私は夢を見た、それは昔の夢。
私は丘の下に立っていて、丘の上で暴れ狂う私を見上げていた。丘の上で暴れ狂う私は、敵味方の分別もなく目の前に現れる者を斬り、潰し、投げ捨て、壊し尽くしていた。
その戦場は血で濡れ、人の死体でむせ返っていた。
そして、私の横を通り抜けるようにして丘の上の私に近づく1人の少女の姿が見えた。その子の名前は___
『シロちゃん、こんな所で何をしてるの?』
『◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎‼︎』
『シロちゃん皆が待ってるよ?』
『◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎!』
彼女は…【芽吹】は必死に私に話しかけていた。止めて、それ以上近付かないで。それ以上は貴女を殺す。私は必死に彼女に叫び続ける。でも、夢の中の私は現実を覆せはしない。
『……シロちゃん、戻っておいで…。そんなもの…脱いで…さ。』
『あ……芽吹……?』
『……元に戻って良かった…シロちゃんまだまだあの人の隣に居ないと…ね』
『芽吹…芽吹さん…!』
彼女は私から汚染された防具を外す為だけに、私を助ける為だけに私に近付いてくれた。それなのに私は、彼女を切り裂いた。彼女は私に笑顔のまま、造ってくれてありがとう。そう言ってナイフの姿に戻り、砕け散った。
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side シロ
目が覚めた。あの後、直ぐにヘスティアちゃんのファミリアのベットで寝てしまったらしい。ヘスティアちゃんもベルさんも良く眠っているらしい。
私は外に出た。まだ月が夜空に高く昇り続けていた。私は何のあてもなく街の中を歩きながら、壊れたナイフの破片を見つめていた。
「私が造って、そして殺した。初めての家族…。何でこんな所に来たんでしょうね…。」
私は独り言を呟きながら歩いていると、いつの間にか今日訪れた、ヘファイトス・ファミリアの拠点まで来ていた。気晴らしには良いかもしれない。そう思い出店を見て回っていると
「魔剣を売ってくれ!」
「嫌だね、絶対に売らん。」
「なんでだよ!クロッゾの魔剣を作れるんだろ?」
「五月蝿い!帰った帰った!」
冒険者であろう人物と個々の鍛冶の人だと思われる真っ赤の髪の色が口論しているのが見えた。そして、話が進まない事に辟易した冒険者の方が折れて帰ったみたいた。そういえば、ヘファイトスさんが私の剣は魔剣に似ていると言っていた気が。
「ごめんください。」
「ん?なんだ、嬢ちゃん。俺に何かようか?」
私は驚いてしまった。この世界に来てから初めて、私の事を女性だと見抜けたのは彼だったから。相手が私の事を見ているのに気付くと率直な疑問をぶつけてみた。
「クロッゾの魔剣って何ですか?」
その男の人は私の顔を驚いたように見つめたかと思うと、大きな声で笑い出しました。正直、突然過ぎて少しびっくりしたのと引きました。
「俺の所に来て態々聞く馬鹿がいるとは思わなくてな。」
「知らない事を尋ねる事は恥じる事ではないので、それで…それって凄いんですか?」
「海をなぎ払った。そう言われてる程の剣だけどな…それには欠陥がある。」
「欠陥ですか…?」
私も武器職人として造る度に何か不具合が生じるのを知っていた。そして、その事について私は改善策を出そうとも考えるけれど、それも一つの個性なのかもしれないと保留をしている。目の前の鍛冶は少し情けないような表情で
「何回か使うと壊れちまうだよ、剣が魔法に耐え切れなくてな。だから、俺は魔剣を打たないと決めている。使い捨ての武器を造るなんてのは真っ平ご免だからな。」
彼の気持ちは良く分かる。私は武器を造るというよりは、私の事を心を写した家族を生んでいるという意識で造っている。
恐らく、彼は優しいのだろう。武器は当然消耗品でいつかは朽ち果てる。でも、それを態々朽ち果てる為だけに造るというのが耐えられない。武器を愛しているのだと感じた。
