問題児たちと時空間の支配者が異世界から来るそうですよ?   作:ふわにゃん二世

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大分前のやつに追いつけてきました。


レティシアの過去

 

 

 

“アンダーウッド”上空。吸血鬼の古城。

蘭丸は城門前にできた幾つものクレーターを眺め、それに触れる。

 

「こんなアホな戦い方をする奴なんて、あいつしかいないだろ」

 

ケラケラと笑う蘭丸は辺りを見渡す。だがこんなクレーターを作った犯人、十六夜はここにはいない。既に場内を探索しているのだろう。そう解釈したらしい蘭丸はその場に胡座をかいて座り込んだ。

そしてポケットから“契約書類”を取り出し、勝利条件を確認する。

 

【ギフトゲーム名“SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING”

 

・プレイヤー側勝利条件

一・ゲームマスター・“魔王ドラキュラ”の殺害。

二・ゲームマスター“レティシア=ドラクレア”の殺害。

三・砕かれた星空を集め、獣の帯を王座に捧げよ。

四・玉座に正された獣の帯を導に、鎖につながれた革命主義者の心臓を撃て。】

 

一通り読んだ蘭丸はやはりというように息をつく。

 

(先に偵察に来させておいた分身によると都市が十二分割されてる事と、それぞれの区域ごとに外郭のカベに十二宮を示す記号か………)

 

蘭丸は分身に探らせた情報と自分の知識で脳内でパズルを組み立てていく。

 

(このゲームのタイトルを直訳すると、太陽同期軌道、人工衛星を指す言葉だとまず推測できる。“太陽”と“軌道”に関するゲームとなると、“獣の帯”をゾディアックとして読めるな)

 

ゾディアックとは、“黄道帯”や“黄道の十二宮”を指す別称で、十二の星座は太陽の軌道線上を三十度ずつずらした天球分割法である。

 

(天球を分割ってなるなら第三の勝利条件は“獣帯によって分割された十二の星座を集めて王座に捧げろ”って意味……というところまでは耀もすんなり分かっただろうな………)

 

おそらく耀は今回のゲームを“The PIED PIPER of HAMELIN”を応用し“砕かれた星空”を『砕き、掲げる』ことのできる天球儀という回答まではたどり着いたのだろう。しかし、それだけでは足りない。故にゲームが、再開されてしまったのだ。

第三勝利条件をクリアするためには耀は一つ見落としていたのだ。

第四勝利条件に記されている“正された獣の帯”である。“正された”と言うことは“誤りがあった”ということである。この言葉に掛かるのならば天体分割法そのものに誤りがあったのだ。太陽の軌道線上にあった星座は十二個ではなく十三個であったのだ。十二星座による黄道帯の分割法は遥かな古代に作られたものだ。この古城が衛生としての機能をしていたのなら吸血鬼たちはかなりの高度な技術を学んでいたのだろう。

 

(レティシアの言っていた“十三番目の太陽”はこれのことだろうな)

 

蘭丸は一度“契約書類”から目を離し天上を仰ぐ。そしてここへ来たもう一つの目的を果たすためにサイコメトリーを開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**

 

 

「殿下!レティ殿下!もう、こんなところで寝ないでくださいまし!」

 

眠気から覚醒した私の目の前にはメイド姿のカーラ侍女頭が私の肩を揺すっていた。同士の賑わいと春の陽気に当てられて眠ってしまったのだろう。

 

「すまなかったな、カーラ侍女頭」

 

「すまなかったな。ではありません!全く、我らの姫将軍ともあろう御方がこんなところでごろ寝とは!」

 

カーラは頬を膨らませ、かなりご立腹のようだ。しかしこんな陽気な日差しや、穏やかな風に当てられて眠くならないほうがおかしいじゃないか。第一我ら吸血鬼は夜行性だぞ。こんな昼間に起きているほうがおかしいではないか。

というわけで私は二度寝へと移った。

 

「二度寝禁止!」

 

埃叩きでボフッと頭を叩かれる。その一撃で私の子供スイッチが完全にONになる。

………………やだ、ねる、絶対に起きない。

 

「やだ、寝る。ではありません!貴女は“箱庭の騎士”の象徴!“龍の騎士”と為ったものが兵舎で涎を垂らしていては示しがつきません!ってかマジで起きろやゴラァ‼︎」

 

カーラはとうとう堪忍袋の尾が切れたようで私を叩き起こす。

バフバフバフバフドスガスガスバギンゴギンガンガンゴンギングサッウィーンガッシャン!

