Fate/ONLINE   作:遮那王

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約一カ月ぶりの投稿です。
ここ最近は月一投稿みたいな感じがデフォになってきています。

今回、最後のマスターが顔を見せますよ。

はあ、長かった。




第三十三話 罪と罰

 

ランサーと、アーチャー。

 

以前の二人の戦いは、互いが互いに決め手を得られない拮抗した戦いになっていた。

今回が二度目となる二人の対決。

一度でも戦った事がある以上、二人は互いの攻め手、守り手を理解しそれを崩すための戦いを行うはず。

 

しかし。

 

「グッ!」

 

アーチャーが双剣を交差しながら、後方へと吹き飛ばされた。

両手に持っていた剣もそれと同時に、根元から砕け散る。

 

「オラァア!!」

 

その隙を見逃す事をランサーはしなかった。

一気に間合いを詰めてくる。

 

「チィ」

 

辛うじて、投影に間に合ったアーチャーは双剣で槍を防ぐが、何合か切り結ぶうちに直にまた砕け散った。

 

このような戦いが、さっきから何度も繰り返されている。

 

「(……おかしい)」

 

だが、アスナはその状態に違和感を感じていた。

 

「(ランサーの実力は知ってた。バーサーカーを簡単に撃退するほどの実力)」

 

そう、アスナは以前見たランサーのスピードは眼にも止まらない速さでバーサーカーを撃退。

現時点でのパラメーターは、おそらく全サーヴァント中トップクラスであろう。

そして、以前のバーサーカーと同等の速度でアーチャーへと槍を繰り出してくる。

 

ステータス上は、全体的に見てもランサーの方がアーチャーを凌ぐであろう。

だからこその圧倒的な展開。

 

でも……。

 

「(ランサーは、なんであんなに鬼気迫るような戦い方をしているの……)」

 

アスナが違和感を感じたのはそこだ。

 

ランサーの戦い方は、実力に差があっても決して手は抜かずそれでいて自らも楽しめるような戦いを行っていた。

 

今回は手を抜いていないのは分かる。

だが、肝心のランサーが楽しむような戦いをしていない。

 

一つ一つが確実にアーチャーを仕留めるための一撃。

 

まるで、早く勝負を終えたいような。

そんな感じの戦い方だ。

 

「グッ……オォ――――――――――――」

 

また、アーチャーの双剣が破壊される。

それと同時に、体をふらつかせ態勢が崩れた。

この打ちあいの中で、相当の疲労と精神力を削られているのは明らかだった。

 

「これで終わりだぁ!!」

 

ランサーの槍が心臓を抉るべく、音速を超える速度で突き出される。

アーチャーの態勢は無防備に近い。

投影も間に合わない。

 

「……ッ」

 

アスナが声にならない叫びを上げる。

 

刹那の時を刻む事無く、槍はアーチャーの心臓へ到達する。

 

回避は不可能。

投影も間に合わない。

 

瞬時に悟った。

 

「アーチャー!!」

 

叫び声がその場へと響いた。

 

 

瞬間――――――――――――。

 

 

アスナの左手の令呪が、一画光を放った。

無意識的にアスナは令呪を使用したのだ。

 

その命令に呼応するようにアーチャーが両手に双剣を握りしめた。

 

通常よりも段違いに投影の速度が速い。

 

すぐさま、ランサーの槍を弾くべく、剣を振り上げた。

 

「今更その双剣か、もう遅ぇ!!」

 

それでも槍が一撃で双剣を砕いた。

だが、それによって槍も心臓から狙いがそれる。

 

「ガッ!!」

 

槍はアーチャーの肩へと突き刺さった。

 

辛うじて致命傷は避けたが、両手を使えなくなったのは痛い。

 

「チッ……オラァ!!」

 

ランサーはその勢いのままにアーチャーへ蹴りを加えた。

防御する体勢を整えられぬまま、アーチャーは吹き飛ばされる。

 

「仕留めそこなったか」

 

槍の穂先を見つめながら、視線をアーチャーへと移した。

ボロボロになりながら、アーチャーが起き上がる。

 

「ク……ハァ」

 

もはやアーチャーの体は死に体同然であった。

抵抗がほぼできない状態だ。

 

後一撃でも加えればアーチャーは消滅する。

 

「良くやったなアーチャー。だがそれもここまでだ」

 

