問題児たちと時空間の支配者が異世界から来るそうですよ?   作:ふわにゃん二世

66 / 68
久しぶりの更新ですね。
感覚は忘れて無いと想いますがちょっと覚えて無いところも………

どっちだよ‼︎

ってなわけでどぞ


“踊る人形”コッペリア

 

華美装飾な館の奥で侵入者を見送る人形。扉が閉ざされるとカタカタと人形は体を左右に動かした。

ーーー嗚呼、今回のお客様も満足させられなかった。

透き通るような蒼い瞳と翠色の髪が印象的な人形は人形とは思えない柔らかな仕草で立ち上がる。瞳には生気が宿り肌は熱と血潮を得るように紅く染まっていく。

その人形は優雅な足取りで“踊る人形”(コッペリア)を踊り始めた。

 

「La………La………,La………」

 

音楽のない館で歌を口ずさみ、スカートを靡かせてステップターン。彼女が踊りながら館を一周すると館の残骸が一斉に元の位置に巻き戻っていく。掃除が完了した人形はなんの感慨もなく元の配置へと戻っていった。

 

「次のお客様はーーー私を求めてくださるのでしょうか」

 

「さあな、それはお前次第だろうな」

 

「え⁉︎」

 

人形は突然背後からかけられた言葉に驚き振り向く。

ムニ、と肌が柔らかく突かれた感覚が頬に残る。

 

「へえ、よく出来てるな。この感触、殆ど肌と変わん無いぞ」

 

彼女の驚きをそっちのけに、人形の肌の柔らかさに興味を持つ桃色のポニーテールの青年、二宮蘭丸。これは金貨五枚は下らない、と何時もの皮算用を終えた時、蘭丸の興味が、初めて彼女に移った。

 

「あ、貴方は何時からこの店に? 先程、出て行かれたのでは?」

 

「ああ、さっきのは俺の分身。この店を調べたくてちょっと隠れてたんだが、お前が踊り出したから様子を見て今に至るって感じだ」

 

「………」

 

彼女は掛ける言葉を失っていた。目の前の青年が何時の間に侵入していたのか、どうやって背後を取ったことなのか。

この男は何者? そう思って蘭丸を見ると彼は、紙を片手に何やら記録を採っていた。

 

「ちょ、ちょっと貴方、今度は何をしているんですか⁉︎」

 

「何って仕事だ。こっちの都合だがこの店を調べることになってな、さっきはまともに調べられなかったからな」

 

「………」

 

「あ、俺は二宮蘭丸、好きに呼んでくれて構わない」

 

「え、えっと私はこの館の主。名をコッペリアと申します。え?」

 

突然の自己紹介に咄嗟に返すコッペリア。だが何かが違う、そう思って困惑する。コッペリアは思った。この男はかなりの天然でマイペースなのだと。

すると天然マイペース男蘭丸はそんな事を言われているとは露知らず、手を高く上げ、

 

「取り敢えず、落ち着け」

 

「ふぎゅ⁉︎」

 

頭上にチョップを落とした。無論、暴れ牛や暴れ馬の時とは手加減をしているが。

強制的にだが落ち着きを取り戻したコッペリアは蘭丸を見る。蘭丸は既に報告書の記録を再開していた。館内は謎の静謐に包まれていた。

その静謐を打ち破ったのはガチャリと扉を開ける音だった。

 

「ら、蘭丸様⁉︎」

 

店内に姿を見せたリリが狐耳をピーンと逆立たせ驚く。

 

「おっ、リリか、やっぱりきたか」

 

その姿を見た蘭丸はゆるっとした笑みを浮かべ紙を仕舞った。そのままリリに近づくと頭を撫でる。撫でられたリリは嬉しそうに二尾をパタパタと振る。

 

「でもなぜ蘭丸様はこちらへ?」

 

「仕事の途中だったからな。報告書作るにも記録しないといけないしな」

 

暫く撫でられていたリリだがコッペリアの姿を見ると初めは驚いていたが、直ぐに意気投合し「コッペちゃん」と渾名をつけた。

 

「コッペちゃんはこの店の店主なのかな?」

 

「はい。私はこの店の売買を預かる身分です。代金さえいただければ交換いたしますが」

 

