問題児たちと時空間の支配者が異世界から来るそうですよ? 作:ふわにゃん二世
今回でギフトゲームに決着がつきます。そして今章も大詰めです!終了します。
飛鳥たちを先に行かせた蘭丸は蛟劉を足止めするために彼と戦いを繰り広げていた。
「だりゃっ‼︎」
「おわっ!」
蘭丸の回し蹴りを紙一重で躱す蛟劉。そしてさらに踏み込みもう一回転するがそれすらも難なく腕で受け止める?
「全く、危ないやないか蘭丸君」
「ハッ!そんなの喋りながら避けてる奴の台詞じゃねえな」
蘭丸の体術を口では危ないと言いながら紙一重で全て躱している蛟劉。かつてあらゆる格闘チャンピオンをも歯牙にかけなかった蘭丸の体術だが、海千山千で修行を積んだ蛟劉にはまだ及ばないようだ。
「甘い!」
「ゴアッ‼︎」
突きの隙を蛟劉は見逃さず蘭丸を蹴り飛ばす。そのまま水中に落ちるかと思われたが、周囲の海を消し、海底を蹴り復帰する。
「いやぁ、やっぱり君は強いなあ」
「その台詞………俺の攻撃が当たってからいってほしいぜ」
「いやいや、そんな
その蛟劉の言葉に蘭丸はピクリと動きを止める。しかしその一瞬を蛟劉は見逃さなかった。
「っと隙を見せたらあかんよ!」
一瞬で蘭丸との間合いを詰めた蛟劉は鳩尾目掛けて正拳付きを繰り出す。
しかし、それよりも早く蘭丸の膝蹴りが蛟劉の顔面を捉えた。
「ガッ⁉︎」
吹き飛ばされた蛟劉は空中で身を翻し、水面に立った。どうやら顔面を直撃するギリギリでなんとか顔を引いてダメージを軽くしていたのだった。
「ちっ、避けられたか、道理で手応えが無いはずだ」
「どこがや、なんやねん今の威力は………」
それでも蛟劉は鼻から血を垂らしていた。袖で乱暴に鼻血を拭った蛟劉はニヤリと笑う。
「でもやっぱり君は強いなあ。流石はあの化け物おっちゃんの息子やな」
「そんなにうちの親父ってやばいのか?」
「ああ、僕なんか赤子の手を捻るようにやられてたわ」
蛟劉は胡散臭い笑みを浮かべる。実際に蛟劉は強者である。実力は妖王の中でも三席である。蘭丸も手加減していて勝てない相手である。そんな蛟劉をそんな簡単にあしらうとは、蘭丸は自身の父の強さに引いていた。
「まあ、そんな話はあとだな」
「せやな、君をさっさと倒して果実を貰わんとな」
「やってみろ、“枯れ木の流木”‼︎」
そして再び蘭丸は蛟劉に突撃する。それを迎え撃つ蛟劉。二人の戦いはさらに激しさを増していく。
*
滝から飛び降りたフェイスレス、“ブラッドソード”そして飛鳥と十六夜。フェイスレスは二本の豪槍で勢いを完全に殺し、“ブラッドソード”はローズの“侵緑”を水面のクッションにして勢いを無くした。飛鳥は“威光”で表面張力を操作し窮地を乗り越えた。
「ヤハハ!ナイスお嬢様!今度もう一回やってくれよ」
「死んでもお断りよ‼︎」
ギリギリの神経の飛鳥に対し子供のように興奮している十六夜に飛鳥は怒りを覚えた。
「ッ!十六夜君!」
「ラアッ!」
十六夜を狙う巨大な植物の塊。それを振り向きざまに殴りつけ、破壊する。右手を植物で纏った、ローズはニヤリと十六夜を見つめる。
「惜しいね、今のタイミングで防がれるなんてね」
「ハッ!なんだよ女騎士軍団、そんなんで俺を止められるかよ」
「まあ君を倒せなくても、ここで足止めしておくのは僕でも出来るようだね」
「いや、俺を足止めしても無駄だぜ?うちのお嬢様をなめないほうがいいぜ?」
十六夜はローズが水面に用意した植物の足場に移り戦闘態勢に入った。
*
「ヒポポさん駆けて!全速力よ!」
滝の窮地を切り抜けた飛鳥は先に掛けていたフェイスレスとフランとドリーを追っていた。
(見つけたッ!)