ランサーが槍を回転させると、直に腰を落として構える。

 

「後一撃でテメェも倒れる、この一撃は手向けと思え」

 

すると、ランサーの槍が膨大な存在感を発し始めた。

 

空気が震える。

宝具を開放する気だ。

 

だが、以前とは構えが違う。

 

「往くぞ―――――――――――――スカサハ直伝!!」

 

アスナはもう、黙ってみている事しか出来ない。

先程は、幸運にも令呪を使用する事が出来たが、もうそんな余裕がない。

 

体が震える。

 

ランサーに対する恐怖。

 

もはや言葉を発する事も、令呪を使用するという考えも浮かべる事が出来ない。

 

アーチャーも体力は限界。

防御する程の力も残っていない。

 

ランサーの槍は一秒も満たないうちにアーチャーの心臓を突き刺すだろう。

 

せめてマスターだけでも。

アーチャーはそんな事を考えながら、ただこれから来る衝撃に備える事しか出来なかった。

 

---------------------

 

「くっ!」

 

バーサーカーの強力な剣戟の前に、セイバーが思わずたたらを踏んだ。

セイバー自身も剣の英雄としてこの戦いに呼ばれた英霊だ。

 

それなのに、バーサーカーの剣の前に押されている。

 

レベル差を抜きにしても、バーサーカーの剣腕は優れたものであった。

 

「はああああ!!!!」

「■■■■!!!!!」

 

不可視の剣と漆黒の剣……もっとも自己主張の少ない色の剣と最も自己主張の強い色の剣……対照的な剣がぶつかり合い、火花を散らす。

何度も劣勢の内で打ち合ったセイバーだが、続くバーサーカーの連撃を何とか凌ぎきった。

 

襲い来る黒刃を交わしながら、不可視の剣で切りかかる。

しかし、バーサーカーにその切っ先が届く事は無い。

 

……剣の長さ、間合いを見切られている?

 

セイバーがバーサーカーと剣を合わせるのはこれで二回目だ。

まさか一回だけで、セイバーの不可視の剣の間合いを見切ったと……そんな事が可能だろうか?

 

いや、実際バーサーカーはその刃を避けている。

 

ならば認めないわけにはいくまい。

どんな理由か知らないが、バーサーカーはセイバーの剣を知っている。

そして知っているのは剣だけじゃない。

 

その剣を操る技さえ見切られているような気がする。

 

「くっ!!」

 

だが……なんだろう?

この既視感に似た感覚は……バーサーカーが自分の剣を知るように、セイバーもバーサーカーの振るう剣を知っている気がする。

 

以前、今と同じようにこの剣を感じたことがあるような気がする。

 

霞がかったような記憶が、セイバーの脳を刺激する。

 

 

 

やはり、何か忘れている。

 

 

 

バーサーカーだけではない。

 

アーチャーも。

ランサーも。

キャスターも。

ライダーも。

 

どこかで一度会っている気がするのだ。

 

「……ッ」

 

殺し合いの最中であるはずなのに、思わず頭を押さえる。

 

どうしても思い出す事が出来ない。

 

「セイバー!!」

 

キリトの叫びに似た声が、セイバーの意識を引き戻した。

 

「ッ――――――――――」

 

バーサーカーは既にセイバーの目の前まで迫っている。

 

横殴りの剣がセイバーを襲う。

 

「くっ!?」

 

何とかその間に剣を滑り込ませた。

体を二つにされる事だけは防げたが、勢いを殺しきれない。

 

そこから思い切り吹き飛ばされた。

 

衝撃でセイバーが転がる。

本能的に仰向けに倒れ、体を置きあがらせようとする。

 

だが、空中にバーサーカーの姿をとらえた。

 

彼はその勢いのままに振り下ろしの体勢で落ちてくる。

セイバーはいまだ仰向けのまま立ち上がっていない。

そこに空から落ちて来るバーサーカー……今の自分の体勢の不味さに、セイバーはとっさに剣を防御に廻す。

 

仰向けに転がっていた事は幸運だった。

自分に迫る剣を迎撃する事が出来る。

うつ伏せで倒れていたら、バーサーカーの剣を見失っていただろう。

 

「うあ!!」

 

とんでもない衝撃が来た。

セイバーの体が少し地面に沈むほどの衝撃だ。

 

