SAOにプレイヤーチャットが搭載された件【連載するよ!】 作:秋ピザ
なろうの方でよく分からない感じのテンプレ的異世界転生を書いていたらいつの間にか2週間くらいこっちを放置していて、慌てて書いたらさらに1週間かかってしまったわけで。
この調子だとSAO完結まで持ち込めるのはいつになることやら……
あ、本編どうぞ。
あらためて思うが、今回のボスたちは本当に絶望的なほどタフだ。
防御力こそ狂気的と断言できるほどの値を備えて居たりはしないものの、まず普通に戦ったら3日とかそういうレベルで時間がかかるのは間違いないだろう。
その絶望的にタフなボスを2体も倒したあとにこんなことを言うと少々矛盾しているように聞こえるかもしれないが、そもそもこのクエストは、ゲームバランスとかそういうものを考えている形跡が一切ない最低最悪のクエストなのだ。
ウィザードリィで言うならば『囚われし亡霊の街』に当たるだろう。それほどまでにゲームバランスが崩壊している。
それこそ、こっちの攻撃なんかよりよっぽど威力の高いボスの攻撃を延々と当て続けでもしなければ、さっきの2体だって討伐には半日くらいかかっていたに違いない。
SAO以前のMMORPGが末期に生み出す文字通りの魔物だってこれほどタフで時間がかかるようなものじゃなかったのに。
今回ばかりはかやひこも素直に反省するべきじゃないだろうか。そして全力で土下座しながら今すぐ俺と決闘するべきじゃなかろうか。今すぐここで。
そうすればいくらアイツでも自分のやったことの愚かしさを理解できる……かも、しれない。
まぁアイツにデス様で有名になったエ〇ールのような良心的な対応なんてものを期待するのはお門違いって奴なんだろうがな。
「いやぁ君たち? いい加減無駄な攻撃をゲロり続けるの諦めてみない? 」
俺は延々と遠距離攻撃を吐き出し続けるボスたちに対して毒を吐き散らしながら、その傍らに今回の立ち回りを考える思考を並立させる。
ロクなことに使われた試しのない俺の脳みそであればこの程度の並列思考は余裕である。
相手の攻撃パターンを推測し、予想外の行動をされても超余裕で回避行動(またの名を敵シールドとも)に移ることが出来るように自分の行動を決めていく。
無論、このクエストにおける立ち回りはどうしても『ボスの攻撃をボスに当てさせるか』が重要になってくるので、それを忘れてもいけない。
どんな行動をしてきたとしても決して攻撃を受けないように。そして可能な限りボス同士のフレンドリーファイアが発生するように。
いつもならば頭の隅によぎることすらないような慎重極まる立ち回りだが、今回はこれこそが最適解だ。相手のHPが膨大すぎてマトモな手段じゃ削り切るのに何日かかるか分かった物じゃないし、ボス同士でのフレンドリーファイアがあるかどうかでDPSは文字通り桁が大きく違ってくる。それこそ宮城県にある日和山とエベレストくらいには。
そんなことを考えつつ、ひとまずある程度自分の行動をパターン化し終えたのでそろそろ行動に移ろうとして、ふと気付く。
───あれ? どうやったらこの状況を死なずに解除できるんだ?
そう、この状況はあくまで『相手の攻撃が集中し過ぎて逆に当たらない』というだけで、俺が動き出しさえすればそれは単純に暴力的な密度の弾幕に早変わりしてしまう。しかも弾幕はどれもこれも通常の方法では回避不可能なほどの速度を持っている。
つまり、俺がここから一歩でも動こうものならば一撃即死ということだ。
HAHAHAHAHA、なんてこった大誤算だZE。まさか安全地帯を作ったせいで逆に安全地帯から抜け出せなくなるとは。
ふぃーちゃんによって編み出された逆説的安全地帯製造法の思わぬ弱点が見つかったが、まぁ慌てることはない。
ようは一時的にでもボスたちのマークを俺から外しさえすればいいのだ。
例えば、俺のアイテム欄の中に結構な数が存在している【
効果は名前の通りで、アイテム欄から取り出すとHPの1割弱くらいを消費して大量のヘイトを無差別に集めてくれる。
欠点を挙げるなら、この人形は敵の攻撃力に関わらず必ず一撃で壊れることと、これが壊れるとこれに集まっていたヘイトがランダムに振り分けられてしまうことだろうか。
その他にも通称の原因となった『敵の種類によっては攻撃が全くと言っていいほど当たらず、散々mobのヘイトを稼いでからフレンドリーファイアした他のmobたちのヘイトが自分に降りかかって死ぬ』という特徴もあるにはあるが、どうせ最初から俺しかいない今この状況においてのみ言うのであれば、かなり便利なアイテムと考えていい。
重要なのは一時的にでもヘイトを稼いでくれるか否か、それだけだ。
今回は幸いにして(一部プレイヤーを恐慌状態に陥れるが)人形をネタアイテムとして所持していたので、アイテム欄から取り出した無数の身代わり人形を、無作為に投げ込む。
するとボスたちはフリスビーを投げられた犬のように続々と人形に群がっていく。
どうやらヘイトを人形たちに向ける試みは成功したようだ。
内心で適当にガッツポーズをキメつつ、せっかくボスどもが人形遊びに夢中になっていてくれているんだからと装備を整えることにした。
俺は、実はここまでの全てがただの前座だったのだ! というテロップが出てきてもおかしくはないほどに素早い動作でメニューを操作し始める。
手始めにメニュー内の『全装備一括解除』のボタンを押して装備を全て収納して防具を吟味し、とりあえずこれでいいやと思えるものを見つけてから、こっそりとボスたちの方向に視線を向けて様子を……
「QAAAAAA!」「Grrrrraaaaaaaaaaa!」「ケケケケケケケケケ!」
……よし、見なかったことにしよう。
俺は放り投げた身代わり人形たちがたどった残酷すぎる運命に、思わず目を逸らした。
鳥に突っつかれ、よく分からん生物には雷を落とされ、変な死神っぽい奴には瘴気的な何かで狙われる。
しかもそれが微妙に当たりそうで当たらないのだ。これほど恐ろしいことは他にるだろうか? いやない。
かつて何度かやってみたことがあるからこそ分かるが、当たりそうで当たらない致命の一撃って奴は肉体的ダメージの代わりに精神的ダメージが発生する致命の一撃と言って差し支えないのだ。
チクショウ、かやひこめ! こんな汚い方法でこっちに精神的ダメージを与えてくるとは!
