Fate/ONLINE   作:遮那王

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一年経ちそうでした。
ギリギリで投稿です。

いや、すいません。




第三十四話 同盟

 

「知らない天井だ」

 

某人気ロボットアニメと同じセリフを吐き、キリトは眼を覚ました。

体がだるい。

今までの疲れが一気に噴き出してきたような感覚だった。

 

体を起こし、ゆっくりと辺りを見回す。

どこかの部屋の一室のようだ。

無駄な家具は一切無く、ガランとしている。

この部屋にはキリト一人しかいないようで、雑音の一つも聞こえない。

 

ゆっくりと……疲れ切っていた脳を覚醒し始める。

 

何故自分がこのような所で、眠っていたのか。

徐々に思い出し始める。

 

「……ぅ」

「おう。眼を覚ましたか坊主!」

 

突如、勢いよく扉が開かれた。

仮想世界で無く、現実であれば確実に扉が壊れていただろう。

 

「……あ……?」

 

信じられない物を見たかのように、眼を見開く。

 

「ら…ライダー?」

 

目線の先には、自らの敵でもあるライダーが立っていたのだから。

 

―――――それも、Tシャツとジーパンというものすごくラフな格好で。

 

「うん?まだ寝ぼけ取るのかぁ」

「なんで……お前が?」

 

まだ理解が追い付いていない。

妙に、ライダーのTシャツの大戦略というロゴに目を奪われた。

 

「なんでってなぁ…坊主、昨日のこと覚えとらんのか?」

「昨日?」

 

不審に思いながも、覚醒し始めた脳で思考を巡らせる。

そして、ようやく理解が追い付いた。

 

「俺はあの時、殺されそうになって…」

 

記憶の糸が紡がれていく。

自分に起きた出来事すべてが、思い出される。

 

「ようし。大体は思い出したっちゅう顔だな」

 

そう言うと、ライダーはニカッと笑ったかと思うと、開けっ放しの扉へ歩き出す。

 

「全員揃っとるぞ。坊主ついて来い。」

 

返事も聞かずに、ライダーはさっさと扉の向こうへと歩いて行ってしまった。

戸惑いつつも、キリトも後を追う。

今、現状を知るには、ライダーを追うのが最適。

キリトはそう判断し、部屋をゆっくりと後にした。

 

---------------

 

まず目の前に飛び込んできた光景に、キリトは絶句した。

 

「信じられないわね。あなた本当に│弓兵《アーチャー》?│執事《バトラー》の間違えじゃない?」

「私の場合はまあ、色々な経験があるからな、伊達に歳は食っていない」

「なんかむかつくわ。男のくせに――――――しかもサーヴァントがこんなに料理が上手いなんて……。アスナもそう思うでしょ?」

「…アハハ―――――私も最初は驚いたかな。サーヴァントに料理スキルが有るかと思ったけどそうでもないし……」

「まあ、私もこの世界で此処まで上手くいくとは思ってはいなかったがね。とりあえず十分な量は用意したつもりだ。遠慮なく召し上がってほしい」

「アーチャー、とても美味です。お代わりを」

「……君は少し遠慮というモノを知りたまえ」

 

何だろうこの光景は……。

 

机を挟んで談笑するアスナと金髪の少女。

どちらもダンジョンフィールドに出る時のような装備ではない。

私服に近い簡素な服装だ。

 

そのアスナの横で黙々と箸を進めている自身のサーヴァントセイバー。

彼女は、甲冑を外しただけのドレス姿であったが、その食べっぷりに驚いた。

箸が止まる様子もなく、ずっと動かし続けている。

現に先程お代わりを要求していた。

 

そして極め付きはアーチャーだ。

つまみを載せた皿を両手に持っている。

黒のジーンズに黒シャツ……どこから出したのか知らないが、いつの間にか着替えていた。

 

まだそれならいい。

 

しかし……この男(アーチャー)、英霊の癖に何故こんなにエプロンが似合う?

