side シロ
あの後、ベルさんのファミリア?とやらの拠点地に来てみれば、其処は廃墟と化した教会の地下であった。…地下に住むという発想がないから少し虚取ってしまったけど、バレてはいないはず。
「神様、帰ってきましたー!ただいまー!」
毎度思うことだけど元気だよね、ベルさんって。私とそんなに変わらない筈なのに凄く若く感じる…。もしかして、私が老けてきたのかな…。彼の大きな声と共に開かれた扉に私も続くように入ってみると
「やぁやぁお帰りー!ベル君!」
……信じられない生物がいた。黒髪の二つ結びに、子供の様な体躯でいて存在感をありありと示す胸部。…この世界でこれが普通なのだとしたら私は世界の理から外れているのかもしれない…。
「……あーと、背後の君は誰かな?僕は見覚えがないから初対面だと思うんだけど…。」
「…申し訳ありません。私の名前はシロと言います。此れから関わる事になるかどうかは分かりかねますが出来れば宜しくお願いします。」
私の挨拶にキョトンとした様な女の子は意気揚々とこう名乗りを上げていた。
「うん、これからよろしくねっ、シロ君?僕の名前はヘスティア!ヘスティア・ファミリアの神様さっ!」
…神様……?頭の痛い子なのかな…。あ、そうか…胸に栄養がいき過ぎて頭に回ってないのか、それなら納得出来る。
「君…今、失礼な事を考えていないかい?」
「いえ、気の所為です。」
「……まぁ、この問題は後々なんとかしよう。所でベル君、何でこの御仁を連れてきたんだい?」
「えーとですね、神様。今日、ダンジョンで殺されかけた所をシロ君に助けて貰ったんです!そのお礼として僕達のファミリアに招待したんです。」
その後、ギルドに行って所属していると思われるギルドが見当がつかずにもう少し待って欲しいと言われて泊まる場所がない。などといった事情説明をして貰った。やっぱり、誰かが喋ってくれれば楽が出来るからいいよね。
「ふーん…泊めるのはおおいに構わないよ。ベル君の命の恩人をみすみす追い返す事なんて出来ないし。…オボロ・ファミリアか…。うーん、僕でも聞いた覚えがないな。」
「……すみません、唐突な質問になってしまうのですが…ふぁみりあとやらは何なんですか?皆様が口々にそう言っているのですが全くと言っていいほど理解が及ばないのですが。」
「ん?ファミリアを知らないのかい?ファミリアって言うのは神の眷属って意味なんだ…簡単な話、ベル君は僕の眷属もとい家族みたいなものだよ。眷属なんて堅苦しくって僕の性に合わないし、僕は家族だと思ってるよ。」
彼女は言葉の意味を分かりやすく説明してくれ、年相応の無垢な微笑みを見せてくれた。私は理解したという意思表示をすれば今度はヘスティアちゃんからの質問がきた。
「シロ君、良かったらなんだけどステータスを見せてくれるかな?そうすれば君が所属しているという、オボロ・ファミリアの事が少しは分かるかもしれない。…本当は他のファミリアの子のステータスを見るのは規則違反なんだけど、緊急事態だからね。」
「すてーたす……?」
「ステータスも知らないのかい?全く、君を勧誘した神様はほとほとダメな神様だったんだろうね。心中お察しするよ。ステータスっていうのは冒険者の能力や所属ファミリアが分かるものなんだよ、それは背中に書いてあるんだけど…見せてもらっていいかな?」
あ、さっきエイナ?さんという方が私に確認してきたのはそれだったのだろう。
「……見せる事は構わないのですが、その……此処で脱がなければならないのですか?」
「?狭いから此処ぐらいしかないんだけど…あ、ベル君は少し外で待ってて貰っていいかな?ベル君のステータスも見せないのに、他のファミリアの子のステータスを見せるのは不公平だからさ?」
「あ、はい、分かりましたっ!じゃあ、適当に外を出歩いてきますね?行ってきまーす。」
ベルさんは元気に扉から出ていった。なんというか犬というのが似合っているような…。と、わざわざ出掛けて貰ったんだから早めに終わらせなければ。私は浴衣をはだけさせるようにしてさらしを外していき、背中をヘスティアちゃんに見せるようにした。
