問題児たちと時空間の支配者が異世界から来るそうですよ?   作:ふわにゃん二世

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“全権階層支配者”

 

**

 

“アンダーウッド”上空。吸血鬼の古城。長年放置されていながら外観は風化していないのは、城に結界が張られているからだろう。

 

「殿下ー!何処行ったのー⁉︎」

 

無人の筈の古城に活発な少女の声が響いた。クルリクルリとステップを踏みながら階段を上っていく黒髪の少女。ノースリーブの黒いワンピースを着込み、腰にジャケットを巻きつけた少女の腰には何本もの短刀を備えていた。

 

「……殿下ー‼︎殿下殿下でんかでんか、で・ん・かー!!!」

 

少女が叫ぶが反応はない。その少女が、拗ねていると玉座の間からクスクスと呆れたような苦笑いが漏れた。

 

「リン。殿下なら先ほど城下街の様子を見に行ったわよ」

 

リンに声をかけたのはローブのフードを深く被り、片手に“黄金の竪琴”を持った女性だった。

リンはローブの女性に振り返ってむむっ、と後ろに手を組んだ。

 

「そっかー。じゃあ私とアウラさんの二人でお留守番?」

 

「そういうこと。……とはいえ私たちはゲームの主催者じゃないし、休戦の誓いを守る義務もない。巨人族を率いて戦う指示も出るでしょう。今はおとなしく英気を養っておくことね」

 

ローブの女性、アウラは口元を上品に押さえたままクスクスと笑い続け、リンも頷いて玉座の間へ続く門を通った。

玉座に座するのは此度のゲーム主催者ーーーレティシア=ドラクレアだった。

 

「ねえアウラさん。この金髪の子の様子はどうなってるのかな?」

 

「ずっと気を失ったままよ。もしかしたら開催中はずっとこのままなのかもしれないわ」

 

リンはレティシアのそばに駆け寄り、レティシアの綺羅と輝く金髪に触れようと手を伸ばすリン。しかしその手は背後からの声によって阻まれた。

 

「止めとけリン。その魔王は疑似餌だ。触ると襲われるぞ」

 

ピクン!とリンの指先が止まる。声は幼く、少年の声であり、リンは主人が帰ってきたのだと気付き、振り返る。

 

「殿下!それにおじ様!」

 

『一々声を荒げるなリン。そう喚かなくとも聞こえておる』

 

そこにかなりしわがれた老齢な声だけが聞こえた。

殿下と呼ばれた少年は立派な身なりをしているがそれを着崩していて、特徴的な白髪とで少年の子供らしさを強調していた。

 

「アウラ、リン。ゲームが休戦になったのは聞いたよな?」

 

「勿論ですわ」

 

「それなら話は早い。アウラとリンは頃合いを見て巨人族と共に“アンダーウッド”を攻め落とす。タイミングは敵の主力が分散されるのを見計らって俺から知らせる」

 

「では殿下。私とリンは地上に。この古城は殿下とグライアに任せてよろしいのですね?」

 

「ああ。グー爺もそのつもりでいてくれ」

 

殿下に促され、アウラは回廊に視線を落とす。すると木陰から先程の老齢な声とは違う獣の唸る声が聞こえた。

 

『分かりました。……しかし殿下。一つ気になることが』

 

「何だ?」

 

『“黒死斑の魔王”を倒したという例の“名無し”についてですが………その一味が“生命の目録”の完全体を所持していると言う噂がございます』

 

進言を受けた殿下は目を見開き言葉を呑んだ。

 

「……確かなのか?」

 

『あくまで風の噂でしかありません。しかし本物ならば由々しき事態です』

 

「いや、今は捨て置け。だがもし“生命の目録”の所持者が目の前に現れたら全力で奪いにかかれ。アレにはそれだけの価値がある」

 

断固とした口調で告げる殿下。アウラは口元を歪ませて艶美な笑みで頷いた。

 