二組の背中を捉えた飛鳥。しかしその時蛇蝎の剣閃が鼻先を掠めた。いまのが警告ということなのだろう。
このまま進めば間違いなく飛鳥は素っ裸にされてしまう。しかしこのままだと勝つこともままならない。そんな葛藤を狙ってたかのように攻撃を仕掛ける者がいた。
「戦場では悩まないほうがいいよ少女!」
フランが右手を翳す。その手には何かの空洞があり、そこに光が集まり始めていた。
「こう見えても私はサイボーグ、いまゆる機械人間でね、死なない程度には手加減してあげるよ!」
しかし飛鳥はそれに気付いていない。余程裸にされるのが嫌らしい。しかし、そんな彼女の味方は風と共に姿を現した。
「はあっ‼︎」
「何⁉︎うわっ!」
「ぐあっ‼︎」
光翼馬の具足を纏った春日部耀の奇襲によりフランとドリーは水中に投げ出され失格となった。
「飛鳥!」
「春日部さん、今まで何処に?」
「グリフィスを倒した後に、下でみんなを待ってたんだ」
「そう、春日部さんは一人で戦ってたのね」
「うん、あとは彼女一人だ」
二人は頷き合う、一人では厳しいが二人ならなんとかなるかもしれないと踏んだ飛鳥はある提案を耀に持ちかける。
「春日部さん、私が彼女を追い抜くまで……抑えられる?」
「うん、蘭丸直伝の奇策があるから」
その奇策も気になったが今はやるべきことをやるだけである。二人は樹海を抜けゴールを目指す。
*
激戦だった蘭丸と蛟劉の戦いはさらに激しさを増していた。蘭丸の拳を躱しカウンター気味に蘭丸を殴りつける。しかしその勢いのまま裏拳を打ち込む。そして得意の足技で畳み掛ける。
(ったく、なんてセンスやここまで手こずるなんて……)
蛟劉は蘭丸の体術センスに驚いているが、それでも彼は本気を出していない。否、出せないとも言えた。
(この子はまだ一度もギフトを使ってない。それなのに僕が本気でやったら……)
蛟劉は未だ二宮蘭丸の力量を測れないでいた。接近戦だけでもここまでの実力を持っているならギフトを惜しみなく使った時にはどれほどの力を発揮するのだろうか。
思考の渦に飲み込まれていた彼を引きずり上げたのは蘭丸の拳であった。
「ハッ!俺相手に考え事とは随分と舐められたもんだな」
「いや、逆や。君ほどの相手に考えなしに突っ込んでも勝ち目がないからなあ」
「そいつは、どうも」
そして二人は同時に蹴り合う。その衝撃だけであたりの水は消し飛び、岩礁は砕けた。
しかしそこで蘭丸がよろめいた。それをチャンスだと見極めた蛟劉はガラ空きの脇に拳を打ち込んだ。
しかし蘭丸は攻撃を受けると同時に消えてしまった。
「分身⁉︎」
「喰らえ……アンタなら死なないよな?」
右手に込めた力を蛟劉に全てぶつけた。空間そのものを揺るがす蘭丸の一撃をまともに食らってしまった蛟劉は血を吐き岩礁を貫き山河まで吹き飛ばされた。
跳躍で生還した蛟劉は腹を抑えながら笑う。
「そんだけの実力を持ってたら上層から引く手数多やないか?」
「確かに何度かスカウトはきたさ。白夜叉にもスカウトされたし、でも、俺はここで魔王から旗と名を取り戻すって約束してるしな。勧誘はお断りしてる」
「ああクソ!ほんまに羨ましいな!」
「ならお前も本性出してみろ!それともお前はそんな顔で“斉天大聖”に会いに行くつもりなのか?」
「それ、白夜王から聞いたんか?」
「いや、酒でも飲もうと思っていい場所探してたら話を偶然聞いちまってな。まあ、それは悪いとは思ったが」
聞かれたんかい、と笑みを浮かべる蛟劉。蘭丸も笑みを浮かべビシッと蛟劉に指を刺す。
「言わせてもらうがな、今の抜け殻みたいなアンタがノコノコいっても“斉天大聖”はがっかりすんじゃねえの?最悪三途の川に流されるんじないか、“覆海大聖”が三途の川になんて、笑いもんだぜ?」
せやなぁと自嘲気味に笑う蛟劉。それはそれで面白いと。
「だからここで俺を倒してみろよ、そして胸を張って“斉天大聖”に会えばいいんだからさ」
重心を低くし戦闘態勢に入る蘭丸。その眼には絶対の自信が現れていた。戦ってみて分かった。この二宮蘭丸は自分と互角の実力を持っている、近いうちに自分すら超えてさらに強くなると確信している。試してみたかった。しかしだからこそここでは決着をつけたくなかった。
「………ここまで、やな」
