Fate/ONLINE   作:遮那王

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二週間以上投稿できませんでした、すいません。

六月中に投稿したかったのですが間に合いませんでした。

その割にはやたらと短いですがご了承ください。


第十五話 狂乱の始まり

あれからどれだけの時間経ったかは分からない。

私は遺跡のようなエリアで狩りを続けていた。

 

「うん、威力も切れ味も申し分無し」

 

リズに鍛え直して貰ったレイピアは、私の手にしっかりと馴染み、性能も段違いに上がっていた。

そのおかげで、私は今まで以上にスムーズに敵を倒す事が出来た。

 

だけど、私の心には何故か靄がかかっている。

 

原因は分かってる。

アーチャーの事だ。

 

確かに彼は私の事をいつも心配してくれている。

戦闘でも私の事をしっかりとサポートしてくれているし、頼りにしている。

今日の事もそうだ。

私を心配してくれての行動なのだと思う。

 

だけど、それは私の事を過小評価しているのではないかと思ってしまった。

 

アーチャーが私の事を気にかけているのは、遠まわしに私が弱いと言っているように感じてしまう。

 

アーチャーがあの時私を気にかけて引き止めたのも、私には無理だと言っているように思ってしまった。

 

「……別に貴方が居なくたって、私は充分戦える」

 

私はそう呟き、我武者羅に目の前にいるモンスター達を切り捨てた。

私は全プレイヤーの中でも、トップクラスに入る実力を持ってる。

攻略組でも、一目おかれる存在だ。

 

大丈夫。

 

私はそう自分に言い聞かし、目の前のモンスターを狩る事に専念した。

 

------------------

 

「こんな時間に一人で出歩くとはな…。どうやら、彼女はまだ自分の置かれている立場が分かっていないらしい」

 

「ふむ、ではどうする。奴はまぎれも無くアーチャーのマスター。ここで打ち殺すか?」

 

「まあ待て。そう簡単に殺しても味気ない。此処は一つ、隠れ見ている奴に譲ってやろう」

 

「呵々々、何とも貴様らしくもない。だが、その前に死なれたらどうする」

 

「ククク、気にする事も無い。そうなれば、その程度の存在でしかなかったわけだ」

 

「では、しばらくは傍観か」

 

「ああ、此処は彼らの実力を見るだけだ」

 

「何とも消極的なマスターだ。まあ現状、儂は特に不満はないがな」

 

「ならば今は見ておけ。そのうち活躍の場をやろう。それまでは動くな。アサシン」

 

----------------------

 

あれから1時間ぐらい経っただろうか。

私はほとんど休みなしで出てくるモンスターを倒していた。

新しい武器も私の手に馴染み、そう簡単には刃毀れもしない。

私は気分よく狩りを続ける事が出来た。

 

だけど、それは唐突に訪れる。

 

急にモンスターの出現が止まり、不気味なほど辺りが静かになった。

そして、まわりは妙な霧に辺りが包まれ始めていた。

 

「何なの…一体」

 

静けさの中に私の声だけが響いた。

周りを見渡すが、霧のせいか1メートル先すら全く見えない。

 

「とにかく、戻らなきゃ……ッ!?」

 

突然、体中に悪寒が走った。

誰かに見られている。

ねっとりとした、粘着質で纏わりつくような視線だ。

 

私は、腰に差してあるレイピアを構えると、辺りを見回す。

 

すると、霧の向こうから誰かが此方に向けて歩いてくるのが見えた。

きっと先程からのこの視線の正体であろう。

私は警戒しながら、その人影を睨みつける。

 

近づくにつれて、ようやくその人物を見て取れた。

 

「こんばんは、お美しいお嬢さん」

 

全身が泡立つ感覚がした。

 

視線の先にいるのは奇妙な男だった。

奇抜な黒いローブを着た優男、肌の色は不健康に白く、両の目が飛び出すかと思うように見開かれてギョロギョロと動いている。

 

男の言葉で、私は今までにないくらいの気持ちの悪い感覚が全身に走った。

 

一目見て、まっとうな人間ではない、明らかにサーヴァントだ。

 

「こんな夜更けに、女性の一人歩きは危険ですよ」

 

男はそう言うと、私に近づき手を伸ばす。

 

私に何をしようというのか、何故私に近づいたのかは分からない。

おそらくサーヴァント絡みだと思うが、アーチャーは今側にいない。

 

私は震える体を精一杯振り絞って、男の手を払いのけた。

 

手と手の当たる乾いた音が辺りに響き渡る。

 

私は男と一旦距離を取ると、レイピアを構えいつでも戦える準備を整えた。

男はびっくりしたような顔をすると、茫然と私の顔を見つめている。

 

「嫌われてしまいましたか……。本当は少しの間眠ってもらおうと思っていたのですが、仕方ありません」

 

男はそう言うと、懐から1冊の本を取りだした。

 

何とも形容しがたいデザインをしている。

あまりにも禍々しくて、不気味な雰囲気だ。

見ているだけで気分が悪くなってくる。

 

「力づくと言うのはあまり趣味ではありませんが……」

 

男はそう言うと本を開き、手をページの上に翳した。

 

その瞬間、何やら蠢くような音が聞こえてくる。

男から注意を逸らさないように辺りを見回す。

蠢くような音は私と男の周りを囲うようにして聞こえてくる。

 

その音の正体は、何体ものモンスターだった。

いや、モンスターと表現していいのだろうか。

触手はずるずると地面から抜け出すように現われ、やがてその異形が全ての姿を私の目の前に現す。

 

「ヒッ……!?」

 

そこには、形容しがたい“何か”が居た。

蛸を逆さにしたような、あるいはヒトデのようなグロテスクな姿、触手の中心にある口の部分には鋭い牙が乱立している。

 

吐き気をもよおすほどにグロテスクな姿は、私を一歩下がらせる。

怖気しか感じないような異形がそこにいた。

 

「安心してください、殺しはしません。ただ、少し眠って頂けるだけです」

 

男はそう言うと、左手に持っていた本を掲げる。

 

次の瞬間、私の周りを囲っていた怪物達が、私目掛けて一斉に襲い掛かってきた。

私は剣を構え、スキルを発動させる事が出来ず、ただ剣を前に突き出したまま。

あまりの恐怖に足が竦み、体が動けなかった。

 

やられる。

 

私はその一瞬の間に理解した。

確証はないが一目で分かった。

 

これが私の最後かもしれない。

 

「――――――――」

 

逃げ出す事も出来ない。

 

私はその瞬間を、ただ待つ事しか出来なかった。

 

 




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これも皆様のおかげです。

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