「承りました。私も戦利品の力を試してみたいと思っていたところです」

 

「戦利品?」

 

リンが好奇の視線を向けるアウラはシアンブルーのギフトカードを取り出し、“アンダーウッド”で奪ったギフトを披露した。

 

「“バロールの死眼”。巨人族に伝わる最強の魔眼が振るう死の暴威。此れを以って“アンダーウッド”を沈めてご覧に入れますわ」

 

それに殿下は頷きそして思い出したかのように呟いた。

 

「……“時空間の支配者”……こいつについてはお前らにも話したよな?推定5桁の魔王を単独で圧倒出来るやつだからな、もしそいつが地上にいたら“バロールの死眼”を持ってしても厳しいかもな」

 

その場にいる全員の顔が変わった。それほどまでに“時空間の支配者”、二宮蘭丸は警戒されていたのだった。

 

「うん。私もそこは警戒しているよ。だから“あの人”を地上に送るんでしょ?」

 

「そうだ、あいつはそいつが目的みたいだし、俺たちと利害が一致するからな精々利用させてもらおう」

 

殿下は年不相応の不敵な笑みを浮かべた。

 

**

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**

 

場所は変わり“アンダーウッド”本陣営では蘭丸、サラなどによってゲームの方針が話し合われていた。

 

コホンと黒ウサギは咳き込み、進行を開始する。

 

「ではゲームの方針をーーーーと言いたいところではありますが、その前にサラ様からお話があるそうです」

 

何?と首を傾げる一同。サラは沈鬱そうな顔を浮かべて、

 

「…今から話すことはここだけの秘匿にしてくれ。まずは“黄金の竪琴”が盗み出された際に、“バロールの死眼”も同時に盗み出されたそうだ」

 

「そ、それは本当なのですか⁉︎」

 

「ああ。凡百の巨人には到底使いこなせる代物ではないが、これにより巨人族はより強力な戦力を得ることになった。死眼に対してはまた別の対策を練らなければない。そのつもりでいてくれ」

 

サラはここで一度言葉を切り、さらに沈鬱な顔をになり、

 

「そしてもう一つ、先ほど入った緊急な連絡だが、それによると魔王の出現は“アンダーウッド”だけではないらしい」

 

「………は?」

 

「北の“階層支配者”である“サラマンドラ”と"鬼姫”連合に“円卓の騎士”そしてお前達も知っているだろう“サウザンドアイズ”の幹部白夜叉様。四つつのコミュニティが魔王の強襲を受けているそうだ」

 

一同が一斉に息を呑んだ。それが事実ならば現在箱庭には最低5体の魔王が降臨していることになる。

 

「なるほどな、つまり複数の魔王を統率している魔王が“階層支配者”を倒すために動いているってとこか。しかしそれなら“円卓の騎士”はなぜ狙われたんだ?」

 

蘭丸の疑問はそこにあった。蘭丸の義父、アーサーは“階層支配者”ではない。それ故に彼が狙われる理由が見当たらないのであった。

 

「蘭丸は聞いていなかったのか?アーサー殿の此度の箱庭帰還を祝して“階層支配者”にされるのだが」

 

「チッ!また黙っていやがったなあの親父ッ‼︎」

 

蘭丸は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。そこに十六夜が加わってきた。

 

「まあその話は置いといて、この前の“サラマンドラ”襲撃の犯人が割り出せるかもな」

 

「何⁉︎」

 

驚きに声を荒げるサラ。飛鳥と黒ウサギも同じような表情を浮かべる。

 

「黒ウサギもお嬢様も考えてみろよ。誕生祭を襲撃した“黒死斑の魔王”ペストの狙いはサンドラではなく白夜叉だっただろう?」

 

黒ウサギと飛鳥はハッと息を呑む。ペストの目的は太陽の主権と復讐、ましてや太陽の星霊封印すると言う“主催者権限”を所持していた。ただ一人、それをわかっていた蘭丸は頷く。