「本当⁉︎ だったら、このブローチを売ってくれないかな………」

 

コッペリアは差し出されたブローチを無言で手に取り、少し困ったように視線を下げる。

 

「………これは売り物ではありません」

 

「え?」

 

「私が手慰みに彫ったもの。なので値段はありません。欲しいのであればご自由にどうぞ、フォックス」

 

そう言うとコッペリアはブローチをリリの手に載せる。

 

「このブローチ、コッペちゃんが作ったの⁉︎」

 

「はい。見よう見まねの拙い技術ではありますが………」

 

「そんなことないよっ!すごく可愛いブローチだもん!」

 

「ああ、見よう見まねと言うが店に置いてあっても十分ものになる技術だぞ」

 

リリと蘭丸の賞賛に困ったように頬を染めた。リリはブローチを眺めながらふと、思い出したように問う。

 

「………コッペちゃんは、どうしてこの店に独りでいるの?」

 

リリの問いにコッペリアは頬を青ざめさせた。

 

「棄てられたから………です。他ならぬ、私を作ろうとした父に」

 

「………え?」

 

ーーー親に捨てられた。その一言がリリの胸を貫いた。

 

「父様に………棄てられた………!」

 

「………はい。父の愛が、私の唯一の存在理由でした。しかしその愛を失ったのです。………いいえ、そんなものはきっと初めからなかったのでしょう。私に群がった父が本当に欲しかったのは、そこにある付加価値でしかなかった。なのに逆上せ上がった私は人類に求められていると錯覚を抱いたまま、私を完成してくれる人を待ち続けています。そんな運命の人などーーー来るはずもないのに………‼︎」

 

コッペリアの慟哭が。

父の愛情を失った傷が。

誇りだった存在理由を貶められた悲しみを堪えられず、ポロポロと大粒の涙を零す。

 

(父様に捨てられて………この館で、だった独り………)

 

事情を知らないリリだが彼女がどれだけ深い悲しみに沈んでいるかは汲んでとれた。三年前、母と離れ離れになったリリだからその気持ちを理解できた。

 

「此処を出よう、コッペちゃん。こんなところにいても新しい父様は見つからないよ」

 

「出来ません。もし私が逃げようとしたら………アレがおそってくる………‼︎」

 

(なんだ、この気配……)

 

蘭丸は何か異様な気配に神経を尖らせる。己をも凌駕するであろう強者の気配。

 

「だ、大丈夫!筋肉の人たちなら十六夜様達がやっつけて、」

 

「違う………‼︎ この館は、もっと恐ろしいものに見張られているのです………‼︎」

 

カタカタと細い身体を揺らすコッペリア。するとその直後ーーーヒュゥ、と鈍色の風がリリとコッペリアの間を通過した。

 

「お、おいこいつってまさか………」

 

「に、逃げてくださいフォックス! 奴が………“退廃(たいはい)の風”が来る‼︎」

 

刹那、黄金の館に鈍色の嵐が吹き抜けた。

鈍色の嵐は豪華絢爛な内装を軒並み風化させ、その輝きを喰らうかのように暴れ回る。

 

ーーー誰が知ろう。

この嵐こそ、百万の神群と悪魔を殺し尽くせる最強の神殺し。

姿なき無貌の魔王“退廃の風”(エンド・エンプティネス)

箱庭に蔓延る“天災”が一斉にその牙を剥いた。

 

華美装飾を極めた黄金の館には今ーーー滅びそのものが顕現していた。

数ある魔王の中でも取り分け特異とされ、彼らが、“天災”と称されるようになった元凶。その魔王は天災であるが故に、他の魔王のように目的がない。

時に試練のロジックとして。

時に時勢の荒波として。

時に最果てより召喚され、追憶の彼方へと去るだけの存在。

其の名は魔王“退廃の風”。

信仰を廃れさせ、畏怖を忘却させ、畏怖を忘却させ、研鑽を途絶えさせる、姿なき魔王。

如何に尊い意思が募ろうと“退廃の風”には関係ない。この風はあらゆる物質を、概念を、時の果てより来りて磨耗させる。

この鈍色の風こそは百万の神群と悪魔を貪り殺す、最強の神殺しである。

 

