問題児たちと時空間の支配者が異世界から来るそうですよ? 作:ふわにゃん二世
今回も蘭丸君を活躍させたいと思います。
「ふふふ……やっぱりローズちゃんは蘭丸から狙ったのね〜♪」
先程買った斑梨のジュースを飲みながらレースを観戦するローズとアーサー夫婦。
「当然だろうな。あいつを押さえておけば“ノーネーム”の戦力は半減されるといっても過言ではないからな」
「あら?貴方ってそんなにあの子贔屓だったかしら?“ノーネーム”の子達も凄い強いのに」
「そうではない。確かにあの子たちも相当な実力を持っているが、やはりまだ戦い方に隙が多すぎる。あれでは少しでも格上の相手と戦ったらまず勝てないぞ」
眼光を鋭く光らせたアーサーは厳しくそう言い放った。確かに十六夜たちはそれぞれ規格外のギフトと実力を持っている。しかし、それと実戦はやはり別物であり、幼い頃より戦闘技術を叩き込まれた蘭丸なら兎も角、彼らは戦闘に関しては素人レベルであるとアーサーは言い放った。
己の才能を生かすも殺すもギフト保持者次第である。
「ふふふ……でも、いえだからこそ成長を見ると楽しいんじゃないの?貴方は」
「まあ否定はしない。あの子たちが己の才能をコントロールできた時には蘭丸とも肩を並べられるだろうな」
ふと穏やかな顔を浮かべ微笑むアーサー。その目の先には将来大きな輝きを放つ光となるであろう原石があった。
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一方蘭丸はローズ、イーベルの足止めを食らい彼らと戦いを繰り広げていた。
「らあっ‼︎」
「………やらせない………」
山河をも砕く蘭丸の蹴りはイーベルの作り出した光の壁によって阻まれていた。
「イーベルの壁は流星をも防ぐ、ただの蹴りじゃあ破れないよ」
「ッラア‼︎俺を舐めんなッ‼︎」
蘭丸はその壁に何度も蹴りを入れるが壁は破れる気配を見せない。
「………仕方ない、こんだけ硬い壁ならちょっと本気を出しても大丈夫だろう」
蘭丸は乱打を止め、深呼吸とともに右腕に力を溜め始めた。
「空間ごとこの壁を破壊するつもりだね?させないよ!」
ローズは再び“侵緑”で生やした植物の剛腕を蘭丸に振るう。その剛腕はまたもや蘭丸を捉えたが、またもや蘭丸の分身であった。
「ッ!またか⁉︎」
「今度はこっちが隙ありだぜ!……オラァ‼︎」
溜まりきった力を光の壁にぶつける。空間そのものを砕くやもしれない衝撃波に流星をも防ぐ光の壁にも亀裂が入る。そして、ガラスが崩れるような音ともに光の壁は破れた。
「………くっ…………!」
「うわっ‼︎」
壁を破った衝撃波の余波はローズとイーベルにも及んだ。ローズは自身を植物で縛りなんとか衝撃波に耐えているが、それに耐えきれなかったイーベルはそのまま水中へと放り出され失格となってしまった。
「へっ……ざっとこんなもんだ………」
軽く肩で息をしながらニヤリと笑う蘭丸。対するローズも冷や汗をぬぐいながらも気丈に振る舞い笑い返す。
「やっぱり君は強いよ。でもそれでも体力は大分奪えたようだね」
「当たり前だ。陽動とはいえ分身結構使ったし、分身にも時空間のギフト使わせられたら流石に疲れるさ」
「まあここまで足止め出来れば僕の役目も………」
「何⁉︎」
刹那急激に河の流れが激流となりその流れを一つの影が流れていった。否、流れに乗って騎馬を走らせていたのだった。
「あいつは……」
「蘭丸君!ここは一時休戦だ、僕は仲間のところに早く向かうよ」
「ああ、それなら俺も同じ………ってテメェッ‼︎」
蘭丸も後を追おうとしたが足元には植物がまとわりついており動けなかった。
「悪いけど、ここで君を自由にしたら僕の足止めは全くの無駄になるからね。そこで足を止めててよ」
悪戯っぽく唇に指を当てて悪魔の微笑みを浮かべたローズは仲間たちを追い跳躍して、数秒後は視界から消えていた。
足下の植物を引き千切り溜息を吐いた蘭丸は嵌められたと困った笑みを浮かべた。
「まあ十六夜がいれば直ぐに負けるってことは無いだろう。ついでに五分くらい休むか」
そして岸辺に腰掛けた。そして深呼吸し立ち上がった。
「何て言うかよ!ローズの奴め………こんなんで俺を足止めできるわけねえだろうが」
蘭丸は走り出した。蹴り出した地面には巨大なクレーターを作り同士と己を嵌めたローズ、そして一瞬だけ垣間見えた強者を追った。
**
一方、十六夜と飛鳥は樹海を走り抜けていた。
「お嬢様、右下!来るぞ!」
「分かってるわよ!」
十六夜たちの通ったルートは“
「っつ、この………燃えろッ!」
飛鳥は発火の宝玉のついたガンレットを翳し、水霊馬に触れる。全身水分でできている水霊馬だが、そんなもの御構い無しと言わんばかりに焼失していく。
「おっ!抜けるぞお嬢様」