しかも運ばれてきた料理は昨日今日のものじゃない手馴れた感じだ。

 

「ようアーチャー、坊主を連れてきたぞ。さあ、食事の続きと行こう」

 

ライダーが大声でそう叫び、どっかりと金髪の少女の隣に座った。

そして手には飲み物が注がれたジョッキが握られている。

 

「ライダー。彼を連れてきたのなら、話を始めましょう。時間がもったいない」

「お堅いのぉ。坊主が何も食っとらんから一先ず腹ごしらえと思ったのだが」

「ならば、食事をしながら話をしよう。行儀は悪いが、今更言っている場合でもないのでね」

 

金髪の少女とライダーの会話にアーチャーが加わる。

 

「キリト君、ずっと立ってないで座ったら?」

 

アスナが見かねて、セイバーとは反対隣りの席を進める。

やや疲れたような笑みを表情に浮かべていた。

その隣のセイバーは、キリトに少しは反応したものの箸を止める事は無かった。

どうやら食事に集中したいらしい。

 

―――自分のマスターより飯が重要か……。

 

キリトは地味に悔しかった。

 

――――――――――――――――――――

 

「さっきアスナとアーチャーとセイバーには自己紹介したけど、あたしはフィリア。ライダーのマスターよ」

 

そう言って、金髪の少女フィリアは手を差し伸ばしてきた。

サンドイッチを齧っていたキリトも、それに反応しその手を握り返す。

 

「あ…俺はキリト。知ってるかもしれないが、セイバーのマスターだ」

「よろしくキリト」

 

机を挟んで握手する二人。

 

キリトの右隣には、アスナ。

その奥にはセイバーが座している。

アーチャーは座ることなく、アスナの後ろで腕を組みながら壁に寄りかかって立っている。

 

そして、対面にはフィリアとライダーが座っており、フィリアの引き締めた表情をとっていた。

一方のライダーはというと……。

 

「うむ、なかなかの美酒。こいつは安いが良いモノを拾った」

 

ジョッキで酒を煽っており、緊張感の欠片もなかった。

一方のセイバーも、箸を止めずに食事を続けているのだが、此方は一応聞く気が有るようで、食事のペースも落ちている。

 

そんな彼らを無視して、フィリアは口を開いた。

 

「単刀直入に言うわ、キリト。私達と手を組まない?」

「手を組む…?共闘しようってことか?」

「そう、共闘。まあ、同盟って言った方が良いかもしれないけど」

 

キリトは食べ掛けのサンドイッチを口に押し込み、水で流しこむ。

そして、横に座るアスナとセイバーへ目を向ける。

 

アスナはキリトの顔を見て軽くうなずき、セイバーは箸を止めて目を瞑っていた。

 

どうやら二人には先に話していたらしい。

無論、後ろのアーチャーにも伝わっているであろう。

 

「何でそんな話をいきなりするんだ?」

「三人とはすでに話をしていたんだけど、もう一度説明するわ」

 

軽く息を吐くと、フィリアはキリトを見つめながら話し始めた。

 

「私とライダーは、監督役からの依頼にあったキャスターの討伐を行っていた。監督役が位置情報を開示してくれたおかげで、最初の方は探すのに苦労はしなかったけど、何のカラクリか、突然位置情報が複数現れるようになってしまった」

「おそらくキャスターが何かしでかしたな。腐っても魔術師の英霊。抜かりは無いと言うことか」

 

フィリアの説明にアーチャーが補足を付け足す。

キャスターは自らの居場所が分からなくなるようにするため、何らかの手段で位置情報を複数個所に出るようにしたのだ。

 

「私達もその位置情報を虱潰しで探していたの。そうしたら……」

「俺達を見つけた…。ってことになるのか」

「まあ、ざっくりと細かい所を省けばそう言う事」

 

キリトが納得したように頷く。

だが、一つ疑問に思った。

 

「なぁ、フィリア達はキャスターを探してたんだろ。じゃあなんで、キャスターのいないあの場所に居たんだ?」

 

考えてみれば妙な事であった。

キャスターがいないのに、彼女達が何故ピンポイントに自分達の所へ来たのか。

そんな偶然が有るのか。

やや疑問に感じた。

 

「……確かにあの場にキャスターは居なかった。でも、キャスターに関係のある奴があの場所には居たのよ」

「キャスターと関係のある奴?」

 

キリトは思い出す。

あの場所に居たのは、自分とセイバー。

そしてアスナ、アーチャー。

後はランサーに、Pohとバーサーカー。

 

「あそこにはキャスターのマスターがいた」

「なっ……!」

 

馬鹿な。

突然のフィリアの発言に、キリトは率直にそう思った。

 

そう感じるのも無理はない。

あの場所に居たプレイヤー達には、全員令呪があったがサーヴァントの数はプレイヤーの数とイコール。

他のプレイヤー達もすぐにその場から離脱していなかったはずだ。

 