「に、逃げてください、フォックス!」

 

コッペリアは蒼白になりながらリリに逃げるように促す。しかし圧倒的に遅かった。

この館は追憶の果てに遺棄された、兵どもが夢の跡。そこから出ようと言うのなら相応の価値をーーー試練を乗り越え、時代の流れに磨耗しないほどの霊格を示さねばならない。

それすら出来ない者は例外なく“退廃の風”の顎によって喰い千切られる。

全方位を囲った鈍色の嵐は二人の少女へ、一斉に牙を剥いた。

 

「ボーッとしてんなっ‼︎」

 

蘭丸が一喝と共に黒い渦の玉を二人を庇うように放つ。圧縮しては拡がり拡がっては圧縮を繰り返す黒い渦は“退廃の風”を周りの空間ごと呑み込んでいく。

 

「な………た、“退廃の風”を呑み込んだ⁉︎そんな………」

 

「そんなのは後だ‼︎ 急いで此処を離れるぞ‼︎ 見ろ‼︎」

 

“退廃の風”を呑み込んでいた黒い渦は逆に鈍色の風に侵食されていた。黒い渦も喰われてなるかと噛み付くが噛み付くところから喰われていた。

蘭丸は食い止めるために次々に渦玉を放つが味を占めた“退廃の風”には一つの渦玉が耐えられる時間も短くなっていた。

 

「蘭丸君⁉︎」

 

そこに飛鳥、耀、白雪姫が加勢し耀と白雪姫が共に水を竜巻かせて“退廃の風”を押し返すが風に触れるや否や、煙が霞のように廃れさせた。

 

「ええい、なんという厄日だ‼︎“退廃の風”が巣食っておるなど聞いておらんぞ‼︎」

 

「………“退廃の風”?」

 

「この化け物の名だ! この神々の箱庭で数多の名を持つ“天災”の代名詞!

“徘徊する終末論”(ラスト・デカダンス)

“最果ての暴君”(グリード・クラウン)

“共食いの魔王”!

神仏の、生命の、星々の輝きを喰らう生粋の魔王ーーーそれがこの風の正体だッ‼︎」

 

「チッ! 聞いたことはあるが見たのは初めてだぞこんなの‼︎」

 

「この風に触れるでないぞ! この風は恩恵の有無を問わず喰い殺す! あらゆる力は張り子の虎にすぎん! 触れた瞬間に霊格をすり潰されるぞ………!」

 

無駄と知りながら水流を放出し飛鳥たちを庇う白雪姫。

耀は“光翼馬”(ペガサス)の具足から発した輝きの風を以って“退廃の風”を食い止める。しかし光翼馬の光では止められない。耀は“退廃の風”の性質を利用していた。

 

(この鈍色の風は、周囲の黄金を貪るように暴れていた。つまりこの風は、光に集まる習性があるんだ)

 

確信があるわけでなかったが其の仮説は当たり侵食を食い止めていた。

 

(生まれて初めてだ………触れることさえ強い風なんて………‼︎ それに、蘭丸でも止められない風なんて………)

 

猛獣さながらに冴える耀の直感は必敗を予期していたが、隣で必死の形相で黒い渦を放ち食い止める蘭丸ならばあるいはと思っていたが、彼でさえ一瞬食い止めるのが精一杯だった。

 

「お前ら‼︎ 先に逃げてろ! 時間は俺が稼ぐ‼︎」

 

「蘭丸は?」

 

「この店ごと消し飛ばす! 巻き込まれるから先に帰ってろ」

 

「駄目です! この館を消しては………」

 

「ええい、焦れったい‼︎ 帰ってろ‼︎」

 

蘭丸は片手を振ると耀、飛鳥、白雪姫、リリ、コッペリアが館から姿を消した。

 

「さあて、あいつらがいたから加減をしてたがこれならもう遠慮はいらねぇ………塵一つ残さず消え失せろ‼︎」

 

今までの渦玉とは桁の違う大きさの渦玉は館だけでなくその辺りをも呑み込んだ。

そして、その館は蘭丸によって闇に葬られた。

 

 

 





結構原作ベースでした。普段三千文字程度ですが今回は4251文字でした。

誤字、感想あればよろしくお願いします!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。