Fate/ONLINE   作:遮那王

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キリが良いので短めで投稿します。


第七話 疾風の槍兵

私は昔から臆病だった。

何をするのにも誰かの後ろに隠れていた。

 

このゲームに囚われ、部活の仲間達とこのゲームを生き延びようと団結した時も私は後ろで槍を突いているだけだった。

 

槍から片手剣へ転向しないかとケイタに聞かれた時も、正直私は怖くてしたくなかった。

だけど、このままではギルド全体のバランスが崩れてしまうと説得されて仕方なく私は片手剣への転向を決めた。

 

だけどそんな時にキリト達が私たちの前に現れた。

 

彼は私たちがゴブリンの群れに追われている時、さっそうと現れて私たちを助けてくれた。

その後、キリトは私達と同じくらいのレベルだという事で、ギルドへ入ることとなった。

だけど私は知っていた。

キリトは私たちと同じレベルだと話してくれたが、私たちよりもずっとレベルが高く、それなのに私達に付き合ってくれていたことに。

 

キリトはパーティを組んでいるセイバーさんという女性と一緒だった。

セイバーさんは外国の人なのか金髪で蒼い目をしていた。

そして何より、女性にも関わらず私よりもずっと強かった。

 

キリトと一緒に私たちの前に現れたときも、眉一つ動かさずにゴブリンを倒していた。

 

その姿は、綺麗で、美しくて、力強かった。

 

正直嫉妬していたのかもしれない。

同じ女性としてセイバーさんの強さに。

 

私はキリトから片手剣の使い方をレクチャーしてもらいながら、ギルドのみんなと共に着実にレベルを上げていった。

 

だけど、私は怖かった。

死ぬことに。

だから逃げ出してしまった。

 

そんな私をキリトはやさしく慰めてくれた。

 

「君は死なない」

 

その言葉に私は救われた。

 

だけど、運命は残酷だった。

ケイタを除く私達黒猫団のみんなは少しでもお金を稼ごうと二十七層の迷宮区で狩りを行っていた。

でも、私たちは罠にかかり部屋の中に閉じ込められた。

 

この時、セイバーさんが居てくれなかったら、私は死んでいただろう。

セイバーさんはたった一人で私の目の前にいるモンスターたちを倒していった。

キリトも自分の周りにいる敵は一人で倒して、私達を出来る限り助けてくれた。

二人のおかげで私たちは生き残ることができた。

 

でも、悪い事は重なって起こるものだ。

 

最初に死んだのはテツオだった。

テツオは左胸を貫かれて死んだ。

 

次はササマル。

ササマルは体中に傷を負い、赤いエフェクトの華を散らせて死んだ。

 

次にダッカーが死んだ。

ダッカーはお腹を貫かれて死んだ。

 

思わず悲鳴を上げた。

目の前で起こったことに訳も分からず、現実から目をそむけるために。

 

そして、顔を上げたときあの眼を私は見た。

猛禽のような、人を殺すことに何の迷いもないあの眼を。

 

あの眼を見た瞬間、震えが止まらなかった。

今まで感じたことのないような死の恐怖。

私は思った。

 

殺されると。

 

今、私はキリトやセイバーさんの後ろに隠れている。

セイバーさんは必死で目の前の敵に立ち向かい、キリトも私が巻き込まれないように守ってくれている。

 

だけど、セイバーさんが吹き飛ばされ、同じように私の目の前からキリトが蹴り飛ばされた。

 

怖い

 

それが今の私の率直な感想。

 

目の前の敵は明らかに私とは違う。

 

“死”そのもの。

 

このままではキリトもセイバーさんもあの“死”に呑み込まれてしまう。

 

男に吹き飛ばされたキリトは、必死に私に目を向けて何かを私に伝えた。

口だけが動いて、なんて言ってるのかは聞き取れなかった。

だけど口の動きだけで何とか理解しようとした。

 

『逃げろ、後ごめん』

 

そう読み取れた。

 

私はまだ彼らに伝えていない。

彼らに感謝の言葉を。

 

この場では場違いかもしれない。

だけど、今伝えなくちゃいけないような気がした。

 

助けなくちゃ。

 

「安心せい、痛みは一瞬」

 

男の声が響く。

 

まだ死んではいけない。

死なせてはいけない。

生きなくちゃいけない。

生かさなくちゃいけない。

 

 

絶対に生き残る!!

 

 

“それが君の望みか”

 

頭の底からそんな声が聞こえた気がした。

 

“生きて彼らに思いを伝える、それが君の望みなのだな”

 

…そう、私はまだ生きたい、そして思いを伝えたい。

 

“君は彼らと生きたいのだな”

 

…そう、私は彼らと生きたい。

 

“君の望みは彼らに思いを伝え、そして生きることか。単純な願いだがこの場でそれを叶えるのは難しい。ならば私から君に一つ贈り物をしよう”

 

…え?

 

“生かすも殺すも君次第、受け取るがいい”

 

その瞬間、私の左手から激痛が奔った。

 

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「な…に…?」

 

そんな言葉が思わず口から洩れる。

部屋中に突風が吹いた。

風は部屋中を駆け巡り、俺はその場にうつ伏せたまま留まるのがやっとだ。

 

思わず風の吹いている方向へと目を向ける。

そこにはサチが居た。

サチは痛みに耐えるように必死で左手の甲を抑えつけていた。

 

その隙間から、紅い、血のような光が滲み出ていた。

 

体は動かない。

先ほどのアサシンの攻撃と緊張で言う事を聞かない。

風が吹きやみ始めると、それと同時に強い光が辺りを包む。

 

「ぐっ…!」

「む…!」

 

近くでセイバーとアサシンの怯んだ声が聞こえる。

それほど光は輝いていた。

 

光が収まり始めると、サチの前に人影が浮かび始めた。

 

「ったく、随分と乱暴な召喚だな」

 

あまりにも乱暴な言葉を吐き捨てる。

声質から声の主は男であろう。

光のせいでうまく視認しきれなかったが、今はっきりと声の主を見て取れた。

 

「召喚されたと思ったら、まさかこんな嬢ちゃんが俺のマスターだとはな…」

 

やや不満げな声を上げ、サチを見つめているその男。

青いボディスーツに身を包み、その上から鍛えられた肉体が見て取れる。

眼光は鋭く、その赤い瞳に見つめられただけで射殺せそうだ。

 

そして何より目をひかれるのは男が持っている槍。

血のように紅く染め上げられたその槍は、暴力的なまでに圧倒的な存在感を放っている。

 

その槍を手にしている男は槍以上に存在感を放ちながら、サチを見つめている。

 

突然現れた男。

そして、この圧倒的な威圧。

 

「んじゃ、一応決まりだから言うぜ」

 

サチの前にしゃがみ、目を見つめながら

 

「お嬢ちゃんが俺のマスターかい」

 

サーヴァントはそうサチに問いかけた。

 




いかがでしょうか。
久しぶりに速いスパンで投稿しました。

感想お待ちしております。

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