………最後のアレは一体何だったんだ?カーラ侍女頭によるとメイドの禁じ手らしい。

………メイドって凄いな。

 

「そういえば殿下。例の件について“サウザンドアイズ”と“円卓の騎士”から書簡が届いていますよ」

 

「例の件?」

 

「そうです箱庭全域で設置される新制度“階層支配者”制度に彼らも協力してくださるとか、それも“サウザンドアイズ”からは“白き夜の魔王”と“ラプラスの悪魔”の二大幹部。“円卓の騎士”からは頭首であるアーサー王直々に協力してくれるそうですよ」

 

そうだ。この制度が通れば我々“箱庭の騎士”の誇りは幾星霜と継がれる。私が王位を授かり、太陽の主権を預かる。

ふふ、なんともいいことずくめだ。

 

 

 

 

しかし、私はこの時は知る由もなかった。この平和が地獄へと変わろうとは。

 

**

 

 

「はあ、はあ……」

 

魔王を討伐して、コミュニティに帰還したレティシアを待っていたのは同士の歓迎の声ではなかった。都市は炎が広がり同士たちの悲鳴だけが広がった。

共に帰還した同士たちは既に息絶えていた。臣下が庇わなければレティシアも致命所だけではすまなかったなだろう。足を引きずりながら都市を走る。

 

「カーラは、騎士長は……父上は、母上は、妹は……」

 

「ああ、そいつらならもう死んだんじゃね?」

 

聞きなれない声を聞いたレティシアはその方向に殺意を向ける

 

「おっと、言っとくが俺は主犯じゃねえし、共犯でもねえ」

 

飄々と述べる男だが敵意は無いと判断したレティシアは剣を下ろした。

そしてレティシアその男、遊興屋(ストーリーテラー)と名乗る男はことの詳細を全て知っていた。全ては吸血鬼たちの内紛であった。レティシアに贈られる太陽の主権を奪うために。

そして遊興屋は城壁を指差すそこには見慣れた服の端と血がへばりついていた。

 

「アレ、あんたの家族だよ。純血の吸血鬼は簡単には死なないからな、磔刑の上、串刺しの刑、最後は太陽で火葬だと。まさか王族を殺すためだけに天幕を開くなんてな。城下中の奴らはとんだばっちりだぜ」

 

レティシアはその場に崩れ落ちた。つまり彼女が魔王と戦っている間にはもう革命は、済まされていたのだ。

 

「そういえば連中は日が沈んだらアンタの首を取るって息を巻いてたぜ?アンタを倒さないと正式に十三番目の黄道宮が手に入らないらしい」

 

ゆっくりと立ち上がり、城へと歩き出すレティシア。

 

「オイ、そんな怪我で立ち向かっても大した数は巻き込めないぜ。ここはひとつ俺の“グリムグリモワール”に」

 

「断る」

 

「一つだけ助かる方法がある。この“契約書類”は“主催者権限”を最大に利用できるゲームだ。アンタが魔王になればよけいなコミュニティを巻き込むことはない」

 

「ふざけるな!我々“箱庭の騎士”が魔王だと⁉︎それなら我らの誇りを貫き通す!たとえ滅びようとも!」

 

はぁと遊興屋は溜息を吐く。

 

「無い物ねだりしてんじゃねえよ小娘!守れないものを守ると叫んで救えないものを救うと叫ぶ。大した道化だぜ‼︎」

 

その言葉にレティシアは反論しなかった。否、できなかったのだ。

 

「一族の誇りを守りたかったら逃げろ!殺したいなら、魔王になれ。死んで咲く花があっても敗北咲く花があるなんて甘えるな」

 

「ッ‼︎」

 

「もしお前が魔王になって反逆者を皆殺しにすればまだ打つ手がある。少なくとも“階層支配者”制度を残すことはな。但し、レティシア=ドラクレアには全ての泥をかぶってもらうがな」

 

「…………」

 

「もし死体殴りも気が済んでゲームを終わらせたければこう叫べ、『十三番目の太陽を撃て』ってな」

 

そして遊興屋は去っていった。

間も無く日は沈み、夜の帳が下りる。レティシアは反逆者達に囲まれていた。ぼうっと城壁を見ると懐かし家族の亡骸は埋葬されることなくシミと為っていた。

 

滂沱のような血と涙を流したレティシアは万斛の怨嗟を込めて叫んだ。

 

「ーーー貴様らは………………荼毘に付すことも許さない…………!」

 

一族郎党、その全ての魂魄の一欠片も残さず滅し、同士たちだった人達に叫んだ怨嗟。

必ず殺し尽くすと誓いを立ててーーーレティシアは魔王に為った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………レティシア…………」

 

全てを知った蘭丸は悲痛な表情で立ち竦んでいた。





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