「……ねぇ、シロ君。もしかして、君はシロちゃんだったりするのかな…?」
「呼びかたに拘りは持っていませんが、呼びやすければちゃんでも…。」
「違う。そういう事を聞きたいわけじゃないんだ。ごめんね、僕の聞き方が悪かったね。君は…女の子かい?」
「見た通りの性別ですが…。」
また男と勘違いされてしまったらしい。やっぱり私は男っぽいのかな…。
「…先ずはステータスを見せてもらうね?」
「はい、どうぞ。」
冷静になるまでは手を出さないというのは大事な事だ。ヘスティアちゃんは子供なのに賢いな…。
「……君、何処にも所属してないよね。」
「いえ、私は【朧】に所属している武器職人です」
「…別な質問をさせてもらうね?君の出身地は何処かな?」
「私の出身はダンゼツ村、そこが一番私の心の中に残っている場所……出身地と言っても構わない場所です。」
私との問答でどんどんと眉間に皺が寄っていくヘスティアちゃんを見て、私は何か不味い事を言ってしまったのか。と思ったが、彼女はただ一言。時間が欲しい。と私に呟いた。
side out
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side ヘスティア
僕の目の前に立っている少女(最初は少年だと思っていたが)が話してくれた彼女の身内の情報が全く僕が知り得ないことだった。彼女はオボロという組織に入っていると言ったが、背中には所属しているファミリアを表すステータスもなく、その代わりとでもいうかのように少女の背中には数え切れない程の傷の数々が連なれていた。
僕が見てとれただけでも数百もの大小の切り傷が付いていた。それは、あんな子供が背負うものではないはずである。あんな傷を負うのは____そう、戦時中の兵士が負うような傷だった。
ベル君が帰ってきてからは三人でじゃがまるくんを食べてから、直ぐに床に着くことにした。
寝る前にベル君が零した一言が僕は信じられないものであった。
【ミノタウロスと打ち合っていた】
ミノタウロスと打ち合えるわけがないんだ、あの少女が。あの子には神の加護が全くついていない。もしかしたら、ベル君にも劣るかもしれない彼女が…。
全く解決することのない悩みにベットでうんうんと唸っていると隣で可愛らしい寝顔で眠っているシロ君を見ては、どうにかして彼女の事を知りたいと思った。
ふと、彼女が寝るときも全く離そうとしなかった彼女の装備品。刃が黒く塗り潰されている長剣。鞘に入れることもせずに自分の腰に差すようにしていた。
この刀を見れば買ったファミリアが分かるかもしれないと、眠る彼女を起こさないように刀に触ろうとした瞬間。
「触らないでくれるかな。僕は赤の他人に触られるのがとっても嫌いなんだ。」
と毒舌を吐くようにして僕の手を掴んだのは、さっきまで深い眠りに落ちていたはずのシロ君だった。
でも、シロ君の容姿には大きな違いがあった先程まで漆のように真っ黒だった長い黒髪が、全てを洗い流してしまったかの様な白髪になり。僕の事を見つめる目は____血で塗りつぶしたかの様に紅かった。
「分かってくれたかな?うんうん、聞き分けがいい子供は大好きだよ、僕は。」
「…君はシロ君なのかい?」
「ざんねーん、僕はシロじゃないんだなぁ。僕の名前はクロ。シロの反対側…というより、この刀に居るシロの家族…かな。」
「シロ君の家族…?彼女は家族なんて居ないと言っていたけれど。」
「それはそうさ、僕は家族の様なもので家族じゃあないんだ…僕はシロに作られた武器なんだから。あー…それと、明日にでも一番武器に詳しい所にシロを連れて行ってくれないかな?恐らく…そこに彼女達がいるから…。」
「彼女達…?彼女達って…。」
僕の質問に答える前にクロと語っていた刀は応えることがなく、先程まで喋っていたシロ君の身体は最初に会った様に綺麗な黒髪に戻っていた。でも、伏せられていた目の中は真っ赤に輝いている様な気がした。
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