余生を過ごすはずだったのだが……どうやら、最後に一仕事せねばならないらしい。

 

(おのれ小僧共、お嬢を悲しませた罪は重いで)

 

三毛猫は猫とは思えない程のステップで気配を消しながら、ゆっくりと階段をおり風呂場に侵入する。

 

(しかし風呂場か。小僧達の服を毛玉だらけにしてやるのも悪くはないが……きっちり落とし前を付けてもらうにゃ、ちょいと軽すぎるな)

 

三毛猫は十六夜と蘭丸の服の他に女性の物と思える服が二着あった。

 

(ぬぅ、女と入るとは…なんと……)

 

三毛猫は衣服が入った籠かごに飛び乗り、ガサゴソと中身を漁り始める。

 

(小僧の頭についとるアレか。よし、コイツでええやろ。あとあの小僧の髪留めもついでにと)

 

そして十六夜のヘッドホンと蘭丸の髪留めを咥え、風呂場を後にした。

 

 

**

 

「ほれ、終わったぞ」

 

「ひゃうーありがとうございます」

 

十六夜に頭を洗われたリリは恥ずかしがりながらも礼を述べている。

 

「やれやれ、本当にやりたがりだな。十六夜は」

 

「そんな節操なしに言うなよ。俺はレティシアの濡れた髪を見たかっただけだよ」

 

十六夜の言葉に蘭丸も首を縦に振り同意する。

 

「ああ、黒ウサギ曰く、『一見の価値ありですっ!』って太鼓判を押してたしな。一度見て見たかったよ」

 

「むっ……そうか。ふふ、では感想を聞いてもよろしいかな?」

 

 レティシアは湯から上がって縁ふちに腰掛ける。

 瑞々しく、滴る金髪は、星と月明かりで濡れて燦然と輝いている。

 

「はい。とっても、御美しいと思います」

 

「そうだな。女の髪は濡れると印象が変わるもんだが、レティシアの髪は本当に劇的に変わるな」

 

「ああ、夜空の星と見間違えるよ」

 

「ふふ…お褒めに預かり光栄です。だが蘭丸の桃色の髪も綺麗だぞ。お前の髪は自前なのか?」

 

「ああ、そうだ。親父が言ってたし間違いないだろう」

 

蘭丸は腰近くまで伸びた髪を手櫛でほぐしながら答える。

 

「へぇ、お前程の奴の親父ならそうとう強いんだろうな」

 

「強いというより親父今でもいるぞ?四桁のコミュニティ“円卓の騎士”のリーダー、アーサーペンドラゴンだぞ」

 

サラッと話すとレティシアと十六夜は驚愕の顔を浮かべていた。

 

「何⁈アーサー殿が⁈」

 

「おいおい、だからお前の武器さばきがあるのか?」

 

「んーまぁそれもあるけどあの人は実の親じゃなくて俺は捨て子だったらしいな」

 

「そうなのか、すまないな思い出させて」

 

レティシアは申し訳なさそうに謝るが蘭丸は気にしていないと頭を上げさせる。

 

「そういや吸血鬼って水は大丈夫なのか?一説じゃ吸血鬼は水が苦手らしいな」

 

「いや、全くそんな事は無いが?それにどちらかと言えば私は湯浴みが好きな方だ」

 

「へえ。けどレティシアには“魔王ドラキュラ”って異名があるんだろ?ドラキュラって、あのドラキュラ公の事だよな?まさかとは思うが、本人だったりするのか?」

 

十六夜の言葉にレティシアはん?と顔を顰める。

 

「いやそれはよく分からんが、ドラキュラ公とは男性なんだろう?主殿には私が男に見えるのか?」

 

「見える見える。なんならタオルをとって確認しよう」

 

「おいそれは流石に……」

 

「そ、そうか。私は良いんだぞ蘭丸?///」

 

レティシアは恥ずかしがりながらもタオルに手をかけようとするがそこはリリがなんとか仲介に入ってことなきことをえた。

 

「そう言えばレティシア達吸血鬼は龍の純血から生み出された存在だって聞いたぞ?」

 

「ああ、龍の純血は神霊や星霊と同じ最強種だな。だが龍の純血には系統樹が存在しないんだよな」

 

「ああ、龍の純血というのは、誕生するのではなく発生する。ある日突然なんの前触れも無く、強大な力が集結して形を成した種。それが龍種の純血だ。後世は単一生殖をした場合にのみ純血として生まれ、異種と交わった場合は亜龍として生まれる」

 

「なるほどな。それなら体長はかなり小さいのか?」

 

「いや、吸血鬼を作った理由は世界を背負った龍と伝えられているらしい」

 

十六夜は驚いた様に目を間開いた。レティシアもそこまで知っているとはなと驚いていた。

 

 “世界を背負った龍”とは、一部の神話に記された世界構造。もしくは世界観に似通った記述が存在する。時には最高神の化身として神話の中で息づくそれは、宗教上の宇宙観コスモロジーだ。例えば古代エジプトの宇宙観では“星は植物に覆われて横たわる女神の姿であり、天の神は身体を屈折させて大気の神に持ち上げられている”というものがある。世界=神という宗教上の宇宙観は、少なからず存在しているのだ。

 

「文献とかは残っていないのか?」

 

「いや。詳しい記録は残っていないらしい。我々吸血鬼は造物主である龍によって造られ、その世界の系統が乱れないように監視する種族だったという口伝だけが残っている。吸血行為による種族変化は、系統樹の守護者としての名残であるということだな」

 

私が知っているのは以上だ、とレティシアは話を締めた。

 

「次は主殿達の元の世界での話を聞かせて欲しいな」

 

「俺らのか?」

 

「ああ、飛鳥と耀も気になるが特に二人の話は聞きたいな。強力なギフトを持つこともそうだが、その莫大な知識は箱庭でも重宝されるものだ。元の世界ではそのことを研究していたのか?」

 

「いや、俺は別にな」

 

十六夜はいつもの通り切り返す。

 

「俺は親父から『お前は力をコントロールするには、己が器を鍛えなければ』と武術から知識、様々な教養、全てを叩き込まれた。また世界を壊さない様にだとな」

 

「何だと?」

 

「世界を……壊す?」

 

「じゃあその話をしようか、ええっとどこから話そうか………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………以上だ」

 

蘭丸の話が終わると二人は言葉を失っていた。

 

「なかなかエグいなお前の過去って」

 

「本当にすまんな。だがそれ程の力が今は無いのか?」

 

「ああ、…………ってかなり長風呂してたな」

 

と四人は浴場を後にした。

 

 

 

そして十六夜と蘭丸は何かが足りないことにこれから気づくのであった。

 





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