樹海を抜けた先には断崖絶壁からこぼれ落ちる音が聞こえた。滝の織りなす瀑布によって辺り一面水霧に覆われていた。
「かなり高い崖から流れ落ちてるな、この滝」
「そうね、ぐるっと回ってみれば道があるはずよ」
そして十六夜たちは山河を登り始めた。十六夜たちは知らなかった。遅れてきた参加者が尋常じゃない速さで彼らに迫っていることに。
**
山頂に辿り着いた十六夜は眼前に広がる大海原に感動していた。
「ハ…………ハハ、流石は箱庭の世界!まさか山頂に海があるなんて思ってなかったぞッ!」
海岸で両手を広げながら海に向かって叫ぶ十六夜。
「十六夜君あの海の上に生えている樹、海樹ってアレのことじゃない?」
飛鳥の声で我に帰った十六夜は真っ赤に熟れた果実を捥ぎ取りに袋に詰め、飛鳥に渡す。
「本当は少し遊んで行きたかったけどな」
「はいはい、また今度ね。今はゲームが優先よ」
飛鳥に窘められしぶしぶと山河を駆け下りる。後はこのまま流れに任せて下るだけである。しかしそう簡単には物事はうまく運ばなかった。
「ーーーーっ、十六夜君!来たわ!」
別ルートから山河を登ってきたフェイスレス、そして“ブラッドソード”の騎手フランとサポートのドリーが猛追していた。
「………やはり辿り着いたのはあなたたちだけでしたか」
「よし、まだまだ巻き返せるね!」
「では、私が果実を取ってこよう」
ドリーが海へと降りた。すると足下の海が凍っていた。
「私のギフト“絶対零度”文字通り対象を瞬時に凍らせることができる。では果実は頂いた!」
果実をもぎ取ったドリー。フェイスレスも蛇腹剣で果実を袋に詰める。これで“ノーネーム”のアドバンテージが殆ど無くなってしまった。
「もう、十六夜君が海に見とれているからよ」
「ああ、うん。今回はマジでゴメンナサイ」
浮かれすぎたことを素直に謝る。どう考えてもタイムロスは十六夜のせいだった。
そして三者は一触即発の空気になっていた。
その時海辺で異変が起こった。足場が揺れ始め、波風も強くなってきた。
その異変の原因に気づいたフェイスレスは眼下から来る脅威に刮目していた。
「まさか。こんなお遊びのようなゲームで動くのですか⁉︎“枯れ木の流木”と揶揄されたあの男が……!」
地鳴りは激しくなり大噴火のように水柱をあげ、その水柱には一騎の騎馬とそれにまたがる騎手の影があった。
「いやあ参った参った!寝坊したらこんな時間になってもうた。無理やりねじこませてもらったのに白夜王には悪いことをしてもうたなあ」
胡散臭い笑みを浮かべた蛟劉が濡れた髪をかきあげて十六夜たちを一瞥する。
「でもよかった。君らがこんなところでトロトロしてたおかげで、簡単に追いつけたわ。ーーーーーこれなら優勝も容易そうや………」
「間に合った!」
蛟劉を遮りローズが山河を駆け上がってきた。
「イーベルはやられちゃんたけど、優勝は僕らが貰うよ!じゃあね」
ローズら“ブラッドソード”は一足先にその場を後にしようとしていた。しかし、その場のものは忘れていた。山河ではなく、
「だあっ‼︎」
「うわっ‼︎」
蘭丸の蹴りはローズに直撃したがそれをドリーがなんとか押さえ込んだ。
水中に立った蘭丸は十六夜と飛鳥を一瞥し、
「ここは俺がやる。お前らはさっさとゴールしてこい!」
「蘭丸君⁉︎何を?」
「いや、ここは蘭丸の言うとおりだぜお嬢様。あいつは果実を取ってないここで蘭丸が足止めしてくれれば俺らの勝ちは大きくなる」
飛鳥は十六夜の言う事は最もだと思っていた。既にフェイスレスと“ブラッドソード”は果実を取ってある。それに蛟劉がここで果実を取ってしまったら瞬く間に追い抜かれてしまうだろう。
「………そうね、頼んだわよ蘭丸君」
「ああ、ってヤバい!早く行け!」
蘭丸たちの眼前には大きな津波が襲いかかっていた。
「………跳べますね?」
窮地に立たされたフェイスレスは滝からの大跳躍を見せダイブした。
「なら僕らも行くよ!」
ローズたちもフェイスレスの滝から飛び降りた。
「う、嘘でしょ⁉︎あれを飛び降りるなんて」
「だがそれしかない!行け!」
「ッ〜!ああもう!死んだら骨は広いなさいよ!」
「安心しろ。そんな時は十六夜をクッションに使え」
「お断りだ‼︎」
ヒッポカンプの後ろにまたがった十六夜と飛鳥も彼女らに続き滝から大跳躍を見せた。
その間にも蘭丸には津波が襲いかかっていた。
「ふん!」
蘭丸は両手をの中で空間を捻じ曲げ始めた。そしてつくりあげた小規模のブラックホールに津波が吸い込まれていった。そして蘭丸には一切の被害を被っていなかった。
「アンタの相手は俺だぜ?蛟劉」
「参ったなあよりによって君かい蘭丸君」
そして“時空間の支配者”と“覆海大聖”の死闘が始まろうとしていた。
次回は蛟劉対蘭丸をお送りします!
あと二回ほどでこの章は終わります
では誤字、感想あればよろしくお願いします。