バーサーカーの体重と膂力、それに落下のエネルギーが加わった一刀は、セイバーを持ってしても驚異的な破壊力を持って打ち据える。

セイバー以外では受ける事さえ出来ず、そのまま押し潰されて両断されていたかもしれない。

 

「どきな……さい!!」

 

バーサーカーの腹に蹴りを叩き込み、自分の上から蹴り飛ばすと、セイバーはすばやく立ち上がった。

 

「ぐう……」

 

しかし代償はでかい。

手にかかった衝撃で両手が軽く麻痺している。

 

「はあっ!!!」

 

セイバーの打ち込みを、バーサーカーは流水のように洗練された体捌きと華麗なる剣技で逸らす。

更に体を入れ替えたことで生まれた隙に、刺突が付きこまれてくるのをセイバーは体を捻って何とかかわした。

 

今のは不味かった。

避けていなければ死んでいた。

 

「お、おおあああ!!!!!」

 

更にセイバーは怒涛の如く攻め立てるが、不可視の刃がバーサーカーの体を捕らえる事は無い。

 

まただ!?

 

セイバーは内心の焦燥と焦りを抑えられなかった。

 

自分の剣が完全に見切られている。

 

この男は、バーサーカーのクラスで呼ばれなくても十分に強い戦士だ。

自分の知る限りにおいて最強の使い手だ。

 

だがそれだけではない。

それだけでは説明できない何かがバーサーカーにはある。

ただ手練と言うだけでは、ここまで自分の剣が通じない理由にはならない。

 

バーサーカーと初めてまみえた一戦……あの程度の戦いで見切られる剣ではないという自負はある。

やはりバーサーカーは、自分の剣を以前から知っているのだ。

 

気が付けば、セイバーの体中に無数の傷が付けられている。

 

対するバーサーカーには目立った傷がほとんど見当たらない。

 

以前とは間逆の立ち位置だ。

 

優勢なのはバーサーカー。

劣勢なのはセイバー。

 

「ク……」

 

キリトの焦りの声が響く。

 

「どうだ、黒の剣士。スゲェ戦いじゃねぇか。まるで俺達がやってる事がガキのママゴトのようだ」

 

キリトの耳に不愉快な声が届く。

その方向へ目線を映す。

 

「Poh……」

「そんな顔すんなよ、黒の剣士。同じマスター同士じゃねぇか」

 

Pohがいつの間にかキリトのすぐ近くまで近づいていた。

 

「こんな戦いを間近で見れるとはLUCKYだと思わねぇか?マスターに選ばれた俺達だけの特権だ」

「悪いが、俺には思えない。こんな狂った殺し合い。」

 

これはキリトの本心だ。

 

初めこそ、キリトはセイバーを優れた相棒として戦ってはいたが、攻略を進め、他のサーヴァント達との戦いを繰り返していく内に、キリトはこの聖杯戦争という儀式にある種の憎悪を感じていた。

 

勝手にマスターとして選ばれ、殺し合いを強制される。

 

こんな事、普通の人間なら拒否して当然だろう。

 

「Huuu。つれねぇな黒の剣士」

 

Pohはそう言うと、右手に下げていた│友切包丁《メイトチョッパー》を眼前に突き出し構えた。

 

「……」

 

それと同時にキリトも背中から剣を抜く。

眼前に佇む憎悪すべき対象に切っ先を向ける。

 

「殺し合おうぜ――――――黒の剣士」

 

--------------

 

「なんだぁ?ランサーの奴、いつの間にバーサーカーの側についたんだ?」

 

「さあ………でもランサーはあんまり乗り気って感じじゃない。それに、いつもそばに付いていたマスターの姿が見えない」

 

「ふむ。ランサーのマスターに何らかの原因があって、止む無くバーサーカーの方へ付いたという感じか」

 

「たぶん――――――――――マスターが脅迫…もしくは手中に取られたか」

 

「なるほどのぉ。どちらにせよ、あまり気持ちが良いやり方ではないがな」

 

「……ライダー」

 

「うん?」

 

「……ちょっと、私の我儘を聞いてほしいんだけど」

 

「…言ってみよ」

 

「……彼ら――――――この戦いが終わったら、きっと殺される。彼らを死なせたくない」

 

「ほう……」

 

「黒い彼も、あの男にきっと負ける。あの男は何か隠している。アーチャーもランサーにやられて、マスターのあの娘も殺される」

 

