問題児たちと時空間の支配者が異世界から来るそうですよ? 作:ふわにゃん二世
“アンダーウッド”の平原で、蘭丸は一人立っていた。付近には大筒が幾つか置かれてあった。
蘭丸は一度背伸びをし平原を見回していた。
「さて、そろそろだと思うんだがな……」
「何をしている」
声の聞こえる方角を向くとサラが歩み寄って来ていた。蘭丸は一度会釈をし地面に胡座をかく。
「警備だよ。さっき言っていた巨人族の事もあるしな」
「それなら我ら“龍角を持つ鷲獅子”が……」
「「「ウオオオオオオオォォォォォォォ‼︎」
サラの声を遮り、平原の向こうから雄叫びと地響きが聞こえてくる。サラは何事だ!と平原の先を見つめ、蘭丸は予想通りとゆっくりと腰を上げる。雄叫びの主は全長三○尺もある巨躯。巨大な薙刀や鎚を片手に持ち“アンダーウッド”に迫っていた。
サラは一度我を忘れていたがなんとか気を取り直していた。
「て、敵襲だああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
それを見ていた獣人の一人の叫び声に“龍角を持つ鷲獅子”のメンバーは慌てて飛び出して来た。
「こいつらが魔王の残党………巨人族か」
「そうだ!奴等は人類の幻獣。それが巨人族だ‼︎」
そうかと蘭丸は返すとすぐさま分身を作り、大筒で迎撃する。大筒は数体巨人を巻き込むが流石に数が多く、戦場は混戦となった。
(“主催者権限”が使用されてない………となるとこいつらはギフトゲームを無視して襲って来たのか)
蘭丸はギフトカードから槍を取り出し、巨人の群れに突っ込む。第一宇宙速度で走った蘭丸はそのままの勢いで三体程の巨人の心臓を貫いた。
「ウオオオオオオオォォォォォォォ‼︎」
仲間がやられてか、周囲の巨人は蘭丸を囲んで襲いかかっ
た。
「遅い‼︎」
だが蘭丸は振り下ろされた薙刀を槍で払いのけた。巨人が仰け反った隙に回転切りの容量で巨人を撫で斬りにした。
蘭丸は戦況を確認する為一度退いた。巨人族の数はせいぜい二○○体程だが、敵は一人で十の味方を相手取っていた。数では優っていたが、混乱した戦場では統率が取れていなかった。
「おい‼︎お前ら落ち着け‼︎‼︎」
だが蘭丸の声も混乱した戦場には届かないものであった。
「蘭丸‼︎」
そこにちょうど飛鳥と耀が駆けつけた。
「おお、飛鳥に耀か」
「蘭丸君‼︎今の戦況は!」
「見ての通りだ。突然の襲撃に、獣人や幻獣達は混乱。統率をとるサラがあれだ。数で勝ってるが、このままだと押し負けるだろうな」
「飛鳥、蘭丸。まずはサラを見つけて状況を…」
「それは無理だな」
蘭丸が指差す方向を見ると、炎の翼を広げて飛翔するサラと、それを追い打つ三体の巨人族。一瞥すると他の巨人より小柄だが、仮面の他に金属製の冠と釈や杖など身につけているものから。他の巨人とは別格の風格を漂わせている。
「多分あれが巨人の主力だろうな。取り敢えず俺はサラに変わってあの巨人を相手してくる。そのあとはそのままそこらの巨人を倒す。お前らは混乱してる下の戦いに参加してくれ」
「うん分かった」
「なら春日部さん。私を一番危険そうなところに落としてディーンを召喚して隙が出来たところを畳み掛ける」
「わかった。私は上空から援護する」
「OK。………ところで黒ウサギは?」
「黒ウサギなら地下都市の巨人を相手にしてるわ」
「そうか。黒ウサギなら大丈夫だな」
そういうと蘭丸は空中を走る様に飛翔し瞬く間にサラの元についた。
「サラ!あんたは一旦退いて指揮を取れ!このままじゃあ戦線は保てない」
「だが…それではお前は…」
「俺を見くびってもらっちゃあ困る。この程度の木偶の坊。幾千を相手にしても平気だ。……だが今は“アンダーウッド”を守ることを優先しろ‼︎」
蘭丸の叫びでサラは巨人をすり抜け、一度退いた。三体の巨人は標的をサラから蘭丸に変更した。蘭丸は巨人を一瞥するとニヤリと笑った。
