帰路のこと。流輝は嬉しくてつい聖衣箱(パンドラボックス)に手を出そうとした。
「流輝、触るんじゃないよ」
またびびった。何回目だ。
「気持ちはわかるけどね」
「でしょ、俺もううれしくって・・・鈴菜さん?」
鈴菜は既に身支度をしていた。
「なんで急ぐの!?」
構わず走っていった。流輝も走る。
「明日には日本に帰れるのに!」
「明日になったら、あたしもお前も死体になってるんだよ!」
「なんだって!?」
しかしもう遅い。攻撃的とも取れる小宇宙、コスモが目の前に二つあったからだ。
「遅かったみたいだね・・・・・」
例のドベルグの師匠の女聖闘士と、山猫座リンクスの青銅聖闘士(ブロンズセイント)、ソキウスである。彼もあの女聖闘士の弟子であろう。
「やいやい!正々堂々戦って俺は勝ったんだ!文句を言われる筋合いなどない!」
流輝は早速文句を突きつけた。しかし聞いていない。聞く耳もたず、である。
「鈴菜、流輝を大人しく引き渡してもらえる?」
無言、無言の極みだ。
「それとも、流輝を守るためにこの私と戦う?」
しばらく無言タイムが続く・・・。やがて・・・・・、
「こいつにそんな義理はないさ」
パドゥンミー?
「えー、そんなぁ?」
まあ普通驚くわな。いきなり言われるんだから。
「どうやら日本へ帰るには、シャイナと戦うしかないようだね」
ちなみに300年前の同名の人物とは別人であります。
「じゃあ最初はソキウス、あんたがやっておやり!」
「おのれ流輝、覚悟しろ!」
いきなり攻撃が来る。逃げるも何も、箱を持ったままじゃ、逃げるも走るもままならない。
「うあぉぉぉ!」
攻撃がヒットした。箱を降ろした流輝は、拳を繰り出す。
しかし当たる前に掴まれた。
「な、なんだって!?」
「残念だったな、聖衣を纏った聖闘士にこんなスローモーションが当たるかよ!」
ソキウスの拳が炸裂する。
「見せてやる、山猫の一撃を!リンクスアロー!!!」
腹に当たってしまった。
「グァァッ!」
「よっしゃ!もう一撃!リンクスアロー!!!」
だが深追いしすぎたようだ。
「・・・そういや鈴菜さんに教えてもらったことがあったな・・・。『聖闘士に同じ技は二度通用しない』ってさ」
「なんだと!?」
「てやぁぁ!」
流輝はこれを避け、後ろに周り、5回ほどパンチとニーキックを繰り出した。
「何!?一度見ただけでだとぉ!?」
ソキウスダウン。
「情けないねぇソキウス。あたしが直々に罰を与えようか」
シャイナ来たし。
「てやぁぁ!!!」
まるで拳からコブラが飛び出たかのようだ。見ただけでソキウスとは違うとわかる。白銀聖闘士だろう。
「なんだこの小宇宙はウォォォォォ!!!」
驚くひまもなく炸裂された。腹当たりから血が出ている。このままじゃ・・・。
「流輝!」
「あんたもそんなもんかい!サンダークロウ!!!」
今度は後ろにコブラが見えた。シャイナの手には雷が見える。
「今度はモノホンかよぉぉぉぉ!!!」
避けてはいたが、また腹当たりに当たった。
「くそう、もうこうなったら・・・一か八か」
いやダメだ。考えてみろ俺。勝つ気持ちがなきゃ小宇宙も高まらねえだろ。絶対勝つ、絶対勝つ・・・
「絶対勝ってみせる!!!」
その瞬間聖衣箱が勝手に開いた。その中からペガサスのオブジェが現れる。
「これが・・・聖衣・・・」
心の中にペガサスが入っていく感じがした。そしてオブジェがそれぞれのパーツとなり散っていく。
(装着シーン割愛)
そして今、流輝は聖闘士として最初の一歩というべき、聖衣の装着を完了した。当然小宇宙は高まる。
「ええい、聖衣を纏っても同じことだ!サンダークロウ!!!」
「行くぜ!ペガサス流星拳!!!」
ペガサスとコブラの衝突、とでも言える光景だ。鈴菜も黙って見ているしかない。
「ウォォォォォ!!!いっけぇー!」
そして・・・ついに流輝がシャイナを倒した・・ようだ。
「ありえない、あんな小僧に・・・
そして仮面が割れてしまった。
「仮面が・・・あの拳の風圧で割れた?」
「へえ、どんな人かとおもったけど、意外とかわいいじゃないか」
そんな台詞を残し去ろうとするが
「待ちな流輝。次は聖衣を纏って本気で戦う。だからお前も・・・」
「わかってる。次こそは本気で倒してやる」
そういえば仮面の掟が、また後で説明する。こうして波乱の夜が終わった。
朝。ついに日本に帰れる。
「そういえば流輝、聖衣を持ち帰って何をするんだ?」
案の定。
「俺が答えたら、鈴菜さんも仮面を外してくれるのかな?」
無言。まるで星矢と魔鈴(まりん)のような感じだった。
あいかわずギリシャの朝は気持ちいい。
さて後編も終わりました。
ここで用語説明
聖域
サンクチュアリ。女神アテナを主神とする聖闘士の拠点。
パライストラ
第3話で詳しく説明する。聖闘士の養成所。
聖衣
クロス。聖闘士の防具。小宇宙を高める働きも持つ。
階級はまた後で。