身代わり人形たち、お前らの仇は俺が絶対に討ってやるからな! なんて心にもないことを頭の中で叫んでみたりして、一度脱線した思考をそこで元に戻す。
まず体にはTシャツ(普通のTシャツ。動きやすい)、足には若干移動速度が上がる(何故か敏捷は上がらない)せいで微妙な装備扱いを受けているグリーヴ、そして例の刀。
はっきり言って防具はかなり適当だ。
しかしそれに反してアクセサリには最大限にこだわり……防御力を引き換えに攻撃力を上昇させる指輪、HP継続減少(これで死ぬことはない)のバッドステータスを代償に攻撃力をアップさせる指輪、HPが半分より回復しなくなる代わりに攻撃力がアップするピアス、HPが減少しているほど攻撃力が上がるネックレスの4種を身に着ける。
それによって払う代償はかなり大きいが、そもそもHPマックスからでも攻撃が当たれば即死なのだから、こんなもの代償なんて呼べはしないだろう。
というかもはやなんのデメリットもなく攻撃力を上げているに等しいと言ってもいい。
俺は自分の偏り切ったステータスに謎の満足感を覚えつつ、そろそろ投げた人形が破壊される頃合いだと思って手にした刀を構え、極端な前傾姿勢でボスの中でも特に動きの遅そうな、亀によく似た一体に突進を敢行する。
「ハーッハッハッハッハァ! ヴァカなボスどもよ! これが俺の本気だァ!」
そして、俺がようやく放った全力の一撃は見事に亀の足に命中、それによって先程まで身代わり人形に集まっていた亀のヘイトがこちらに向かう……と、思いきや。
「…………」ガスガス
「……あり? おい亀さん、一体どうしたんだね」
どういう訳か、ボスたちは身代わり人形に向かって攻撃を続けるばかりで、こちらに視線を向ける様子すら見られない。
……流石にこれは予想外だ。
こいつらマタタビ塗りたくったボールを与えた時の野良猫並みにこっちに興味示さないんですがこれはいかに。
俺は攻撃してもこちらに興味を示すことすらしないボスたちに違和感を覚えつつ、その行動の理由を確かめようと再び刀で突きさしてみる。
もちろん狙ったのは足だ。相手が亀なのに甲羅を狙ってダメージを減衰させてやる義理はどこにもない。
だから2倍近くになった攻撃力と、刀が持つ突き補正によってそれなりのダメージが入っているはずなのに……やはりボス共は動かず、ただただ人形を狙い続けている、
「なぁ、いくら隊長さんが鉄の意思と鋼の強さを持っているとしても、ここまで完全にガン無視されると辛いんですけどー?」
「…………」ガスガスガス
「案の定無視かよこの野郎!」
イライラしたのでついでに3回ほど強烈な突きを放つが、無視された。
それどころかのんびりと友好的に話しかけてみても無視される始末だ……本当にやりにくい。
普通はどんな敵でも武器を出していない、無防備極まりない、馴れ馴れしいの3拍子揃ったこの行為をしさえすれば絶対に攻撃をしてくる筈なんだが……あぁもうイライラする。
もしこれを狙ってやっているとしたら、かやひこは間違いなく俺以上のとんでもない天才だよ。
……嫌がらせの、な。
次回のプレイヤーチャット(最近プレイヤーチャット入ってないけど)は!
キレる隊長!
いまだに戦う気を一切見せないボスたち!
凄まじい床バンの嵐!
の3つの成分でお送りします。
多分今回ばかりは次回予告が本当になるかもしれないです。