「まあ、あり得ないと思うのも無理は無いわね。あそこに居たサーヴァントの数とマスターの数は同じ。それ以外にはプレイヤーは居なかったから」

 

フィリアの言っている事は正しい。

あの場には自分たち以外居なかったはずだ。

 

「小僧。貴様は何故キャスターのマスターがあの場に居ないと思っている?」

 

沈黙していたアーチャーが口を開いた。

キリトの心を読んだかのような的確な質問だ。

 

「いや、あの場には俺達のほかにPohとバーサーカー。後はランサーしかいなかった。あそこに他のプレイヤーは居なかったんだ。じゃあ、誰が……」

「いつあの殺人鬼がバーサーカーのマスターだと思った」

「……は?」

 

殺人鬼。

Pohの事を言っているのだろうが、奴はバーサーカーの傍に立って……。

 

傍らに立って……。

 

 

 

―――――――――奴はバーサーカーの傍に立っていただけだった。

 

 

 

指示という指示も出さずにバーサーカーにただ暴れさせていただけ。

 

「……Pohは、バーサーカーのマスターじゃない……」

「ふん。ようやく結論が出たようだな」

 

アーチャーが鼻を鳴らして言う。

つまりは。

 

「Pohがキャスターのマスター。そして、奴等はバーサーカーとそのマスターと手を組んでいる」

 

最悪のシナリオだった。

よりにも寄って笑う棺桶の連中にサーヴァントが二体。

 

「正直、キャスター一体なら、私達だけでも何とかなった。でも、今は状況が変わってしまった」

 

全員の表情が硬くなる。

 

「キャスターの奴め、一人じゃ分が悪いと踏んだのか、バーサーカーのみならずランサーまでをも手中に収めおった」

 

ライダーは酒を一気に飲み干し、ジョッキをテーブルに叩きつける。

その顔には憤怒の表情が写っていた。

 

「バーサーカーのマスターはともかく、ランサーのマスターはあの気の弱そうな娘っ子だ。進んで手を貸すとは考えにくい」

「じゃあ、サチ達は」

「おそらく何らかの形で脅されている。もしくはマスターである彼女が奴等に人質とされている」

 

キリトの目に激情の炎が灯った

爪が喰い込むほど拳が握られていく。

 

「奴らが……サチを……!」

 

フィリアとライダーの言葉に、キリトが歯を食いしばった。

サチと一番付き合いが長いのがキリトだ。

この話を聞いて、怒りが込み上げて来ない訳が無い。

 

「ともかく、奴等が手を組んだ以上、此方も単体での敵への攻撃は不可能と考えたわ。だから、貴方達の力が必要なの」

「それに、協力してキャスターを倒せば令呪がそれぞれに渡されるんだろう?」

 

神父は協力して倒した場合には、それぞれに一つずつの令呪を進呈するといっていた。

自分達だけで討伐しても、受け取る事の出来る令呪は一つだ。

それならば、協力したほうが効率がいいに決まっている。

 

後にやりあう事を考えれば、問題の先送りになってしまうデメリットもあるにはあるが・・・。

 

「アスナとアーチャーにはさっき確認した時、承諾してもらえたわ。セイバーは、貴方の決定に従うと言っている」

 

フィリアの言葉にチラリとセイバーを見る。

セイバーはじっとこちらを見つめている。

その目は、すべて自分に託すという表情だった。

 

奴等が手を組んでいる以上、セイバーだけで戦うのは明らかに不利。

三対一で勝とうなんてほぼ不可能。

 

ならば、答えは自ずと出てくる。

 

「フィリア。俺も……いや、俺達も協力する。キャスターとバーサーカーを倒す。そしてサチを助け出す」

「キリト君……」

 

キリトの言葉にアスナが安堵の表情を見せる。

内心不安だったのかもしれない。

 

「よぉし。それじゃあ一先ず同盟は成立だな。短い間だが、頼むぞ坊主」

「あぁ。よろしく頼む」

 

ライダーの差し出された手をがっちりと握り返す。

 

――――――此処に、一つの同盟が果たされた。

 

これが、この先の戦いにて大きな意味を成していく事になる。

 

聖杯戦争最大の山場が、今始まろうとしている。

 

 





いや、言い訳はしませんよ。
ただ、執筆意欲が湧かなかっただけと、Fate/GOに嵌り過ぎただけ。

ごめんなさい。

次は、もう少し早く投稿します。

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