問題児たちと時空間の支配者が異世界から来るそうですよ?   作:ふわにゃん二世

55 / 68

白夜叉とアーサー達が平天の旗本へと赴きます。


コミュニティ“平天大聖”

 

 

ーーー紗蘭、と怜悧な鈴の音を響かせて彼女の銀髪が揺れた。紅塗の瓦屋根が目立つ市街地を通り抜け目の前には外門を収めるコミュニティの旗印が猛々しく聳え立っていた。

此処は箱庭第四桁ーー六二四三外門。

“平天大聖”の旗印が靡く上層階。その本拠である大楼閣の門前に、陽光と見間違うほどの美麗な銀髪の女性が二人の御伴を連れて仁王立ちしていた。

 

「いやあ、平天の旗本へ来るのは何年振りだったかの?」

 

銀髪に鈴の付いた簪を挿し、紫の着物を着た美女が笑う。その後ろに佇む女性店員が答える。

 

「……白夜叉様が“平天大聖”の本拠に足を運んだのは、五十年ぶりと聞きました」

 

「おお、そうであったか。月日が流れるのは早いものだの!」

 

呵呵と軽快かつ人懐っこく笑う美女、白夜叉。その後ろからカシャンと金属の当たる音と共に金髪の鎧姿の男性と黒を基調とした蝶柄の着物の女性と、なんともアンバランスな二人が並んで歩いてきた。

 

「俺も此処に来るのは久しぶりだ……全く変わらんな」

 

「ふふふ、あの子も元気かな〜」

 

低く通る声で感慨深く“平天大聖”の旗印を見上げる男と、妖艶な笑みを浮かべる女性を見て、白夜叉はくくっと笑う。

 

「アーサー、雪菜よ。今回は良いタイミングで来たの。これなら話も楽になる」

 

と笑いあう三人に対し、無理やり拉致された黒ウサギと女性店員は待ったものではない。

 

(“平天大聖”牛魔王ーーーかの美猴王・孫悟空と並び立ったとされる七大妖王の長)

 

箱庭に居を構えた者ならば一度はこの名を聞いた事のあるだろう。

かの西遊記に記述された、七人の魔王。中でも絶大な力を誇っている四王はいまだ存命し、この箱庭の世界でその名を轟かせている。

 

斉天大聖(天に斉しき者)”ーーー美猴王・孫悟空。

平天大聖(天を平定せし者)”ーーー牛魔王。

覆海大聖(海を覆いし者)”蛟魔王。

混天大聖(天を混沌せし者)”鵬魔王。

 

後に玄奘三蔵との旅路を経て、仏門に下った美猴王・孫悟空を除けば、彼らは魔王の烙印を受けたままコミュニティを継続させている。神代の時代に行われた七大妖王と天帝の大戦以降、さしたる悪事は働いてはいないがその名は箱庭の魔王の代名詞の一つとしてかぞえられている。

とはいえ、魔王としての格でいえば白夜叉も最古参の一人である。そしてその白夜叉と凌ぎを削ったアーサーもまた、勇者として讃えられている。

 

「しっかしまあ、迎えも使いも寄越さぬどころか門前でさえ無人ではないか。主演の用意をしとけと一報締め置いたのに、気の利かん奴だ」

 

「そうね〜牛ちゃんの用意するお酒は格別なのにね〜」

 

「ややこしくなるからお前は黙ってろ」

 

不機嫌そうに鼻を鳴らす白夜叉と雪菜。その雪菜に静かにツッコミを入れるアーサー。一方の黒ウサギは自慢のウサ耳をへにょらせ、彼女たちに告げる。

 

「し、白夜叉様………その、当然ではないでしょうか?牛魔王の仏門嫌いはウサ耳に挟むまでもなく有名なお話。帝釈天の眷属である黒ウサギは勿論の事、白夜叉様の来訪も快く思わないかと……」

 