「そうですか。お応えいただきありがとうございます。」
「どう致しまして。お前は見ない顔だな?」
彼の質問に応えようとした瞬間。
「おうおう、武器も売れないひよっこが何を雑談してんだ。」
「本当は魔剣なんて作れない嘘っぱちなんだろう。」
二人のチャラチャラとした冒険者と鍛冶が現れました。赤髪の鍛冶は特に気にした様子もなく平然としていましたが、その人の手は強く握りしめられているのが分かりました。当たり前です、自分の造った作品を馬鹿にされて怒らない方が可笑しいのだから。
「前言撤回をしなさい、下郎。」
「あ?なんだお前はこいつを庇うのかよ。」
私は二人の前に立つと、冒険者であろう男が私に向かって言葉を飛ばしてきました。
「庇うという話ではないです。前言撤回をしなさい、と言っている。」
「嫌なこったね、こいつが売れてないのも魔剣を作らないのもどうせ何か悪い考えでも持ってるからだろう。」
あぁ…だから、こういう気持ちの悪い奴らは嫌いなんだ。人の事を侮辱してそれでいて平気に生きるなんて。おこがましい。
「分かりました。その口は力尽くで閉じさせます。」
「やってみろよっ」
冒険者は勢いよく振りかぶって私を殴ろうとします。けれど、今の私にはとても遅く感じました。何故なら、私は黒百合に触れていたから。
私の髪の色が黒と白の混ざった色に変化するのが自分にも手に取るように分かり、その変化が止まった時には彼の動きはとても鈍く簡単に避けられました。
「な、なんだよお前は!」
冒険者が再度、お腹を殴ろうとするのが分かると腕を軸に回転するようにして相手の脇腹に手をめり込ませます。
「お前なんかに語る名はないよ、阿呆。」
「くっ、舐めやがって!」
冒険者は余程、私のような小さな子供にやられたのが癪になったのか、それなりに業物だと思われるナイフで私に斬りかかってきました。私は敢えてそれに突っ込むようにして、そのナイフを自分の脇腹に刺さるようにしました。
「はっ、えっ…うわっ」
相手の冒険者が驚いている隙に足払いをかけ、馬乗りになるようにして相手の首に手を掛けました。
「撤回しなよ、三下。君みたいな冒険者風情には分からないかもしれないけどね、彼には葛藤があってその中で生きてるんだ。無用な挑発は死を招くよ。」
相手に刺されたナイフを引き抜き相手に振りかざそうとした瞬間、首筋に衝撃が走りました。その衝撃で地面に叩きのめされると、最後に映った映像には個々の主神が満面の笑みで怒気を放っているのだけが残りました。
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私が目を覚ました時にはいつの間にか、あの薄暗がりの部屋のソファにいて目を動かしてみると、横にヘファイトスさんが立っていました。
「何があったかは大体聞いたわ。先にふっかけて来たのは彼らだと言うのを聞いたから、そちらの処分は下したけど。貴女は人のファミリアで何をしようとしていたんだが…。」
「少し気晴らしに散歩をしていました…。その時に何故か此処に来てみたんです。そして、ヘファイトスさんが言っていた魔剣を造ってるという方が居たんです。だから、話をしていた時に彼を馬鹿にする…人達が居て、申し訳ありません…。私情に流されました…。」
私はヘファイトスさんに謝罪をする為にソファから起き上がると、違和感に気付いた。お腹の痛みが無くなっていた事に…。少し刺された場所を撫でてみると何も痛みが生じずに、肌に手が触れられた。
ヘファイトスさんが何をしているのだろうという目で見てきたので本題に戻るようにし
「私は今回の償いをなんでもしようと思います。」
最終的には何かを償いをしなければならないだろうと考えて、彼女にこの提案をしてみると彼女は元から償いを決めていたかのように簡単な口調で
「君は私のファミリアに入ってもらうね?」
そう言って満面の笑みで私に微笑みかけた。その後にこってり説教はされたけれど。
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