「へ?」
「ジャッジマスター、僕の負けや!“覆海大聖”はゲームを辞退する」
蛟劉の棄権により彼の“契約書類”は音もなく燃え落ちる。その行動に納得がいったのか蘭丸も戦意を鎮める。
「やっと眼を覚ましたか」
「ああ、君の言う通りや、今の腑抜けた僕が会ったら………あの人を失望させてしまうからな」
「あーあ、もう終わりか、つまんねえな。もうちょっとやってかね?」
「阿呆、君とこれ以上やったらどちらかが死ぬわ、殺しはご法度やで?」
そう言うと蛟劉は滝の口に立つ。
「じゃあな蘭丸君、今度会う時は、“覆海大聖”の“主催者権限”でお相手しよう」
そう言い残し滝から飛び降りる蛟劉。その顔は覇気を取り戻していた。
*
『皆さん見えてきました!トップは“ウィル・オ・ウィスプ”のフェイスレス!二番手は“ノーネーム”の久遠飛鳥!サポーターの春日部耀も健在です!』
黒ウサギの実況に観客席のアーシャとジャックも声を上げて喜ぶ。
「よっしゃあ!このままブッチギレよフェイスレス!」
「ヤホホホホ!あと一息ですよ!」
“ウィル・オ・ウィスプ”の旗を振りながら応援する二人。売り子をやっていたリリも負けじと応援する。
「飛鳥様ー!耀様ー!頑張ってー‼︎」
両手と二尾を振りながら声援を飛ばす。その隣でペストとレティシアは厳しく戦況を見守る。
「飛鳥、厳しいわね」
「ああ。一定以上距離を開けているということは、あれが間合いなのだろうか」
「追い抜くためには水着を脱がされる覚悟がいる………ふふ、箱庭のレースって卑猥なのね」
そんなことない、と否定できないのが悔しい。そしてペストが思い出したようにレティシアに尋ねる。
「そういえば、貴女の旦那はあんまりサポーターの役割りを果たしてないわね」
「いや、それでも、蛟劉殿や、アーサー殿の傘下のコミュニティ相手に………ってええ⁉︎///」
ポン‼︎と音を立てて一気に真っ赤になるレティシアをペストはニヤニヤしながら見つめている。
(というより旦那って否定しないあたり、まんざら……)
*
打ち合わせ通り最後の直線になった。一定の距離を取っていた飛鳥と耀はここから最後の勝負をかける。
「生きるか死ぬか、正念場よ」
「違うよ飛鳥、勝つか脱がされるかの二択だよ」
「脱がされるくらいなら死ぬわよ!」
飛鳥の必死の表情に耀の責任も重くなっていく。
「大丈夫、飛鳥は絶対
光翼馬の輝きを放つと鷲獅子の旋風を放出し、フェイスレスに襲いかかる。蛇蝎の間合いに入った瞬間に水着を狙ってくる。
「飛鳥、行って‼︎」
「わかったわ!ヒポポさん、最後の全力疾走よッ‼︎」
雄々しい嘶きを上げて、海馬が全力疾走する。追い抜きにかかる飛鳥をフェイスレスは狙うが耀がそれを防ぐ。
蛇蝎の剣閃は鷲獅子の旋風によって軌道を変えられている。
「………なるほど、では切り捨てましょう」
すぐさま二本の剛槍に換装する。そしてすぐさま飛鳥を狙うが耀がそれをも防ぐ。しかし巨人の腕力、鷲獅子の旋風、光翼馬の三つを合わせてやっと防ぐことが精一杯である。それでも作戦通り10合をなんとか凌いだ。
飛鳥はフェイスレスを抜きかかっていた。それに一呼吸置いたがそれが命取りになった。
「甘いですね、春日部さん」
「しまった!」
フェイスレスは耀の両足を掴むと水面に叩きつけた。しかし、なんとそれは耀の分身だった。
耀の奇策とは蘭丸直伝分身を生み出しておき、万が一の時に分身を変わり身に使い、その隙をつくといういたってシンプルかつ大胆な作戦であった。
「⁉︎」
「もらった‼︎」
その隙をついた耀がフェイスレスを吹き飛ばした。そして飛鳥がゴールを潜り、優勝は“ノーネーム”に決まった。
*
喝采が上がっている頃、合流した十六夜と蘭丸は退屈そうに溜息を吐く。
「なんか俺今回殆ど出番なかったな」
「まあそう言うなよ。その代わり、近いうちに相手してやるからよ」
「おお、マジか蘭丸!よっしゃぁ!」
そして男二人は笑いながら同士を祝福するため、蘭丸の瞬間移動で移動する。
(……そういや、今回ギフト殆ど使ってないな……)
蘭丸がそう思ったとか思ってないとか。
今回は一応4,000文字越えです。
大分詰め込んだので大雑把な感じは否めませんが、そこは許してください
では、誤字、感想お待ちしてます。