「さて、何秒耐えらえるかな?」
「オオオオオオオ‼︎」
その挑発に一体の巨人族は殴りかかる。が蘭丸は丸太のような腕を片手で軽く受け止めた。
「そんなもんかよ!木偶の坊‼︎」
蘭丸は拳を弾くと巨人の頭上に移動し、一体の巨人に踵落としを食らわす。巨人は脳天からかち割れ、絶命した。仲間の死に怒った二体の巨人は二人掛かりで蘭丸に襲いかかる。一体の巨人が蘭丸に掴みかかり、蘭丸はわざと捕まった。もう一体の巨人は好機と見て殴りかかる。
だが蘭丸は瞬間移動で巨人の手から消える。勢いが止められなくなった巨人はそのまま味方を殴った。
「本当にたいしたことないな‼︎」
蘭丸は紫色のオーラを纏った太刀を一閃した。巨人は空間と共に避け、真っ二つに割れた。
「やれやれこれなら…」
「DEEEEEEEEEN‼︎」
雄叫びの主は重厚な外装を持つ、赤い鉄人形、ディーンであった。その姿に巨人族が、鷲獅子が数多の亜人達が戦慄していた。
「DEEEEEEEEEEN‼︎」
ディーンは巨人の頭を掴み後頭部を連続で叩きつける。そして飛鳥の命令でそれを巨人族に投げつける。
それを上空で見ていた耀は援護を忘れ、ポカンとしていた。
「ディーン…凄い」
魔王の残党を容易く葬ったと聞いたからある程度の強さは予想していた。しかしそれは想像以上であった。
「それに……蘭丸も……あの巨人を簡単に倒すなんて」
蘭丸に関しては白夜叉との戦いや、黒死病の負ったまま“黒死斑の魔王”とも互角以上に渡り合っていたため十六夜以上の規格外であることも重々織り込み済みであった。しかしそれをも凌駕していた。
その彼らの勇姿に“アンダーウッド”の士気が一斉に高まる。
サラはこれを好機と見て炎のように燃え上がる赤髪を靡かせて叫ぶ。
「“主催者”がゲストに護られては末代までの名折れッ!“龍角を持つ鷲獅子”の旗本に生きる者は己の領分を全うし、戦況を立て直せ!!!」
一括に応じておおと鬨の声が上がる。 これを勝機と見た誰かが、大樹の上で“龍角を持つ鷲獅子”の旗印を広げて照らした。戦意を取り戻した各コミュニティは、旗印の下に集って本来の役割に就く。
“一本角”と“五爪”は最前線に出て、雄叫びを上げて巨人族へと襲い掛かる。“二翼”と“四本足”は戦車を引いて後方からそれを援護する。“三本の尾”と“六本傷”は負傷者の運搬と物資の供給を迅速にこなす。
「さて、こっからもうひとつギアをあげて、暴れるとしようか‼︎」
蘭丸は巨人族を蹂躙していった。
上空から戦況を見ていた耀は決着が着いたの確信したが、刹那、琴線の弾く音がした。
「………え?」
反応する間もなく、一帯は濃霧に包まれた。眼下の戦場も同じだ。上空1000m地点に浮いている耀の前まで届く濃霧。これでは視界など役に立たない。
「どうして急に……?」
「きゃあ‼︎」
ハッと我に返って眼前を見る。飛鳥とディーンが しかも最悪な事に、他の巨人族に巻き付けられた幾重の鎖がディーンの動きを鈍くしている。ディーンの動きを封じられれば、飛鳥は無防備になってしまう。
「飛鳥ッ!!」
耀は旋風を駆使して急降下した。ありったけの速度で勢いをつけた彼女は、さらに己の重量を“生命の目録”に保管された最も重い獣に変幻させる。
がその途中に耀は目の前を高速で通った何かによって動きを止められた。
「え?………何これ⁉︎」
目の前にいる生物に耀は困惑した。
翼をもっていたために鳥か何かと思っていたらその姿は鳥とはかけ離れていた。
鳥と同じ翼と身体を持ち、顔は鬼に似た今までに見たことのない生物であった。
「ッ!どいて‼︎」
耀はありったけの力を込めてソレを蹴る。その生物は風船のように弾け飛んだ。
「………なんだったんだろう。今の……」
耀はその生物に呆気を取られたが、眼下の飛鳥を思い出すが既に濃霧で覆われていた。
両手を広げた耀は、ありったけの風を双掌に収束し始める。
(飛ぶ以外のことは初めてだけど……きっと出来るはず……!)