牛魔王は義兄弟である孫悟空を仏門に奪われ、斉天の旗を破られ、更に息子の紅孩児までも仏門に下されている、ゆえに牛魔王と残りの妖王たちも仏門とは深い溝があると巷では噂されている。

しかし白夜叉は首を横に降る。

 

「いや、違うぞ黒ウサギ。この通り私は今仏門に神格を返上している。アヤツと腹を割って話すのは今しかないのだ」

 

そう言って銀の髪を靡かせる白夜叉。

“白夜叉”とは本来、仏門における彼女の神格をさすなであり、“白夜”の精である彼女は太陽の運行を司る星霊の一人であり、太陽神と並び称される最高位の存在の一角である。

 

「それに今はちょうど良く英霊、アーサーペンドラゴンは牛魔王とは旧知の仲、此奴もいれば牛魔王も無下にはできんだろう」

 

そう告げる白夜叉。

アーサーペンドラゴンーーー伝承ではブリタニア人を率いた伝説の人間として崇められている。『アーサー王物語』など彼の記された物語は作品によって異なる。

そもそもペンドラゴンとは彼の名前ではなく、『龍の頭』や『騎士の王』など、称号を表す物であるとされている。そんな彼は何かの縁で牛魔王とは旧知の仲になったらしい。

 

「下層では今、未知の脅威が迫っておる。平安を守るためには上層の実力者………牛魔王の力が必要となる。その身一つで六人の魔王を纏め上げた“平天大聖”の力が。そのためにも黒ウサギ、おんしの力が必要なのだ」

 

いつもの彼女とは違い、真摯な眼差しで黒ウサギを見つめる。その気迫に黒ウサギも驚き、姿勢を正した。

 

「わ、分かりました。箱庭の平安のためと聞いて退けません。この“月の兎”一肌脱ぐつもりで臨ませていただきます」

 

「ふふ、その心意気で臨んでくれると助かるぞ」

 

「Yes!して、黒ウサギはどのような事をすればいいのでしょうか?」

 

「おお、言うのを忘れておった。では、これを着てもらおう」

 

パンパンと、柏手を打つ。すると黒ウサギの目の前に、極め付けに布の表面積が少ないーーーー今の衣装よりも、更に卑猥な衣類の数々が並んだ。

これには黒ウサギも目を丸くし

 

「し、白夜叉様?こ、この衣装は……」

 

「うむ、そろそろ専属契約の更新日が近いからな!それに先駆けて用意した品々である。この中から一着選び、黒ウサギのエロ可愛さで牛魔王を籠絡するッ!まずは手始めに、一度は諦めたシースルーのビスチェスカートとガーターアミタイ

 

「ツは穿かないと言ったでしょうこの駄神様ッ‼︎」

 

ーーースパァーンッッ‼︎と、黒ウサギ愛用ハリセンが奔った。

 

「も、もう!こんなところまで着てふざけないでください!黒ウサギを連れてきた本当の理由を教えてください‼︎」

 

「ええい、それこそ馬鹿言うな!私は最強の“階層支配者”である白夜叉だぞッ!天地神明に誓い、何時如何なる時も本気だッ‼︎悪ふざけにも渾身だッ‼︎」

 

「お馬鹿様ですかあああああああッ!!!」

 

ズドパァァァアアンンッ!!!とかつてない気迫を込めたハリセン。避けそこなった白夜叉は側頭部から外壁にめり込んだ。

 

「………何してるんだ、白夜叉(あの馬鹿)は………」

 

「ふふふ、相変わらずね〜白ちゃんは」

 

「……白夜叉様………………」

 

友のお馬鹿っぷりを見て落胆するアーサーと変わらず笑みを浮かべる雪菜。

途中から空気になりかけていた女性店員は上司の不甲斐なさを嘆きならがら頭を抱えていた。

 

 





本日明らかになった事、
アーサーは超人的苦労人。
雪菜は………ボケに動じない

では、誤字、感想お待ちしておりますッ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。