「ならばどうする」

 

「止めたい。協力して欲しい」

 

「……」

 

「私一人じゃ無理。力を貸して、ライダー」

 

「――――――――――それでこそ余のマスターよ。余もあまりこの戦いを好ましくは思わん。それに、彼奴等をこのまま死なせるのは惜しい」

 

「うん。じゃあ私は黒い彼の所へ」

 

「余はアーチャーとランサーを……か。セイバーとバーサーカーはどうする」

 

「すぐには決着が付くとは思えないから、マスターだけを止めれば大丈夫だと思う」

 

「そうか……では急ぐとするか」

 

「うん。行こう」

 

--------------

 

「グアァッ!」

 

キリトの体が傷だらけになりながら吹き飛ばされた。

マスター同士の戦い。

それは一方的な試合となっていた。

 

「HEY。どうした、その程度か?黒の剣士」

 

Pohが手元で剣を弄びながら、ゆっくりと歩みを進める。

 

キリト自身、此処まで圧倒的にやられるとは思っていなかった。

攻略組でもトッププレイヤーとして前線を張り、セイバーと共に数々の敵と戦ってきた。

それでいて、今のキリトがある。

 

だが、Pohはそんなキリトを笑いながら追いつめていた。

 

余裕綽々といった表情だ。

舌舐めずりをしながら、キリトの眼前で立ち止まる。

 

「早く立ち上がれよ、黒の剣士。俺はまだまだ、食い足りねぇぜ」

 

その声に釣られるように、キリトが剣を杖のようにして立ち上がる。

だが、あまり余裕がない。

実力差がありすぎて、表情も強張っている。

 

「Ha」

 

ゴッ!!

 

笑ったと思うと、今度は側頭部への強烈な蹴り。

再び情けなくも、キリトは横へ倒された。

 

「ク…ソ……」

 

よろめきながら立ち上がる。

剣を握る力も無くなってくる。

だが、それでも構える事を止めない。

 

「oh……大したもんだ、黒の剣士。そんな状態でも戦う意思が折れねぇか」

「あたり…まえだ―――――――――――――」

 

途切れながらもキリトが答える。

そして、視線を自らの従者へと移し。

 

「セイバーが…まだ戦ってるんだ……実力差があっても…勝つために……戦ってるんだ。……俺は…セイバーのマスターだ……。負けるわけには……いかない」

 

キリト自身の決意だ。

 

セイバーが、自らの従者が死に物狂いで戦うのなら、マスターである自分もそれ相応の戦いをしなければならない。

その義務がある。

 

「Ha……良い心がけだ、見直したぜ。だがな……」

 

Pohが眼にも止まらぬ速さで、キリトへと迫る。

そして、彼の剣が振り上げられた。

 

「ッ……!?」

 

振りぬかれる一撃。

辛うじてをれを防ぐ事が出来た。

だが二激目は下からの切り上げ。

それは、キリトの体勢を大きく崩れさす。

 

剣を持つ右腕が、宙に浮かんだ。

 

「……あ」

 

間抜けな声が口から零れる。

 

Pohの剣は、キリトの腕と剣諸共文字通り宙に浮かせたのだ。

痛みは感じなかった。

仮想世界では痛みを感じない。

 

だが、それでも損失感はある。

 

無くなった右腕を押さえ、キリトが膝をついた。

 

「Ha。もうここまでだな、黒の剣士。」

 

膝をつくキリトを見下ろし、剣をキリトに向ける。

 

「キリト!!」

 

セイバーが、叫びキリトのもとへ駆けようとする。

だが、その眼前にはバーサーカーが立ちはだかる。

 

「aaaaaaaaaaaaaaahhhhhhhhhh!!」

「クッ……邪魔をするな、バーサーカー」

 

一刻も早くキリトを助け出さなければいけない。

だが、それには目の前のバーサーカーが邪魔だ。

 

「そこを…どけぇ!!」

 

セイバーの怒涛の攻撃がバーサーカーを襲う。

それでも……

 

「■■■■!!!!!」

 

バーサーカーを振り切れない。

 

「クッ…」

 

既にキリトは、戦える状態ではない。

Pohによって殺される寸前だ。

 

仮にセイバーが此処から全力でキリトのもとまでたどり着ければ、直ぐにでもPohを倒せる。

だが、バーサーカーがそれを許さない。

 