否、出来なければいけない。
出来なければ、飛鳥の命が危ないのだ。
「っ、この……吹き飛べっ!!!」
轟ごうと竜巻いた風が水平に奔はしり、やがて立ち昇るように霧を掻きまわす。
しかし、当然のように出力不足。濃霧が晴れる気配はない。無駄な努力で終わるかと思われたがしかし、耀の行動を察した幻獣達が同時に雄叫びを上げた。
「GEYAAAAAAAAAaaaaaaaaa‼︎」
呼応するかのように数多の旋風が巻き上がる。人の言語野では理解できない幻獣達の雄叫びだが、耀の耳には一つ一つがはっきりと聞き取れていた。
(グリーと、その仲間達が……)
心中でお礼を告げ、霧が薄くなったと同時に走り出す。手遅れでない事を切に祈りながら、駆けつけた先に拍子抜けするぐらい無事な彼女がいた。
「飛鳥………!」
「か、春日部さん………きゃっ!」
安心した耀は勢い余って飛鳥に飛び込んでしまい、二人揃って横転する。
ディーンから降りていたお陰で落ちなくて済んだが、それでも尻餅をついてしまった。
「よかった……!でもあの状況で無傷なんて、やっぱり飛鳥は凄い……!」
「当然よ……と言いたいけれど。私の力で倒した訳じゃないわ」
「え?」
「周りを見れば分かるはずよ」
飛鳥の重い声に促され、周囲を確認する。
霧は薄くなり人影が見えるようになり始め、巨人族の姿があった。
「………嘘」
知らず、呟いた。
霧が晴れた先の巨人族は全滅だった。
特に異様なのは、倒れている巨人のおよそ半数が鋭利な刃物で頭・首・心臓を的確に裂かれて死亡している事だ。耀が飛鳥の元に駆けつけるまでに所要した時間は、僅かに一分。
なのに戦場に居た巨人族の半数が、全て同じ殺害方方で死んでいた。
「まさか……これだけの数の巨人族を、たった一人で……これって蘭丸がッ⁉︎」
だが飛鳥は首を横に振る。あの一瞬で巨人族の半数を皆殺しなど、人智を超えた所業である。そんな所業が出来る者が蘭丸以外にこの場にいるのか。
「二人とも!大丈夫か?」
蘭丸が駆けつけた。蘭丸の顔や服には巨人族を殺した時の返り血がついていた。
「………これって蘭丸がやったの?」
「ん?いんや俺はもっと前の方で戦ってたぞ?それに俺は真っ二つか心臓を貫くかだからこんな綺麗に切ってないぞ?………っとあいつか」
「え?」
蘭丸の見る方向には 純白で美しい白髪を、頭上で纏めている黒い髪飾り。静謐を放つ白いドレススカートと、精緻な意匠が施された白銀の鎧。顔の上半分を隠す、白黒の舞踏仮面。全身を白黒で塗り固めているであろうその姿は、余す事なく巨人族の血で染まっていたのだ。
「貴女が巨人族を?」
「……………」
仮面の女性は答えず、三人を一瞥する。すると蘭丸の方に歩み出る。そしてお辞儀をすると
「お久しぶりですね蘭丸さん。よもや貴方もいらしてたとは」
「久しぶりだなフェイス。にしても凄いなこの数は。この前は手加減してたな?」
「それは貴方も同じことでしょう?もちろん今も」
まあそうだなと蘭丸は笑う。飛鳥と耀はポカンと口開いていた。そしてフェイスは飛鳥達に一礼すると去って行った。
「ねえ蘭丸君。彼女は?」
「ああ、あいつはフェイス・レス。かなり強いぞ?」
プライドの高い飛鳥が無条件で認めざるを得ない程、あの仮面の女性は圧倒的な強者なのだ。もしかしたら彼女とは、この収穫祭で競い合うことになるかもしれない。その事実にある者は奮い立ち、またある者は彼我の実力差に気を落とす。三者三様の反応を見せる最中さなか、安全を知らせるための鐘が鳴らされた。濃霧に覆われた“アンダーウッド”の星空は、耀と幻獣達の働きによって払われた。川辺の清涼な空気を背伸びと共に吸い込み、一晩遅れの満月を見上げ
「…………………ぁ、」
十六夜のヘッドホンを思い出した。同時に嫌な寒気が背筋を奔はしる。彼女は冷や汗を掻きながら、すぐさま旋風を巻き上げて宿舎に戻るのだった。
(今回の襲撃は恐らくまだ始まりだろうな。また襲われるだろう)
蘭丸は巨人族の屍を一瞥し、本陣へと戻り始めた。
誤字感想お待ちしておりますッ‼︎