 

「そうだな。白夜叉が狙われたのと同時に南の“階層支配者”がやられたのが全部同一の主犯だったら連中、仮称“魔王連盟”が“階層支配者”を各個撃破出来るようにしたんだろうな」

 

「ああ、ただその動機とか敵の狙いまでは解らねえ。そもそも他の“階層支配者”を倒してどうするんだろうな?」

 

十六夜 はうーん、と思案していた。蘭丸も何かを見落としていると呟き、考え込む。そこにフェイス・レスが告げる。

 

「……サラ様。現“階層支配者”は“サラマンドラ”・“鬼姫”連合・“円卓の騎士”・“サウザンドアイズ”の白夜叉。これに加えて休眠中の“ラプラスの悪魔”の五つでよろしいですか?」

 

「うん?ああ、そうなるな」

 

「もし前者の四つが壊滅すれば、全ての“階層支配者”が活動不能になり、上位権限である“全権階層支配者”を決める必要が出てきます。敵の狙いはそれではないでしょうか?」

 

何っ?と一斉に声が上がった。サラも、ジンも黒ウサギでさえも知らない様子で小首を傾げている。

 

「そうか!それなら敵の行動にも説明がつく」

 

蘭丸だけがそれに反応した。

 

「依然“クイーンハロウィン”に聞いたことがあります。“階層支配者”が壊滅、もしくは一人となった場合に限り、暫定四桁の地位と相応のギフト、太陽の主権の一つを与え、東西南北から他の“階層支配者”を選定する権利を与えられると」

 

「太陽の主権の一つと暫定四桁の地位だと⁉︎」

 

「そんな制度があるのですか⁉︎」

 

「以前クイーンに聞いた話では就任した前例は白夜叉とアーサー王、初代“階層支配者”ーーーーレティシア=ドラクレアの三名だけだと伺っています」

 

「レ、レティシア様が“全権階層支配者”⁉︎」

 

この黒ウサギの反応にはむしろフェイス・レスが驚いていた。

 

「………まさか“箱庭の貴族”が“全権階層支配者”の事を知らないなんて……」

 

「く、黒ウサギは一族的にもぶっちぎりで若輩なのでそう古い話は……」

 

黒ウサギはウサ耳をへにょらせそっぽをむく黒ウサギ。十六夜はやれやれと助け船を出す。

 

「まあぶっちゃけ黒ウサギは“箱庭の貴族(笑)だしな」

 

「その渾名はもうやめてください!」

 

ウガー‼︎とウサ耳を逆立たさせて怒る黒ウサギ。フェイスは顎に手を当て思案する素振りをみせ、

 

「なるほど、“箱庭の貴族(笑)”でしたか」

 

「真面目な顔で便乗するのはやめてください!」

 

しっかりと便乗してきたフェイスに飛鳥が反論する。

 

「貴女、ぽっと出のくせに黒ウサギの何がわかるっていうの?流れ的には“箱庭の貴族(恥)でしょう?」

 

「それだっ‼︎」

 

「それだッ‼︎じゃありませんこのお馬鹿様あぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

スパァァァァン‼︎と黒ウサギのハリセンがなる。それを見たフェイスが

 

「……“箱庭の貴族(恥)”」

 

「これ以上引っ張るのはやめてください」

 

スパンと疲れたようにハリセンで叩く。フェイスは気を取り直し、

 

「……“箱庭の貴族(恥)”」

 

「止めてくださいと言っているでしょうこのお馬鹿様あぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ズパアァァン‼︎と聞いたことのない激しい音でハリセンをクリティカルヒットさせる黒ウサギ。

先ほどから静観している蘭丸は、

 

「ふふ………ふふ………」

 

止めるわけでもなくただただ笑っていた。サラはどうしたらいいかわからずオロオロしていた。

 





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