Pohの右腕が大きく振りかぶられる。

 

「やめろおおおォォッ!!」

 

セイバーが絶叫する。

 

自分の主を守れない。

そんな自分の不甲斐なさと、バーサーカーそしてPohに対する怒りを込めて叫ぶ。

 

その叫び声も虚しく、無慈悲にもPohの剣はキリトへと振り下ろされた。

 

----------------

 

キリトにとって、この聖杯戦争は忌むべき存在であった。

七名のプレイヤーが、何の説明もなく参加させられ殺し合う。

サーヴァントという強力な従者を従えていても、他のプレイヤーよりも死ぬ確率は数段高い。

 

そして、彼の近しい二人の少女がこの殺し合いに参加している。

 

一人は共に志を合わせて聖杯戦争を生き残ろうと誓っている。

だが、もう一人は彼を拒絶し、殺し合いに積極的に参加しているのだ。

 

キリトは激しく後悔した。

 

何故、彼女の前からもっと早く消えなかったのか。

何故、彼女から離れてしまったのか。

 

そうすれば、彼女はこのふざけた戦いに参加もしなかった。

 

自責の念に駆られた。

自分に全ての罪がある。

そう頭から離れなかった。

 

そして、その断罪の刃が今まさに振り下ろされようとしている。

 

きっとこれは罰だ。

 

彼女を……サチを、黒猫団の皆を巻き込んだ罰なのだ。

 

キリトはそれを受け入れようとしていた。

 

セイバーが叫んでいるが、もうキリトの耳には届かない。

 

彼は静かに目を閉じ、刃が体を両断するのを静かに待った。

 

 

 

…………

 

 

 

おかしい。

 

来るべき衝撃がいつまで経っても来ない。

 

閉じられていた目を開け、顔を上げる。

 

すると、衝撃が来ない理由がすぐに分かった。

 

少女がキリトに背中を向けて立っていた。

しかも、ただ背中を向けているわけでは無い。

 

Pohの愛剣、│友切包丁《メイトチョッパー》を逆手に持つソードブレイカーで受け止めていた。

 

「Ha?」

 

Pohが思わず間抜けな声を上げる。

珍しく戸惑ったような声色だ。

 

「……剣を収めなさい」

 

少女の冷静な声が彼らの耳に届いた。

 

-----------

 

時を同じくして、ランサーとアーチャーの戦いも意外な結末を迎えていた。

 

突如として鳴り響いた轟音。

何かが二人の間に割り込んできたのだ。

 

ランサーはその場から、バックステップで距離をとる。

 

爆心地からは煙が立ち込め、姿が確認出来ない。

 

その場に居る全員が、警戒をしながらその姿を現せるのを待つ。

 

そして、一陣の風と共に煙が晴れた。

全員が、その乱入者を見て驚愕する。

 

「……ライダー」

 

アーチャーの静かな呟き。

 

二頭の雄牛に引かれた戦車に乗っているのは、全員が過去に一度会っているサーヴァントの内の一体、ライダー。

 

その彼がまたしても戦闘に乱入してきた。

 

ランサーは怒りの表情を浮かべ。

アーチャーは疲労から来る虚ろな表情で。

アスナは驚きが重なりすぎて、どのような顔をすればよいのか分からない様な表情をしていた。

 

だが、当のライダーは以前のような砕けた表情をしていなかった。

 

口を閉じ、眼を吊り上げ、締まった顔をしている。

 

「双方、武器を引け」

 

低い、まさに支配者といったような威厳のある声でそう言い放った。

 

そして……

 

-----------------

 

「「この戦い私が(余が)預かる」」

 

離れた場所で――――――――――少女と王が共にそう発した。

 

 





久しぶりに長ったらしく書きました。

正直、亀のように展開が遅いので、一気に展開を進めようと思ったら、ちょっと分かりづらくなってしまったかも。

というわけで、ついにライダーのマスターが満を持して登場。

皆さんの中で、結構想像してくださった方もいたみたいですが。

SAOの中でソードブレイカー使いの少女といえば……?

とまあ、こんな感じに。

正直、シリカと想像してくれていた方も居たようですが、シリカがサーヴァントを操っている姿が想像できない。

という事で渋々没にしました。

今後は、彼女達主従も物語に大きく関わってきます。

それでは次回まで。

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